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心電図勉強会 第4回
ST-Tの異常
鉄門癌の会勉強会
担当:候 聡志
今日の目標
虚血性心疾患の心電図が読める。
→ STの上昇・下降
心電図波形(復習)
R
P波:心房興奮
QRS波:心室興奮
ST部:心室興奮極期
T波:心室興奮の消退
P
T
Q S
STの上昇
ST部分は心室の興奮から再分極までの間。
上昇・下降が無いのが正常。
STの上昇がおこるのは?
虚血性心疾患
早期再分極
急性心膜炎
Brugada症候群
その他(左室肥大・左脚ブロック・心室瘤・
低体温など)
STの下降
STの下降がおこるのは?
頻脈
虚血性心疾患
ジギタリス
低カリウム血症
など多岐にわたるが、正常亜型も多く、
心電図所見のみで診断に至るのは困難。
虚血性心疾患
(ischemic heart disease:IHD)
 虚血性心疾患とは、冠動脈の狭窄・閉塞により心筋
への血流が阻害された状態。
 一過性のものが狭心
症(心筋は虚血状態)、
心筋の壊死まで至った
ものが心筋梗塞である
といえる。
冠動脈造影に関する基礎知識(おまけ)
左前斜位(LAO)と右前斜位(RAO)
冠動脈には部位別に名前が付けられている
(ぜひ実際に模型で確かめてみて下さい!)
参考:冠動脈造影像
左冠動脈(RAO)
左冠動脈(LAO)
右冠動脈(LAO)
左主幹部 :LMT 90% 左回旋枝:Seg11 total 右冠動脈:Seg1 total
左前下行枝:Seg6 99%
Seg7 50%
Seg8 50%
虚血性心疾患
なぜ虚血性心疾患でST変化が起こるのか?
→ 傷害電流によって説明されます。
心筋の活動電位と
心電図波形の関係
(虚血心筋では電位差は低下する)
虚血性心疾患
虚血性心疾患によるST偏位(拡張期)
正常側
虚血側
+++++ + +
----- - -
傷害電流
----- - -
+++++ + +
拡張期では、虚血側で-、正常側で+
虚血性心疾患
虚血性心疾患によるST偏位(収縮期)
正常側
虚血側
----- - -
+++++ + +
傷害電流
+++++ + +
----- - -
収縮期では、虚血側で+、正常側で-
心電図上でST上昇が生じる理由
虚血性心疾患
虚血性心疾患によるST偏位
虚血側からみるとST上昇
正常側からみるとST下降
正常側
虚血側
心筋梗塞(myocardial infarction:MI)
心筋梗塞による心電図変化
超急性期(発作直後~数時間)
→T波増高、ST上昇
急性期(数時間~12時間)
→ST上昇、異常Q波出現
亜急性期(12時間~数週間)
→T波陰性化、STは基線に戻る、異常Q波は残存
慢性期(数週間~)
→陰性T波は徐々に改善するが、異常Q波は残存
心筋梗塞
AMIによる心電図変化
梗塞前
Ⅰ誘導
V1誘導
直後 数時間後 12時間後 1週間後
1年後
急性心筋梗塞に
おける心電図及び
血液検査所見の
経時的変化
心筋梗塞
左回旋枝
右冠動脈
左前下行枝
四肢誘導及び胸部誘導の観察方向
心筋梗塞
心電図変化と梗塞部位、責任冠動脈
 V1~V4
・・・前壁中隔
 V3,V4
・・・前壁
Ⅰ,aVL,V1~V6・・・広範囲前壁
Ⅰ,aVL,V5,V6 ・・・側壁
Ⅱ,Ⅲ,aVF
・・・下壁
左前下行枝
左回旋枝
右冠動脈
急性心筋梗塞の心電図変化と
局在部位との関連
治療のMinimum Essence
急性期
CCUで対応,硝酸薬舌下投与,アスピリン投与,疼痛
に対しては塩酸モルヒネ,慎重にβblocker,心不全に
対する治療 (Forrester分類に基づく),血栓に対しては
ヘパリン,不整脈治療(重要!)
