Transcript 物理2014-3
電気電子工学科E2 物理学基礎・物理学基礎 演習 中間テスト問題 問 3 Quiz of Christmas celebration (1) 孝優城の夢:本場のノルウェーか らトナカイが引く橇に乗ってサンタクロー スが日本に向かう。北極点を通過するコ ースである。お客が多いので橇は猛スピ ードで走る計画である。しかしサンタクロ ースもトナカイも地球の自転効果をまだ知らない。無事 橇が北極点を通過するようにあなたが解答欄に適切な アドバイスをしよう。以下から選択せよ。 TA元木 イ)東北東に進路を取れ ロ)北北西に進路を取れ ハ)北北東に進路を取れ ニ)真北に進路を取れ 『北北西に進路を取れ』1959年アルフレッド・ヒッチコック 電気電子工学科E2 物理学基礎・物理学基礎 演習 中間テスト問題 (2) 駿介の夢:駿介と祥介を乗せたハヤブサ2号が怪し い星に降り立った。駿介はハヤブサ2号機内で長さ1.0 m、 錘の重さ1.0 kgの振り子を少しの振幅で振って角振動数 を調べた。1.0 rad/sであることが分かった。さらに実施し た衝撃波実験の後、駿介は呟いた。「小さい星だ、地球の 重力加速度のたった ① TA木村%しかない。密度は地 球と同じで、形も地球と同様にほぼ真球だが、地球の半 径が約6370 kmに対して、この怪しい星の半径は約 ②T A木村kmしかない。」①、②を整数値で答えよ。 g l 電気電子工学科E2 物理学基礎・物理学基礎 演習 中間テスト問題 (2) 駿介の呟きを聞いた大秀才祥介は嘆きつつ呟いた。 「船外に出るのは危険だ。しかし、仮に船外で振り子を大 きく振ったなら、小振幅のときの周期 ③ TA齋藤秒より 長くなる。なぜなら大振幅のときの力のモーメントの大きさ は ④TA齋藤。」③に少数桁2桁で数値を、④に祥介の 呟きの続きを解答欄に記入せよ。 有効桁(有効数字) 1桁 1x10-2 0.01 2桁 1.0x10-2 0.010 3桁 1.00x10-2 0.0100 d 2 dt 2 g sin 2 sin l 2 電気電子工学科E2 物理学基礎・物理学基礎 演習 中間テスト問題 (3) 圭佑の夢:圭佑は得意の電気工 作の腕を振るって、クリスマスツリーの デコレーション用に図のような電動式 円錐振り子を取り付けた。紐の長さは 1.0 mであり、錘の重さは 1.0 kg であ る。鉛直からの角度π/6で、上から見て 反時計回りに上手く回すことができた。 振り子の支点から見た錘の角運動量の大きさ⑤TA安田 と向き⑥TA安田を答えよ。 2 G mg C m r L mr 2 r l s in C G T 0 電気電子工学科E2 物理学基礎・物理学基礎 演習 中間テスト問題 (3) 圭佑は錘の角運動量が分か ったので大満足したが、悪戯好 きの秀尚が砂を詰めて作った 錘袋に針で穴を開けてしまった。 すると袋の穴から黄金色の砂 が落ちてきた。その美しいこと! 解答欄の図中に錘から1.0 m 下の地面に落ちた砂粒の様子を描け。砂粒が十分重く空 気抵抗が無視できる場合と、砂粒が軽く空気抵抗が非常 に大きい場合の両方を描け。落ちた砂粒の位置とツリー の中心からの距離を答えよ。TA鈴木 9 質点系の運動 9.1 質量中心 9.2 質点系の運動方程式 9.3 2体問題 9.1 質量中心 やじろべえが落っこちないように支える 位置が重心である。 重心はどこか? やじろべえはじっとしているのだから、 力のモーメントは働かない。 NG 0 小さな質量parts m1 , m 2 , に分けて考えよう。 q1 , q 2 , 重心からの位置 N 力のモーメント NG i 1 , mN , qN N qi F mi qi g 0 i 1 9.1 質量中心 重心を原点としてみたとき、やじろべえ の質量partsの関係は N mq i i 0 i 1 となる。原点をずらして重心位置を rG とする。 質量partsの位置は ri rG q i となる。 N N mq i i 1 N i m r i i 1 i rG 0 rG m r i i i 1 N m i 1 i 9.1 質量中心 形状が変化しない大きさを持つ物体を剛体という。 