debate kenshuukai 11.11

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交流協会 日本語教育実践講座
教室活動としてのディベート
ー 各科目にどう取り入れるか ー
南台科技大学・呉鳳技術学院非常勤講師
関口要
2006年11月11日
場所:文藻外語学院
本日の内容
• 第一部 ディベートとは
• 第二部 言語教育でどう扱うか
• 第三部 実際に授業に取り入れる
(1) 会話
(2) リスニング
(3) 作文
(4) 読解
(5)アイデア・シェアリング
第一部 ディベートとは
ディベートについての基礎知識です
論題
肯定側
表面上の
議論の相手
実際に
聞いてもらう対象
否定側
実際に
聞いてもらう対象
審判
ディベートの定義
ディベート(debate)とは?
→ひとつの論題に対し、2チームの話し
手が肯定する立場と否定する立場とに分
かれ、自分たちの議論の優位性を聞き手
に理解してもらうことを意図したうえで、
客観的な証拠資料に基づいて議論をする
コミュニケーション形態。」松本
(1996)p20~21
・・・というゲームです!!
ディベートの議論(基本形)
三角ロジック
主 張
根拠
(証拠資料)
理由づけ
主 張
根拠
理由づけ
原子力発電はやめるべき
なぜなら事故が起きた場合、被害が大きいから
○○という資料:「チェルノブイリ原発事故での被害
は○千億円、死者は○○人」
(資料を出さない場合、一般常識や経験に根拠を求める)
論題について
一般的に、教育目的で行われるディベートの論題
では、「政策論題」が使われます。
「政策論題」の例
日本政府は原子力発電所を廃止すべきである。
台湾政府は徴兵制度を廃止すべきである。
アメリカ政府は在日米軍を削減すべきである。
議論のタイプ その1
【比較優位型議論】
以下のような場合に使う議論のタイプです
→単に両者を比較するとき
(A案かB案か)
→論題を肯定/否定
A案
/
論題
肯定側
利益
B案
/
論題
否定側
利益
決定者が頭に
描いたイメージ
弊害
弊害
決定者
Aを支持
しよ
う・・・
A案
/
論題
肯定側
利益
利益
決定者が頭に
描いたイメージ
弊害
弊害
Bを支持
しよ
う・・・
決定者
B案
/
論題
否定側
議論のタイプ その2
【問題解決型議論】
→現状に深刻な問題が生じているとき
に使われます
肯定側の考え方
否定側の考え方
いま深刻な問題がある
問題は深刻ではない
この問題は現状を変え
なければ解決しない
現状でも問題は解決で
きる
この案を実行すれば
問題は解決される
仮にそれを実行しても
問題は解決されない/
新たな問題が生じる
肯定側立論の考え方
1)現状分析・・・今、こんなに暗くてひどい世界
なんだ!変えようよ。
さあ、プランの選択だ
2)発生過程・・・肯定側の政策を実行したら
こうなってこうなってこうなります!
3)重要性・・・ほーら、こんなに明るい未来だ
よ!すごくインパクトあるよね。
肯定側立論(例)
1)現状分析・・・台湾人は英語ができないため、国際
的なビジネスで大きな損失が出ている。そして、多く
の潜在的な利益が失われている。
台湾で英語を公用語にすると
2)発生過程・・・国民全体の英語能力が向上する。
外国からの台湾への投資が急増する。
3)重要性・・・台湾の経済力が上昇する。それに
ともない、人々は豊かになり、先進国になる。
否定側立論の考え方
1)現状分析・・・現状は変えちゃいけません。
うまくいってるんだから。
だから変えたらどうなっちゃうかっ
て言うとね・・・
2)発生過程・・・こうなってこうなってこうなっちゃう
わけ!
3)重要性・・・ほーら、こんなに暗くてひどい未来
になっちゃうんだから!インパクトありすぎ!
