2011年3月の講演資料の一部

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中国知財の近況
-???株式会社様にて-
平成23年3月1日
パートナー・弁理士 渡辺 秀治
2011/03/01
中国知財の近況 渡辺秀治
1
もくじ
1. 中国知財の基礎と実状
2. 2009年10月施行の専利法(特
許法)への対策
3. 知財訴訟事例
4. その他
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1.中国知財の基礎と実状
(1)出願の増加:
2010年のデータは、
・発明が391,177件、
・実用新案が409,836件、
・意匠が421,273件、
・商標が830,477件、
である。
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中国 (1)特許出願の増加
500000
450000
400000
350000
300000
250000
200000
150000
100000
50000
0
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
)
)
許
(特
本
日
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(特
米
国
)
許
中
国
(特
)
許
国
(実
用
中
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(2)実用新案の威力と活用
①中国では、実用新案が登録されると、無効になりにくい。
②日本に比べ、中国の実用新案は権利行使が非常にしやすい。
③ハイテク企業認定をされると、税法上の優遇がされるが、そ
の条件として、「核心的な自主知的財産権」の保有が最も高
く評価される。ここで、1つの特許権と同等な価値は6つの実
用新案権となっている。
④中国では、実用も意匠も、特許と同様、専利の一種であり、
登録されると、実用も「専利」とうたうことができる。
⑤中国の方々は、ビジネスで実用を使う感覚が優れている。
⑥実用新案の訴訟案件で約48億円の損害賠償判決(シュナイ
ダー・エレクトリック事件:被告は仏のシュナイダーエレクト
リックが中国天津で設立した低圧電気製品の合弁会社)が
出たこと。
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(3)知財訴訟の増加
①2009年に全国の法院で審理終了し
た知的財産権民事訴訟第一審は30,
509件
(2009年同受理件数30,626件、内訳专
利案件4422件、商标案件6906 件、著作权案件
15302件、技术合同案件 747件、不正当竞争案件
1282件、其他知识产权案件1967件)
・・・中国最高人民法院HPから
*日本は年500件前後、米国は1万件弱。
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(3)知財訴訟の増加
②裁判、その他のルート
1. 行政ルート
専利管理機関に救済を求める
メリット:早期解決できる。
平和に解決できる。
2. 司法ルート(二審制)
人民法院に提訴する
メリット:強制執行権を期待できる。
高額の損害賠償が期待できる。
最高
(1)
高級(31)
審決取消訴訟・特許権侵害訴訟の一審
中級(346)
基層(3,135)
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③法律
• 中国:特許侵害には、民事罰(損害賠償、差
し止め)に加え、罰金(63条)、刑事罰(刑法
216条-情状が重い場合のみが対象--
特許番号の無断使用など)があり。非親告罪。
• 米国:刑事罰なし。
• 日本:特許侵害には、民事罰(損害賠償、差
し止め)に加え、刑事罰(196条)があり。親
告罪から非親告罪へ(平成10年改正)。
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(4)知財流通
①特許オークション
2010年12月北京でのオークション
②技術交易所ー国家レベルのものが
全国で約30箇所
Ex.上海聯合産権交易所
③知財を含む技術流通
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(5)審査実務
1.特許
①補正の厳しさ(サポート要件の厳格化)・・・世界1
②拒絶回数増加=形式的な面の拒絶→実体的な拒絶
③PCT移行・・・調査引例+α(このαは最近)
2.商標
①審査段階
・・・大きなばらつき。
・・・類似範囲が広い。
②審判段階
・・・中国での使用評価。類似の権利者の同意あれば。
・・・審判でくつがえるものが多い。
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(6)中国出願戦略と戦術
各社の戦術
①A社・・・米国へはPCTを使用せず(ライバル対応)。
中国へは特許と実用併願。
②B社・・・利益率高い成熟製品について意匠を中国。
