ジャーナリズム論

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ジャーナリズム論
第5回 ジャーナリズムと表現の自
由
担当:野原仁
前回の復習
 ジャーナリズムの倫理;取材・編集・報道・
視聴者(読者)への対応・権力者への対応、
などに関して、「何をするのがOKで、何を
したらアウト」かを決める基準
 ジャーナリズムの倫理は、ほかの職業に関す
る倫理と比べて、よりいっそう厳しいもので
なくてはならない
 ジャーナリズムの倫理の基本;ジャーナリズ
ムは、社会の主権者である市民の役に立たな
くてはならない
本日のテーマ
表現の自由とは何か?
表現の自由の歴史
メディアの表現の自由
現代社会における表現の自由
ジャーナリズムと表現の自由
表現の自由=ジャーナリ
ズムの絶対的前提条件
基本的人権とは?
すべての人間が生まれながらに
持っている基本的な権利
幸福追求権・平等権・自由権・社
会権・参政権・受益権など、さま
ざまな個別的権利を含んでいる
精神的自由権
自由権のうち、とくに人間の考
え方・感じ方など精神活動の自
由に関する権利
内面的自由権と外面的自由権に
区別される
思想・良心の自由、言論の自由、
信仰の自由、学問の自由
その他の自由権
自由権には、精神的自由権のほか
に、「身体的自由権(不当に身柄
を拘束されない、など)」と「経
済的自由権(不当に財産を没収さ
れない、など)」がある
詳しい内容は随時この授業の中で
紹介します
表現の自由とは?①
 さまざまな情報を自由にやりと
りすること
 法的権利としては、日本では憲法第21条(集
会・結社・表現の自由、通信の秘密)で定め
られている。
① 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現
の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密
は、これを侵してはならない。
表現の自由とは?②
表現=自分や考えたこと・感じたこと・
知ったことを何らかのかたちで示すこと
ことば・文字・絵・画像・映像・音楽・
踊り…
表現の自由の前提として、「思想・良心
の自由」がなくてはならない(日本では
憲法19条で認められている)
表現の自由とは?③
完全に自由な訳では
ない(詳細はプリント
を参照のこと)
表現の自由の4つのポイント
① 個人の表現行為に対する国家の干渉を許
さない
② 自由に情報を受け取る権利としての「知
る権利」も含まれる
③ 個人の権利としてだけではなく、メディ
ア事業者など「組織」としての権利も含
まれる
④ 表現の自由の規制は他の自由の規制以上
に慎重でなくてはならない
表現の自由の本質
さまざまな情報を自由にやりとりする
こと
↓
特に、「政府や権力者に対する批判を
自由に言ったり、聞いたりすることが
できる」ということが重要!
↓
Why?:なぜ表現の自由が必要なの
か?
なぜ表現の自由は必要なのか?
①
民主的な社会の維持のため
・主権者は自己の所属する社会に関する様々な事
柄を判断・決定しなくてはならない→それを
可能にする前提条件として、一定の範囲内で
自由に情報を発信・受信する権利が認められ
ることが不可欠
・権力者は自分に都合の悪い情報を隠し、自分に
対する批判を押さえ込もうとする→社会の主
権者として、自由に権力者を批判し、自分に
関係するさまざまな情報を得る自由が認めら
れることが必要
②
真理を明らかにするため
・この世の中のさまざまなできごとにつ
いて、自由に議論をすることで、「何
が正しくて、何が間違っているのか」
をさぐるため→「思想の自由市場」論
と呼ばれる
・ミルトンの『アレオパジティカ』(後
述)や、J・S・ミルの『自由論』以来
の古典的な考え方
③ 個人の自立・自律のため
個人が、自由に情報を受け取り、情報
を発信することで、自立した個人として
成長するとともに、他者から圧迫されず
自律して生活するため→基本的人権すべ
てにかかわるもので、表現の自由固有の
必要理由ではない
④ 安定と変化の均衡を図るため→表現の自
由の結果として得られる付随的なもの
表現の自由の歴史
国家による干渉を
なくすための闘い
の歴史
人類の歴史=言論弾圧の歴史
秦の始皇帝による「焚書坑儒」
古代ローマ・ギリシャの「誹謗文書処
罰」
中世キリスト教の「異端狩り」
近代市民社会の出版免許制や課税制
戦前の日本の言論統制
現代日本の言論規制
『アレオパジティカ』byジョン・ミ
ルトン
史上初めて、今日の「言論(表現)の自
由」「知る権利」に相当する権利を文書
で主張したパンフレット
『失楽園』で知られる詩人のミルトンが、
自らの離婚問題について記した別のパン
フレットが議会で問題にされたことに抗
議するため、1644年に発行
当時のイギリスでは事前検閲制度があり、
それに対する抗議の表明でもあった
アメリカ合衆国憲法修正第1条
 1789年の第1回連邦議会で可決成立、91年発効
 史上初めて表現の自由を憲法に明記したもの
 「合衆国議会は、国教の樹立、または宗教上の行
為を自由に行なうことを禁止する法律、言論また
は出版の自由を制限する法律、ならびに市民が平
穏に集会する権利、および苦情の処理を求めて政
府に対し請願する権利を侵害する法律を制定して
はならない。」
 しかし、別の法律で政府や議会に対する批判は処
罰された
 日本国憲法第21条はこの条項をもとに制定された
戦前の日本における表現の自由
 大日本帝国憲法第29条:日本臣民ハ法律ノ範囲
内ニ於テ言論著作印行集会結社ノ自由ヲ有ス
言論を規制するさまざまな法律(刑法・新聞紙
法・出版法・映画法・治安維持法など)により、
特に天皇制など体制への批判は厳しく処罰され
た
1932年の15年戦争開始後は、政府・軍部による
情報統制がさらに強まり、言論の自由は極度に
厳しく制限された
戦後日本における表現の自由
占領期には、SCAP(連合国最高司令部)
によって、さまざまな事前検閲が行われ
るとともに、レッドパージによって共産
主義者をメディア事業体から追い出して
いった
1952年の独立後はまったくの無制限では
ないが、原則的に表現の自由は形式上は
享有されることなった
しかし、実質上は表現の自由の範囲は
年々狭くなっているのが現状
諸外国における表現の自由
世界の中では、アメリカや日本のように、
憲法で何の制約も設けていないケースは
少ない
ex.)中国・北朝鮮・シンガポール・ベトナ
ム・ビルマ(ミャンマー)・ロシアなど