サブ課題(1) - 京都大学生存圏研究所

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Transcript サブ課題(1) - 京都大学生存圏研究所

太陽地球系結合過程の研究基盤形成
Study of Coupling Processes in the Solar-Terrestrial System
津田 敏隆・山本衛(京都大学生存圏研究所)
湯元清文(九州大学宙空環境研究センター
塩川和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)
川勝康弘(宇宙航空研究開発機構)
原弘久(国立天文台)
藤井良一
(名古屋大学副総長)
報告者:
1/11
課題: 太陽地球系結合過程の研究基盤形成
1950年代より幾多の国際共同研究プロジェクト(IGY, IMS, MAP,
STEP, CAESES: Climate and Weather of the Sun-Earth System
等)により総合的かつ継続的に研究されてきた、太陽から大気圏に
至る広い領域における太陽地球系結合過程を研究対象とする。未
解明な課題のうち、地球上で最も活発で特異な変動を示す赤道大
気の地上総合拠点観測、ならびに太陽活動の変動特性の衛星観測
を推進する。
【関連分野: [3]エネルギー・環境・地球科学、[6]宇宙空間科学】
SCOSTEP (太陽地球系物理学・科学委員会)
CAWSES-II (Climate And Weather of the Sun-Earth
System – II) (太陽地球系の気候と天気-II)
2009 - 2013
http://www.cawses.org/wiki/index.php/Main_Page
2/11
サブ課題(1):
地球上で最も大気擾乱現象が活発なインドネシアに総合観測拠
点・赤道MUレーダーを設置し、地表付近の境界層から対流圏、
中層大気、超高層大気に至る大気圏(~高度約 1,000 km)で共
通して起こっているエネルギー・物質の噴流・循環過程(赤道ファ
ウンテン現象)を解明する。さらに大気質、大気光等の広域観測
網、宙空圏の地磁気全球観測(MAGDAS)を整備し、数値モデ
ルを活用することにより、このファウンテンの地球規模の広がり、
ならびに太陽活動・宇宙嵐が下層に与える影響を理解する。
サブ課題(2):
太陽ダイナモ、コロナ加熱、フレアの発生機構を解明し、太陽活動
の地球への影響を理解するため、太陽観測衛星SOLAR-Cを整
備し、黄道面を脱出した探査機による太陽極域の観測、並びに、
太陽表面・コロナの多波長域かつ超高分解能観測を実現する。
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太陽活動度が気候変動
に与える影響の研究
中世温暖期
小氷期
(CAWSES-II サブテーマ1)
北半球平均気温
宇宙線生成核種
Δ14C(太陽活動指標)
熱帯アンデス氷河
太陽活動と長期の地球の気候
変動に相関があることが明ら
かになっており、CAWES-IIの
重要な研究対象として取り上
げられた。さらに最近では、
太陽の11年周期変動が地球
の気候変動に相関するとの指
摘もある。
Kirkby
(Surv
Geophys.
2007)
1000
西暦
2000 4/11
赤道を中心とする地球大気の上下結合=赤道ファウンテン
• 赤道域で地表から放出される大
気物質は、対流圏を循環しつつ
積雲や巻雲の生成・発達に寄与
し、さらに対流圏界面を通過して
成層圏に噴出され中高緯度に広
く輸送される。
• 赤道対流圏を源泉とする大気波
動は中層大気の特異な長周期・
不規則変動を駆動する。
• 電離圏では中性風によるダイナ
モ電場が地球磁場と相互作用し
てプラズマを噴き上げる。
• 以下の課題に取り組む。
a. 陸面・海洋からの物質噴
出と対流圏内の物質循環
b. 大気波動エネルギーの発
生・輸送
c.