③C社・・・中国向け製品についての特許出願は中国
のみ。
④D社・・・中国でハイテク企業認定のために、実用
出願を6件以上。
⑤E社・・・中国子会社における知財フォロー可能化。
⑥F社・・・中国人の知財マン育成計画。
⑦G社・・・ある分野で中国特許クリアランスの実施。
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2.2009年10月施行の専利法
(特許法)への対策:主な改正点①
(1)渉外事務所制度の廃止
(2)絶対的新規性への移行
(3)本人先願記載事項も新規性阻却
(4)中国で生まれた発明の取り扱い
(5)共有特許の扱い
(6)特許と実用の重複の扱い
(7)法定賠償額の増加
(8)提訴前の証拠保全
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2.2009年10月施行の専利法
(特許法)への対策:主な改正点②
(9)出願権、特許権の譲渡手続きの簡略化
(10)訴訟の場での無効抗弁
(11)特許権侵害の例外
(12)意匠関係の改正
(13)強制実施許諾
(14)遺伝資源
(15)専利行政部門の権限拡大
(16)発明者などへの対価
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(2)絶対的新規性への移行:法律
•
•
第二十二条
新規性とは、当該発明又は実用新案が既存の技
術に属さないこと
本法でいう既存技術とは、出願目以前に国内外
において公然知られた技術を指す。
現行法「新規性とは、出願日以前に同様の発明又
は実用新案が国内外の出版物上で公開発表され
たり、国内で公開使用されたことがな<、又はそ
の他の方式で公衆の知るところとなっておらず、」。
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(2)絶対的新規性への移行:対応
•
•
つぶしやすくなる
しかし、立証は困難。
従来同様、日本出願と併せて中国出願の
検討が必要。
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(3)本人先願記載事項も新規性阻却:法律
•
•
•
第二十二条
新規性とは、・・・同様の発明又は実用新案に
ついて、出願日以前に国務院専利行政部門に出
願しておらず、かつ出願日以降に公開された特許
出願文書又は公告の特許文書において記載され
ていないことを指す。
現行法「・・・他人より国務院特許行政部門に出願
が提出されたことがな<、かつ出願日以降に公開
された特許出願文書の中に記載されていない」
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(3)本人先願記載事項も新規性阻却:対応
•
•
日本の関連出願を1つにまとめる。
現在のヨーロッパ出願と同じ考えで。
日本出願時に、外国出願予定のものは、他
の案件の出願内容は記載しないようにする。
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(4)中国で生まれた発明の取り扱い:法律
•
•
第20条 いかなる機関又は組織又は個人も、中
国国内で完成した発明創作又は実用新案を外国
に特許出願する場合、先ず国務院特許行政部門
による秘密保持審査を受けなければならない。秘
密保持審査のプロセス、期限などは国務院の規
定に従って執行する。
現行法「第20条 中国の単位又は個人が国内で
完成した発明創造を外国で特許出願する場合は、
先ず国務院特許行政部門に特許出願し、その指
定した特許代理機関に委託して処理し、かつ本法
第4条の規定を遵守しなければならない。」
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(4)中国で生まれた発明の取り扱い:対応
・・・実施細則第八条
専利法第二十条に言う中国において完成された発明又は実用新案とは、
技術方案の実質的な内容が中国国内で完成された発明または実用
新案を言う。
いかなる単位又は個人が中国において完成した発明又は実用新案を持っ
て外国に特許を出願する場合、下記に挙げる方式の何れか一つに
よって国務院特許行政部門に機密保持の審査を請求しなければなら
ない。 *現在の審査期間は・・・。
(一) 直接に外国に特許を出願する或いは関連する外国機構に特許の国
際出願を提出する場合、事前に国務院特許行政部門へ請求を申し立
て、かつその技術方案について詳しく説明しなければならない。
(二) 国務院特許行政部門に特許を出願した後外国に特許を出願する或
いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出する場合、外国に特
許を出願する或いは関連する外国機構に特許の国際出願を提出する
前に国務院特許行政部門に請求を申し立てなければならない。
国務院特許行政部門に特許の国際出願を提出する場合、同時に機密保
持審査請求を提出したとみなされる。
・・・まずは、中国へ出願することが妥当策。
