20120722BDインスリン注射

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糖尿病治療のための注射製剤の積極的使用
-患者の自己管理支援-
インジェクションテクニック
アドバンスセミナー2012 in 埼玉
~インスリン治療のツボをとらえる~
2012年7月22日(日) 10:10~10:55
ラフレさいたま 3階 櫻ホール
埼玉医科大学 総合医療センター 内分泌・糖尿病内科
Department of Endocrinology and Diabetes,
Saitama Medical Center, Saitama Medical University
松田 昌文
Matsuda, Masafumi
演者略歴
氏名: 松田昌文(まつだまさふみ)
研究分野: 内科学 内分泌 糖尿病代謝
インスリン作用 脳下垂体視床下部制御機構
略歴
1982年 東京大学医学部医学科卒業
1982年 東京大学医学部附属病院本院・分院研修
1987年 山口大学医学部附属講座助手(第3内科)
1988年 生山会斎木病院内科医師
1993年 Clinical Instructor, University of Texas
1994年 Instructor, University of Texas
1996年 Assistant Professor of Medicine, University of Texas
1997年 Diabetes Research Director, Texas Diabetes lnstitute (併任)
1999年 川崎医科大学医学部内科学(糖尿病部門)講師
2000年 川崎医科大学医学部内科学(内分泌糖尿病部門)講師
2006年 亀田総合病院糖尿病内分泌内科部長
2009年 埼玉医科大学総合医療センター内分泌・糖尿病内科教授
2010年 東京大学医学部糖尿病・代謝内科 非常勤講師
資格
米国Standard ECFMG certificate (USMLE Step 1,2,3合格)
医学博士
日本内科学会,日本糖尿病学会,日本内分泌学会 各学会専門医
業績 原著英文62,原著和文20など (インパクトファクター合計~280)
インスリン注射導入・継続支援
在宅自己注射指導
インスリン治療についての相談
まず 教育 疑問に答えるように!
精神的サポート:キーパーソンも含めて
血糖高値を放置していないことの説明
「糖尿病」痛くも痒くもありませんが、
放置すると問題が起こりますよ!
どうなるのでしょう?
ブドウ糖とは?
ヒトの脳の唯一のエネルギー源
MANN, F. C., and MAGATH, T. B. (1922).-Arch. Intern. Moo. 30: 171.
検査値としての血糖は
plasma glucose: PG
(mg of glucose per dl
of plasma)で表記され
ます。
ブドウ糖(GLUCOSE)の特徴
血糖(血中ブドウ糖)は非常に重要
⇒ブドウ糖は反応性が高い
ブドウ糖はいろいろな物質にくっつく
⇒放置するとボロボロになる
糖尿病 とは?
血糖が上昇する病気です
HbA1C(NGSP) 6.5%以上
空腹時 126mg/dl以上,
随時血糖 200mg/dl以上,
負荷後 200mg/dl以上
放置すると合併症(網膜症)
(糖尿病の診断基準の血糖値は合併症発症で決めている!)
糖尿病診断基準としてのHbA1C(NGSP)カットオフポイント
(n=~19,000)
網
膜
症
の
頻
度
●HbA1c(NGSP) ≧6.5%で糖尿病を診断すべきである。
●IFGやIGTという言い方は止め、HbA1c(NGSP)が6.0%以上では効果
的な予防介入を行うべきである。⇒メタボ
DIABETES CARE 32: 1327-1334, 2009
妊娠糖尿病 とは?
血糖が上昇する病気です
空腹時 92mg/dl以上,
負荷後1時間 180mg/dl以上,
負荷後2時間 153mg/dl以上
(どれか1つ)
放置すると合併症(巨大児など)
(糖尿病の診断基準の血糖値は合併症発症で決めている!)
