μ-PICによるX線偏光測定 - 神戸大学 大学院理学研究科 物理学専攻

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Transcript μ-PICによるX線偏光測定 - 神戸大学 大学院理学研究科 物理学専攻

新型コンプトンカメラの
医学分野への応用
京都大学大学院理学研究科
助手 身内賢太朗
CONTENTS
0 背景
1 ガンマ線イメージング
2 新型コンプトンカメラ
3 PETとの比較
4 まとめ
0 背景
身内の背景
2002年3月 東大物理 博士課程修了
神岡地下実験室での暗黒物質探索実験
2002年4月 京大へ(2003年3月より助手)
ガス検出器(μ-PIC)の開発と各種応用
コンプトンカメラの背景(谷森等)
1992~1999ストリップ型ガス検出器
1999~ ピクセル型ガス検出器(μ-PIC)の開発
性能向上 ⇒ コンプトンカメラへの応用
2002 コンプトンカメラ原理実証機、first γ-light
科研費(基盤B)2004~2006 代表:久保先生
1、ガンマ線イメージング
医療分野・天文分野でそれぞれ研究が進められてきた
ガンマ線
数十keV~数MeVの光子(X線よりエネルギーが高い)
物質と 光電吸収/コンプトン散乱/電子陽電子対生成
アルゴン中での反応率
γ
γ
光電吸収
e
コンプトン散乱
γ
コンプトン散乱
対生成
e 光電吸収
γ
e
対生成
e+
ガンマ線イメージング(=到来方向を知る)
光電吸収(X線と同様)・対生成は比較的容易
コンプトン散乱:電子の飛跡を追う手段が無かった
①コリメータ法(SPECT)
②電子陽電子対消滅法(PET)
③電子の飛跡情報なしでのコンプトン法
主となる反応
Z
光電吸収
Z<70では
コンプトンが主
コンプトン
散乱
X線で見た天体
500keV
対生成
「コンプトン領域」でのガンマ線イメージング
コリメータ法(SPECTなど)
電子陽電子対消滅法
(PETなど)
線源
e+ e
検出器
視野が狭い
効率が低い
散乱によるバックグラウンド
エネルギー高くなると無理
視野が狭い(2D PET)
散乱によるバックグラウンド
高価
いずれも、主に光電吸収を用いている
「コンプトン領域」でのガンマ線イメージング②
コンプトン法
(COMPTEL検出器 on CGRO衛星1991~2000)
一事象から“イベントサークル“
COMPTEL検出器
液体シンチレータ
E0
φ
E1
2.6m
NaI
E2
コンプトン法の原理
サークルを重ね合わせて
ガンマ線到来方向を決定
γ1
γ3
γ2
COMPTELの成果
例えば我々の銀河の「ガンマ線イメージ」
COMPTELの見た銀河
COMPTELの問題点
イベントサークルの重ね合わせ:
点源は良いが広がったソースには向かない
様々なバックグラウンド
← 電子の飛跡情報を失っている為
2、新型コンプトンカメラ
従来のコンプトンカメラ+電子の飛跡
京大(谷森グループ)
独自の技術
「サークル」でなく、「点」を
決めることが可能
天文への応用を中心に
開発、今年度より核医学
への応用を研究開始
新型コンプトンカメラの概念図
独自の技術:マイクロピクセルチェンバー
Micro Pixel Chamber(μ-PIC)
荷電粒子(電子、陽子など)の二次元画像のとれ
る微細構造(0.4mmピッチ)ガス検出器
「ピクセル」近傍の強電場で
一個の電子が数千~数万個に
増幅される
μ-PICの写真
μ-PICの概念図
10×10cm2
μ-PICで撮れるX線写真
X線が入射⇒アルゴンガスから電子を叩き出す
⇒μ-PICで撮像
位置分解能 0.2mm以下
ばねが透視されている
プローブ
テストチャート
μ-PICで撮れるX線写真2
時分割可能なデータ⇒動画的扱いも可能
X線結晶構造解析:東工大化学(大橋教授等)との共同研究
X線構造解析
μ-PICで撮られた連続写真
電子の三次元写真
コンプトンカメラに使用する為には三次元の電子飛
跡を得る必要 ⇒高エネルギー物理実験のTPC
(time projection chamber)技術を利用
三次元飛跡
電子
陽子
TPCの原理
コンプトンカメラ 原理実証機
10cmキューブの電子検出部
+10cm角の散乱ガンマ線検出部
概念図
RI source
原理実証機
ガンマ線検出部
実証された原理
300~700keVに対してイメージング成功
