Transcript 運動生理(呼吸・循環)
運動と呼吸 および 心機能 運動効果の概略 呼気分画と運動による変化 ← 予 備 吸 気 最 量 大 → 吸 気 ← 量 一 肺 回 活 換 量 気 全 量 肺 → 気 量 ← 予 備 機 呼 能 気 的 量 残 → 気 ← 量 残 気 量 → 酸素負債 【軽い運動】 【強い運動】 A:運動中の酸素不足量 B:運動中の酸素摂取量 C:回復時の酸素摂取量(酸素負債) A+B=酸素需要量 A=C 酸素解離曲線 心臓を中心とした循環 心臓の特殊心筋(自律性) 心電図 運動の強さと循環応答 運動の循環器・呼吸器に対する効果 1.心機能の改善と向上 運動に対する心機能の改善・向上,ひいては血圧の理想化 2.呼吸器機能の改善と向上 肺活量・最大酸素摂取量の改善・向上 基礎体力を向上させる 最大酸素摂取量とは 酸素摂取量とは,1分間あたりに体内に取り込まれる 酸素量であり,最大酸素摂取量とは,その最大量のこと である。なお,その値は一般に体重あたり(mL/分/kg)で 表示される。 最大酸素摂取量の測定は,漸増的に運動強度を上げ ていきながら酸素摂取量を継続しながら測定していく。 運動負荷の種類としては,自転車エルゴメーターやト レッドミルが使用されるが,両者の数値には一般的に違 いが生じる(自転車エルゴメーターの方が低くなる傾向に ある)。 最大酸素摂取量と運動強度の関係 一回拍出量と運動強度 心拍数と運動強度 最大酸素摂取量に対する%と心拍数 200 180 心拍数( 拍/分) 160 20~29歳 30~39歳 40~49歳 50~59歳 60~歳 線形 (20~29歳) 線形 (30~39歳) 線形 (40~49歳) 線形 (50~59歳) 線形 (60~歳) 140 120 100 80 60 40 20 0 0% 20% 40% 60% %V O 2m ax( %) 80% 100% 心拍数と%VO2max 1.推定最高心拍数=(220-年齢) 拍/分 運動時心拍数-安静時心拍数 2.%HRmax= 最高心拍数-安静時心拍数 ×100 したがって,たとえば50%強度での心拍数は, 50% HRmax=(最高心拍数-安静時心拍数)×0.5 +安静時心拍数 たとえば,20歳で安静時60拍なら (200-60)×0.5+60=140×0.5+60=70+60=130拍/分 厚生労働省の「健康づくりのための運動所要量」 ◆運動強度が最大酸素摂取量の50%の場合 年齢階級(歳代) 20 30 40 50 60 合計運動時間(分/週) 180 170 160 150 140 目標心拍数(拍/分) 130 125 120 115 110 ◆運動強度が最大酸素摂取量の60%の場合 年齢階級(歳代) 20 30 40 50 60 合計運動時間(分/週) 90 85 80 75 70 145 140 130 125 120 目標心拍数(拍/分) 1回の運動時間が10分以上で1日合計20分以上毎日運動を行うことが望ましい。 長期間ベットレストの人体に及ぼす影響 1.循環器系 (1)安静時および運動時心拍数増大 (2)心容量減少 (3)一回拍出量減少 (4)起立耐性低下 (5)最大酸素摂取量減少 (6)加速度耐性低下 (7)造血機能低下と赤血球減少 2.骨代謝 (1)尿中Ca排泄増大 (2)骨脱灰(N,P,Caが0.5%/月で減少) (3)骨軟化→骨折の可能性増大 3.筋肉系 (1)萎縮 (2)筋肉の脂肪置換 4.内分泌系 (1) 副腎皮質ホルモン減少 (2)血漿インスリン濃度上昇(感受性低下) ※ 副腎皮質ホルモンのうち糖質コルチコイドは, 炎症症状やアレルギー症状を除去したり,細菌 感染に抵抗する白血球のうちの好中球や赤血球, 血小板を増加させる。 また,副腎皮質ホルモンあらゆるストレスに抵抗 するためにも重要な役割を示す。 糖代謝に及ぼすベットレストの影響 【高齢者血糖値】 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 血糖値(mg/dL) 血糖値(mg/dL) 【若年者血糖値】 0 30 60 120 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 180 0 【若年者インスリン値】 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 30 60 120 180 糖負荷後時間(分) 1週間後 120 180 糖負荷後時間(分) 【高齢者インスリン値】 インスリン値(μU/mL) インスリン値(μU/mL) 糖負荷後時間(分) 30 60 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0 30 60 120 180 糖負荷後時間(分) 4週間後 (皆川彰他:臨床病理,25,p.495,1977より改変) トレーニング前後の糖負荷試験成績 インスリン値(μU/mL) 血糖値(mg/dL) 200 150 100 50 0 200 150 100 50 0 0 30 60 90 120 糖負荷後時間(分) トレーニング前 0 30 60 90 120 糖負荷後時間(分) トレーニング後 インスリン非依存型糖尿病者での結果 (山田哲雄他,糖尿病治療研究会報,3,37 - 42,1982 より作成) 90 80 85 78 HDL(mg/dL) 血糖値(mg/dL) 運動習慣による血液性状の変化 80 75 70 76 74 72 70 実験前 実験後 中性脂肪(mg/dL) 160 140 120 * 100 80 実験前 実験後 コレステロール(mg/dL) 実験前 実験後 180 170 160 * 150 実験前 実験後 データは平均±SEM(n=10) 被験者は健康な女子短大生である。 運動期間前と2週間にわたる運動期間後の母平均の差の検定は, 対応のあるt-検定で行い,p<0.05で有意を「*」で表現した。 高脂血症に及ぼす運動療法の効果 150 100 50 0 300 HDLコレステロール(mg/dL) 総コレステロール(mg/dL) 中性脂肪(mg/dL) 200 250 200 150 100 50 期間後 p<0.05 80 60 40 20 0 0 期間前 100 期間前 期間後 被験者は13名 (伊藤 朗・高橋徹三他,運動処方研究,173,1982より作成) 期間前 期間後 運動の代謝改善に対する効果 1.糖質代謝改善 インスリン感受性を改善し,血糖調節を安定させる 2.脂質代謝改善 HDLコレステロール濃度上昇,または中性脂肪及び 総コレステロール濃度を低下させる トレーニング前の血圧階級別にみたトレーニングの効果 収縮期血圧(mmHg) 160 150 140 130 120 *** *** *** * ** *** * 110 *** 110 100 120 (n=23) (n=29) (n=38) (n=85) (n=152) (n=126) (n=38) (n=20) 90 *** 拡張期血圧(mmHg) 170 100 *** 90 *** 80 (n=152) ** 70 60 (n=5) (n=28) (n=85) *** (n=173) (n=71) (n=8) * 50 期間前 期間後 期間前 期間後 成人女子522名に週1回,3ヵ月間健康づくり運動を実施した結果。 有意差の表示は,p<0.05で有意を「*」,p<0.01で有意を「**」 ,p<0.001で有意を「***」で表現。 (体育科学センター編著,片岡他,スポーツによる健康づくり運動カルテ,講談社,p.180,1983より)