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Tokyo University of Science (TUS)
材料工学各論12−3&4
セラミックスの熱物性
物質の混合と反応生成物の生成に伴う
ギブズエネルギーの変化
銀-マグネシウム系の相図
XMg=0.5付近にCsCl型(図中のβ)が存
在
面心立方型(f.c.c)銀へのマグネシウムの
溶解度もh.c.p.マグネシウムへの銀の溶
解度も有限
F.c.c.相の曲線とAg軸の交点は純粋な
f.c.c.相の外挿曲線とMg軸の交点は仮想
的な純粋なf.c.c.マグネシウムの標準ギブ
スエネルギーを表している
Agとの交点は仮想的な純粋なh.c.p.銀標
準ギブスエネルギーを表す。
融点
• 配位数が多い物ほど高融点
• 実例配位数での理想的イオン半径からの隔たりが小さいほど
低融点
• 陽イオンと陰イオンの比が1:1に近いほど、あるいは単純な
組成ほど高融点
• 陽イオンの構造が希ガス構造に近いものほど高融点
• 陽イオンの原子価が変わりにくいものほど高融点
• 陽イオンの配位数が球対称に近いほど高融点
セラミックス(絶縁体)の熱伝導
3つに大別
1.格子振動過程
高温部での激しい格子振動が低温部の温和な格子振動を激し
くさせる過程
2.輻射過程
高温部から放射される光のエネルギーが低温部の弱い光放出
部へと光エネルギーを通して熱エネルギーを輸送する過程
3.対流過程
物質中の孔を通して気体が(主に空気)が流れ、高温部で熱せ
られた気体が低温部に達して熱を輸送する過程
1.は低温域で優勢であり、高温では2.が優勢となる。
3.は多孔性の程度により異なってくる。
輻射過程
格子振動過程
対流過程
5
10
15
対流過程は多孔質体で顕著に生じる
熱伝導率 : K
温度勾配 : dT/dx をもった長い棒を考える
Ju=-KdT/dx
Ju : 熱エネルギーの流束あるいは断面積を単位時間当たり
に
通過するエネルギー
T+DT
T
x
衝突(回折現象)を伴わなければ、単に温度差のみで熱伝
導は決まる
(長さや温度勾配に比例しない)
実際はエネルギーの多くは衝突を受けながら拡散する
気体運動論から考える
X方向の粒子流は
n : 分子数
< > : 平均を示す
平衡状態では等しい大きさの逆向きの流れが存在する
cを粒子の比熱とするとT+DTからTへcDTのエネルギーの放
出が生じる
τ:粒子の衝突までの平均時間
フォノンに対して
は一定である
より
となるため、熱伝導率Kは
である
絶縁性の高いセラミックスでは
熱伝導はフォノンが主体
フォノンの速度は物質中の速度と等しい
あまり温度に影響されない
熱伝導率は比熱容量と平均自由行程により決まる
Debye温度よりもかなり低温では
フォノン密度は低い
フォノン同士の衝突は少ない
平均自由行程は試料サイズとほぼ同程度
3
ö
æ
12 4
T
p NkB ç ÷ 定容モル比熱容量
Cv =
5
èq D ø
N:アボガドロ数
T3に比例
θD:デバイ温度
温度の上昇により
一端極大を示し
Debye温度以上で
温度Tに比例してフォノンの衝突回数が増加
フォノンの振動数は
k
BT
n =
n
フォノンの平均自由行程はTに反比例して減少