対流圏界面からの物質流
入と中層大気大循環
d. 力学・電磁力学的結合に
よるエネルギー交換とプ
ラズマ密度変動
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インドネシアに設置された赤道大気観測装置
サブ課題(1)
-1 研究拠点整備
赤道大気総合観測所に赤道MUレーダーを新設
熱圏・電離層
(601,000 km)
主要事業として、既存
EARの約10倍の探知
能力を持ち、分散型
送受信システムを備
えた大型大気レー
ダー(MUレーダー級)
を導入する。
中間圏
(50-90 km)
成層圏
(15-50 km)
対流圏
(0-15 km)
レ
ー
ダ
ー
流
星
レ
ー
ダ
ー
ラ
イ
ダ
ー
ア
イ
オ
ノ
ゾ
ン
デ
シ
ン
チ
レ
ー
シ
ョ
ン
大
気
光
イ
メ
ー
ジ
ャ
VHF
気
球
・
ラ
ジ
オ
ゾ
ン
デ
GPS
レ 放 気
ー 射 象
ダ 計 レ
ー
ー
干
ダ
ー
渉
計
MF
赤
道
大
気
レ
ー
ダ
ー
RASS
(
E
A
R
)
電
離
層
レ
ー
ダ
ー
6/11
太陽エネルギーが
地球環境に及ぼす影響
のメカニズムを解明
I
V
a) 太陽放射エネルギー
i) 太陽光エネルギー
下層の赤道大気を加熱
超高層に電流を生成
ii) 太陽風電磁エネルギー
超高層のプラズマに
直接作用
電気伝導度 σ + Δσ
b) 太陽風エネルギー
電離層電流
太陽圏から大気圏までの
結合過程の解明が
急務である。
誘導電流
全球地磁気観測網
MAGDAS
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サブ課題 (1)-2
広域地上観測ネットワークの拡充
北海道大
東北大
信州大
気象研
極地研
NICT
既存
新規雷観測
新規磁力計
新規
東京大 名古屋大
京都大
九州大
オーロラ電波
SDレーダー
NOx,O3観測
太陽磁場・光学
磁場・GPS等
磁場・GPS等
磁場・GPS等
磁場・GPS等
太陽電波
エアロゾル
TBD
太陽風
光学観測
光学観測
光学観測
赤道大気
総合観測所
銀河宇宙線
NOx,O3観測
全球地磁気観測網
MAGDAS
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サブ課題(2): 太陽観測衛星 SOLAR-C
地球に影響を及ぼす太陽磁気活動の解明へ
• 太陽からの放射量変動や地球の磁気・大気環境変動を支配する
太陽磁気活動源(ダイナモ機構)や太陽大気加熱への理解が鍵
• 先端的機器による観測精度の向上と未観測領域へのアクセスに
よるブレークスルー
• 長期的な太陽観測の重要性(地上・宇宙からの観測ともに)
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サブ課題(2) SOLAR-C衛星
太陽磁気活動の解明へ向けて
• 太陽磁場生成機構(ダイナモ)の理解へ
–
–
–
–
地球近傍宇宙環境変動を支配する太陽ダイナモ機構
全緯度にわたる太陽表層下のダイナミックスを観測
磁場生成領域と考えられている対流層底部の詳細探査
全面観測を主体とする黄道面を脱出型の太陽軌道天文台
• 太陽大気加熱機構の理解へ
–
–
–
–
地球への放射量を支配する太陽大気加熱機構
複数の微細磁気構造が関わる大気加熱現場を観測
画像観測と分光観測による未踏微細領域への挑戦
高解像度観測を主体する常時リンク型の太陽軌道天文台
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計画概要
研究組織
計画責任者:
津田敏隆(京都大学生存圏研究所・教授・所長)
共同研究者:
山本衛(京都大学生存圏研究所・教授・所長)
湯元清文(九州大学宙空環境研究センター・教授)
塩川和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所・教授)
川勝康弘(宇宙航空研究開発機構・准教授)
原弘久(国立天文台・准教授)
予算規模
総額380億円(地上観測=10年計画) 設備350億円、運営30億円
① 赤道MUレーダー
設備30億円、運営20億円
地上広域観測網
設備20億円、運営10億円
② 次期太陽探査機SOLAR-C 設備250-300億円
年次計画
平成23―24年度 赤道MUレーダー・地上広域観測網 整備
平成30年度 太陽探査機SOLAR-C 打上げ
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広い高度範囲で上下に強く結合している赤道大気
超高層(400km)
スペースシャトルや国際宇宙
ステーションが飛翔する領域
Wave-4 structure
(地球をとりまく“4波”構造)
積雲(10km)
雨・雲・風
気象現象の領域
海陸分布を「感じた」大気波動が
下層大気から超高層大気に伝わ
ることで、地球大気全体が力学
的に上下結合している。
海陸分布(0km)
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研究拠点整備
赤道大気総合観測所に赤道MUレーダーを新設
GAW大気質モニ
ターステーション
BLR, ソーダ-
流星レーダー
観測能を10倍に増強
大型レー
ダー予定地
赤道MUレーダー
EAR
EAR管理棟
気象観測測器
アイオノゾンデ
Google Earthから見た
赤道大気レーダー(EAR)を含む観測所全景
大気光イメージャ
多機能ライダー
X-バンド気象レーダー
GPS受信機
衛星回線用アンテナ
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サブ課題1:
赤道ファウンテン
積雲対流(上)と成層圏の大気擾乱
(下)の衛星観測結果の比較
インドネシアでは地球上で最も
積雲対流が活発で、それにとも
なって成層圏で強い大気擾乱が
生じている。
3/12
赤道大気研究の重要性と研究推進戦略
 広い高度範囲: 地表付近の境界層から対流圏、中層大気(成層圏・中間圏)さらに
超高層大気に至る広い大気圏(~高度約 1,000 km)において、赤道域で共通してエ
ネルギー・物質の噴流・循環過程(赤道ファウンテン現象)が起こっている。
 力学・化学複合過程: 従来の研究の中心は力学・電磁力学現象であったが、今後、
大気物質・微粒子の輸送・混合、ならびに大気組成・光化学過程を総合研究する。
 インドネシア赤道域: 地球上で最も大気擾乱現象が活発な、インド洋・インドネシア
群島を中心に、赤道大気圏の動態(赤道ファウンテン)を研究する。
 総合研究拠点構築: 過去20年にわたるインドネシアとの協力関係を基礎に、国際
赤道大気研究センター(ICEAR)を構築する。2001年に西スマトラに開設した赤道大
気観測所の機能を増強し、主要設備として国内(信楽)のMUレーダーと同等以上の
機能を持つ大型大気レーダーを設置する。
 グローバル解析: 総合観測拠点に加え、広域地上観測ネットワーク、衛星観測デー
タならびに数値モデルを活用して、赤道ファウンテンが全球の大気に与える影響を調
べ、変動予測に役立てる。
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大気の子午面循環 (なぜ熱帯域が重要か?)
