朝の会で係活動をしながら 他児を叩かずに参加することが できるための

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Transcript 朝の会で係活動をしながら 他児を叩かずに参加することが できるための

小学部中学年の自閉症児が排尿時に
ズボンの前部分のみを下ろして
排尿できるようにするための支援
指導目標
【長期目標】
学校のトイレで,教員が側にいなくても,自分でズボンの前部
分のみを下ろして排尿することができる。
【短期目標】
小学部の男子トイレ(男子用便器)において,給食後の排尿に,
教員が側にいなくても,自分でズボンの前部分のみを下ろして
排尿することができる。
【標的行動】
小学部の男子トイレ(洋式)において,給食後の排尿時に,教員
が1m程度離れた場所にいれば,自分でズボンの前部分のみ
を下ろして排尿することができる。
現状のABC分析
排尿できる(↑)
排尿時
教員のことばによる
賞賛あり(↑)
小学部の
洋式トイレ
ズボンを膝まで下ろす
+身体的ガイダンスあり
絵カードの提示なし
ズボンを途中でとめられる(↓)
後方に教員がいる
ことが嫌(↓)
求められている行動が
よくわからない(↓)
今までと違うズボンの下げ方
に違和感あり(↓)
ズボンを全部おろせない(↓)
解決策のABC分析
給食後の排尿時
排尿できる(↑)
教員のことばによる
賞賛あり(↑)
小学部の
洋式トイレ
教員が1m程度
離れたところに
いる
絵カードの提示あり
ズボンの前部分
絵カードの提示に
よって求められてい
る行動がわかる(↑)
のみを下ろす
好きなキャラクター
のシールあり(↑)
今までと違うズボンの下げ方
に違和感あり(↓)
ズボンを全部おろせない(↓)
方法
【対象児】
小学部4年 男児 Sさん 知的障害,自閉症
PEP-R 発達年齢:2歳7ヶ月(平成22年5月)
【指導場面】
給食後の排尿時,小学部の男子トイレ(洋式)
【般化場面】
指導場面以外の学校での排尿時,家庭での排尿時,
学校や家庭の男子用小便器
【般化場面】
ズボンの前部分のみを下ろして排尿している絵カード,
好きなキャラクターシール,シールの台紙
手続き(1)
(1)給食後の,Sさんがトイレに行こうとするときに,「ズボンの前部分
のみを下ろして排尿している」絵カード(写真1)を提示し,教員が
モデリング(ズボンの前部分を持つ)しながら,「これはまるです。」
と伝える。
(2)Sさんがズボンに手をかけようとしたときに,ズボンの前部分を
持って下ろすように後方から身体的ガイダンスを行う。
(3)前部分を下ろしたまま排尿できたら,写真1の絵カードを見せな
がら,「まるです。」とことばと身振りで大いに賞賛する。
(4)手洗いの後,Sさんの好きなキャラクターシール(花かっぱ)を数
枚提示し,「どれがいい?」と聞く。Sさんが一枚選んだ後,「トイレ
よくできました」の台紙(写真2)にシールを貼るように指さしなどで
促し,「よくできました。」とほめる。
(写真3は改善後の台紙)
手続き(2)
※プロンプトは,次の順序で減らしていく。
・排尿する間ずっと身体的ガイダンスあり
・排尿するまで身体的ガイダンスを行い,途中からガイダンスなし
・ズボンの前部分に手をかけるまでの身体的ガイダンスあり
・手を前に出すまでの身体的ガイダンスあり
・ズボンを持つところへの指さしあり
・プロンプトなし(このときには,(1)のモデリングもしない。)
写真1
写真2
写真3
記録方法
【ベースライン】
排尿時,ズボンの前部分のみ下ろすのに全介助が必要であったか,
部分介助でできたか,記録する。
【指導場面】
ズボンの前部分のみを下ろして排尿するとき,どの程度プロンプト
が必要であったか,次のように点数化して記録する。
・一人でできた
→5点
・ズボンを持つところへの指さしあり
→4点
・手を前に出すまでの身体的ガイダンスあり
→3点
・ズボンの前部分に手をかけるまでの身体的ガイダンスあり→2点
・排尿するまで身体的ガイダンスを行い,
途中からガイダンスなし
→1点
・排尿する間ずっと身体的ガイダンスあり
→0点
達成基準
プロンプトなしで,ズボンの前部分のみを
下ろして排尿することができた日が5日間
続いたら達成とする
結果(1)
5
ベースライン
指導場面
4
3
2
1
1/25
1/18
1/11
1/4
12/28
12/21
12/14
12/7
11/30
11/23
11/16
11/9
11/2
0
10/26
プ
ロ
ン
プ
ト
の
点
数
日付
ズボンの前部分のみを下ろして排尿するために,必要だった
プロンプト(点)
結果(2)
・指導を開始してから6日間は,排尿中ずっと後方からの身体的ガイダ
ンスが必要な状態であったが,Sさんは嫌がらず,ズボンの前部分の
みを下ろした状態で排尿することができた。
・排尿後のシールを貼るときには,数種類の中から自分で好きなシー
ルを選んで嬉しそうな表情で台紙に貼っていた。
・ 12月頃から,キャラクターシールを選ぶときに少し飽きているような
表情がみられたため,1月からシールの種類を新しいものにした。
また,シールを貼る台紙も大きいものに変更し,シールをたくさん集
めるのが好きなSさんにとって,より好子となるように工夫した。
・1月12日から,ズボンの前部分への指さしのみで,自分でズボンの
前部分を下ろすことができるようになった。大きな台紙にシールを貼
ると,しばらく嬉しそうに台紙を眺める姿もみられた。
考察
• 3ヶ月間という長期にわたる指導ではあったが,指導前,排尿時に
教員からの関わりを大変嫌がっていたSさんにとって,スモールス
テップによって着実に望ましい行動を積み重ねていけたことがよ
かったと思う。
• Sさんにとって好きなキャラクターのシールを貼ることが好子となり,
苦手な行動を獲得していこうとする意欲が高まったものと思われる。
• Sさんの状況に応じて好子を見直したことも,目標達成に向けて有
効だったのではないかと考えられる。
• 指導中に身体的ガイダンスが必要な期間が長く続いたが,記録をと
ることで日々少しずつプロンプトが減っていくことを確認することがで
き,地道な指導を継続することができたように思う。記録をとることの
大切さを改めて実感した。
今後の課題
・この指導の後,指導した教員以外とも同じようにできたり,
給食後以外の排尿時でもできたりと,般化がみられた。また,
洋式トイレが使用中のときには,男子用小便器でもできた。
・家庭においても,保護者がトイレについていったときはでき
るようになったということで,般化場面が増えてきている。
・今後は,Sさんの様子をみながら,毎回の排尿時にどこのト
イレでも,また大人が近くにいない状況でもできるように,定
着を図り,般化場面をさらに増やしていきたいと考えている。