N 重心位置は、 rG m N r i i i 1 N m i 1 連続体なら積分形式 もし均質物体なら、 m r i i i 1 M i rG rG r dV dV r dV V 9.1 質量中心 そうは言っても重心位置をパッと見つけるのは難しい 均質な場合、 r dV rG 重心原点の場合、 rG 対称性が使える場合は、 中間線を引けばよい。 V r dV 0 rG 9.1 じゃあこれは? mmmmmm・・・演習! 質量中心 9.2 質点系の運動方程式 動かしてみよう。 全運動量=質量partsの運動量の和 PG M N d rG dt m d ri i i 1 N dt pi i 1 全運動量の変化=外力の和 d PG dt 2 M d rG dt 2 2 N m i 1 d ri i dt 2 N F i i 1 9.2 質点系の運動方程式 動かしてみよう。 全運動量=質量partsの運動量の和 PG M N d rG dt m d ri i i 1 N dt pi i 1 全運動量の変化=外力の和 d PG dt 2 M d rG dt 2 2 N m i 1 d ri i dt 2 N F i i 1 9.2 質点系の運動方程式 角運動量は? 1 N LG rG PG m i ri M i 1 10章で勉強しよう。 d ri N ?????? mi dt i 1 9.3 2体問題 複数の物体の運動は重心の運動と相対運動に分けら れる。質量mA、位置 rAとmB、rBとの2つの物体の運動を 考えよう。 簡単のために2次元平面運動とする。 物体の位置は r A x A , y A , 0 r B x B , y B , 0 重心の位置は r G xG , yG , 0 mAr A mB rB mA mB m A x A m B xB m A y A m B yB , ,0 mA mB mA mB 9.3 2体問題 rAとrBを重心を使って表すと、 r A xA, yA,0 m A xA mB xB m B x A m B xB m A y A m B yB m B y A m B yB , ,0 mA mB mA mB mA mB mA mB mB xA mB xB mB yA mB yB xG , yG ,0 mA mB mA mB r B xB , yB , 0 m A xA m A xB m A yA m A yB xG , yG ,0 mA mB mA mB 2体問題 9.3 従って2つの物体の運動量を重心の速度を用いて表すと それぞれ、 PA mBv A mBv B mBv A mBv B x y m Av G m A , m Av G m A ,0 m m m m A B A B PB m Av A m Av B m Av A m Av B x y mBvG mB , mBvG mB ,0 m m m m A B A B x x x y y x y 全体の運動量は当然以下のようになる。 P PA PB m mB vG ,m A mB vG ,0 x A y y 2体問題 9.3 それでは2つの物体の運動エネルギーを重心の速度を用 いて表すとどうなるのか? KA 1 PA PA 2m A 1 2 m A vG vG x2 y2 m v x m v x 1 B A B B m A 2 m A m B 2 1 2 m AvG 2 1 2 mA KB 2 mBvG 2 1 2 2 2 mA mB mB 2 2 mA mB 2 m A v B v A 2v B v A 2 1 m B v A v B 2v A v B 2 2 m Bv m Bv A B mA mB y y 2 2体問題 9.3 従って全体の運動エネルギーは K KA KB 1 2 1 2 mA mB v mA mB v 2 G 1 2 G mBm A 2 mA mB 1 mBm A 2 mA mB v A v B v A 2v B v A 2 2 vB vA vB 第1項は重心の運動エネルギー 第2項はAとBの相対運動の運動エネルギー mBm A mA mB を換算質量という。 9.3 2体問題 物体A,Bの運動のまとめ 1:重心 r G x G , y G , 0 mAr A mB rB mA mB m AxA mB xB m A y A m B yB , ,0 mA mB mA mB 2:全運動量:重心の速度に総質量をかけたもの。 