 子午面循環により、熱帯対流圏界面を通して空気塊が成層圏に入る。
 温度が極小となる対流圏界面で水蒸気量が絞られる。
 対流圏界面温度は温暖化の影響により下がりつつあり、成層圏の水蒸気量
の減少が予想されるが、インドネシアでの観測では逆に増加傾向だった。?
成層圏
低温の対流圏界面
対流圏界面
対流圏
冬極
赤道
(WMO, 1998)
夏極
波及効果
 熱帯域で頻発する気象災害予報や気候変化の予測に貢献。
 インドネシアの森林・泥炭火災によるCO2排出、越境汚染問題に貢献。
 宇宙天気に貢献し、衛星システム等の安全運用の社会ニーズに応える。
 温暖化影響が増幅して現れる超高層大気の変動特性を長期監視する。
関連研究分野への展開: GCOEプログラム
「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」(京大・東南アジア研)
熱帯林の資源活用と保全に関係した地域研究。
「極端気象と適応社会の生存科学」(京大・防災研)
異常気象(気象・水災害)の被害低減、温暖化に対する社会適用策。
人材育成:
 ICEAR に日本・アジア・欧米から若手研究者を雇用し、フィールド観測に参
加させる。最新課題の研究を推進させるとともに、先端技術習得と研究立
案・実行能力の獲得を促す。
 赤道大気科学研究のリーダーシップを発揮して、アジア各国に国際レベル
の研究者を育成し、高度人材ネットワークの構築に貢献する。
インドネシアを中心とした赤道大気研究の経緯
1985
1990
STEP
国際研究プロ
グラム
国際研究集
会開催
観測機器の
整備
研究の流れ
大型研究課
題
1995
MSTレー
ダーWS
MAS
スルポンBLR、
流星レーダー
(1992)
赤道レーダー
現地調査
1986-1991
2000
2005
EPIC/PSMOS
ISEA
DYSMER
(バリ島)
EPIC
CAWSES
CAWSES
-II
CPEA CAWSES
赤道大気レーダー
(2001)
ポンティアナ
MFレーダー
(1995)
2010
コトタバン流星
レーダー(2002)
西ジャワMF
レーダー
(2004)
ウィンドプロファイ
ラ観測網(2008)
コトタバン
BLR(1998)
特定領域「赤道大気上下結合」
インドネシア各地での気球観測(1991~多数回)
多数の科研費・海外観測課題
の他、地球観測システム構築プ
ラン2件などを実施してきた
アジア・アフリカ学術基盤形成事業
振興調整費「インドネシア宇宙天気」
インドの共同研究機関:
NARL、地磁気研究所
(IIG)、SPL, EEG 等
★ ICEAR
Koto Tabang、信楽、
Gadankiの総合観測拠
点を連携し、国際共同
研究を推進する。
京大・生存研
信楽MU観測所
MU (Middle and
Upper atmosphere) Radar
(34.8N, 136.1E)
Routine Balloon Launch Sites
インド・国立大気科学
研究所(NARL)
Gadanki MST Radar,
(13.5N, 9.2E)
学術交流協定
京大・生存研+LAPAN
赤道大気観測所 EAR (Equatorial
Atmosphere Radar), Koto Tabang
(0.2S, 100.3E)
国内共同研究機関:
京大・理、名大STE、名
大・環境、北大・地球環
境、北大・低温研、北大・
理、東大・理、東大・大気
海洋研(CCSR)、首都
大、弘前大、島根大、九
大・理、東北大・理、福岡
大、大阪電通大、
JAMSTEC、防衛大、情
報通信研究機構(NICT)
インドネシアの共同研究機関
航空宇宙庁(LAPAN)、インドネシア科学院(LIPI)、科学技
術応用評価庁(BPPT)、気象庁(BMKG)、地図測量庁
(BAKOSURTANAL)、バンドン工大(ITB)、ボゴール農大
(IPB)、Andalas大, Tanjungpura大、Gadjah Madah大