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Wilsonの描いた道、摂動QCDの歩み、
数学との交差
隅野行成
2013.10.2 Lunch Talk
1982年のノーベル物理学賞受賞。
Wilson流のくりこみ群の理論
素粒子理論 ⇔ 物性理論
QCDの解析にも数多くの功績
ここでは摂動QCDの話に限定
Kenneth G. Wilson
(1936 – 2013.6)
・くりこみ群 → 低エネルギー有効理論の構成
・Operator product expansion (OPE)
小平治郎 2005日本物理学会
“30 Years of QCD”
摂動QCDの歩み
• 1970年代半ば~ 80年代半ば
勃興期
•
80年代半ば~ 90年代半ば
沈静期、熟考期
•
90年代半ば~ 00年代半ば
定量的予言 ~10%精度
• 2000年代半ば~ 現在
精密科学~1%精度、統合への流れ
• 現在 ~
理論形式の再構成・統一(?)
くりこみ変換(=「粗視化」)による低エネルギー有効理論の構成
理論のカットオフを下げる 𝜇 → 𝜇′
𝒪𝑖
ℒ
𝜇 =
𝑖
𝜑 = 𝜑 2 , 𝜑4 , (𝛻𝜑)2 , … etc.
𝑔𝑖 𝒪𝑖 (𝜑𝑛 )
ℒ′ 𝜇′
=
𝑖
𝑔𝑖′ 𝒪𝑖(𝜑′𝑛 )
少ない自由度
′
𝐸 < 𝜇’ の物理は変わらないように 𝑔𝑖′ を決める
繰り込み変換=粗視化
B
QCDでは
𝑛
𝑔𝑖 (𝜇)
𝜑𝑛
𝜑B′ = 𝜑𝑛
強結合
𝑛 ∈B
弱結合
𝜇
ℒ𝜇
𝑔𝑖 𝒪𝑖(𝜑𝑛 )
=
𝑖
Λ𝑄𝐶𝐷
≈ 300 MeV
ℒ′ 𝜇/2
=
𝑖
𝑔𝑖′ 𝒪𝑖(𝜑′B)
𝐸
有効理論におけるOPE
高いエネルギースケール
𝜇
を含む物理量
ー
+
+
ー
グルーオン
1/𝑃 (≪ グルーオンの波長 )
QCDに基づく数々の有効理論が構成された
Chiral PT
HQET
pNRQCD
vNRQCD
NRQCD
SCET
Factorization (因子化)
QCD
Chiral PT
HQET
pNRQCD
vNRQCD
NRQCD
SCET
QCD
私の研究テーマの視点から眺望してみる
Chiral PT
HQET
pNRQCD
vNRQCD
NRQCD
SCET
QCD
重いクォーク・反クォーク対の系
𝑄
𝑄
チャーモニウム・ボトモニウム・“トッポニウム”
物理量の例:(𝑀ܳ → ∞での)この系のエネルギー
OPE
1
=1
OPE
OPE
の定数
高次補正を含めるほど、
より遠方まで高精度の予言
が得られ、格子計算との
一致もよくなる。
OPE と consistent。
摂動QCDにおける重いクォーコニウム系のエネルギーの計算
のIRグルーオンは寄与しない (∵全系のカラー電荷=0)
ポテンシャルの急速な立ち上がりと constituent クォーク質量
𝑔(𝑟 −1 )
の寄与が
𝑟 −1
と共に急速に増大
過去20年に計算技術の大きな発展(予想外の方向性で)
次元正則化
解析接続による正則化
カットオフと物理的描像が異なる
優れた数学的性質
有限
物理量A
物理量B
発散
発散
ℒ Λ→∞
𝜀→0
例:スケールの分離 ・・・ 有効理論の構成に不可欠
数学との交差
・多重ゼータ値、多重polylog関数
・特異点、特異点解消
・character , 1の冪根
・シャッフル関係式
モチーフ
今までのところ特に計算技術の向上に役立っているが、
より根本的な原理・普遍性が見え隠れしている。
まとめと展望
・摂動QCDの過去15年の大きな進展
低エネルギー有効理論とOPEによるスケールの分離
・基礎理論に基づく高精度の予言と正確な物理的描像
𝑚𝑐 , 𝑚𝑏 , 𝑚𝑡 , 𝛼𝑠 の高精度決定などに応用されている
・計算技術の飛躍的発展と背後の理論
計算結果による前進、解析解の大幅な簡約化
数学との交差、水面下に見える普遍性
・今後、理論形式の再構成・統合が起こると期待
e.g. Factorization → 系統的な有効理論の構成
輻射補正の意味づけ