水道利用者の行動変容を促す マネジメント手法の開発

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Transcript 水道利用者の行動変容を促す マネジメント手法の開発

水利用者の行動変容に関する
調査・研究
Study of Attitude and Behavior Modification of Water Users
熊本大学
地域公共政策研究室
1.研究の背景と目的
熊本市の上水道整備の現況
水道水を良質な地下水100%で賄っている
貴重な都市資源!
“おいしい水”全国3位に選出 (旧厚生省,おいしい水研究会)
問題点
市民からの評価が低い
資源の有効活用?
「おいしい」という評価はわずか4割にとどまる.(H.18 熊本市調査)
【仮説】 水道水に対する“不安感”が “まずい”という評価につながった?
“不安感”の軽減→利用者が水道水を積極的に飲むことを促進
目的
水道利用者の行動変容を促すための
マネジメント手法の開発と有用性の検討
2.マネジメント手法
モビリティ・マネジメントのフレームワークを援用
Mobility Management (=MM)
コミュニケーション
施策群
水道利用の現況把握過程
コミュニケーションによる
学習促進過程
Wave1
学習効果の継続度の検討過程
事前アンケート調査
Wave2
コミュニケーションの実施
・事前アンケートのフィードバック
・熊本市の水道水に関するミニ情報紙
・熊本市の水道水に関するクイズ
・ダイアリー調査の実施
Wave3
学習による
意識変化,行動変容の検討過程
コミュニケーション
制御群
事後アンケート調査
・事後アンケートの実施
・事前アンケートのフィードバック(制御群のみ)
・ダイアリー調査の結果(調査票返送者のみ)
Wave4
長期的事後アンケート調査
3.マネジメント手法(補足)
モビリティ・マネジメントのフレームワークを援用
Mobility Management (=MM)
一人ひとりの
交通行動
コミュニケーションを通じた
動機付け情報の付与
社会的にも個人的にも
望ましい方向へ
“自発的な変化”
ex.) 自家用車から公共交通への転換
MM
ワークショップ
型
TFP (Travel Feedback Program)
・MMの中で最も基本的な手法
・アンケートを調査ではなくコミュニケーション
の一部として捉える
個別的コミュニケーション
TFP
簡易TFP
標準TFP
ワンショット
TFP
結果と考察
3. 水道利用の現況
事前アンケートの概要
調査項目
実施期間
2007年9月28日~10月9日
対象世帯
熊本市内に居住する4,000世帯
世
帯
票
・家族構成
・属性(性別,年齢,職業,
県外居住経験など)
調
査
票
・水道利用状況
・水道への金銭的負担
・水道事業に関する意識・関心
サンプルの抽出 住民基本台帳から無作為抽出
調査方法
郵送配布・郵送回収
回収数,回収率 1,395世帯,34.9%
(調査項目は全12項目)
水道水の飲用形態や味の評価に影響を及ぼす因子
(1)住居形態 (2)年齢
(3)水道水に関する知識の有無
3. 水道利用の現況
(1)住居形態
(2)年齢
(3)水道水に関する知識の有無
全体(N=1377)
全体(N=1377)
全体(N=1377)
一戸建て(N=780)
一戸建て(N=780)
一戸建て(N=780)
72.6
72.6
72.6
76.8
76.8
76.8
19.7
19.7
19.77.7
7.7
7.7
18.1
18.1
18.15.1
5.1
5.1
集合住宅(N=520)
集合住宅(N=520)
集合住宅(N=520)
その他(N=20)
その他(N=20)
その他(N=20)
65.8
65.8
65.8
80.0
80.0
80.0
23.1
23.1
23.1 11.2
11.2
11.2
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
10.0
0%
0%0%
20%
20%
20%
40%
40%
40%
60%
60%
60%
80%
80%
80%
100%
100%
100% 直接飲用率が低
そのまま飲むか、沸かして飲む
そのまま飲むか、沸かして飲む
そのまま飲むか、沸かして飲む 浄水器を通して飲む
浄水器を通して飲む
浄水器を通して飲む
全く飲まない
全く飲まない
全く飲まない
全体(N=1352)
全体(N=1352)
全体(N=1352)
一戸建て(N=767)
一戸建て(N=767)
一戸建て(N=767)
41.1
41.1
41.1
46.4
46.4
46.4
集合住宅(N=508)