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(5)共有特許の扱い:法律
•
•
第十五条
特許出願権又は特許権の共有者の間で権利
の行使について約定がある場合はその約定に従
う。約定がない場合、共有者は単独で実施するか、
あるいは一般許諾方式によって他者に当該特許
の実施を許諾することができる。他者に当該特許
の実施を許諾する場合、徴収する使用料は共有
者同士で分配する。
前款が規定する状況を除き、共有する特許出
願権又は特許権については共有者全体の同意を
得なければならない。
現行法なし
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日本では、原則は、許諾できない。
• 契約で単独許諾が許されていれば可能であ
るが・・・。
• 米国では、○(原則、可能)。
• 英国では、×(他の共有者の同意必要)
• ドイツでは、×(他の共有者の同意必要)。
• 仏では、△(持分譲渡の提案と共に非独占実
施許諾を提案)。
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(5)共有特許の扱い:対応
•
•
相手の動きを制限したいときは契約を必ず
行うこと。
自由に動きたいときは、契約をしない。
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(6)特許と実用の重複の扱い:法律
•
•
第九条
同様の発明創造に対しては1件の特許権のみを
付与する。但し、同一の出願者が同日中に同様の
発明創造について実用新案特許を出願し、同時
に発明特許を出願した場合、先に取得した実用新
案特許権が終了する以前において、出願者が当
該実用新案特許権の放棄を宣言したものは発明
特許権を付与することができる。
現行法「第9条 二人以上の出願者が同一の発明
創造についてそれぞれが特許を出願した場合、特
許権はもっとも先に出願した人に付与される。」
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(6)特許と実用の重複の扱い:対応
•
•
同じものは、同日に出す。後のものは拒絶、
無効理由。
特許を取りたいときは、実用を放棄すること。
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(12)意匠関係の改正
•
•
•
•
•
•
•
類似デザイン群を1出願で可能(31条)。
セット販売、使用するものを1出願(31条)。
簡潔な記述が必須(27条)
「意匠評価報告書」の採用(61条)
販売の申し出も侵害を構成(61条)
意匠も絶対新規性。特許と同様な新規性必要。2
3条。
インベンンティブステップの要求(既存の設計又は既存の
•
除外(25条(六)平面印刷物の図案、色彩又は両者の組み合わせに
•
現行法なし。
設計的特徴の組み合わせと比べて明らかな違いがあること・・23条)
よって作成され、主に表示を機能とする設計)
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(16)発明者保護について
①中国・・・法16条「・・発明者に対し、奨励を与
える。・・実施された後は、経済効果に応じて
発明者に合理的な報酬を与える。」
「国有企業」から「中国企業」へ拡大
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(16)発明者保護について
中華人民共和国専利法実施細則
第七十六条 特許権が付与された単位は専利
法第十六条に規定する奨励、報酬の方式と
金額について発明者又は考案者と約定する
か、若しくは法に従って制定した規定制度の
中で定めることができる。
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(16)発明者保護について
第七十七条 特許権が付与された機関は、発明
者又は考案者と専利法第十六条に規定する
奨励、報酬の方式と金額について約定してい
ない、しかも法に従って制定した規定制度の
中で定めていない場合、特許権公告日より
3ヵ月以内に発明者又は考案者に報奨を支
給しなければならない。発明特許一件あたり
の報奨は3,000 元を下回ってはならず、実用
新案特許又は意匠特許一件あたりの報奨は
1,000 元を下回ってはならない。
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(16)発明者保護について
第七十八条 特許権が付与された単位は、専利法第十六条に
規定する奨励、報酬の方式と金額について発明者又は考案
者と約定していない、しかも法に従って制定した規定制度の
中で定めていない場合、特許権の有効期限内において、発
明創造の特許が実施された後、毎年、同発明または実用新
案特許の実施により得られた営業利益の中から2%を下回
らない金額、若しくは、当該意匠特許の実施により得られた
営業利益の中から0.2%を下回らない金額を、報酬として発
明者または考案者に与え、或いは、上述の比率を参照して、