P PA PB x y m m v , m m v ,0 A B A B G G 3:運動エネルギー:総質量*重心の速度の2乗*0.5 +換算質量*AとBの相対速度の2乗*0.5 K 1 2 mA mB v 2 G 1 mBm A 2 mA mB v A vB vA vB 2体問題 9.3 例1 一体並進運動& m m A m B 1:重心 r G xG , yG , 0 2:全運動量: mAvG mB vG rA rB 2 P P A P B 2mvG , 2mv G , 0 3:全運動エネルギー: x K mvG 2 y 2体問題 9.3 例2 原点回りに半径rで相対して、角速度ωの回転円運動 1:重心 r G x G , y G , 0 0, 0, 0 2:全運動量: Y P P A P B 0, 0, 0 3:全運動エネルギー: K 2 2 1 m mA v A v B v A v B mr 2 X 2 mB 2体問題 9.3 例3 衝突問題に取組もう 固い小さな物体m1、m2の衝突を考える。最初、m1は速度v0でm2 に向かって進み、m2は原点に静止している。空気等の抵抗は無 い。重力等の力は働かない。時刻ゼロで衝突後、物体m1、m2は 速度v1、v2で進むとする。 衝突後 衝突前 m1 m2 m1 m2 v0 v1 v2 A 衝突前: 1:重心 r G 2:全運動量: m1 r 1 m 2 r 2 m1 m 2 m1 r1 v 0 t , 0, 0 m1 m 2 m1 m 2 m1 P m1 v 0 3:全運動エネルギー: K m1 2 2 v0 2体問題 9.3 B 衝突後、運動量と運動エネルギーが保存されるとき 全運動量保存: m 1 v 0 m 1 v1 m 2 v 2 全運動エネルギー保存: 上2式を解いて、 衝突後: 1:重心 2:全運動量: v1 rG m1 2 m1 m 2 v0 2 v0 m1 m 2 m1 r 1 m 2 r 2 m1 m 2 P m1 v 0 3:全運動エネルギー:K m1 2 2 v0 m1 2 v 2 1 v2 m2 2 v2 2 2 m1 m1 m 2 v0 m1 v 0 t , 0, 0 m1 m 2 9.3 2体問題 問 物体m1は衝突によりm2に運動エネルギーを与える。 衝突前のm 1 の運動エネルギーをE0 、衝突後のm 2 の運 動エネルギーをE2とする。エネルギー伝達率E2/E0が最も 大きくなる条件と、その時のE2/E0の値を求めよ。 TA元木 エネルギー伝達率E2/E0が最も大きくなる条件:m1=m2 その時のE2/E0 = 1 問 v2の最大値は何v0か?またその時のエネルギー伝 達率はいくらか? v2が最も大きくなる条件は:m2/m1 =0 Max v2= 2v0 TA木村 そのときのエネルギー伝達率 = 0 9.3 2体問題 C 運動量はあらゆる場合に保存される、宇宙不変の大原 則である。これに対し、運動エネルギーは保存されるとは 限らない。・例えばポテンシャルエネルギーに変化したりす る。 熱エネルギーにも変わる、光エネルギーになる場合 もある。・もし、初め、全エネルギーが運動エネルギーだと する。 運動エネルギーが保存されないイベントがおこっ た場合、当然運 動エネルギーは小さくなる。 よって、 m1v 0 m1v1 m 2 v 2 m 1 v 2 m 1 v 2 m 2 v 2 2 0 2 1 2 2 である。典型的なのは、衝突後一緒に運動する場合であ る。 m1 衝突前 v0 m2 衝突後 m1 m2 v1 2体問題 9.3 このとき運動量の式は、 m1 m 1v 0 m 1 m 2 v1 v1 2 これは当然、 v 2 1 衝突後 m1 m2 m1 m 2 m2 v 2 m1 2 v0 m2 m 1v 0 衝突後の運動エネルギーは m1 衝突前 v0 2 2 1 1 1 m1 2 m1 m 2 m1 2 m1 m 2 v1 2 m1v0 2 m1 v0 である。衝突後、運動エネルギーが減少する衝突を非弾性 衝突という。 9.3 2体問題 教科書p161に床との衝突の解説がある。 