比熱容量は一定に近づく
熱伝導は
-1
k µT
フォノンの平均自由行程は二つの過程により決まる
1.幾何学的な散乱過程
2.他のフォノンによる散乱過程
原子間の力が単純な調和的であれば異なるフォノンによる
散乱(衝突)は無い
結晶の境界および格子の不完全性からのみ生じる
摩擦の無い壁を持った長い管
気体の弾性衝突は気体の運動量やエネルギーを変える事がない
エネルギーは不変
非調和相互作用では
は高温下では1/Tに比例
高温下では励起されたフォノンの数がTに比例する
フォノンの全数の増加により衝突回数が増加
平均自由行程が低下する
格子の不完全性
幾何学的な効果もフォノンの平均自由行程に影響
結晶の境界(粒界やドメイン)
同位元素の分布
化学的不純物
格子欠陥
非結晶構造
平均自由行程が試料幅と同程度になると平均自由行程はそ
の幅により制限を受ける
制限を受けない場合
制限を受ける場合
熱伝導率は試料の大きさの関数になる
同位体によるフォノンの散乱
欠陥構造によるフォノンの散乱
更に高温ではフォトンによる熱輻射の寄与
放射により温度を上げるのに必要なエネルギーに相当する熱容量は
æ¶E ö 16s n3 T 3
CR = ç ÷ =
è¶T ø
c
であり、
1
k = å Ci vi l i
3i
に代入すれば
16 2 3
k = s n T lt
3
lはフォトンの平均自由行程
t
s
n
はステファンーボルツマン定数
屈折率
つまり T 3 × l tに比例し、急激な熱伝導率の増加
黒体輻射のエネルギーは
700から1500℃で2〜3μmの波長に最大値
1〜3μmで透過性の大きいセラミックスでは高温になるほど
16 2 3
k = s n T lt
3
の l t が大きくなる。
500から2000℃にかけて0.01cmから10cm程度まで増加する
結晶学的には
Debye温度以上では比熱容量はほぼ一定なので、
フォノンの速度と平均自由行程により熱伝導は支配
される
強固な化学結合
原子の充填率が高い
対称性が高い
軽元素により構成されている
不純物、欠陥(固溶体を含む)、粒界、気孔の存在は
フォノンの平均自由行程を減少
熱伝導は低下
電子による熱伝導
金属
電気をよく流す、熱が伝わりやすい
例 電気伝導
熱伝導
→
→
電線、電極、など
鍋、フライパンなど
多くの金属では
・熱伝導kと電気伝導度sの比(k/s)は温度に比例
・比例定数は金属の種類によらずほぼ一定
セラミックスには電子伝導性セラミックスもある
熱伝導機構は
1.電子伝導
自由電子、半導体電子、π電子など格子中を自由に動く電子
熱は電子をキャリアーとして移動
2.フォノン伝導
原子の熱振動による
イオン結晶、共有結合性結晶で主に行われる
3.フォトン伝導
高温での放射エネルギーによる
イオン結晶などの光透過性の高い物質で、高温領域で生じる
金属と絶縁性セラミックスを比較すると
金属(キャリアを伝導電子のみとする)
比熱 0.3R (R:気体定数)
速度 108cms-1
平均自由行程 20nm
絶縁性セラミックス(キャリアをフォノンのみとする)
比熱 3R (R:気体定数)
速度 5×105cms-1
平均自由行程 2nm
k e @ 20
k ph
伝導電子による熱伝導は大きい!