集合住宅(N=508)
集合住宅(N=508)
その他(N=20)
その他(N=20)
その他(N=20)
32.1
32.1
32.1
45.0
45.0
45.0
集合住宅
23.5
26.6
26.6
8.9
23.5
26.6 8.9
8.9 23.5
20.6
28.3
28.3
4.7
20.6
28.3 4.7
4.720.6
28.3
24.2
24.2
15.4
28.3
24.2 15.4
15.4 28.3
25.0
25.0
25.0
5.0
25.0
25.0 5.0
5.0 25.0
く味の評価も低い
【要因】
貯水槽や水道管の
汚れなど,給水設
備に対する不安
0%0%
20%
20%
40%
40%
60%
60%
80%
80%
100%
0%
20%
40%
60%
80% 100%
100%
おいしいと思う
おいしいと思う
ときどきまずいと思う
まずいと思う
特に何も感じない
おいしいと思う ときどきまずいと思う
ときどきまずいと思う まずいと思う
まずいと思う 特に何も感じない
特に何も感じない
3. 水道利用の現況
(1)住居形態
(2)年齢
全体(N=1377)
72.6
20歳代(N=75)
70.7
30歳代(N=172)
59.9
40歳代(N=219)
63.5
(3)水道水に関する知識の有無
19.7 7.7
全体(N=1352)
14.714.7
20歳代(N=62)
25.6 14.5
30歳代(N=172)
27.9 8.7
40歳代(N=216)
41.1
27.8
26.6 8.9 23.5
27.8 4.2
22.1
27.9
29.2
40.3
18.6
36.1
31.4
11.1 23.6
50歳代(N=286)
73.1
19.6 7.3
50歳代(N=282)
60歳代(N=249)
75.9
17.7 6.4
60歳代(N=241)
50.6
22.0 7.5 19.9
年代が下がるほど
70歳代(N=256)
80.9
15.2 3.9
80歳以上(N=109)
84.4
13.8 1.8
0%
20% 40% 60% 80% 100%
そのまま飲むか、沸かして飲む
浄水器を通して飲む
全く飲まない
37.9
29.8 9.2 23.0
水道利用・・・消極的
70歳代(N=253)
54.9
23.7 5.515.8
味の評価・・・否定的
80歳以上(N=105)
60.0
0%
15.22.9 21.9
20% 40% 60% 80% 100%
【要因】
おいしいと思う
ときどきまずいと思う
①市販のボトルウォーターの普及
まずいと思う
特に何も感じない
②水道水に関する知識の不足
3. 水道利用の現況
(1)住居形態
(2)年齢
(3)水道水に関する知識の有無
全体(N=1352)
知識多い
41.1
よく知っている(N=779)
54.3
ある程度知っている(N=425)
知識少ない
26.4
まったく知らない(N=53) 13.2 17.0
0%
知識が多いほど
味の評価・・・高い
24.0 5.8 15.9
32.7
あまり知らない(N=87) 11.5 26.4
おいしいと思う
まずいと思う
26.6 8.9 23.5
21.8
28.3
9.4
31.5
40.2
41.5
20% 40% 60% 80% 100%
ときどきまずいと思う
特に何も感じない
学習による意識変化が
期待できる可能性
4.ダイアリー調査
ダイアリー調査の概要
実施期間
2007年12月8日~16日
対象世帯
熊本市内に居住する1,000世帯
サンプルの抽出
事前アンケートの回答者から無作為抽出
調査方法
郵送配布・郵送回収
回収数,回収率
362世帯,36.2%
学習ツール
1.ミニ情報紙「くまもとの水道水」
2.熊本市の水道水に関するクイズ
(↑正解者の中から事後報酬を提供することを告知.任意での返送を要請)
3.くまもとウォーターライフダイアリー
(↑ダイアリー調査として兼用.任意での返信を要請)
熊本市の水道水に関するミニ情報紙(表)
熊本市の水道水に関するミニ情報紙(裏)
ダイアリー調査票
熊本市の水道水に関するクイズ
5.学習による意識変化・行動変容
事後アンケート調査の概要
実施期間
2007年1月21日~2月4日
対象世帯
事前アンケート回答者
調査方法
郵送配布・郵送回収
回収数,回収率
831世帯,60.0%
対象者の分類
事前アンケート回答者(1,385)
マネジメント施策群
水道水に関する情報を
与えたグループ
(1,000)
ダイアリー調査
返送あり
(333)
1群
学習度:高
マネジメント対照群
水道水に関する情報を
与えていないグループ
(385)
ダイアリー調査
返送なし
(667)
2群
学習度:?
