相対論入門 - 小林晋平

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Transcript 相対論入門 - 小林晋平

国立群馬工業高等専門学校
一般教科(自然科学)小林晋平
2012年1月28日
@ 駒場数学ハウス

中学の理科を思い出す
◦ 質量保存の法則、イオンなど・・・化学
◦ 火成岩、夏の大三角形、寒冷前線・・・地学
◦ 細胞膜、両生類、食物連鎖・・・生物
◦ ばねの伸び、直列つなぎ、運動エネルギー・・・物理
どことなく地味、想像しにくい、つまらない?

最も有名な科学理論のひとつ
◦ 世界一有名な方程式:

フレーズやキーワードにインパクト
◦ 光の速さ、タキオン、最近ではニュートリノの話
◦ 4次元?時間が遅れる? 重くなる?
◦ ブラックホール、ビッグバン、・・・

世界で3人しか理解できない???
→ デマ。特殊相対論なら中学3年生で計算可能
(全てではないが)
光の速さ:
物体の速さ:
止まっている人に流れる時間:
動いている物体に流れる時間:
例えば
なら
地上で10年経つ間に、動いていた物体は
8年しか経たない

アインシュタインが提唱、特殊と一般

特殊相対性理論(1905)
◦ 時間と空間が混ざり合う、質量とエネルギーの等価性

一般相対性理論(1916)
◦ 特殊相対論+重力 → ブラックホールや宇宙そのもの
なぜそんな「ありえない」結果が出るのか?
ありえない = 予想と違う

経験したことがない ← 予想したくてもできない

前提が「ありえない」← タネを仕込んでいる
相対性原理
光速度の不変性

相対性原理
あらゆる物理法則は、どんな慣性系から見ても
同じ形で書ける

慣性の法則が成り立つような「ところ」

慣性の法則:
物体に働く正味の力がゼロならば、
物体は静止し続ける or 等速で運動し続ける

一定の速さで動く電車の中でジャンプしてみる
A
ジャンプ中に電車だけ先へ行ってしまう?

電車の速さが変わらないなら、A地点に戻る
A
真上に飛べば、真下に落ちてくる
静止系と同じ

真上に飛んだつもりでも、電車の速度がある
A
A
始めから、斜めに飛んでいる

加速していく電車の中でジャンプしてみる
A
さっきと同じだろうか?

電車は人が飛んでいる間も加速
A
電車の方が先に行ってしまう
A

真上に飛んだのに、A地点より後ろに着地
A
何の力も働いていないのに後ろへ
慣性の法則

光速度の不変性
光の速さは光源の運動によらず一定で、いかなる
慣性系から見ても一定の速さで伝わる
m/s

光の速さは
秒速30万キロメートル

一秒間に地球を7周半
月まで1.27秒

100メートルを10秒で走る = 10m/s(36km/h)
音の速さ ≒ 340m/s (光の百万分の1)

ガリレオ(1600年頃)
◦ 測定そのものは失敗。非常に速いことを確認。

レーマー(1676)
◦ 木星の衛星イオの「食」の周期を利用
光速が有限であることを発見

フィゾー(1849)
◦ 歯車を使った光速度の測定
など

波動説
◦ 干渉、回折、屈折… ← 波の特徴

光 = 電磁波

電場と磁場が、互いを
生成しながら進んでいく波

目に見える光:可視光
電波、赤外線、紫外線、X線、
ガンマ線も全て電磁波


ヤングの二重スリット実験

電子を1個ずつ打ち込む
何度も繰り返すと、なぜか干渉縞が出る

電子は波なのか???

光電効果など

光は波?粒子?

量子力学・場の量子論へ

回折格子
波ならば、何を伝わる波なのか?
波の種類
波を伝えるもの
水の波
水
音波
空気
光(電磁波)
エーテル?

マイケルソン・モーリーの実験(1887)
鏡
エーテルに
対する速さ
ハーフミラー
鏡
光源
干渉計

干渉縞の原因
◦ アームの長さの差
◦ エーテルに対する速度
◦ 2つの光の到達時間にずれが発生

装置を90度回転
◦ 干渉縞がずれる
◦ ずれの大きさから、エーテルに対する速度がわかる

結果:ずれが見つからなかった
→ エーテルは存在しない
光は何かを伝わる波ではない
光の速度は「絶対的」なもの???
仮定して理論を作り、実験で検証する

速さ で動く車から速さ
でボールを投げる
ボールの速さは合計で
になる

速さ
のボールを速さ で近づきながら見る
ボールは速さ
で向かってくるように見える

速さ
のボールを速さ で近づきながら見る
ボールは速さ
で向かってくるように見える

速さ
の波を出しながら波源が速さ で動く
波紋の間隔は狭まる
波の先頭の速さは のまま

速さ
の波を、速さ で近づきながら観察する
波の先頭は速さ
で向かってくるように見える

速さ
の光を、速さ で近づきながら観察する
観測者が近付いているのに、
のまま

速さ = 進んだ距離 ÷ かかった時間

「距離」や「時間」という概念を洗い直す
必要がある

もちろん、なぜ自然がそうなっているのかという
疑問には答えられない

実は、電磁気学の結果からこれは予想されていた

当時は力学と電磁気学のみ

力学の基礎:ニュートンの運動方程式

電磁気学の基礎:マクスウェル方程式

マクスウェル方程式を変形する
ここで
速さ で進む波 = 電磁波の存在
しかも、 や
は観測者には無関係な量

ニュートンの運動方程式はガリレイ変換で不変

ニュートンの運動方程式はガリレイ変換で不変
「全ての慣性系で物理法則が同じ」と
つじつまが合いそう

電磁気学も同じ性質のはず
ところが、そうなっていなかった

電磁気現象は、どんな慣性系から見るかによって
変わってしまうのか?
→ それを示す現象が見つからない
→ 電磁気学の方が「正しい」?