否定側立論(例)
1)現状分析・・・台湾では莫大なお金をかけて英語教育
を推進している。わざわざ公用語にする必要性はまっ
たくない。また台湾には台湾語、客家語、先住の言語
など、英語以外に重要な言語が多くある。
台湾で英語を公用語にしてしまうと・・・
2)発生過程・・・英語を公用語にするために、莫大な費
用がかかる。また、英語公用語化で、少数者の言語
が失われる可能性が大きい。
3)重要性・・・政府の赤字が膨大になる。結果として、将
来の増税につながる。また、少数者の言語が消滅す
る危機につながる。
無効・反則となる議論
①
揚げ足を取る
小さな言い間違いやミスなどを利用して
相手を批判するもの
②
水掛け論
「できる」「いや、できない」「いや、できる」・・・
③
詭弁、屁理屈
論理性がない理由
④
個人攻撃
相手の議論ではなく、人格を批判するもの
⑤
証拠資料の捏造
存在しない証拠資料を作り上げたり、
引用部分を意図的に変えたりする行為
茂木(2001)p39
図表8一部改
Q.ディベートをやるとどんないいこと
があるの?
A.以下のような能力が身につきます。
☆論理的な思考能力
☆批判的思考能力(クリティカル・シンキン
グ)
☆情報を収集・整理し、構成する能力
☆問題発見能力
☆問題解決能力
→特にレポートや論文を書く際に
役に立つ能力です!
企業・官庁などの実社会でも役立つ
A案
政策提案
B案
同僚・上司
資料
資料
A案?
B案?
ディベートの種類
Q
ディベートにはどんな種類があるの?
松本(1996)p38
実践ディベート
法廷ディベート
学術ディベート
政治ディベート
教育訓練ディベート
教室ディベート
競技ディベート
トーナメントディベート
議会方式ディベート
一人制ディベート
論題のいろいろ
Q. 論題にもいろいろあるの?
A. はい。大きく分けて3つあります。
・価値論題 例)「科学は人間を幸せにするか」
・事実論題 例)「邪馬台国は九州にあったか」
・政策論題 例)「政府は死刑制度を廃止すべきだ」
論題の選び方・注意点
Q. 論題は何でもいい?
A.学生に抵抗感がありそうな場合は、身近な論題、
とっつきやすい論題がよいでしょう。
・ペットにするには犬、猫どちらがよいか
・ドラえもんは22世紀に帰るべきだ
・我が校では制服を廃止すべきだ 等
定番の論題の方がやりやすい。資料が豊富で、過去に
多くのディベートが行われているため、論点が整理さ
れています。
教師自身にすでに答えが出ている問題や、学生に 一
定の結論を誘導するための論題は避けてください。
参考:「全国大学生ディベート大会」の試合形式
肯定側
否定側
肯定側立論(6分)
否定側準備時間(1分)
質疑応答(否→肯)(3分)
否定側準備時間(1分)
否定側立論(6分)
肯定側準備時間(1分)
質疑応答(肯→否)(3分)
否定側準備時間(1分)
否定側第一反駁(4分)
肯定側準備時間(2分)
肯定側第一反駁(4分)
否定側準備時間(2分)
否定側第二反駁(4分)
肯定側準備時間(2分)
肯定側第二反駁(4分)
もっとディベートを知るには・・・
•
•
•
•
参考文献 (入門書として)
松本茂 1996 『頭を鍛えるディベート入門』 講談
社(講談社ブルーバックス)
ジョン・M・エリクソン他 渡辺春美ほか訳 2000
『ディベートガイド ー 基礎からのディベート ー』
渓水社
茂木秀昭 2001 『ザ・ディベート 自己責任時代
の思考・表現技術』 筑摩書房(ちくま新書)
茂木秀昭 2002 『論理力トレーニング』 日本能
率協会マネジメントセンター
第二部 言語教育でどう扱うか
ディベートを言語教育にうまく取り入れる方法
をさぐっていきましょう
注意! 政策論題型だけが「ディベート」というわけで
はなくて・・・
政策ディベート VS. 議会式ディベート
NDT-style
必要
証拠資料の提示
スピーチ
前もって準備
何を重視?
