補完的生産者 - nifty

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企業評価論
9月30日 経営戦略分析
1
企業分析・評価のフレームワーク

経営戦略分析
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

産業分析・競争戦略分析・企業戦略分析
会計分析
財務分析
将来性分析
2
経営戦略分析と他の分析との連繋

会計分析


財務分析


事業に関する重要な利益要因・リスク要因を特定し、
会計政策の検討に資する
現在と過去の業績の持続可能性に関し、必要な戦略
を明らかにする
将来性分析

予測に必要な仮定を明らかにする
3
産業分析


分析対象の企業が属する産業の収益性を(定性
的に)分析する
ポーター(「競争の戦略」1980)の「五つの要因」
が代表的な分析のフレームワーク



現在または将来の企業間・製品間の競争
買い手・売り手の交渉力(力関係)
産業の特定が重要である

特定の仕方によって結論が異なりうる
4
ゲマワット P41 図表2-1



収益性(ROE)から推定(株主)資本コストを差し
引くと同時に、各産業グループの規模を投下資
本で表している
縦軸に経済的収益性をマッピングすることで、事
業環境における潜在的収益を視覚的にとらえる
産業間の収益性が大きく異なることを確認
5
6
現在または将来の
企業間・製品間の競争
高い?
低い超過利益
獲得可能性
既存企業間の競争
新規参入の脅威
代替製品の脅威
低い?
高い超過利益
獲得可能性
7
既存企業間の競争
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


産業の成長率
集中
差別化
切り替え費用
規模の経済・学習効果
固定費対変動費比率
超過生産能力
退出障壁
8
新規参入の脅威




規模の経済
先発企業の優位性
流通チャンネルへのアクセスと関係
法的障壁
9
代替製品の脅威


相対的な価格・性能
顧客の代替意欲
10
買い手または売り手としての
交渉力
高い?
高い超過利益
獲得可能性
買い手としての交渉力
売り手としての交渉力
低い?
低い超過利益
獲得可能性
11
買い手・売り手の交渉力





価格感応度
製品の差別化
買い手にとっての製品の品質やコストについて
の重要度
売り手・買い手の数
買い手の大口度
12
ポーターのフレームワークを
一般化した成功例
ブランデン・バーガー
ネイルバフ
ゲマワット P56
図表2-6
価値相関図
13
価値相関図

価値相関図を用いることにより、補完的生産者
が事業の成否を左右する度合いが明らかになる。
顧客に補完製品・サービスを
提供したり、供給業者に補完
資源を提供する売り手
14
補完的生産者

補完的生産者は競合者と対をなす



需要面:製品の購買意欲を高める
供給面:供給業者が提供する生産財の価格を下げる
分析に補完的生産者という要素を加えることで
「競争要因」アプローチに協調的な次元が加わ
る(ブランデンバーガー・ネイルバフ)
15
補完的生産者


補完的生産者との協調により拡大されたパイの
一部を確保するにあたって、ある程度の競争が
行われていることに注目
通常、一プレイヤーとしての補完的生産者が獲
得できる価値の大きさは、次の6要素によって決
まる
16
補完的生産者

相対的集中度


補完的生産者の集中度が競合他社より高い場合、補完
的生産は交渉力が強く、相対的に見て集中度が断片的で
ある場合は交渉力が弱い
相対的な買い手・売り手のスイッチング・コスト


買い手や売り手にとって、補完的生産者を切り替える際に
発生するスイッチング・コストのほうが競合相手を切り替え
る際より高い場合、補完的生産者の交渉力は強まる
交渉力の程度によって、買い手と売り手が確保できる経
済的パイの規模は大きく変わる
17
補完的生産者

アンバンドリングの容易さ


消費者は製品とは別に補完製品を購入し、使用でき
れば、補完製品が及ぼす影響は弱まる
プルースルーにおける違い

補完的生産者が(差別化などによる)需要の牽引や、
(占める量などによる)供給促進で重要な役割を果た
すほど、彼らの影響力は強まる
18
補完的生産者

非対称的な統合の脅威


競合企業が補完的生産者の市場に参入するおそれ
より、補完的生産者が競合企業の市場に参入するお
それのほうが信憑性が高い場合は、補完的生産者の
影響力は強くなる
パイの拡大率

行動学的に見て、競合企業と補完的生産者が分け合
うようパイの規模が急速に拡大している場合は、創出
された価値をめぐる補完的生産者との争いは緩和さ
れる
19
競争戦略分析


分析対象の企業が業界内でどのような方法を用
いて持続可能な競争優位(「強み」)を確立して
いるかを定性的に分析する
コスト・リーダーシップと差別化(+それぞれにお
ける集中)がキーワード
20
ゲマワット 図表3-1
価値を創造する企業
(収益性
大)
競争優位
利益が資本コスト以下の企業
(収益性 小)
21
22
競争の戦略
コスト・リーダーシップ
差別化
23
コスト・リーダーシップ

類似の製品・サービスをより低いコストで生産す
る







規模・範囲の経済
効率的生産
製品デザインの単純化
原料費の削減
低コストの流通
低い研究開発・広告宣伝投資
厳格なコスト管理
24
コスト・リーダーシップ

コスト・リーダーシップを実現することによって、
経営にゆとりが生じる





業界内で平均以上の収益性を確保できる
買い手の値引き攻勢をかわせる
原材料のコスト増に対応できる
代替製品に対して同業者より優位にたてる
参入障壁を高くすることができる
25
差別化