3群
学習度:低
5.学習による意識変化
(件) 350
300
250
200
150
8
3
39
16
69
100
50
127
3
28
1
54
76
26
4
55
16
63
69
168
125
166
7
53
21
66
4
53
9
54
118
145
[前]
[後]
無回答
特に何も感じない
まずいと思う
ときどきまずいと思う
おいしいと思う
※図中の記号
[前]・・・事前アンケート
[後]・・・事後アンケート
0
[前]
[後]
[前]
[後]
1群(N=254)
2群(N=304)
3群(N=265)
変化あり
変化あり
変化なし
学習しているグループ(1群,2群)
↓
プラス評価「おいしいと思う」が増加
意識構造の変化が見られた
5.学習による意識変化(回答の推移)
1群
[後]
2群
[後]
おいしいと
思う
ときどきま
ずいと思う
まずいと思
う
特に何も感
じない
無回答
総計
おいしいと
思う
97
15
1
11
1
125
69
ときどきま
ずいと思う
32
23
2
10
2
69
1
16
まずいと思
う
2
9
11
3
1
26
17
0
39
特に何も感
じない
33
13
1
29
0
76
0
1
1
3
無回答
2
3
1
2
0
8
54
1
28
3
254
総計
166
63
16
55
4
304
おいしいと
思う
ときどきま
ずいと思う
まずいと思
う
特に何も感
じない
無回答
総計
おいしいと
思う
104
3
1
10
0
118
ときどきま
ずいと思う
19
36
2
7
2
66
まずいと思
う
4
10
6
1
0
21
特に何も感
じない
17
3
0
31
2
53
無回答
1
2
0
4
0
7
総計
145
54
9
53
4
265
おいしいと
思う
ときどきま
ずいと思う
まずいと思
う
特に何も感
じない
無回答
おいしいと
思う
116
8
0
3
0
127
ときどきま
ずいと思う
30
34
0
4
1
まずいと思
う
4
8
0
3
特に何も感
じない
18
3
1
無回答
0
1
総計
168
[前]
総計
[前]
3群
[後]
[前]
回答の推移を個別に検討
していくことによって,
学習による行動変容を
証明できる可能性がある
5.学習による行動変容
(件) 350
300
250
200
3
11
48
6
52
2
27
64
3
20
218
194
200
[後]
[前]
[後]
63
6
12
53
10
55
150
100
192
196
211
[前]
[後]
[前]
50
無回答
全く飲まない
浄水器を通して飲む
そのまま飲むか、沸かして飲む
※図中の記号
[前]・・・事前アンケート
[後]・・・事後アンケート
0
1群(N=254)
2群(N=304)
3群(N=265)
変化なし
変化なし
変化なし
すべてのグループにおいて
行動変容が認められなかった
↓
分析手法を変えることで
統計的な行動変容が認められる
可能性あり
5.学習による行動変容(回答の推移)
2群
1群
[後]
[後]
そのまま
飲むか、
沸かして
飲む
浄水器
を通して
飲む
まったく
飲まな
い
無回答
そのまま飲
むか、沸か
して飲む
183
8
1
0
192
浄水器を通
して飲む
6
42
0
0
まったく飲
まない
7
0
4
無回答
0
2
総計
196
そのまま
飲むか、
沸かして
飲む
浄水器
を通して
飲む
まったく
飲まな
い
無回答
総計
そのまま飲
むか、沸か
して飲む
200
5
5
1
211
48
浄水器を通
して飲む
9
52
1
2
64
0
11
まったく飲
まない
9
4
14
0
27
1
0
3
無回答
0
2
0
0
2
52
6
0
254
総計
218
63
20
3
304
そのまま
飲むか、
沸かして
飲む
浄水器
を通して
飲む
まったく
飲まな
い
無回答
総計
そのまま飲
むか、沸か
して飲む
181
8
5
0
194
浄水器を通
して飲む
10
43
0
0
53
まったく飲
まない
6
1
5
0
12
無回答
3
3
0
0
6
総計
200
55
10
0
265
[前]
総計
[前]
3群
[後]
[前]
個別の回答の推移を追っても,
意識変化があることが分かる。
5.学習による意識変化・行動変容
●水道水に対して不安に思う項目(複数選択)
件
500
数
その他
(
17
58
延 400
べ
数 300
10
49
134
)
100
94
113
126
88
101
113
88
90
79
[前]
[後]
[前]
[後]
117
75
90
12
56
13
49
128
8
37
89
200
塩素消毒
11
64
71
92
58
[前]
[後]
0
1群
2群
水道管を流れる間の水の汚染
自分の家の水道水・貯水タンクのよごれ
水道水源の水質
※図中の記号
[前]・・・事前アンケート
[後]・・・事後アンケート
3群
●水道水に対して「不安はない」と答えた回答者数
(件)
100
学習しているグループ(1群)
80
↓
60
40
99
88
76
72
[前]
[後]
89
76
20
0
[前]
[後]
1群
2群
[前]
[後]
3群
水道水に対する
不安が軽減する傾向にある。
6.まとめ
本研究では,水道利用者に対して行動変容を促すためのマネジメ
ント手法を適用し,学習による水道利用者の行動変容・意識変化
の有無を検討した.
1.水道水の味の評価や飲用形態に影響を及ぼす因子として,住
居形態,年齢,水道水に関する知識の有無が確認された.
2. コミュニケーションを通じて学習したグループには,水道水に対
する意識変化が見られた.
3. 学習による行動変容は分析手法の見直しを行うことで,行動変
容が.認められる可能性が示唆された.
本研究で使用したマネジメント手法の
有用性を支持するデータが得られた.