v 2 ev 0 e は反発係数 衝突後 m2 Y 衝突前 m2 X ここで、右図のように衝突前のm2に 座標をつけた場合を考えよう。 v2 v0 ・m2の中にいるあなたは静止している と感じている。 ・そして非常に重い床がv0の速度で近づいてくると感じる。 ・床にぶつかられた後、衝突前の座標で見るとm2にのった あなたはv0+v2の速さで吹っ飛ばされる。 9.3 2体問題 もし反発係数が1ならば、 あなたがのったm2は2v0速さで吹っ飛ばされる。 これ以上の速さで吹っ飛ばされることは 衝突後 Y 衝突前 ない。最大2v0である。 m2 m2 これは、既に勉強した、 v2 2 m1 m1 m 2 v0 v2 X v0 の最大値が v 2 2 v 0 であることと同じ意味である。弾性衝突という。 e 1 のときは v 2 2 v 0 であり、エネルギー保存則が成り立 たない。非弾性衝突という。 期末テスト 1.日時: 1月29日(木) 4,5限 試験時間:90分程度 2.場所: 1331番教室 3.試験範囲:講義・演習・宿題・教科書の10章までに 学んだ範囲 4.注意: ・集合時刻厳守のこと ・途中退出は認めない ・全員受験必須 ・資料持込不可 ・既に60点以上を獲得している者も受験必須。 10章 剛体の運動 10.1 10.2 10.3 10.4 10.5 10.6 剛体の運動方程式 剛体のつり合い 固定軸のまわりの剛体の回転運動 慣性モーメントに関する二つの定理 慣性モーメントの計算例 簡単な剛体の運動 目 標 綱渡りを上手にしたい。 重さ5kgの物体を持ってよいとしたら何が良いだ ろうか?考えよう。 答えの理由を説明しよう。 TA1 TA2 TA3 TA4 TA5 10.1 剛体の運動方程式 N LB m r i i i 1 d ri N LB mr i i i 1 d ri dt N m i 1 i B dt 重心の位置ベクトルを導入して r B G rG q i Y 原点B回りの剛体の角運動量はおのおのの 質量partsの角運動量の和である。 X ri rG q i B qi d rG q i B dt ri 10.1 N LB i i m mr i i 1 B G N i 1 d rG d rG dt G mr i i 1 M rG B dt B G N mq i i i 1 B d rG qi B N dt mi qi i i 1 B N dt i 1 r N d ri mr 剛体の運動方程式 dt dt N d qi mq i dt mq i i 1 B d qi i 0 i 1 N 00 d rG q i i d qi dt !!!! 10.1 B L B M rG B d rG dt 剛体の運動方程式 N mi qi i 1 d qi dt 重心に全質量が 重心回りの剛体 集中した質点をB の角運動量 から見たときの角 運動量 公転回転的という 自転回転的という 10.1 剛体の運動方程式 原点C回りの剛体の角運動量はおのおのの 質量partsの角運動量の和である。 N LC mt i i d ti tG C dt i 1 Y ti 重心の位置ベクトルを導入して t i t q i C G 座標軸を変えても不変 C LC M t G C d tG dt N m q i i 1 i d qi dt X 10.4 慣性モーメントに関する二つの定理 剛体の角運動量は重心に全質量が集中した質点の角 運動量と重心回りの剛体の角運動量の和である。 座標の取り方によって重心に全質量が集中した質点の 角運動量は変化する。 B L B M rG B 力のモーメント d LB dt d rG dt N mi qi i 1 2 M rG B B d rG dt 2 d qi dt 2 N mq i i 1 i d qi dt 2 10.2 剛体のつり合い 剛体のつりあいの条件 d PG N dt F i 0 i 1 d LG N dt r F i i 0 i 1 d LB dt 2 M rG B B d rG dt 2 2 N mq i i 1 i d qi dt 2 10.3 固定軸のまわりの剛体の回転運動 硬い、大きな物体があり、回転中心軸Bのまわりにそ の物体を角速度ωで回転させた。このとき、物体の 角運動量大きさを LB I B 2 と書く。 