The group developed diagnostic cut points for the fasting, 1-h, and 2-h plasma glucose
measurements that conveyed an odds ratio for adverse outcomes of at least 1.75
compared with women with the mean glucose levels in the HAPO study (23316 pregnant
women). 平均血糖 (FPG 80.9mg/dl, 1-h PG 134.1mg/dl, 2-h PG 111.0mg/dl) の女性に比
較し1.75倍以上のリスクとなる血糖が閾値
妊婦さんの目標血糖値
毎食前:
99mg/dl以下
食後(食べ始めて)2時間:
119mg/dl以下
糖尿病 とは?
血糖が上昇する病気です
放置すると合併症
急性期や術後の高血糖も放置すると
問題があるのであれば対応が必要!
血糖値の調節
血糖値は制御され
た値であり制御機
構が正常なら全く
血糖は上昇しな
い!
膵臓
脂肪組織
インスリン
↑
尿糖
血糖
200 g/日
Plasma Glucose
Blood Glucose
グリコーゲン
肝臓
120g/日
乳
酸
グリコーゲン
筋肉
脳
(食事)
40g/日 その他のブドウ糖
のみ用いる組織
インスリンの必要性の説明
自分のインスリンが十分出ていれば
血糖は上がるわけありません。
インスリンが十分作れない状態です。
インスリンの必要性の説明
すでにインスリンを出す細胞は半分は
死んでいます。
このままでは大変なことになります。
インスリンの必要性の説明
残っているインスリンを出す細胞は機
能しなくなっています。
助けてあげると「回復」しますよ。
川越市広報室撮影
2009年11月14日
2型糖尿病
膵β細胞が進行性に滅びる!
膵β細胞を守る!
インスリン補充
基礎分泌補充
(ブドウ糖補給なしでも必要)
追加分泌補充
(食事などでブドウ糖追加)
補正
(血糖が高い場合の補正)
インスリン不足を生理的に補う
空腹時の介入
食事に伴う介入
+
+
インスリン補充療法(摂食可能)
生理的インスリン補充とは?
x:時間
y:インスリン濃度
X: 種類,量
皮下注射のタイミング
Y: インスリン濃度
インスリン/GLP-1受容体作動薬
使用法 各器材ごとの説明
32G x 4mm
2010年5月発売
32G x 5mm
33G x 5mm
2005年2月発売
2005年7月発売
インスリン量の決定方法
血糖値を決定した責任インスリンは?
血糖値を測定しインスリン量を決定する
早朝空腹時:基礎分泌
食後と食前の差:食後追加分泌
少量(毎食前3~4単位)からスタートし,血
糖日内変動(外来ではSMBG)を見て数日
に一度変更 (一度に2単位以内)
たとえば以下の3つのインスリンの打ち方は概ね基礎分泌
補充量と追加分泌補充量については ほぼ1:1にあてはま
るはずである。
ヒューマログ(10-10-10)単位
NPH 10単位[12時間作用] 合計40単位
いわゆる「ぞろ目療法」
1)
2)
ヒューマログ(8-10-10)単位
デテミル 12単位[14時間作用] 合計40単位
3)
ヒューマログ(7-6-8)
グラルギン19単位[22.8時間作用] 合計40単位
調節については病棟血糖管理マニュアル 増補版 121ページを参照
SMBG
SMBGに用いる機種
ISO国際標準化
2006年版
SMBGに用いる機種
ISO国際標準化
2010年10月版
●固定された台の上で、
指にしっかり固定させて
使用
●看護師が行う場合には
耳朶採血は危険
(平成22年3月医政指発
0301第1号 2010; 3)
●針の廃棄
プラクティス 25:693-695, 2008.
POINT OF CARE TESTING
病棟での血糖測定
POCT(Point of Care Testing)は、患者さんがいるその場で、
簡便・迅速に実施する臨床検査
参考: SMBG=self monitoring of blood glucose
( 測定ではない! ISO 15197で誤差は血糖が75mg/dl以上で
±20%ならOK)
持続血糖モニター
埼玉医科大学附属病院、埼玉医科大学総合医療センターなどでも実施しています
http://www.medtronic-diabetes.co.uk/product-information/ipro-2.html
低血糖と無自覚性の低血糖症
無自覚低血糖:運転免許はとれません
(平成14年 道路交通法施行令第33条の2の3の2項 第3号関係)
低血糖:車の運転で 事故の際に免責になるか?
