syoukennsijyouron141112

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・前回の授業の補足説明:
・企業成長率が高いと、なぜ配当利回りが
低くなるのか?
• 企業成長率が高い⇒現在の配当に比べて将来の
配当が大きい
• 将来の配当が大きい程、(現在の)株価は高い
• 企業成長率が高い⇒現在の配当に比べて株価は
高い⇒配当利回り(=現在の配当/株価)は低い
• 企業成長率が高い時:配当利回り低い、株価の値
上がり益(キャピタルゲイン)が大きい
• この議論は、株式市場の側から見た配当利回りと
企業成長率 との関係
1
• 企業の資金調達という側面から見た、配当
利回りと企業成長率との関係
– 企業利益の処分:利益=税金の支払い+株
主配当+内部留保
– 企業が成長していくには、利益の内部留保と
それの再投資が必要
– 成長率の高い企業の配当利回りは低くなる
2
○2014年11月6日時点の株式指標
配当利回り
PER
PBR
三菱商事
3.14%
9.03倍
0.71倍
三井物産
3.82
7.9
0.78
丸紅
3.58
5.72
0.9
トヨタ
2.79
11.63
1.6
ホンダ
2.42
11.61
1.1
ソフトバンク
0.51
15.68
4.81
東証一部平均
1.66
15.71
1.28
配当利回り、PERは予想
www.nikkei.com/markets/kabu
・総合商社は配当利回りが高く、PER(株価収益率)が低い
3
・配当割引モデル
・株価P= D/(r+δ-g)
:⑧式
D:配当、 r :金利、 δ :リスクプレミアム
g :配当成長率(企業成長率)
• ⑧式が成立しているなら、
– 配当利回りD/P=r+δ-g
– ⑧式の両辺を企業収益Eで割ると
– P/E(=PER)=D/E÷(r+δ-g)
–
=配当性向/ (r+δ-g)
• δ(リスクプレミアム)が大きいなら、配当利回りは高
く、PERは低くなる
• 総合商社は収益のリスクが大きいと見られているのでは?
4
(6)株式市場の役割
①資金調達の場
• ベンチャー企業は、株式市場を通じて活発に資
金を調達
• 成熟企業は、それ程株式市場を通じて資金を調
達していない。
• 成熟企業は、近年かなり大量に自社株買いを
行っている
5
・
・米国における株式による資金調達:億ドル
2000-06 2007
年平均
非金融
企業
銀行
2008
2009
2010
2011
2012
2013
-1789
-7868 -3343 -621
-2774 -4722 -3995 -4086
78
75
121
116
119
64
16
22
323
1202
-324
-111
141
-507
-310
証券会社 4
FRB : Financial Accounts of the United States
6
• 株式による資金調達は、マイナス
• 株式による資金調達
• =
– ②の内容:自社株買い、現金によるM&A
• アメリカの企業全体を見ると、①より②が大きい
– 但し、ベンチャー企業は株式市場から資金調達、金融危機
において金融機関は自己資本増強のため株式市場から資
金調達
7
・
但し、金融危機・経済危機の時には、株式発行による資本増
強が行われる。
• 金融危機の中で日本の
金融機関が自己資本増
強のために活発に増資
2009-10
自社株買いと増資の状況
兆円
/標準
/標準
/標準
–
–
–
–
–
/標準
/標準
/標準
/標準
/標準
2005
2006
2007
2008
2009
自社株買い
2010
2011
三井住友:1兆7509億円
三菱UFJ:1兆4544億円
みずほ:1兆3838億円
野村証券:7871億円
大和証券:2077億円
2012
増資
・日本証券業協会「増資等の状況」
東京証券取引所「自己株式の取得及び処理の状況」
8
・自社株買いの実施状況
日経.11.6.7.
日経14.10.30.
9
・自社株買いの上位企業
日経09.10.14.