事象ごとに決定される「光線」を単純に重ね合わ
せて描画
137Cs(662keV)×2
Y [cm]
15 133
Ba(356keV)
-15
-15
線源
X [cm]
15
各パーツの改良で
分解能、効率向上へ
角度分解能
25度程度
原理実証から実用へ
実用機(30cmキューブのTPC)のシミュレーション
による評価
位置分解能 ~1mm(詳撮モード†)
検出効率
~1%
視野
~3str(人間の目と同程度)
エネルギー範囲 100keV~2MeV(ガスを換える
ことで最適化可能)
†
分解能は角度で定義されるので、
検出器を近づけると位置分解能が向上する
視野
スキャンモード 1×1m2
詳撮モード
30×30cm2
分解能
~30cm
3mm
(768 Strips)
1mm
開発中の30cm角μ-PIC
新型コンプトンカメラ概念図
シンチレータ
50cm
(散乱ガンマ線検出部)
高解像度モード
電子回路
30cm
50cm
マイクロTPC
(反跳電子検出部)
50cm
広視野モード
小動物用新型コンプトンカメラ
刺激等
高分解能用ステレオモード
マイクロTPC
(反跳電子検出部)
他検出器
20cm
15cm
40cm
40cm
GSO 3mm角ピクセルシンチレータ
256本アレイ
(散乱ガンマ線検出部)
3、PET・SPECTとの比較
新型カメラの特徴1~バックグラウンドフリー~
統計的でなく、事象毎に
バックグラウンドを除去可能(αカット)
αcut前
αcut後
αカット
(従来の検出器での画像)
SPD
cut
-180°
0°
180°
新型カメラの特徴2~方向決定力~
イベントサークルでなく、事象毎に方向決定可能
複数の線源、広がった線源(医療利用では殆どが
このケース?)に対して圧倒的に有利
15
150事象
Y [cm]
Y [cm]
15
-15
-15
600事象
X [cm]
15
電子飛跡情報なし
(従来型コンプトンカメラ)
-15
-15
X [cm]
15
電子飛跡情報あり
(新型コンプトンカメラ)
有効面積(効率×面積)の比較
コリメータレスな分、SPECTより効率大
ガスは効率が悪いと思われがちだが、
大面積・広視野という特徴を活かして、PETと同
レベルの有効面積を得られる
PET
μ-PIC
有効面積はこの部分の面積に相当
効率
PET
μ-PIC
Axial方向長
(長谷川智之「次世代のPET装置」より)
典型的には
PET
100cm2
μ-PIC 50cm2
SPECT 5cm2
投与量の比較
PET:10kBq/mlで最良のNECR。このときS/N=1/10
μ-PICでは最高30kcps程度の信号処理が可能。バッ
クグラウンドがない(total rate=NECR)ことを考えると
投与量は3DPETの約1/10程度
Total rate
μ-PIC
PET(3D)
PETの計数率
30kcps
400kcps
長谷川智之「次世代のPET装置」より
(10kBq/ml)
NECR
30kcps
50kcps
バックグラウンドの影響
SPECTのバックグラウンド PETのバックグラウンド
偶発同時計測
コリメータでの散乱
体内散乱
体内散乱
体内拡散
体内拡散
典型的なS/N 3
1/10
体内拡散以外は新型カメラでは除去可能
BGの多いPETでのイメージ
BG
+
T (拡散)
BGの少ないμ-PICでのイメージ
+
T (患部)
体内拡散起源のバックグラウンド
視野の広い新型カメラでは拡散起源と認識可能
視野の狭い検出器では視野内のバックグラウンド
としてしみ込む
μ-PIC
PET
赤線:患部からの事象
青実線:拡散線源からの事象
灰実線:エネルギーによって排除される事象
拡散線源からの事象も正しく捉えられる。
SPECT
赤線:患部からの事象
青実線:拡散線源からの事象
青点線:青点線事象の「しみ込み」
(「散乱事象」となる)
線源拡散の影響(PET)はラインソースを用い
た散乱フラクション測定(NEMA NU 2-2001散
乱フラクション測定)では約 30%。(実際より
小さく見積もられている)
この部分だけを切り出してS/Nを更に向上可能
体内拡散に隠れていた小さな患部が見える?
新型コンプトンカメラでは体内散乱が識別される
(5g)
(体重50kgに対して)
(50g)
(500g)
観測可能な大きさ、集中度
このような散乱フラクション測定
(拡散線源中の小患部)でPETとの比較を!