LB 1 2 I B 回転運動エネルギーは K 2 と表せる。 2IB このとき、IBを物体のBまわりの慣性モーメントという。 10.3 固定軸のまわりの剛体の回転運動 問 長さL、質量Mの細い棒を棒の端を ω 中心として角速度ωで回転するときの慣 性モーメントを求めよ。 I 1 ML 2 3 B L B M rG B LB I B d rG dt N mi qi i 1 d qi dt L, M 10.3 固定軸のまわりの剛体の回転運動 問 長さL、質量Mの細い棒を棒の端を ω 中心として角速度ωで回転するときの慣 性モーメントを求めよ。 B L B M rG B M d rG L L 2 2 M L L 2 2 dt N mi qi d qi i 1 dt LB I B N mi qi qi 2 L, M i 1 L/2 0 線密度 2 3 L L 2 q dq M 2 4 24 2 2 L L 1 2 M M ML 4 12 3 10.5 慣性モーメントの計算例 ω の角運動量の大きさは L, M ω L, M の角運動量 1 ML 2 と 12 ω L/2 2 M の角運動量 L M 2 との和である 10.5 慣性モーメントの計算例 ω L, M の角運動量の大きさは 2 1 L 2 L ML M ML 12 3 2 1 2 よって慣性モーメントは I 1 3 ML 2 10.5 慣性モーメントの計算例 長さL、質量Mの細い棒を、棒の中心を中心として角速 度ωで回転するときの慣性モーメントを求めよ。 ω 半径r質量Mの細い赤いリングを図の ように角速度ωで回転するとき、角運 動量の大きさを書け。慣性モーメント を求めよ Y r O M X 10.5 慣性モーメントの計算例 長さL、質量Mの細い棒を、棒の中心を中心として角速 度ωで回転するときの慣性モーメントを求めよ。 ω 1 M L 1 2 I 2 M L 3 2 4 12 2 半径r質量Mの細い赤いリングを図の ように角速度ωで回転するとき、角運 動量の大きさを書け。慣性モーメント を求めよ L Mr 2 I Mr 2 Y r O M X 10.5 慣性モーメントの計算例 半径aで質量Mの薄い一様な円板の中心を通り、円板 に垂直な軸周りの慣性モーメントを求めよう。 (1)まず円板を右下のように細いリングの 集まりと考えよう。重さ面密度をρとする。 (2) 半径r厚さdrのリングの角運動量は dL 2 rdr r 2 (3)全体の角運動量は、 dL a 0 2 a 4 2 rdr r 2 Ma 2 4 よって慣性モーメントは I 2 Ma 2 2 I 10.5 慣性モーメントの計算例 ω (4)右図のように円板を縦に回転する場合を 考えよう。 右図のように円板を細い赤い棒に分けて 考えよう。棒の中心を回すときの慣性モー メントは I 1 mr a θ 2 12 と知っている。棒の長さが場所によって違うことを 考慮しておのおのの棒の慣性モーメントを足し合わ せれば目的の値が得られるだろう。 O 10.5 慣性モーメントの計算例 右図のように円板を細い棒に分けて考えよう。 円板の重さ面密度をρとする。図の座標Y軸 Y の点(y,0)を横切る幅dyの細い棒の慣性モーメントは 1 I mr 2 12 1 2 12 x y a 2 2 dy 2 x 2 x だから、 I 2 ω 2 x dy 3 3 3 2 2 2 2 a y dy 3 全体の慣性モーメントは 2 a y I dy 3 a 3 a 4 2 2 2 a y a cos と置けば、 I4 2 2 2 a sin 4 3 0 a 4 4 4 Ma 4 2 d θ (y,0) O X 3-2 剛体の運動 (5)質量Mの長方体X軸回り Y軸に平行な細い棒の集まりと考える。 I 1 mr 2 12 Ix 1 b b 12 2 a 3 dx 2 a 2 a 3 dx 2 4 ba 3 3 Y (b,a) 2 a dx Ma 3 3 X O 2 3 これはどこかで見たことがある。 (6)もちろんY軸回りの慣性モーメントは I y Mb 3 2 10.5 慣性モーメントの計算例 問 長さa、質量mの細い棒を、棒の中心を中心として角 速度ωで回転するときの慣性モーメント、角運動量、回 転運動エネルギーをa、m、ωを適宜用いて表せ。 