熱伝導
電子による熱伝導
フォノンによる熱伝導
フォトンによる熱伝導
固体に温度勾配が生じる
高温側
大
電子やフォノン、フォトンの密度
量子の移動(熱の移動)
小
低温側
ヴィーデマンーフランツの法則
k
sT = L
これをローレンツ数と呼ぶ
金属の熱伝導を自由電子モデル
に基づき考える
s=enm であるからキャリア濃度により熱伝導は依存
図4−16
273Kにおける熱伝導率と電気
伝導率の相関性
L=2.44×10-8WW/K2
固体内に温度勾配
があるとき
「熱」は → 逆向きに流れる
単位面積を単位時間に流れる熱エネルギー
→ 熱流ベクトル q
熱流速はQは温度勾配に比例
Q=-
k
kdT
dx
:熱伝導率 (Wm-1K-1)
熱伝導のキャリア(伝導電子やフォノン)に対して
分子運動論を適用すると
1
k = å Ci vi l i Ci
3i
i種キャリアの比熱
Ci º ci ´ ni
1個あたりの比熱
vi
キャリアの運動速度
li
キャリアの平均自由行程
キャリア密度
電子による熱伝導
1
k = Cel v2t
3
p 2 kB2
=
ntT
3m
Cel
v
t
電子比熱
電子の速度=フェルミ速度
電子の緩和時間
フォノンによる熱伝導
1
k = Cphvl
3
1
2
= Cphv t
3
Cph
l
v
t
フォノンの比熱
フォノンの平均自由行程
フォノンの速度
フォノンの緩和時間
電子比熱の測定値の比較
自由電子の質量 : m
実際の電子の質量 : mth
•
•
•
mth
m
γ(測定値)
=
γ(自由電子)
伝導電子と静止した結晶格子のポテンシャルとの相互作用
バンド有効質量
自由電子のエネルギーと波動ベクトルの関係で、ゾーンの境
界では異常な曲率を持つ
曲率は1/mにより決定される
伝導電子とフォノンの相互作用
電子は近傍の格子をひずませる
運動する電子は近傍のイオンを引きずろうとする
(有効核電荷)
伝導電子間の相互作用
運動する電子は周囲の電子気体のなかに慣性的な反作用を
誘発
電子伝導を示す材料の熱伝導を抑制するためには
•
•
•
•
微粒子により構成されたバルク体を作製する
より大きな原子番号の元素で固溶置換
欠陥構造の導入(酸素欠陥、金属イオン欠陥など)
ガラス構造(アモルファス構造)
問題点
これらの手法では伝導電子の移動度を低下させ、
電気伝導度を減少させる
絶縁性の高いセラミックスや有機高分子
伝導電子濃度が低い
フォノンによる伝導が支配的
高温ではフォトンによる寄与が生じる
伝導電子濃度の高い物質
伝導電子濃度が高い
伝導電子による伝導が支配的
多層セラミックスの熱伝導
多くのセラミックスは1つまたは2つ以上の
固相と気孔の混合物
気孔
第二成分の固相
熱流束
定義
熱流束が板面に平行
各層の温度勾配は同じ
熱流はより熱伝導の良い方を通って流れる
並列回路と等価となる
熱伝導率κmixは
熱流束
直列回路と等価となる
定義
熱流束が板面に垂直
各層の温度勾配は同じ
熱流はより熱伝導の良い方を通って流れる
となり、熱伝導はより小さな熱伝導を持つ相により支配される
実際のセラミックスでは第二相や気孔などが混在
このときの近似式として
と
はそれぞれ連続相、分散相の熱伝導率
は分散相の体積分率
総括
絶縁体セラミックスの場合は
・ フォノン長よりも小さな微粒子で構成された微構造
・ 固溶などで欠陥構造を誘起
・ 微細な気孔が均一に配置
・ 第二成分が析出
するような構造であると熱伝導は低下する
導電性セラミックスの場合は
・ キャリア生成のために固溶を施すと伝導電子(正孔)により熱伝導度は増加する
・ 固溶により欠陥構造が誘起され、熱伝導は低下する
・ 粒界相などの生成により熱伝導は低下する
・ 粒界相が絶縁性の場合、電気伝導度は減少する
・ 気孔の生成により熱伝導は減少するが、電気伝導度も減少する
・ 第二成分を析出させると熱伝導は減少する可能性があるが、電気伝導度も減少す
る可能性がある
熱膨張
物質を加熱
一般的に体積が増大
平均位置の周りの原子振動数が増加