論理性
論題
事前に発表
長期間使用
Parliamentary Debate
不要
即興
論理以外にもユーモアや
コミュニケーション能力も
試合直前に発表
その場限り
政策ディベートの場合
• 証拠資料を探し、読み、分析し、考える時間が長い。
→読解能力・論理的思考力がつく
• 立論・反駁のスピーチは事前に文章化する。
→論理的な文章力がつく
• とにかく事前の準備が大切
→非常に時間と手間がかかる(指導者も学生も)
• スピーチはどうしても「読み上げ」になってしまう
→即興的な口頭能力は身につかないかも
• 「聞く時間」は試合の時だけになりがち
→リスニング能力は身につかないかも
議会式ディベートの場合
• 論題への準備時間はごくわずか
→時間がかからなくてすむ
• 即興でのスピーチを行う
→口頭コミュニケーション能力重視
• ごく短い時間で議論を構築
→議論が深まらない.
→口頭能力の低い学生には無理.
ディベートを単独の授業でやるには
問題多いなあ。でも、大学生にふさわしい
言語能力も身につけて欲しいんだよなあ…
でも科目との整合性も必要だし…
(ある教師のつぶやき)
→ 完全な形のディベートではなく、導入可能な
ところだけ取り入れてみては?
(クラスの状況も毎年異なりますよね)
各要素は各科目に特化させる
リスニング
能力
クリティカル
シンキング 文章作成能力
ディベートに要請される
口頭
表現力
各能力
論理的思考力
読解力
口頭
表現力
会話
文章作成能力
リスニング
能力
リスニング
読解力
読解
クリティカル
シンキング
論理的思考力
作文
「ディベート大会」はあくまで成果のお披露目
ディベートは
総合能力を
論理的思考力
文章作成能力
クリティカル
口頭 読解力
リスニング
披露する舞台
シンキング
表現力
能力
論理的思考力
クリティカル
シンキング
文章作成能力
リスニング
能力
口頭
表現力
読解力
授業にどのように取り入れていくか、
次の部で考えていきましょう
第三部 実際に授業に取り入れる
(1) 会
話
会
話
ディベート関連項目
• 立論スピーチ
• 反駁
• 質疑応答
•
•
活動例
①○分間 説得スピーチ
②○分間 説得スピーチ(否定/肯定分かれて)
(2) リスニング
リスニング
ディベート関連項目
• 聞いて、メモを取る
活動例
• ディベートや説得スピーチを聞いて
メモを取り、議論の構造を図式化する。
(3) 作
文
作文
ディベート関連項目
• スピーチ原稿を書く
• 反駁の原稿を書く
• 議論を構築する
教室活動の例
• 型を使ったスピーチ原稿を作る
• 実際にディベートをやってみる
①紙上ディベート
②インターネットの掲示板を利用したディベート
EZBBSNET http://www.ezbbs.net/ 等を利用
(無料で掲示板が作成できる)
オンライン・ディベート
http://www.debate.shadow.ne.jp/
• リアルタイム・ディベート
MSNメッセンジャー、ヤフーチャット、グーグルチャット
等を利用
(4) 読
解
読
解
ディベート関連項目
• 証拠資料を探す
• 批判的に読む
活動例
インターネット上にあるディベートの
試合の使用して
• 引用箇所のマーキング
• 意見、理由づけ、証拠資料との関
係を見る(三角ロジックを見る)
• フローシートの作成
(5) アイデア・シェアリング
• まず、自分の担当したい科目に分かれてください。
①会話 ②リスニング ③作文 ④読解 (⑤その他の
科目)
• 次に、その科目ごとのグループに分かれ(人数が多い
場合は調整してください)、どんな教室活動ができそう
か、グループ内で話し合ってください。
• 最後に、グループ代表の人が全体の場で発表してくだ
さい。