楽天証券HP
10
○自社株買いの理由
• ①企業の実物投資の資金需要に比べて内部資金に余裕が
ある。
– 株主への利益還元策としては、配当に比べて弾力的に実施できる
• ②
– →株価引上げ
– レバレッジを高めて、収益拡大効果を実現
– EPS: Earnings per Share, ROE: Return on Equity
• ③経営陣から見て株価が割安の時、株価のテコ入れ。企業
の収益力・適正株価についての経営陣の見方を伝えるシグ
ナル。
• 米国での活発な自社株買いの背景
– 内部資金が豊富な成熟企業が多い
– 株主からの株価向上圧力が強い
11
・米国金融の資金調達方法:非金融法人企業
米国の企業は株式市場から資金を調達していない。
では、どこから資金を調達しているのか?
1980年代
内部資金
3917億ドル
1990年代
2000-13年
6469
12429
金融機関借入
796
479
432
社債・CP
697
1373
2970
株式
‐559
-550
-2852
・
・
12
・日本企業の外部資金調達:年当たり
1980-93年
1994-2005年
2006-13年
金融機関借入
23兆円
‐12兆円
2.4兆円
社債・CP
5兆円
-1.2兆円
-0.3兆円
株式・出資金
5.2兆円
4兆円
0.7兆円
外部資金調達計
33.3兆円
-8.3兆円
2.8兆円
現預金証券保有増
9.2兆円
4.3兆円
6.9兆円
・株式による資金調達はそれ程大きくない
・金融機関借入による資金調達が大きい
・1994-2005年の時期:バブル崩壊の影響・金融危機
もあり企業財務の大リストラ期
・2006年以降:内部留保も潤沢であり、外部資金調達は慎重
・日本企業は内部留保を実物投資に回すのではなく、
金融資産で保有する部分が大きい
現預金証券保有/負債・資本(2013):日本:31%、米国:7.2%
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②株式に対する流動性の付与
• 株式市場(取引所、取引所外)の存在により、株式
の現金化が容易になっている
• 株式市場(取引所、取引所外)が存在しなければ、
一旦取得した株式を売却・現金化することは非常に
困難
⇒
いつでも売買
できる機会を提供している。
・
・ネット証券会社もコストの面で株式の流動性を高めてい
る。
・資産の特性:リターン、リスク、流動性
14
③株価のシグナル機能
• 株式市場の機能:
–
– 株価:数多くの投資家の意見を集約(公正)。現在
の株価が割高と考える投資家は売り、割安と考え
る投資家は買い、そうした意見を集約して株価が
決定されている(適正)。
• 投資家に対する情報提供
– 投資判断上重要な情報を投資家に提供
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• 企業に対する情報提供
– 投資・事業計画、経営戦略、現行の経営陣の質に
対する市場の判断を示す
– この企業の事業リスクに対する市場の判断(資本
コスト)→投資・事業計画の基礎的判断材料
• 資本コスト:株主価値を引き上げるために必要最低限の
事業投資(の期待)収益率:金利r+リスクプレミアムδ
• 事業リスクの大きい(小さい)企業は、資本コストが大き
い(小さい)
• cf. 渡辺茂『しっかりわかるファイナンス』中央経済社、第2,3章、
• 井出・高橋『ビジネス・ゼミナール経営財務入門』日本経済新聞社、
第6章
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④企業支配権の移転を促進
• 株式市場で株を買い集めることで、企業の支
配権を獲得する(or影響を及ぼす)ことができ
る。
• 株式交換制度を利用することによって企業
の買収・合併が容易になる
– 株式交換:
• 国有企業の民営化
– 国有企業の支配権を株式市場を通じて民間に
移転
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・株式交換の例
• イオンによるダイエーの完全子会社化14年9月
– イオンは以前から、ダイエー株の44.15%を保有
– 株式交換比率:ダイエー株1株に対しイオン株0.115株
• ソフトバンクの株式交換によるイー・アクセス買収(完
全子会社化)2012年10月1日
– 株式交換比率:イー・アクセス1株に対してソフトバンク株
16.74株
• パナソニックによる三洋電機の完全子会社化11年4月
– パナソニックは、2010年10月のTOB(株式公開買い付け)に
より三洋電機株の80.77%を保有
– 株式交換比率:三洋電機株1株に対しパナソニック株0.115
株
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