ω I 1 12 ma 2 L 1 ma K TA1 2 12 1 ma 2 2 24 問 長さa、質量mの細い棒を、棒の中心 からb離れた所を中心として角速度ωで 回転するときの慣性モーメント、角運動量、 回転運動エネルギーをもとめよ。 2 a2 a 2 2 I m b L m b 12 12 m K 2 TA2 m a ω b a 2 b 12 2 2 m a 10.5 慣性モーメントの計算例 問 質量M半径Rの円板が図のように向きを変えずに半 径S、角速度ωで回転しているときこれを公転回転と いう。 AR 慣性モーメント、角運動量、 運動エネルギーをもとめよ。 I mR S A 2 L mR 2 TA3 K 1 2 mR 2 A 2 A 10.5 慣性モーメントの計算例 問 質量M半径Rの円板が図のように同じ面を中心に向 けて半径S、角速度ωで回転しているときしていると きの慣性モーメント、角運動量、 AR 運動エネルギーをもとめよ。 A S A 1 2 2 I m R S 2 1 2 2 L m TA4 R S 2 A m1 2 2 2 K R S 2 2 10.4 慣性モーメントに関する二つの定理 半径aで質量Mの薄い一様な円板の中心を通り、 円板に垂直な軸周りの慣性モーメントは I Ma 2 2 円板をY軸周りに回したとき、慣性モーメントは ω I Ma 4 2 a O 10.4 慣性モーメントに関する二つの定理 もう一つ別の考え方にトライしよう。 下図のようにX-Y平面上に質量miの小さな 物体が位置ri(xi,yi)にある。物体をY軸周りに 回したとき、慣性モーメントは Y軸周り: a I Y m i xi i 2 X軸周りに回したときの慣性モーメントは、 X軸周り: i O Y I X mi yi 2 xi それではZ軸周りに回したときの 慣性モーメントはどうなるか? Z軸周り: I m i ri m i x y i Z ω 2 2 i 2 i I mi ri(xi,yi) yi O i X I i Y Z X 10.4 慣性モーメントに関する二つの定理 即ち、ある平面(ここではX-Y)上に小さな物体があるとき、 その平面に垂直な軸周りの物体の慣性モーメントは、 平面内の直交する軸周りの慣性モーメントの和に等しい。 Y I Z I X IY i i i 任意の平たい剛体物体を微小物体の集合と 考えれば、任意の平らな剛体の慣性モーメントは IY mx i xi 2 i yi i IX 2 mi yi O i IZ i やっぱり mi ri(xi,yi) m i ri 2 m i xi y i i I Z I X IY 2 2 Z X 10.4 慣性モーメントに関する二つの定理 それでは I Z I X I Y を利用しよう。 円板の中心を通り、円板に垂直な軸周りの慣性モーメントは I Ma 2 Y 2 これはZ軸周りの慣性モーメントに相当する。 IZ Ma 2 2 それではX軸、Y軸周りの慣性モーメントは?? 分からないが、少なくとも円板である限り対称性 から I X I Y は確実である。だから、 I Z I X IY 2 IY よって、 IY Ma 4 2 a O Z X 10.5 慣性モーメントの計算例 右図のようなひどい場合の慣性モーメント ω を求めよ。 I 5M a 4 2 TA5 a O 10.5 慣性モーメントの計算例 質量Mの長方体の原点O軸紙面垂直 回りの慣性モーメントを求めよ Y (b,a) O M a b TA1 2 Iz 3 2 X 10.6 簡単な剛体の運動 (1)半径R、質量Mの円板が転がり 重心が速さvで進んでいるとき A ω v A点の速度は 左向き v A v R 2 v B B点の速度は 左向きにvと下向き v B R v C点の速度は v C v R 0 D点の速度は 左向きにvと上向き v D R v となる。接点Cの速さは常にゼロ。 D C 10.6 簡単な剛体の運動 ω A点→B点→C点→D点は 重心よりも遠回りして運動する。 よって滑る場合よりも 運動エネルギーを要する。 