電子濃度の増加とともにtrionピークは高エネルギー側に

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研究室打ち合わせスライド
東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程1年
物性研究所 秋山研究室
井原章之
<アウトライン>
第一部 : 最近の報告
試料・光学系・光学測定と計算・エッチングとIV測定
第二部 : 論文について
論文に用いる図と式・概要・referenceの解説
第一部 最近の報告
試料と光学系・光学測定と計算・エッチングとIV測定
n型にドープしたT型量子細線試料
光学系(NEW:xyz stage② / 2波長励起)
②
1Dの電子濃度依存性(5Kと50K)
50K
wire
arm
500
PL
PLE
450
0.7V
400
intensity (arb. unit)
350
0.2V
300
250
X0.15V
200
150
0.1V
100
X
50
0
1.558
0V
1.563
1.568
1.573
1.578
photon energy (eV)
laser
1.583
1Dwireの電子濃度依存性(5Kと50K)
Vg=0.7V
500
wire
arm
450
50K
400
intensity (arb. unit)
350
40K
300
250
30K
200
150
100
50
0
1.555
20K
FE
BE
5K
1.565
1.575
photon energy (eV)
1.585
1Dの高範囲PLE
400
5K
350
PL
wire
arm
0.7V
0.7V
×5
BE
FE
PLE
×40
300
intensity (arb. unit)
0.35V
0.35V
250
200
×50
0.15V
0.15V
150
X100
×40
0V
X
50
0
1.56
0.0V
1.565
1.57
1.575
1.58
1.585
1.59
photon energy (eV)
Excited
state?
Continuum?
Itoh, Applied Physics Letters 83, 2043 (2003)
2Darm wellの電子濃度依存性(5Kと50K)
arm
50K
600
PLE
PL
0.7V
500
0.5V
intensity (arb. unit)
400
0.45V
300
200
0.4V
100
0.3V
0
1.57
1.575
1.58
1.585
1.59
photon energy (eV)
laser
1.595
0.2V
2Darm wellの電子濃度依存性(5Kと50K)
arm
50K
500
600
PLE
450
PL
0.7V
500
400
0.5V
350
300
intensity (arb. unit)
intensity (arb. unit)
400
250
200
150
0.45V
300
200
0.4V
100
0.3V
100
50
0
1.558
1.563
1.568
1.573
photon energy (eV)
1.578
1.583
0
1.57
1.575
1.58
1.585
1.59
photon energy (eV)
laser
1.595
0.2V
arm
PLE
700 0.8V
PL
600 0.7V
500
0.6V
intensity (arb. unit)
2Dの高範囲PLE
a050321030 and 31 - 37.SPE
10.11-00.1 #1 perfect accumulation / one side doping
omec: -3300 (arm ex. PL)
Vg: 0.2 to 0.8 step 0.1
ND: 1/2 1/4 1/10 1/100
pos.: arm +0 (3micron left of center)
t(s): 2 T(K): 3.647
400
0.5V
300
0.4V
200
0.3V
100
0.2V
0
1.57
1.58
1.59
photon energy (eV)
1.6
自由電子近似計算
モデル:有効質量近似の2バンド、伝導帯電子がフェルミ分布、帯間光学直接遷移
  e  h
吸収
2
 2 ke