カルテに記載を (患者の前で記載する)
車を運転する
低血糖を自覚できる
ブドウ糖で対処可能
(対処できるようなインスリン使用とブドウ糖の用意)
低血糖指導のキーポイント
症状を改善するより意識消失発作を防ぐこと
ブドウ糖で10g必要 血糖は50mg/dl上昇する
脳はブドウ糖しか用いない!
血糖値の調節
血糖値は制御され
た値であり制御機
構が正常なら全く
血糖は上昇しな
い!
膵臓
脂肪組織
インスリン
↑
尿糖
血糖
200 g/日
Plasma Glucose
Blood Glucose
グリコーゲン
乳
酸
肝臓
120g/日
グリコーゲン
筋肉
脳
(食事)
40g/日 その他のブドウ糖
のみ用いる組織
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
もし8.3g/時間でブドウ糖を投与し
ブドウ糖利用が0とすると、 ブドウ糖の体液中への
拡散を仮定すると:
8300[mg]÷(60[kg]×0.25×10[dl/L])÷60[min]
= 0.92 [mg/dl per min]
1分で 1mg/dl 上昇
1時間で 血糖が50mg/dl以上上昇
2時間で 100mg/dl以上上昇!
血糖測定は急性期は1時間おき!
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
(2.2mg/kg per min)
もし肝臓からの糖産生が止まったら
Ra(糖産生) = Rd(糖利用)
空腹時などで血糖が上昇しないのは糖産生の分だけ糖が利
用されているはず。ブドウ糖分布容積内で8.3g/時間ブドウ糖
が消費される。
1分で 1mg/dl 低下
1時間で 血糖が50mg/dl以上低下
2時間で 100mg/dl以上低下!
血糖測定は急性期は1時間おき!
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
(2.2mg/kg per min)
もし肝臓からの糖産生が止まったら
1分で 1mg/dl 低下
1時間で 血糖が50mg/dl以上低下
2時間で 100mg/dl以上低下!
低血糖の場合のブドウ糖投与量は?
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
(2.2mg/kg per min)
もし肝臓からの糖産生が止まったら
1分で 1mg/dl 低下
1時間で 血糖が50mg/dl以上低下
2時間で 100mg/dl以上低下!
低血糖の場合のブドウ糖投与量は?10g
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
(2.2mg/kg per min)
もし肝臓からの糖産生が止まったら
1分で 1mg/dl 低下
1時間で 血糖が50mg/dl以上低下
2時間で 100mg/dl以上低下!
低血糖の場合のブドウ糖投与量は?10g
遷延性:10%ブドウ糖液 時間80ml/hr
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
(2.2mg/kg per min)
もし肝臓からの糖産生が止まったら
1分で 1mg/dl 低下
1時間で 血糖が50mg/dl以上低下
2時間で 100mg/dl以上低下!
低血糖の場合の砂糖投与量は?
肝臓からのブドウ糖産生率
200g/日 = 8.3g/時間
(2.2mg/kg per min)
もし肝臓からの糖産生が止まったら
1分で 1mg/dl 低下
1時間で 血糖が50mg/dl以上低下
2時間で 100mg/dl以上低下!
低血糖の場合の砂糖投与量は?
20g
インスリン自己注射
自己で調節!
食べない場合は食事用のインスリンは打たない!
(混合型インスリンは×)
食事を摂取している場合
• 食事量や運動量による微調整は必要だ
が,その時の血糖値によるスライディン
グスケール[インスリン投与量絶対値決
定]はあり得ない!
• 食事量スライディングスケールはあり!