転がりの場合の運動エネルギー K 1 2 Mv 2 1 2 I 2 1 2 Mv 2 1 1 A B v D C MR 2 2 2 2 3 4 滑りの場合の運動エネルギー K 1 M v 2 2 Mv 2 10.6 簡単な剛体の運動 A (2)もし剛体が半径R質量Mの球体ならば ω 転がりの場合の運動エネルギーは B v D C K 1 2 Mv 2 1 2 I 2 1 2 Mv 2 1 2 2 5 MR 2 2 7 Mv 2 10 剛体の形状によって運動エネルギーは異なる。 滑りの場合の運動エネルギーは同じ K 1 2 Mv 2 10.6 簡単な剛体の運動 (3)剛体が半径R質量Mの球体が 静止状態から斜面を転がり、 鉛直方向hだけ下った場合の 球体の速さは、 K 7 M v M gh 2 10 から、 v 10 gh 2 gh 7 (4)剛体が半径R質量Mの円板なら K 3 4 M v M gh 2 v 4 3 gh 2 gh 10.6 簡単な剛体の運動 (5)円板ヨーヨーは転がりながら落ちている。 K 3 M v M gh 2 4 3 M v M gh 2 2 Mv M g h 2 3 2 v 1 ω 4 重力加速度3分の2の自由落下と同じ運動になる。 10.6 簡単な剛体の運動 (6)円板突き もし上端からbだけ下を突いたら どうなるか; dv M F 1)重心の運動の式は b F R M f dt 2)回転の運動の式は 3)転がる条件 力の条件は F dv M R dt R 2b R d 2 dt M d R 2 d dt 3R 2 f dt R b F R f f まさつ Rb F f R だから F f 2 R b R F f 10.6 簡単な剛体の運動 円板突き もし上端からbだけ下を突いたら どうなるか; b 点を F 3R 2b R f b F M で突くと転がる。 まさつが無い場合f=0の回転条件は? F 3R 2b R f から、 b R 2 R 点を突く場合。 f まさつ 10.6 簡単な剛体の運動 (7)玉突きの場合 b F 1)重心の運動の式は dv M M F f dt 2)回転の運動の式は 2 M R 2 d 5 3)転がる条件 dv R d dt 力の条件は F dt から 7R 5b 3 R 4)摩擦が無いときは R b F Rf 2F f 5 dt R Rb F f R f b 3 5 R 点を突くと転がる。 10.6 簡単な剛体の運動 (8)半径R、質量Mの円板滑車に質量m1、m2 の物体が糸でつるされている。糸の張力を図 のように定める。重力加速度をgとする。時刻 ゼロで物体を固定していた手を離した。糸は 滑車に巻きつき、滑ることなく移動すると考え よう。m1>m2 のとき、滑車は反時計方向に回 T1 転してm1 は落下する。もしM>>m1,m2 ならば、 m1は非常にゆっくり落ちることを経験的に知っ ている。これを考察しよう。 下向きを正にとれば、m1についての運動の式 は、 m 1 a T1 m 1 g である。 m2については、 である。 m 2 a T2 m 2 g M R T2 m2 m1 g 10.6 簡単な剛体の運動 M よって、 m1 m 2 a T 2 T1 m 1 m 2 g である。T2-T1はMを回す力である。 ちからのモーメントの大きさは、 N dt I d dt MR d 2 2 dt T2 T1 N R T1 T 2 である。(T1>T2) dL R I m2 m1 g a R だから、 m m I a m m g 2 1 2 1 2 R 10.6 簡単な剛体の運動 M 結局、m1が落下する加速度は、 a m1 m 2 g m1 m 2 I R 2 m1 m 2 g m1 m 2 となる。 1.m1=m2の場合、a=0 自明 R M 2 T2 T1 2.Mがm1,m2に比べて重ければ、aは小さい。 3.Mがm1,m2に比べて軽ければ、自由落下。 m2 m1 g 10.6 簡単な剛体の運動 (9)剛体振り子: 右図のように重心からaだけ離れたO点を 軸とした長さ2l 質量Mの棒の振動を考える。 1.O点回りの慣性モーメントは半径aの公転と 中心回りの自転の慣性モーメントの和である。 I 1 Ml Ma 2 M 2 g N aM g sin 2.