2me
発光
D1D ( )  1/ 
D2 D ( )  ( )
(ke  k h )
2
 2 kh

2mh
ただし、
計算結果(電子濃度/温度依存性)
1D
1D
T = 7K
Γ= 0.2meV
μe :パラメータ
2D
T : パラメータ
Γ= 0.2meV
μe = 4.8 meV
1Dの電子濃度依存性実験と計算の比較
2Dの電子濃度依存性実験と計算の比較
1Dの温度依存性の比較(高濃度)
Vg=0.7V
500
wire
arm
450
50K
400
intensity (arb. unit)
350
40K
300
250
30K
200
150
100
50
0
1.555
20K
FE
BE
5K
1.565
1.575
photon energy (eV)
1.585
2Dの温度依存性(高濃度)
Wireにおける2波長PLE
verdi
millenia
a050410021.SPE
1Dの電子・正孔対濃度依存性
wire
arm
450
400
PL
arm
90μW
PLE
350
wire
900μW
intensity (arb. unit)
300
250
200
wire
350μW
150
100
50
0W
0
1.56
1.565
1.57
1.575
photon energy (eV)
a050410022.SPE
1.58
1.585
エッチングについて
①5×5mm程度にへき開
②レジストで一部を覆う
③5分間100℃で熱して固める
④4.5μm目指してエッチングを行う
(50ml H2O 40ml H2O2 5ml H2SO4)
(0.1μm/秒) × 45秒 程度
何通りかの攪拌方法を試した
⑤アセトンでレジストを溶かす
⑥顕微鏡で撮影
⑦Dektakで測定
エッチング ~ 上下に揺する場合
×
表面に白いムラが現れる。
白い部分は削りが不十分
エッチング ~ 攪拌なしの場合
○
問題なさそう
エッチング ~ 回転させる場合
○
小さな段差があるのが気に
なる。
エッチング ~ もともと表面が汚い場合
△
回転させても白いムラが現
れる。
エッチング ~ まとめ
(攪拌 / 深さ)
表面状態
上下 / 4.5μm
×
回転 / 4.5μm
回転 / 3.2μm
なし / 4.5μm
○
○
○
室温
室温 IV 77K IV
光照射下IV 光なし 光なし
次に、Inを4箇所ほど付けて
アニーリング(450℃30分)を
行う。コンタクトが取れていれ
ば電圧をかけたときに電流が
流れる。
IV測定 ~ 回転霍乱 & 4.5μm
回転させて4.5μm削った試料の
IV測定結果
室温では光を当てなくても
電流が流れるものの、
77Kにすると電流がほとん
ど流れなかった。
実は表面状態が良くない?
4.5μmは削りすぎか?
(攪拌 / 深さ)
表面状態
回転 / 4.5μm
○
室温
室温 IV 77K IV
光照射下IV 光なし 光なし
△
△
×
IV測定 ~ 回転攪拌 & 3.2μm
室温
77K
(攪拌 / 深さ)
表面状態
回転 / 3.2μm
○
室温
室温 IV 77K IV
光照射下IV 光なし 光なし
△
×
△
IV測定 ~ 攪拌なし & 4.5μm
室温
77K
(攪拌 / 深さ)
表面状態
なし / 4.5μm
○
室温
室温 IV 77K IV
光照射下IV 光なし 光なし
○
○
△
IV測定 ~ まとめ
△:ダイオード的
○:ohmic
(攪拌 / 深さ)
表面状態
上下 / 4.5μm
×
回転 / 4.5μm
回転 / 3.2μm
なし / 4.5μm
○
○
○
室温
室温 IV 77K IV
光照射下IV 光なし 光なし
ー
ー
ー
△
△
○
エッチングは深すぎるとよくない。
攪拌はしない方がいいかも。
△
×
○
×
△
△
再実験!
第二部 : 論文について