振動により原子間距離が減少すると引力よりも急激に変化
原子間反発(原子間ポテンシャルエネルギーの増大)
原子間ポテンシャルの谷が非対称であれば平衡原子間距離が増大
セラミックスの熱膨張の原因は主に原子の熱振動によるものである
低温
高温
高温になると格子エネルギーが増大し
クーロンポテンシャルがより強く働く
原子間距離が広がる
結合様式と熱膨張挙動
共有結合性結晶
ポテンシャルの谷がシャープで対称性が高い
ポテンシャルエネルギーが増加しても原子間距離の増加が比較的小さい
熱膨張が小さい
イオン結晶
高温ではクーロン引力が支配的にポテンシャルエネルギーを決める
ポテンシャルエネルギーは非対称的
原子間距離が増大
熱膨張は大きい
金属
結合力が小さい
密な充填
熱膨張は大きい
有機高分子
分子内は共有結合
分子間は弱いファンデルワールス力など
全体では熱膨張は大きくなる
熱膨張係数
構造異方性の高い結晶では熱膨張係数がその方位により異なる
b=
a=
1 V 2 - V1
´
V1 T 2 - T 1
b
3
線熱膨張係数
単結晶の場合
多結晶体ではその平均
を求めることとなる
表
代表的な物質と線熱膨張係数
分類
セラミックス
金属
有機高分子
物質
線熱膨張係数(×10-6/K)
Si3N4
3.3 〜 3.6
SiC
5.1 〜 5.8
Al2O3
8.5
MgO
13.5
NaCl
40.0
SiO2ガラス
0.5
ダイヤモンド
-0
W
4.6
Zn
39.7
Pb
29.3
ナイロン6
83
ポリエチレン
120
ポリエステル
55 〜 100
結晶のパッキングの影響
Al2O3, MgO•Al2O3などはパッキングがよく(充填率が高い)、イオン結合性が高い
このような物質は熱膨張係数が大きい
イオン結合性(%)=[
]×100
A nB m 分子
χA
χB
| χ A- χ B|
イオン結合性
(%)
結合性
H2
2.1
2.1
0.0
Li3N
1.0
3.0
2.0
LiF
1.0
4.0
3.0
CH 4
2.5
2.1
0.4
NH 3
3.0
2.1
0.9
NaH
0.9
2.1
1.2
MgO
1.2
3.5
2.3
0
63
9 0( 8 9 )
3.9
18
30
68
共有
結合性
イオン
結合性
イオン
結合性
共有
結合性
共有
結合性
共有
結合性
イオン
結合性
パーセントイオン性
電気陰性度の差が1.7が目安となる
1
コランダム構造
細密充填がなされる
スピネル構造
4配位と6配位により構成
2
3
電気陰性度の差
MgOやMgO•Al2O3な
どのイオン性結晶の
場合
NaCl, MgO
イオン性結晶の場合、
陽イオンと陰イオンは剛球体モデル
でほぼ細密充填として見なされる
格子の熱振動の際にエネルギーを
吸収できる場所が無く、個々のイオン
間で振動
振動時のイオンの位置を得るため
に全体が膨張
共有結合性が強い化合物の場合
電子を共有しながら連結
方位量子数などにより決定された結合角
イオン結晶と比較してパッキング性は低く、
空間を多く持つ
加熱により増加した格子エネルギーは
結合角を変化させる事で吸収される
小さな熱膨張係数となる
結合強度が高い場合、原子の振幅が小
さくなるため、熱膨張は小さくなる
ポテンシャルの谷の幅が小さく、
左右対称性が高い
NaCl, MgO
SiO2
NaCl型のイオン結晶
高温型クリストバライト
石英(水晶)
電気陰性度:Si 1.8, O 3.5
差:1.7
高温になるに従い相転移し、低密度化
空間を多く持ち、熱振動による膨張を緩和
する
小さな熱膨張係数を実現する結晶構造へ
熱膨張係数の結晶方位依存性
熱膨張
結晶の対称性が反映される
原子の充填率、結合強度が影響
材料
SiO2(β-石英)
CaCO3
ZrSiO4
熱膨張係数(×10-6/℃)
a軸方向
-0.1
-6.0
3.1
b軸方向 c軸方向
-0.1
-1.0
-6.0
25
3.1
4.7
軸により負の熱膨張を示すのは構造異方性が高いことが原因