慢性期
1.冠危険因子の除去及び管理
2.薬物療法
(βblocker,ACEI,ARB,スタチン,アスピリン)
再灌流療法(診断が確定していることが条件)
発症6h以内のAMI患者で胸痛が持続する場合
はPCIの良い適応(条件次第ではCABGに!)
血栓溶解療法
→・ 静注もしくは冠動脈に直接投与
・ t-PA,ウロキナーゼ
・ 禁忌例に注意!
(詰まるところ出血が怖い)
心筋梗塞
心筋梗塞の判定
超急性期→上に凸のST上昇、T波増高
急性期 →上に凸のST上昇、異常Q波
亜急性期→異常Q波、陰性T波、(ST上昇)
慢性期 →異常Q波、(陰性T波)
再灌流時の一過性ST再上昇
後壁梗塞における鏡面像
心筋梗塞
Ⅰ
aVR
V1
V4
Ⅱ
aVL
V2
V5
Ⅲ
aVF
V3
V6
Ⅱ,Ⅲ,aVFでのST上昇
急性下壁梗塞
心筋梗塞
Ⅰ
aVR
V1
V4
V2
Ⅱ
aVL
Ⅲ
aVF
aVL,V1~V4で異常Q波
Ⅰ,aVL,V3~V6で陰性T波
V5
V3
V6
陳旧性広範囲前壁梗塞
非Q波心筋梗塞(心内膜下梗塞)
(subendocardial infarction)
ST下降、陰性T波を示し、異常Q波が認められ
ない心筋梗塞を、非Q波心筋梗塞という。
心内膜下の非貫壁性梗塞によるものが多い。
非Q波心筋梗塞
梗塞
Q波心筋梗塞
梗塞
非Q波心筋梗塞(心内膜下梗塞)
非Q波心筋梗塞の心電図の判定
ST下降、陰性T波
異常Q波は出現しない
典型的には非Q波梗塞症例は心内膜下が主体
の非貫壁性梗塞であると考えられているが、今
では心電図上におけるQ波の有無と、組織学的
に貫壁性梗塞であるか否かとは必ずしも一致し
ないことが分かっている。
非Q波心筋梗塞(心内膜下梗塞)
Ⅰ
aVR
V1
V4
Ⅱ
aVL
V2
V5
Ⅲ
aVF
V3
V6
Ⅱ,Ⅲ,aVF,V2~V6で陰性T波
異常Q波は出現しない
狭心症(angina)
狭心症は発作時に心電図変化を示し、
非発作時は正常心電図であることが多い。
労作性狭心症
→ST低下
異型狭心症、高度狭窄例
→ST上昇
狭心症
心筋が一過性に虚血に陥ったために生じる
特有な胸部ならびにその近接部の不快感を
主症状とする臨床症候群
(cf. 無痛(無症候)性心筋虚血silent myocardinal ischemia
は自覚症状を伴わない心筋虚血発作である)
 狭心症の考え方(後の分類のスライド参照)
狭心症の発生機序は?
心電図上でST下降が生じる理由
狭心症の分類
発作の誘引から・・・
労作性狭心症 vs 安静狭心症
症状の経過から・・・
安定狭心症 vs 不安定狭心症
発症の仕組みから・・・
器質性狭心症 vs 冠攣縮性狭心症
(注)異型狭心症とは発作が安静時に出現し、ECGのST↑を伴った
狭心症のことであるが、その原因は冠攣縮であることがほとんどで
ある。(完全もしくはほぼ完全に閉鎖されると、その支配領域の貫壁
性虚血によってSTが上昇する)
狭心症の治療薬
硝酸薬
・ 動脈・静脈を拡張
→ 末梢に蓄積される血液量 ↑
→ 静脈還流量 ↓
→ 前負荷 ↓
→ EDP,EDV ↓(心臓に対して保護作用):酸素需要量↓
・ 冠血管を拡張:酸素供給量↑
→ 器質性狭心症では効果は・・・(冠動脈の攣縮には効く)
Ca拮抗薬:冠動脈スパズムを予防
心拍数・心収縮力↓
β遮断薬:運動時の心拍数の上昇を抑制,心収縮力↓
(異型狭心症には禁忌!)