論文に用いる図と式・概要・referenceの解説
論文 ~ abstract
一次元電子濃度可変の高品質n型ドープ量子細線のPLおよ
びPLE測定を行った。
電子ガス濃度の増加と共にexcitonの吸収ピークが急激に減
衰し、入れ替わりにtrionの吸収ピークが2meV程度低エネル
ギー側に現れて非対称な単一のピークとなるという、一次元
系特有のスペクトル変化を観測した。
高電子濃度で観測されるなだらかな吸収端と、Trionの吸収
ピークとが共存する濃度領域があり、それぞれフェルミエッジ
と、一次元状態密度の発散に相当することが、二次元系の
測定結果や自由電子近似計算との比較によって分かった。
論文に用いる図
考察
a)
Γ=0.2meVというパラメータにおいて、0.3~0.4Vで観測された
ダブルピーク構造がよく再現されている。低エネルギー側のピークは一
次元状態密度の発散を反映したもので、高エネルギー側の山はフェル
ミエッジに相当する。
b)
Trionの吸収ピークの形状が非対称になる点については、一次
元状態密度の特異性の影響であることを示唆している。
c)
高電子濃度におけるPLEについては、多体効果なしの自由電
子近似計算でも良く一致する。そもそも一次元ではFES効果が現れな
いのか、もしくはさらなる低温や正孔の局在が必要である可能性もある。
d)
発光スペクトルのレッドシフトやブロードニングは単純な一電子
近似では説明できず、BGR効果を取り入れるほか、局在正孔の分布が
重要である可能性もある(ref.*)。
e)
低電子濃度におけるexcitonやtrionなどの束縛状態は表現され
ない。
考察
aやbにおいて一次元状態密度の発散が現れていると主張したわけだ
が、もちろん二次元系の場合は状態密度に特異性はないため、これら
の現象は現れないことになる。
このことを確認するために、我々は同じ測定系そして同じ試料を用いて
二次元系の実験を行った。
以下、同じ試料に含まれるarm wellに形成された二次元電子系につい
て同様の実験を行った結果を示す。
論文に用いる図
考察
f)
Excitonは高電子濃度まで根強く観測される。一次元系で
excitonが急激に減衰するのと異なっている。低次元電子ガス内の
excitonの安定性が1Dと2Dで異なることを示唆している。
g)
Trionは1Dほど鋭くなく、高エネルギーテールにexcitonが乗る
ので形状ははっきりしない。(b)で主張した点とコンシステントである。
h)
TrionからFEへなめらかに移り変わる。(a)で主張した点とコンシ
ステントである。
i)
高電子濃度における吸収ピークの形状が、自由電子近似とは
一致しない。フェルミエッジ近傍で強度が増大しているようにも見えるの
で、FESの現れと考えられる。
j)
これらの二次元系の実験結果は他のグループの実験結果(×
3)とよく一致しているほか、理論的に指摘されている点(×1)ともよく一
致している。
考察
以上の1Dと2Dの結果を比較することで、以下の二点において1次元系
特有の性質が観測されていることが分かる。
①
一次元電子ガス濃度の増加と共にexcitonの吸収ピークが急激
に減衰し、入れ替わりに2.0meV低エネルギー側に現れるtrionの非対
称な吸収ピークが単一ではっきりと観測された。
②
Trionの吸収ピークと、高電子濃度で観測されるなだらかな吸収
端とが共存する濃度領域がある事が分かったが、それぞれ一次元状態
密度の発散とフェルミエッジの吸収端に相当することが、二次元系の測
定結果や自由電子近似計算との比較によって分かった。
論文に用いる図
論文に用いる式
I ( )   D j ( ) f e ( ) f h ( ) (  Eg   )d
A( )   D j ( )[1  f e ( )] (  Eg   )d
1 2m 1
D1D 
 2 

