もはやサブタイトルが思いつかなくなったレクチャーシリーズ

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Transcript もはやサブタイトルが思いつかなくなったレクチャーシリーズ

恐怖!!上気道トラブル
あなたもいつか経験するこの恐ろしさ??
医者としてこれだけは出来る・・
という項目を1つ挙げよと言われ
たら、あなたなら何を選びます
か?
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頭部CTですか?
カンチョーですか?
ソセアタですか?
カルベニンですか?
Observation ですか?
「気道確保」をぜひお薦めします!!
あなたはある病院の当直バイ
トをしていました・・・
• 夜半、看護師からコールがありました。
• 「おつかれさまで〜す(とは全く思っていないと
思われる口調で)今日オペした田中さんなんで
すけどー、ドレンから出血しているので診
ていただきたいんですがー」
• (田中って言われても知らないよ)「何の手術をし
たんですか?」
• 「え?・・(ネエ何の手術だっけ?) 」
• 「もういいです。行きます」
病棟に行きカルテを見ると、甲状腺癌に
て甲状腺全摘をしたようであった。
• 「ドレンからはどのくらい出ているの?」
• 「10分くらい前に排液したのですが、
150mlでてました。色は鮮血です。」
• 「排液してからはまだ出ているの?」
• 「その後は殆ど出てません。ただガーゼに
少ししみ出てます」
• 「たいした量じゃないな、様子をみよう」
• 「分かりました、ありがとうございます」
やれやれと思って当直室で寝ている
と再びコールがあった。
• 「先生!田中さんが苦しそうです。すぐ来て下さ
い!!」
• かけつけてみると、近くに行っただけで Strider が
聞こえ、冷や汗をかいている。
• 「Saturation は?」
• 「マスク10㍑で89%です」
• 「先生、息苦しそうですし挿管した方がいいん
じゃないでしょうか?」
• 「そうだなあ・・じゃあ挿管の用意して」
• 「先生薬は何を使いますか?」
• 「ドルミカム 3mg とマスキュラックス8mg IV し
て!」
• 「ドルミカム・マスキュラックス入りました。」
• 薬が入ったのち・・・
• 「先生サチュレーションが70です!」
• 「・・・」
• たしかにバッグベンチレーションしていても胸が
あがっていない。
• 「先生サチュレーションが60です!」
• 「・・・」
• 「・・・今Saturationは?」
• 「えーと、ひろえません」
• 「もう挿管します。」といい喉頭展開するも声
門がよく見えない。ええい!とばかりに挿管し
てみたものの・・
• 「先生、呼吸音聞こえません!胃が張ってきて
ます!」
• 「しまった食道挿管か〜」と思っているのもつ
かの間・・
• 「先生!! HR=30 です!!」
• 「硫アト・硫アト!!」
• 「先生モニターフラットです!!」
硫アト・ボスミン使うも反応なく、
チューブを抜いてバッグを揉むのだがお
腹がどんどん膨れてゆく・・・
• 「先生、家族が到着しました。」
• 「!!・・・・・・・」
• 「先生、常勤の先生は誰も来ないそうで
す」
• 「!!!・・・・・・」
南無阿弥陀仏・南無阿弥陀仏
一体何が起きたのでしょう
か?
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•
•
術創から出血していたのは確か
排液が減ったのは出血がとまったからか?
ドレナージできていないと考える方が自然!
創内に出血がつづいていたらどうなる?
組織圧が高くなり静脈還流が阻害され組織が
うっ血する。
• 「声帯」も例外ではない・・
• 「喉頭浮腫」⇨「上気道狭窄」
上気道のトラブルは死に直結します。
今日はその重要性を覚えておきましょ
う!
• 喉頭浮腫(含む熱傷)・腫瘍・外傷など、上気
道にトラブルがあり呼吸困難をきたしていると
き絶対にやってはいけないことがあります。
• それは・・・
• 自発呼吸を止めることです。
• 即ち「麻酔」をかけてはいけません。
• とくに筋弛緩は禁忌です!!!
• 筋弛緩をかけたら最後、本人の吸気努力に
よってぎりぎり開口していた狭窄部が虚脱
し、完全閉塞となってしまうためもはや
バッグベンチレーションは不可能の状態と
なります。
• 即ち、上気道狭窄の患者さんに定型的な手
順で気管挿管を行うことは「危険行為」で
はなくて・・「殺人行為」なのです。
別症例をみてみましょう
• 頸部を痛打した鈍的外傷例です
• 緊急搬送されたものの、呼吸苦を訴えている。
来院時の様子
吸気
呼気
打撃部が吸気時に陥没し、呼気時に膨隆している。
即ち、気道損傷による Air Leak を意味する。
ちなみに検査がおこなわれていて・・
• 頸部縦隔てに広範な気腫を認めます。
• このCTを撮った外科レジデントは翌日のカンファランス
で袋だたきに逢いました。
この例は閉塞ではなく Leak です
• しかし、同様に安易に全身麻酔をかけてし
まうと大変なことになります。
• 自発だから、気管に孔が空いてても何とか
保っているのであり、これを陽圧換気にし
たら・・孔の空いた蛇腹のジャクソンリー
スでバッギングしているようなものです。
この患者さんはER で局麻下に頸部を切開すると気管
が断裂しており、ここから挿管チューブを入れて固
定し、その後 OR で全麻下に挿管チューブと交換。
もしもこの患者さんを、救急室で普通に挿管しようとしたら・・
考えただけでも恐ろしいですね。
このようなトラブルに対処するには?
• 上気道狭窄・閉塞の怖さを知ること!
• 安易に気管挿管をしようと思わないこと
• 薬を使う前に人と道具をしっかり準備する
こと
• 気道が確保されないままに検査に行かない
こと
実際に行う手技としては
1)意識下経口挿管
・経験を要する。やられる方はたまらん?
2)Blind nasal intubation
• 喉頭浮腫の際は困難、一般に危険
3)気管支鏡ガイド下挿管
• 気管支鏡に通じていれば比較的容易
4)Cricothyrotomy
• もっとも安全確実だが経験を要する
• 正書にて復習しておいてください。
どーやってトレーニングするか?
• On job training で習得することは不可能と
思われます。(Case が少ないため)
• そこで、
• Off job training を活用する(人形、ビデ
オ)
• 気管切開や、甲状腺の手術に積極的に参加
する
• トラヘルパーの挿入を積極的に?行う
• あとは解剖の知識と度胸?あるのみ?
おまけ!
• Cricothyroidotomy は12歳以下は禁忌となってます。
• この場合は”穿刺”のみで対応します。
• 実際には”ジェットベンチレーション”を行うのが
良いでしょう。
• 即ち:16G以上のサーフロー針を挿入し全開にし
た酸素チューブを「1秒つけて4秒はなす」を繰
り返します。
• この方法では十分な換気はできませんが最低限の
酸素化は何とかなります。
ちなみに・・
• 輪状甲状靱帯切開および穿刺はあくまで応
急処置です。
• 施行後可及的すみやかに他の気道確保法に
変更する必要があります。
• 穿刺では十分な換気ができないので早急に
他の方法への変換が必要です。
• 切開でチューブを入れた場合、このままだ
と晩期狭窄をきたすので 72 時間以内に気管
切開への変更が必要です。