(食直後に超速効型を使用)
• 血糖値に振り回されてはいけない。
→尿糖である程度調節してくれます
35歳の男性。身長155cm,体重89kg。後頭部に腫れが出現、自分で消毒したりいじっていた
りしていたら1週間前より痛み,腫れが増大し排膿があり入院6日前から外来を受診し抗生剤
と内服にて加療を受けていた。入院日外来受診時に体温38.5度と上昇しており全身倦怠がひ
どい為に入院することとなった。入院時血糖値が314mg/dl,HbA1C 10.4%。入院後,血糖が
高いので絶食とし生食の点滴を受け入院2日目の朝の採血で血糖は93mg/dl,尿ケトン体は
陰性であった。摂食可能であり抗生物質以外の点滴は中止することにした。担当医師は次の
指示を行った。
●糖尿病食 1800kcal
●血糖測定 毎食前,眠前,午前0時
●毎食前と眠前に血糖値により以下の表によりレギュラーインスリンを皮下注射
- 149 mg/dl 0単位
150 - 199 mg/dl 2単位
200 - 249 mg/dl 3単位
250 - 299 mg/dl 4単位
300 - 349 mg/dl 6単位
350 - 399 mg/dl 8単位
400 - mg/dl Dr.CALL
●低血糖時(69mg/dl以下)ブドウ糖10g服用させ30分後に再検し80mg/dl以上を確認。
血糖値(mg/dl)は以下のようであった。
入院2日目 朝食前 93, 昼食前 225, 夕食前 343, 眠前 182, 午前0時 76
入院3日目 朝食前 89, 昼食前 312, 夕食前 143, 眠前 313, 午前0時 44
高血糖と低血糖があり,どうもうまくゆかないのでコンサルトされた。どのような返事をするか。
病棟血糖管理マニュアル 増補版 48-49ページ
___ ___ さま インスリン自己注射について
20XX-XX-XX
から開始
ノボラピッド®
(朝3-昼3-夕3-眠前0)単位
食事用で4時間作用します
ランタス®
(朝0-昼0-夕0-眠前9)単位
1日作用します
●朝食前の血糖は眠前のランタスの量で決まります。朝食前の血糖が140mg/dl未満となるように 3
日に一度ランタスの量を1~2単位調節します。
●ノボラピッドの量は食事の量や運動量で調節が必要ですが,目安として,合計するとランタスの量と
ほぼ同じくらいです。
<インスリン量の目安について>
1カーボ=10gのブドウ糖でこれは1単位の食事=80kcalにほぼ含まれる量です。1カーボのブドウ
糖で血糖は約50mg/dl上昇します。また50mg/dlを低下させるのに1単位程度のインスリンが必要で
す。
1日20単位の食事(1600kcal)の場合:インスリンを自分でほとんど出せない場合には20カーボの食
事に含まれるブドウ糖に対して1日20単位,また,他の栄養素や一度細胞内に入ったブドウ糖が肝臓
からゆっくり出ますのでそれに対して1日効果のあるインスリンで20単位の合計40単位程度が必要で
す。
ノボラピッド®
(朝7-昼6-夕7-眠前0)単位
ランタス®
(朝0-昼0-夕0-眠前20)単位
まで増量してみます。自分でインスリンを若干出せる場合にはそれほどインスリンは必要ありません。
一方インスリンが効きにくい体質の場合には更にインスリンが必要な場合があります。
病棟血糖管理マニュアル 増補版 121ページ
食事に伴うインスリン皮下注射によ
る血糖自己調節のポイント
• インスリン追加分泌補充は超速効型で食直後に
• 食事量スライディングスケールを用いる 主食量で!
(3分割:0-3,3-7,7-10割)
☆単位数が多い場合は4分割もある
(4分割:0-2,2-5,5-8,8-10割)
• 血糖補正を行う
目標血糖(例:150mg/dl)
1単位のインスリンで50mg/dl低下
• 基礎インスリン補充は朝,夕 中間型かレベミル2回から
開始(食事量が不明の場合)
松田昌文撮影
iPhone 4S
2011年11月14日