大腸菌症

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Transcript 大腸菌症

大腸菌症(colibacillosis) 人獣共通
大腸菌( Escherichia coli )は動物の腸内
に常在しているグラム陰性桿菌であり、その一
部が病原性を持っている。細胞壁由来のO抗
原とべん毛由来のH抗原に基づいて細かく分
類されている。
病原性大腸菌
腸管病原性大腸菌(EPEC): 小腸に感染して下痢、腹痛等急性胃腸炎を起す。
腸管侵入性大腸菌(EIEC): 大腸に感染して赤痢様の症状を起す。
毒素原性大腸菌(ETEC): 易熱性および耐熱性の腸管毒素(エンテロトキシン)を
産生する菌が小腸に感染し下痢を起す。
腸管出血性大腸菌( VTEC 、EHEC): 腹痛、下痢、血便をおこし、ベロ毒素産生
により溶血性尿毒症症候群(HUS)、脳症を起す。 O157:H7、O111など。
腸管付着性大腸菌(EAEC)、 腸管凝集性大腸菌(EAggEC)
病原性大腸菌は、腸上皮への付着に重要な役割を果たす線毛抗
原の違いから特定宿主に感染するものと、種を超えて感染するもの
がある。また、動物種によって特有の病態を引起し、牛には病原性
が弱くヒトに重大疾病を引起すO157:H7などある。
仔牛の大腸菌症
特定の病原因子を有する菌(ETEC、
VTEC)あるいは混合感染により、哺乳
牛の下痢・脱水症と新生子牛の敗血症
を起こす。重要な発病要因として初乳
摂取の良否があげられ、他に飼養環
境の急変、長距離輸送、飼料の急変な
どのストレスによる発症が多く、ウイル
ス、原虫との混合感染もある。
白色の水様性下痢便と
肛門周囲の汚れ
分娩牛房の消毒、乾燥などの衛生管理により、環境における病原
性大腸菌の菌数を減少させることが大切。下痢を主徴とする場合、
牛大腸菌性下痢症ワクチンを使用する。下痢には初期の隔離治療
を原則とし、脱水とアシドーシスを防止するため、輸液と原因療法と
して抗生物質の投与を併用する。敗血症を主徴とする場合、急性経
過をとるため、発見が遅れると治療不可能となる。
搾乳牛の大腸菌性乳房炎
毒素原性大腸菌による乳房炎は、壊死
を引起し重篤化する例が多い。牛用大腸菌
ワクチンは、子牛の大腸菌性下痢症を予防
する目的で開発されたものであるが、乳牛
に接種した場合は、乳房炎死廃率を減少さ
せる副次的効果があると言われている。
CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)
北見管内乳質改善協議会、網走管内乳牛検定
組合連合会(平成14年)
大腸菌性乳房炎罹患牛の
漿液性浸出物(左)と
正常乳(右)
仔豚の大腸菌症
エンテロトキシン(易熱性、耐熱
性)を産生する毒素原性大腸菌が
原因。下痢あるいは敗血症を起こし、
新生期から離乳後3週間までの時
期に多発する。とくに生後5日以内
の敗血症を伴う症例では、致死率
が非常に高い。それ以降の発症例 元気消失、脱水による発育不良
では、致死率は低いが、著しい脱
水症状のため発育不良となる。
哺乳豚・離乳子豚の飼養環境、たとえば保温、離乳時期、人工乳
への切り替えなどに注意し、分娩舎・離乳舎の消毒、オールイン・
オールアウト方式の実施などが効果的である。また、初乳の十分な
摂取が必要であり、母豚群の免疫状態を均一化するために母豚更
新率が極端に高くならないよう計画的な導入が望まれる。
豚の浮腫病
腸管内で産生されたベロ毒素(志
賀毒素)が体内に吸収され、毒素血
症を引き起こすことにより発症する。4
~12週齢の肥育豚に好発。
後肢麻痺、痙攣、遊泳運動など中
枢神経障害を示し、浮腫は眼瞼周囲、
起立不能、眼瞼周囲の浮腫
耳翼皮下、前頭部皮下などに出現す
発病豚は隔離し、豚舎を消毒して
る。体温はほぼ正常で、一部の豚で
汚染防止に努める。発生後は続発
は出血性下痢を呈し通常発病後72 予防が重要となり、離乳後、子豚の