比較のまとめ
新型カメラ
PET (3D)
SPECT
~50cm2
~100 cm2
~5cm2
計数率
30kcps
400 kcps
100kcps
S/N比
>100
~0.1
~ 30 kcps
~50 kcps
(体内・周囲散乱を含)
PETの約 1/10
10 kBq/ml
体内拡散
偶発同時計測 (×10)
体内・周囲散乱 (×10)
体内拡散 (>×1/2)
有効面積
NEC
放射線投与量
バックグラウンド源
(真の事象に対する割合)
体内・周囲散乱
コリメータ散乱
体内拡散
具体事例1: センチネルリンパ節検索
CdTeでは最低でも10kBq必要
新型ガンマカメラでは?
現在は140keVでの試験は未確認ですが、
100ガンマ程度の検出で
存在確認可能
(SUV依存大)
仮に100ガンマ/10秒
(検出器で10cps)
を要求すると
検出効率1% 立体角40%
減衰50% (水5cm)
胸部側面像
を考慮して
(藤井先生より)
病巣から5kBq(2.7μCi)程度
具体事例2:I-131による癌の転移発見
360keVに関しては、SPECTよりも有利であるこ
とは確か
100Bq程度のRIは測定時間次第
具体事例3: FDG-PET検査
投与量を1桁以上減らして、鮮明な(バックグラウ
ンドの少ない)画像
4、まとめ
新しい原理のコンプトンガンマカメラの特徴、
優位性を示してきましたが、
現段階では
「物理屋がうまいこと言っている」
「核医学はケースバイケースでどう切り込んだ
ら良いものやら」
in my opinion とにかく実証、画像を撮ること。
それを基に、何に使えて何に不向きか、
discussionが可能となるでしょう。
ご清聴有難う御座いました
Halo(その範囲に拡散した事象は区別できない範囲)
サイズの見積もり
μ-PICの位置分解能より十分大きい(直径2cm (5g)以上の)患
部に対して見積もる
画像の構成方法に依存するところが大きいので、
再悪のケースを見積もる
μ-PIC
半径方向に3倍広がってしまうとして
3×3=約10倍
深さ方向の不確定が体全体に広がっ
てしまうことで20cm/2cm=10倍
halo
10倍×10倍=100倍 見ておけば十分
(Halo外からのバックグラウンドは無視できる)
以下、Hsize=100 として計算
以下予備スライド
Prototype detector
memory
board
Anger camera
preamp
RI source
encoder
micro-TPC
(μ-PIC)
micro TPC
10×10×8 cm3
Ar +C2H6 (9:1)
NaI(Tl) Anger
4”×4”×1” 25 PMTs
position resolution
~6.7mm (FWHM)
energy resolution
~11.2%
(662keV, FWHM)
No Veto or Shield !
μ-PICの性能見積もり
拡散を考慮した有意度 SUV
rNTt
Hsize
診断可能なSUVのr依存性
拡散を考慮した有意度の時間発展
パラメータ
患部 50g / 体重 50kg = r = 10-3
SUV = 5 (典型的な集中度)
(5g)
(体重50kgに対して)
(50g)
(500g)
結論:SUVの小さいもの、小さな患部を
診断可能となる。
• 体内での線源の拡散の影響
線源は血液を通じて体内に拡散される。実際には線源の集中度(SUV)は5倍程度である。
BGが大きいとSUVが小さいものに対しての感度が悪い。
SUV 
組織放射能( Ci) /組織量(g) Na/Va Ta 1


投与量(Ci)/体重( g)
NT /Vb T r
NT : 全投与量の計数率
Va :患部の体積 (~患部の組織量)
Na : 患部からの計数率
Vb:体の体積(~体重) r (=Va/Vb): 患部の体に対する体積比
BGの多いPETでのイメージ
BG
+
T (拡散)
BGの少ないμ-PICでのイメージ
+
T (患部)
患部の周囲のみを切り出せる。
→ 検出優位度が更に向上
原理実証から実用へ(今後数年の課題)
Detection efficiency[%]
実用機(30cmキューブのTPC)のシミュレーショ
ンによる評価
角度分解能
検出効率 ~1%
30cm角(3 atm) ,30cm角(1atm)
10cm角(3 atm) ,
10cm角(1atm)
Gamma-Ray Energy [MeV]
15
Background除去
αgeo-αkin
Y [cm]
αgeo :幾何情報からのα
αkin :energy情報からのα
αによる
kinematical cut
αgeo~αkin
No cut
-45°
ARM
0°
src
45°
-15
-15
X [cm]
15
cut
SN比の大幅な改善
15
0°
180°
cut
Y [cm]
-180°
SPD
αcut後
src
-180°
0°
-15
180°-15
X [cm]
15