力のモーメントは θが小さいとき dt I d dt d 2l θ 3 dL a O ~ aM g 2 I dt 2 N M ga 回転角に関する運動の式 θの振動の角速度は ~ M ga I ga 1 3 l a 2 2 10.6 ga 1 から l a 2 1 T 2 2 a O 2 3 3.周期 簡単な剛体の運動 l a 2 2l θ 2 M 3 ga 4.振動数ゼロ、周期無限大の条件はもちろん、 a=0(つりあい) 5.振動数最大、周期最小の条件は? l 2 a g a 3a 6.5.の理由を考えよ。 TA1 7.どんな形の振り子が振動数が大きいだろうか。 TA2 1 3 l 10.6 簡単な剛体の運動 1.長さ2lの棒状剛体振り子の角振動数は以下のようになる。 M ga ga 1 I l a 2 0 al 2 M AX 3 3 4 4 2.直径2lの球状剛体振り子の場合は? M ga I ga 2 l a 2 5 0 a l 2 M AX 3.質点振り子の場合は M ga I g l O 1 g l θ O 球 a g l M 1 5 4 8 g l θ l( a ) a l Mg 10.6 簡単な剛体の運動 5.メトロノームは剛体振り子の一種である。 錘の位置によって振動周期が変化する。 これまでの勉強を用いてメトロノームの 動作を解析しよう。 錘の位置がどこにあるとき、周期が最小に なるだろうか? ①棒の長さを 2l 重さを m とする。 ②錘は一辺 2d の正方形で重さ M とする。 重心が支点から距離 r にあるとする。 ③棒と錘の慣性モーメントは I ml 2 1 3 ml Mr 2 2 1 2 2 2 2 2 Md ml ml Md 3 3 3 2 常数 2 M r 変数 10.6 簡単な剛体の運動 力のモーメントは N lm rM g sin 大胆に N ~ lm rM g と仮定すれば、 lm rM g I lm rM g 1 2 2 2 2 m l m l M d 3 3 m l r g M m 2 1 m 2 2 2 l l d 3 M 3 M Al 2 r m M と置く。 2 M r B m M l 2 1 m 3 M l 2 2 3 d 2 10.6 g Ar Br r A m 簡単な剛体の運動 2 A B 2 2 l M m 2 1 m 2 2 2 m l l l d M 3 M 3 M のときにωは最大となる。 M m ならば r 2 3 d のときにωは最大となる。 構造上 rはd以下にはできないから、 錘が最下点のときにω最大で周期最小となる。 10.6 ま 簡単な剛体の運動 (10)ベクトルとその時間微分が直交する場合のベクトルの運動は どのようなものか? dA A 0 dt d dt A A 0 A A A A t x A t y A 2 2 ベクトルの回転運動。 Ar なら、rベクトルの回転運動。 dr dt v r v 1 dr v r dt v v 2 2 10.6 こま 簡単な剛体の運動 もし角運動量ベクトルならどうなる? A L L t x L t y L 2 2 2 それは角運動量ベクトルの回転運動である。 dL N だから、角運動量と力のモーメントが直交する場合 dt があるだろうか? 支点O回りに横倒しに回転しているコマが ある。重心の距離R,質量M,慣性モーメントI、 O 角速度ω。 角運動量は大きさ L I で紙面右向き。 力のモーメントは大きさ N M gR M g で紙面垂直奥向き。 10.6 こま 簡単な剛体の運動 角運動量と、力のモーメントは直交している。 I d (t ) M g R (t ) dt 角運動量と、力のモーメントとの単位ベクトルを i とj としよう。 I d i (t ) M gR j ( t ) dt d i (t ) dt M gR I O g j (t ) 角運動量の単位ベクトルiは角振動数 M M gR I で回転する。 10.6 簡単な剛体の運動 コマは支点垂直軸回りに回転する。 歳差運動という。 大変不思議。 O M g こまが傾いているときの 歳差運動の角振動数はいくらになるか。 TA3 θ g 来週実際に実験してみよう 綱渡りを上手にしたい。 重さ5kgの物体を持ってよいとしたら何が良いだ ろうか?考えよう。 答えの理由を説明しよう。