Transcript 脳の活動部位の探求
脳の活動部位の探求
(脳科学の方法)
脳科学の方法
1.
症例研究
2.
脳破壊研究
3.
非侵襲的方法
(脳波、脳画像)
症例研究
事故や病気によって脳の一部に損傷を受
けた人が、どんな症状を呈するか
例:)左半球側頭部の一部に損傷
⇒ 言語障害
⇒ 「どうやら脳のその部分は言語の制
御にかかわっているようだ」と推測
歴史的にはおそらく症例研究が最も初期
からのデータ
現在でもなお脳科学における最重要デー
タのひとつであり続けている
「妻を帽子と間違えた男」(サック
ス)
「脳のなかの幽霊」(ラマチャンドラ
ン)
「脳と心の地形図」(カーター)
映画
「レナードの朝」
「レインマン」
脳破壊実験
人間相手では倫理的に無理なので、動物
実験
動物の脳の一部を破壊
⇒その動物にどんな症状が現れるか
例:) ネコの視床下部の一部を破壊
⇒ 食欲異常ネコになってしまった
⇒ 「その部分は食欲に関わっている
ようだ」と推測
1.
2.
3.
問題点
実験動物に対する倫理的問題
人間では実験できない(やったら犯罪)
動物と人間では脳の機能に違いがある
非侵襲的方法
1.
2.
3.
4.
5.
「非侵襲的脳機能測定法」とも
生きている脳の活動そのものを、脳を傷つける
ことなく測定する方法。脳波、fMRIなど
脳波
PET (陽電子断層撮影)
NIRS (近赤外線分光分析)
fMRI (機能的核磁気共鳴画像)
MEG (脳磁図)
おおざっぱなイメージとしては、レントゲン
写真やCTスキャンみたいなもの
脳の非破壊検査、ともいえる?
脳波
P ET
N IR S
fM R I
M EG
測定に利用するもの
神経活動に伴う電磁場の変化
血液中に注入した放射性物質
頭部に照射した特殊な光
粒子のスピンによる磁性
神経活動に伴う電磁場の変化
何を測っているのか
神経活動(
電気)
の総和
血流量の変化
血流量の変化
酸素供給量(
血流量)
の変化
神経活動(
電気)
脳波
電
圧
経過時間
脳波
研究者がおもに見るところ
1.
周波数 ⇒ α波、 β波、 θ波・・・
2.
事象関連電位
脳波
長所 ・・・
お手軽
短所 ・・・
い
おおざっぱな事しか分からな
PET
血中に放射性物質を注射
⇒ 脳のどこに血が集まっているかが分かる
ようになる
⇒ 血流量の測定
やや専門的?に言うと、放射性同位元素
の崩壊に伴って放射される陽電子をキャッ
チして、その出所を計算するらしい
陽電子・・・電子の反粒子。
PET
長所 ・・・
脳波よりも詳しいデータ
短所 ・・・ 健康への不安
機械が高い
MRIに比べるとデータが粗い
見ているのは神経活動そのもの
ではなく、血流量という二次的変化
NIRS
物質をある程度透過する近赤外線を利用
近赤外線をどのように反射・散乱するかが
物質によって違う
⇒ 物質の分布が分かる
⇒ 脳のどこに血が集まっているか分かる
NIRS
長所・・・ MRIに比べて安価
健康への心配が比較的少ない
脳波よりは詳細なデータ
短所・・・ MRIに比べるとデータが粗い
見ているのは神経活動そのもの
ではなく、血流量という二次的変化
fMRI
MRIの技術を応用したもの
核磁気共鳴反応を利用する
原子核が持っている磁気モーメントの周波
数に合った振動磁場を与えてやると、共鳴
によりエネルギー準位が変化する
その微弱な変化を検出する
どの周波数に共鳴するかが物質によって
異なる
⇒ 物質の分布が分かる
⇒ 脳のどこに血が(より正確には酸化ヘ
モグロビン)集まっているか分かる
fMRI
長所・・・ けっこう精細なデータがとれる
短所・・・ ↑とはいえ、その解像度や時間
分解能にはまだ若干の不満が。
見ているのは血流量
磁気が人体に与える影響は不明
振動磁場なので、
共鳴させるのは原子核の磁気モーメントであり、非常に
微弱であるので、
熱拡散等によりすぐに平常状態に戻るので、
磁気的準位は原子構成にも化学反応にも関与しない
(?)ので、
今のところ、明らかにMRIが原因で健康に支障をきたした
と考えられるケースが報告されていないので、
たぶん大丈夫・・・
MEG
脳内の電気活動 ⇒ 電荷の運動に伴い
発生する磁場をとらえる
⇒ 脳のどこでどれくらいの電気活動が発生
したかがわかる
MEG
長所・・・ MRIより高い時間分解能
MRI等と違い、神経活動そのもの
をとらえている
短所・・・ 電流の方向によってはとらえら
れない。
技術的に発展途上かつ高価?
非侵襲的方法・まとめ
測っているもの
脳波・MEG ⇒ 電気的活動
fMRI・NIRS・PET ⇒ 血流量
問題点
神経レベルでのより細かいメカニズムは分
からない
血流量高い = 重要な働き なのか?
電位移り変わり = 心的構造なのか?
それでも、実用的には多いに有用かもしれ
ないが、
「心とは」「意識とは」「精神とは」という問い
に答えてくれるものではない
それどころか、偏った見方をおしつけてし
まう恐れ