一括で発明者または考案者に報酬を与えなければならない。
特許権が付与された機関が、その他の機関または個人にそ
の特許の実施を許諾した場合、取得した使用許諾料の10%
を下回らない金額を報酬として発明者または考案者に与え
なければならない。
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(16)発明者保護について:対応
•
•
•
発明管理体制、出願ルート、発明規程など
報償規定の整備が必要。
中国人の知財マンの育成。
機密保持管理違反の懲罰条項の設定。
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3.中国の知財訴訟事例
• 損失・利益・実施料を確定できないとき、1万元以上
100万元以下の賠償(新法65条)。
①富士化水工業、中国企業との特許訴訟で敗訴-賠
償金7億8千万円
②フランス大手電機メーカーのシュナイダー・エレクト
リックに対し、3億3000万元(約48億円)→和解で
1.575億元(23億日本円) (2009年4月)
米国:$873 million Polaroid v. Kodak1991
日本:74億1668万円 アルゼ株式会社vサミー株式会社
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3.中国の知財訴訟事例
③国内企業vs国内企業が多い。
・北京市第一中級人民法院(2004~06年)によ
れば、全4,545件のうち、3,564件(78%)が国
内企業同士案件。
・高額判決あり-「鉄の圧延ローラ事件」2,980万
元。「大型乗用車」の意匠2,116万元。
④外国企業が勝訴した率が意外と高い。
・行政案件では、60%。
・民事案件では、80%。
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⑤図面流出営業秘密侵害(刑事)事件
(1)現地企業vs現地人+現地企業
(2)一審判決・・・付帯民事訴訟にて連帯して約2.4
億円の損害賠償。3年の有期懲役、罰金5万元。被
告侵害停止。二審の審理中に和解。
(3)刑法219条の営業秘密侵害罪。
(4)ポイント
・従業員と「秘密保持義務契約条項」が含まれる労働
契約を締結。
・労働契約の解除申請中に被告会社に応募し、図面
提供。
・第三者と7,296万元と7,560万元の契約。合計金額
の12%が刑事付帯民事訴訟での賠償額。
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ノウハウ保護
中国では、同じ製品が出現することは当たり前。しかし、損害賠償
額が低いのが一般的。
法律的には、
反不正当競争法(第10条、第20条、第25条)
刑法(第219条)
労働契約法(第23条・競合避難止も)
契約法(第43条)
不正競争民事案件(最高人民法院の解釈9,10,11、15条)な
どで保護される。
法的管理
・職務規程の秘密保持条項や雇用契約は、気休め程度に考える。
しかし、確実かつ完全な規定(剣が無ければ戦えない)を。
・競合への再就職禁止、懲罰条項、最低損害賠償額などを規定す
ること。
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王 震 -Wang Zhen(2009年専利代理人合格)
•
•
•
•
1998年 中国上海華東理工大学応用化学学科卒業
2000年 日本東京国際学友会日本語学校卒業
2001年 早稲田大学理工学研究科修了
2003年 早稲田大学理工学研究科生命理工専攻修
了
• 2005年 早稲田大学特別推進研究部研究補助員と
して勤務
• 2005年 アイアット国際特許業務法人入所
この間、日本語明細書多数(100件以上)作成
• 2009年 専利代理人登録
この後、中国特許鑑定10件以上、特許調査も多数。
化学、バイオが専門。メカ系も対応。
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上海音和知識産権代理有限公司
-所長---郭 梅 -Guo Mei
1990年 中国上海海運大学機械工学科卒業、中国大
連海事大学講師
1992年 中国大連海事大学特許事務所入所
1993年 中国専利代理人登録(登録番号2103431)
1994年 来日
1998年 渡辺国際特許商標事務所(アイアットの前
身)入所。日本語明細書20件以上作成。
2000年 上海音和設立(10名で翻訳、図面作成、特
許調査など実施)。この間、意匠鑑定など実施。
2011年 上海音科専利商標代理有限公司の所長も兼
務
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36
ありがとうございました。
パートナー・弁理士 渡辺 秀治
アイアット国際特許業務法人
E-mail:個人は「 [email protected]」
共通は「[email protected]」
URL: http://www.w-pat.com
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