Kチャネル開口薬:冠拡張作用に優れる
ACE阻害薬 & AⅡ受容体拮抗薬,アスピリン
早期再分極(early repolarization)
正常亜型? 上に凹のST上昇を示す。若年者,
男性に多い。
(推奨文献)
Sudden Cardiac Arrest Associated with Early Repolarization
(N Engl J Med 2008;358:2016-23)
早期再分極の判定
ST junctionにおける1~4mmの上に凸なST上昇
Ⅱ,Ⅲ,aVF,V1~V4に多い
ST接合部にノッチ(J波)を伴うことがある
ST上昇の誘導ではT波も上昇
早期再分極
Ⅰ
aVR
V1
V4
Ⅱ
aVL
V2
V5
Ⅲ
aVF
V3
V2~V4で上に凹のST上昇
V2でJ波がみられる
V6
急性心膜炎(pericarditis)
様々な原因による心膜の炎症
(特発性,ウイルス性,細菌性,尿毒症性,SLE,
薬物,放射線,Dressler症候群・・・等々)
急性心膜炎の判定
aVR,V1を除く全誘導で上方凹のST上昇
aVRでPR部分上昇
aVRを除く全誘導でPR部分低下
急性心膜炎
Ⅰ
aVR
V1
V4
Ⅱ
aVL
V2
V5
Ⅲ
aVF
V3
V6
広汎な誘導で上に凹のST上昇
PR部分が広汎な誘導で低下,aVRで上昇
Brugada症候群
 Brugada症候群は洞調律時にV1~V3で右脚ブロックと
ST上昇を伴う心電図所見を呈し、多型性心室頻拍を
介して特発性心室細動を生じうる。
 青壮年男性の突然死の原因となる。
 Brugada症候群の心電図
完全or不完全右脚ブロック様の
QRS波形(J波)
V1~V3でcoved型もしくは
saddle back型のST上昇
V1~V3でT波が陰性
(coved型の場合)
V1~V3を通常より1肋間上で
記録すると典型的所見が得られることがある
病因
・Naチャネル(SCN5A)の異常
・不整脈源性右室心筋症との関連性 etc…
日本では0.17%前後でBrugada症候型の心電図
を認め、Saddle back型が多い
無症状かつ家族歴のない人の突然死の発症は
年間0.5%前後となっている
ICDが第一選択ではあるが、家族歴,EPS,薬物
検査の結果からリスクの層別化を行って検討す
べきである(現在はまだ統一された基準はない)
Brugada症候群(coved型)
Ⅰ
aVR
V1
V4
Ⅱ
aVL
V2
V5
Ⅲ
aVF
V3
V6
V1,V2でcoved型のST上昇
V1,V2で陰性T波
今回のまとめ
STの上昇・下降を示す主な心電図
虚血性心疾患
早期再分極
急性心膜炎
Brugada症候群
参考文献
 去年度「癌の会心電図勉強会」スライド
 http://www.cardiac.jp/
 心電図の読み方パーフェクトマニュアル(羊土社)
 心電図のABC(日本医師会発行)
 心電図を学ぶ人のために(医学書院)
 わかりやすい心電図の読み方(Medical View)
 不整脈 ベッドサイド診断から非薬物治療まで (医学書院)
 論文:色々
謹告
医学は常に変化し続ける科学であり、新しい研究と臨床経験
により我々の知識が広がるのに伴い、治療と薬物療法の変更
が必要となる。今回の発表をするにあたり、信頼できる情報源
を調べ、適切かつ08年4月現在に於いてスタンダードとして一般
に受け入れられている情報を提供した。しかし、人間のエラーの
可能性や医学の進歩を鑑みるとき、本発表に含まれる情報が
全ての面において正確であるなどと保証することはできない。
故に如何なるエラーや欠落、そして本発表内容に含まれる情報
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