時間以内に死亡する。死亡を逃れた ストレス軽減に努める。また、消化管
例は、脳脊髄血管症と呼ばれる慢性 への負荷を軽減するため高たんぱく、
型の浮腫病になる場合がある。予防 高エネルギーの飼料給与を避け、給
餌器は清潔に保つよう管理する。給
のための抗菌剤の過剰投与は本病
水を十分とれるよう、給水器の水量・
を誘発することが指摘されている。
形状・数を適正にする。
線毛抗原(F血抗原)には1-12の12種類あり、線毛により
小腸粘膜に定着を開始するので、宿主域は線毛によって
決定される。ヒトの溶血性尿毒症症候群(HUS)を起した血
清型と牛の血清型とは共通するものがあるが、同じVero毒
素を産生する豚由来株とは共通性がない。
件数
ヒトのVTEC食中毒
腸管出血性大腸菌(VTEC、O-157な
ど)に感染しても、家畜と同じように、全
員が重い病気になるわけではない。成人
では、感染しても症状がなかったり、あっ
ても軽い下痢だけのことが多いが、高リ
スク者(乳幼児、小児、高齢者、免疫低
下者、妊婦など)では、出血性大腸炎を
起こし重症に至る場合もありる。通常、
症状のある患者の6~7%が重症の溶血
性尿毒症症候群(HUS)を併発すると言
われている。
O-157は「食中毒」だけでなく、ヒトから
ヒトへの感染も起きるので、食中毒以外
の感染症法による患者が多い。
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
患者数 死者数
179 14488
176 5407
16
182
8
46
16
113
24
378
13
273
12
184
18
70
24
105
24
179
25
928
17
115
26
181
27
358
21
614
11
275
年平均 37.5
致命率
1405.6
8
0
3
0
1
0
9
1
0
0
0
0
0
0
0
7
8
2.2
0.15
Q38 腸管出血性大腸菌は人からうつるのですか?
腸管出血性大腸菌は100個程度の菌数でも感染すると言われていますが、感
染するのは菌に汚染された飲食物を摂取したり、患者さんや無症状病原体保有者
の糞便で汚染されたものを口にした場合だけで、職場や学校で話をしたり、咳・くしゃ
み・汗などでは感染しません。ヒトからヒトへの感染を予防する基本は手洗いです。
排便後、食事の前、下痢をしている子どもや高齢者の排泄物の世話をした後などは、
せっけんと流水(汲み置きでない水)で十分に手洗いをしましょう。
厚労省
感染症法 「三類感染症」
全数把握疾患
感腸
染管
症出
の血
発性
生大
状腸
況菌
腸管出血性大腸菌感染症の都道府県別発生状況
感染研: 感染症発生動向調査
O157
O26
2009 2010 2009 2010
全国
東京都
大阪府
福岡県
佐賀県
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
鹿児島県
2371 2732
215
161
237
35
34
27
55
17
41
242
211
186
33
29
51
15
20
25
計
O111
2009 2010 2009 2010
697
564
75
85
18
10
9
146
16
12
17
30
17
34
16
16
1
4
11
5
4
13
2
2
4
1
0
2
0
0
4
2
0
4
0
1
9
0
0
13
3143 3381
235
173
250
182
50
41
72
47
62
278
227
206
34
34
71
20
24
51
食品安全も大事だが、感染症を防ぐ個人衛生も重要!
腸管出血性大腸菌の感染様式
非加熱の食肉
レバー刺し
発酵不十分な堆肥
調
理
時
の
交
差
汚
染
子供には
食べさせない!
細切れ生牛肉
用便後の便器、ドアノ
ブには、下痢便中の大
腸菌が付着する。
その後に利用する子供
は・・・
大人は腹痛・
下痢程度で
終わるが・・・
この感染経路を断つのは
難しい!