Transcript 自然エネルギーの限度
自然エネルギーの限度 2011年9月21日 小野章昌 エネルギー問題を考える (1)化石燃料生産ピーク (2)「エネルギー収支比」が将来の尺度 (3)再生可能電力の限度 (1)生産ピーク:世界原油生産量 石油・ガス生産ピーク(ASPO予測) ガス 石油 石炭の生産ピーク 出典:ウプサラ大学Aleklett教授 (2)将来の尺度はエネルギー収支比 (EPR: Energy Profit Ratio) エネルギー収支比(EPR)= 回収エネルギー/投入エネルギー 電中研スタディー 主な前提条件(寿命30年) システム 発電出力 (MW) 設備利用率 所内率(%) (%) 75 3.4 原子力 1,000 石油火力 1,000 75 6.1 LNG火力 1,000 75 3.5 石炭火力 1,000 75 7.4 風力 0.1 20 10 太陽光(事 業用) 1.0 15 5 エネルギー収支比(設備寿命30年) 原子力 76 石油火力 21 石炭火力 17 LNG火力 6 風力 6 太陽光 5 0 10 20 30 40 50 60 70 出典:電中研「発電システムのライフサイクル分析」1995年 80 (3) 自然エネルギーの特質と限度 エネルギー資源の3条件 (東京大学名誉教授 石井吉徳) • 濃集している • 大量にある • 経済的に回収できる 自然エネは最初の条件を満たして いない (間欠性:途切れ途切れになる) 風力発電の変動 (アイルランドの例) 出典:ケンブリッジ大学 Dマッケイ教授資料 火力発電によるバックアップ • 風力も太陽光も日間、週間、月間、季節間の 変動が大きい。 • 急速立上げ、停止が可能な石油火力、ガス 火力によるバックアップが不可欠 • 基幹電力にはなり得ない • 石油火力・ガス火力容量以上の発電は無理 広大な面積 • 電力需要(1兆kWh)の10%を太陽光で賄おうとす れば、1億kWの発電容量を必要とする • 住宅の屋根で半分(5,000万kW)、空き地利用のメ ガソーラーで半分(5,000万kW)を賄うとすれば: • 南向き屋根を持つ戸建1,700万戸すべてに3kWの パネルを設置する必要がある(法律による強制?) • メガソーラー(2万kW)2,500ヶ所を作るには850km2 の土地を要する。8.5kmx100kmに相当 太陽光発電コスト見通し 出典:電中研「太陽光発電コストはどこまで下がるか」 全量固定価格買取制度(FIT)の罠 • ドイツは2000年からFITを導入、太陽光発電 容量は1,800万kWとなった。しかし、 • 2011年の消費者超過料金は3.52ユーロセン ト(4円)/kWh。毎月500kWh消費する家庭の 負担額は2,000円/月。 • 2010年にこの制度を止めても消費者の長期 債務(20年間)は10兆円を上回る(RWI分析) 年間5,000億円以上の債務 ドイツ電力消費者に長期の債務 (太陽光) 今後支払分(25億ユーロ/年) 既支払分 出典:ルール経済論文No.156 電力大量貯蔵は無理 • 1000万kWの風力発電を設置したと仮定する 年間発電量は175億kWh(原発2基分) • 凪に備えて200時間(8日間)分の電力貯蔵 能力が必要(ドイツVDEレポート) • 貯蔵容量20億kWhが必要となる • 揚水発電で行うとすれば、英国、日本の最大 揚水発電所の貯蔵容量が1000万kWhである ことを考慮すると200ヶ所必要となる • 電気自動車(40kWh)で行うと5000万台必要 発送電分離・分散型電源の問題点 • 太陽光・風力は商品として半人前(数量・引渡 時期が天候次第、品質も劣る) 自由化に は最も不向き • スペインでは送電部門を公営独占とし、FITに よる再生可能電力優先買取と水力・ガス火力 に対する強制運転指令がある故に機能 • 分散型電源で地方ごとに需給バランスを取る ことは至難の業 パイを小さくはできない 省エネで電力需要は増加 出典:英国気象変動委員会 The Fourth Carbon Budget 省エネは電化により可能 • 自動車を電気で動かす(エネルギー消費は 1/2以下) • 給湯を電気で行う。ヒートポンプの利用により 空気中・地中の熱を利用(エネルギー消費は 1/2以下) • 省エネはエネルギー効率アップ(生活向上)。 節電は不便を伴う。 • 省エネによりエネルギー消費は減るが、電力 消費は増える。 この前提は無理 出典:飯田哲也氏 「3.11後のエネルギー戦略ペーパーNo.1」 石油・ガス欠乏時代の発電(2兆kWh) 太陽光, 1100 風力, 1000 水力, 1000 石炭, 3000 原子力, 14700 単位:億kWh