特徴のある製品やサービスを、顧客が受け入れ
うるプレミアムを上乗せして販売する





優れた品質
多様な製品
充実したサービス
柔軟な配送
ブランド・イメージや研究開発への投資
26
コストvs差別化
ポーターによる基本戦略
低コスト
成功企業
差別化
どちらかに
基づいた競争を
選択する
「集中」のオプション
27
基本戦略の概念が役立った理由
②.
①.
低コスト戦略に必要な要件
低コスト
相対性
異
な
る
差別化
差別化戦略に必要な要件
企業内の統一を図り、一つの方向に向かうために、
企業は競争の方法をどちらか一つに決めなければならないこともある
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ポーターの基本戦略の問題点
低コスト
差別化
相対性は絶対的か?
企業は、優れた製品をより低コストで
生産する方法を見つけ出すことが可能
(例)
•日本の産業における低不良率による低コストと高品質の両立
•マクドナルドのブランド認知度と安定した品質の両立
29
ポーターの指摘への疑問
ポーター:二重の競争優位は珍しい
対立
低コストと差別化の「トレードオン」
こそが、産業での競争を変える基本的な方法
30
ポーターの指摘への疑問
相対的コスト
差別化
双方の視点から競争上のポジションを検討し、
基本戦略の相対性を取り入れた考え方が主流に
最適なポジショニング:相互に排他的な基本戦略の中での選択ではなく、
コストと差別化の間の広い範囲でのトレードオフから
成り立つ選択を反映している(pp88~89参照)
31
競争優位の獲得と維持


ひとたび獲得した競争優位はそれを持続させる
ことが必要である
競争優位を持続させるための要因



企業の強み(コア・コンピータンス)
価値連鎖(バリュー・チェーン)
上記の要因の独自性と模倣の困難さが競争優
位の持続性を決定する
32
事例分析:
パソコン業界におけるDell(1999年頃)

現在または将来の企業間・製品間の競争




既存企業間の競争
新規参入の脅威
代替製品の脅威
買い手・売り手のバーゲニング・パワー


買い手のバーゲニング・パワー
売り手のバーゲニング・パワー
33
PC:既存企業間の競争

業界の成長性は鈍化しつつあった


沢山の競争相手


激しい価格競争
業界が細分されており、価格協調は見られない
低い切り替え費用

価格が重要
34
PC:新規参入の脅威

低い新規参入コスト


例:Dell自身
先発企業の優位性?

技術的にはほとんど皆無


インテルとMSに依存している
売り手・買い手との関係

継続取引による優位性の低下
35
PC:代替製品の脅威

Apple, Sun, Palm?


当面の脅威ではなさそう
ゲーム機?

Maybe...
36
PC:売り手としての交渉力


消費者は価格に敏感である
コストと品質の重要性


企業カスタマーの取引は大口であり、売り手側にバー
ゲニング・パワーはない
IT部門(ビジネス・ユース)にとって品質は大変重要
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PC:買い手としての交渉力

二社の「単一サプライヤー」

インテル・MSの寡占



AMDやCylixのCPU市場への参入
PC Unix(Linuxなど)の影響?
当面改善されそうな見込みは低いが、中長期的
に交渉力が強くなる可能性がありそう
38
PC業界:結論



激しい競争
低い参入障壁
低い交渉力(売り手・買い手)
業界の収益性の見通しはあま
り明るくなさそう
39
Dellの競争戦略

Dellのビジネスの特徴(コスト・リーダーシップ)





直接販売
注文生産
少額の売掛金
第三者によるサービスの提供
焦点を合わせた研究開発への投資
40
企業戦略分析

企業が複数の事業を行うことによって価値をより
多く創出できているかどうかの分析


前二者の分析は個別の事業を主な対象とした
ここでは企業が複数の事業を組み合わせることによ
る価値の創出or破壊について分析する
41
多角化のメリット

組織内部で取引を行うことにより、市場取引より
も低い取引コストを享受できる可能性がある



情報伝達コストの削減
本社による効率的な意思決定
市場から入手することが困難な資産を共有できる
42
多角化のデメリット

一方で、組織内部で取引を行うことが、取引コス
トを上昇させる可能性もある


経営者の専門性の欠如
(分権化した場合)部門間のコンフリクトが発生する
(エージェンシー・コスト)
43
多角化vs集中


多角化によって企業が価値を創出しているかど
うかはケースバイケース
分析にあたって下記に留意





市場の取引コストが高いかどうか
「範囲の経済」を享受できる資源があるか
その資源と事業ポートフォリオは適合しているか
決定権限の委譲は適切か
エージェンシー・コストの管理はできているか
44
多角化vs集中

近年の研究は、多角化企業の事業ポートフォリ
オは株式市場においてディスカウントされている
ことを示唆している


Berger and Ofek (1995 JFE) and Lang and Stulz
(1994 JPE)
しかし、単なる多角化と、「コア」のある多角化と
は意味が異なる?

Ushijima and Fukui (2007)
45
事例分析:
Amazon.com (1999年頃)

米国のオンライン書店の草分け



事業の拡大に注力(CD,ビデオ、ギフト…)
海外へも進出(英国、日本…)
アナリストや投資家の見方は様々

コンセンサスは得られていなかった
46
次回への準備

次回はパレプ第3~8章と須田第1~2章を取り
扱う

パレプは第3章を取り扱う

他は「ご参考」
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