実はマクスウェル方程式にも、形を不変に保つ
変換がある

ローレンツ変換
これは何を意味するのか?

速さ で動く筒の中で、光を上に向かって発射
筒の外のAさんと、筒の中のBさんが観測
B
A
光源

速さ で動く筒の中で、光を上に向かって発射
筒の外のAさんと、筒の中のBさんが観測
B
A
光源

筒の中のBさん:
光が速さ で上下往復するのを見る
往復距離
光の速さ
往復に掛かる時間
光源

速さ で動く筒の中で、光を上に向かって発射
筒の外のAさんと、筒の中のBさんが観測

Aさんにも光の速さは に見える

三平方の定理を使う

三平方の定理を使う
動いている人に流れる時間 tB
≠ 止まっている人に流れる時間 tA
光の速さを 、物体の速さを
止まっている人に流れる時間が
動いている物体に流れる時間が
例えば
のとき、
年、 が光速の60%なら
年
地上で10年経つ間に、動いていた物体は
8年しか経たない

速さ
で横に動きながら、上に速さ
で光を発射

Aさんには光の速さが
に見える

Aさんには光の速さが
に見える
どちらの観測者でも時間の進み方は同じ
質量とエネルギーの等価性
ローレンツ収縮
双子のパラドックス etc

ローレンツ収縮

双子のパラドックス

ガレージパラドックス

ミューオンの寿命の問題

質量とエネルギーの等価性

普通、物質には質量がある

質量とエネルギーは等価である

ならば・・・
→ 物質が存在すれば、
それはエネルギーを秘めているということ

数式で表す:世界一有名な方程式

これには続きがある

正確に書くと・・・



時間の遅れなどの物理的意味
→ 時間と空間の混在
時間+3次元空間 =4次元時空
4次元時空の行列による表現:ローレンツ変換
3次元空間の物理から4次元時空の物理へ
→ ニュートン力学から相対性理論的運動学へ
→ 質量とエネルギーの等価性
ある現象を静止したまま見るAさん:S系
&
Aさんに対して速さ v で動きながら見るBさん:S’系
時間の遅れ
&
空間の収縮(ローレンツ収縮)

と
の関係
:ローレンツ変換
もっと簡単に書けないものか?
4次元ベクトル
4×4行列
4次元ベクトル



大きさと方向を持った量
cf.) スカラー:質量,温度,密度…
「→」は幾何ベクトル
ベクトルで表すべき量は非常に多い
例:2人が同じ大きさの力で物体を引っ張る
どれ?

矢印で表して、3つの軸に射影する
or


3次元空間での、物体の位置を表す
矢印の先端に物体がいるということ
or


4次元時空での、物体の位置を表す
ある時刻 t における物体の位置
or
t軸はどこに描く???

数を並べたもの、ベクトルもその一種
2×2行列
3×1行列
3×3行列
1×4行列

掛け算のルールが決まっている
ベクトルの長さの2乗

行列をベクトルに掛ける
→ ベクトルの移動を表現できる

例:2次元の位置ベクトル

行列をベクトルに掛ける
→ ベクトルの移動を表現できる

例:2次元の位置ベクトル

2次元の位置ベクトルの回転になっている

一般に2×2行列
で
なら、ベクトルの回転を表す
実は、
という特徴も

4次元ベクトルを「回転」させる行列:SO(1,3)

とにかく、4次元で考えた方がよさそう

ニュートン力学は全て3次元
→ それらを全て4次元に
バージョンアップさせてみよう
ニュートン力学
特殊相対性理論
3次元空間
4次元時空
座標
4元座標
速度
4元速度
加速度
4元加速度
力
4元力
運動量
4元運動量

4元速度
なにで微分すればいいのか?
時間は相対的なものでは?
→ 固有時間 τ で考えよう

4元運動量や4元力
第0成分は何を表すのか???
ここで
は、動いている座標系の原点にいる人に流れる時間
→ 運動している人が感じる時間:固有時

4次元版運動方程式

4元運動量が満たす式

4元運動量が満たす式

4元運動量が満たす式を微分
(仕事率)



仕事
物体に力を加えて動かす
→ 物体にエネルギーがたまる
= 「仕事をした」という
定義:
仕事率:仕事の時間変化率
= 1秒でどのくらいエネルギーがたまるか

4元力の第0成分は仕事率に等しい

4元運動量の中身がわかった!
ようやく世界一有名な方程式が出た!

質量?話はまだ終わらない・・・

質量保存則と運動量保存則が成り立つためには
質量は速度に依存している必要がある
お疲れさまでした!!!