n1D   D1D ( ) f e ( )d
0
もしくは
D1D 
1

n1D 
1

2m  1
f e ( )d
2 0


論文 ~ まとめ
Excitonはneの増加と共にブルーシフトしなが
ら急激に減衰する。(1D特有)
trionの吸収ピークが2meV程度低エネルギー
側に現れて非対称な単一のピークとなる。(1D
特有)
Trionは電子濃度と共にシフトを示さず、FEと
共存して観測され、状態密度の発散とフェル
ミエッジに相当するダブルピークであることが
分かった。(1D特有)
高neで観測された吸収端(FE)はなだらかで、
多体効果なしの自由電子近似でよく一致する
(正孔の局在や、さらなる低温が必要?)。
PLの変化を理解するにはBGR効果や、局在
正孔の分布を考慮する必要がある。
論文 ~ 背景
半導体量子構造に形成される低次元電子ガスの光学応答と
いう研究舞台では、FESやBGRなどの多体効果に加えて、
excitonやtrionなどの束縛状態の安定性、動く正孔の効果や
有限温度や磁場などの外場の効果が顕著に現れることが期
待され、理論・実験ともに様々に調べられてきた。
特に二次元電子系では、光学スペクトルの電子濃度依存性
や温度依存性においてFES効果などの多体効果を観測した
例が報告されており、理論との詳細な比較を行うに至ってい
る。
さらに系を一次元にした場合、状態密度の発散という特異性
が現れるほか、朝永Luttinger流体としての性質が現れること
が期待される。
励起子効果やFES効果、動く正孔の効果についても特異的
な性質が指摘されている一次元電子系であるが、これらの効
果一つ一つが光学スペクトルに与える影響を実験的に検証
した例は少ない。
理想一次元電子系を有する高品質な量子細線試料を作製
する技術や、単一の細線に対する光学測定を高感度で行う
技術などの、ユニバーサルな実験結果を得るための技術を
欠いていたのが理由である。
本論文では、電子ガス濃度可変のゲート付きn型ドープ量子
細線のPLおよびPLEスペクトルに現れる一次元状態密度の
特異性の影響について報告するが、これらの成果は成長中
断アニーリング法とへき開再成長法を用いた高品質T型量子
細線作製技術、そして高感度顕微分光技術によって得られ
た、非常にユニークなものである。
Ref.1 Mahan
Mahan, Physical Review 153, 882 (1967)
“Excitons in Degenerate Semiconductors”
伝導帯の電子が縮退した直接遷移型半導体
における、バンド間遷移を計算。
縮退電子はフェルミガスとして扱う。
電子-正孔間のクーロン引力からなる励起子
状態が吸収スペクトルに影響を与える。
Burstein edgeの吸収端が対数的に発散する。
電子濃度の増加とともに発散は弱くなる。
励起子の寿命が短いと線幅が拡がり、発散は
高電子濃度において観測しにくくなる。
Ref.2 Brown
Brown, Physical Review B 54, R11082
(1996)
“Evolution of the interband absorption
threshold with the density of a twodimensional electron gas”
電子濃度可変の変調ドープ
GaAs/Al0.3Ga0.7As多重量子井戸に
おいて、バンド間吸収の絶対値を測定
した。ExcitonからFESに移り変わる様
子を観測し、trionを示唆するダブル
ピーク構造を発見した。また、実験結
果を多体効果を含めた計算と比較した。
Ref.3 Huard
Huard, Physical Review Letters 84, 187
(1999)
“Bound States in Optical Absorption of
Semiconductor Quantum Wells Containing
a Two-Dimensional Electron Gas”
半導体量子井戸における光学吸収スペクトルの2次元
電子密度依存性をCdTe試料で測定した。低電子濃度
で観測されたtrionのピークが高電子濃度のFESになめ
らかに移り変わる様子が見られた。励起子ピークは高
エネルギー側にシフトしながら減衰し、消えてなくなる。
Trionと励起子のエネルギー差は電子濃度に比例して
おり、フェルミエネルギーとtrionの束縛エネルギーの
和にほぼ一致した。Cd0.998Mn0.002Te量子井戸にお
ける磁場分光では、励起子とtrionのエネルギー差はス
ピンの+-1/2のフェルミエネルギーが異なることを反映
していた。実験結果はスピン効果を含めたHawrylakの
多体光学応答理論で説明される。
Ref.4 Yusa
Yusa, Physical Review B 62, 15390 (2000)
“Onset of exciton absorption in modulation-doped GaAs quantum wells”
変調ドープしたGaAs/AlGaAs半導体量子井戸
のキャリア濃度を減らしたときの吸収スペクトル
の変化を測定した。あるクリティカルな電子濃度
において励起子ピークの吸収の形と遷移エネル
ギーが急激に変化することが分かった。このクリ
ティカルな濃度が単純な励起子的な振る舞いか
らFESへの急激な移り変わりに相当することを示
す。
Ref.5 Kaur
Kaur, physica status solidi (a) 178, 465 (2000)
“Electron Density Dependence of the Excitonic
Absorption Thresholds of GaAs Quantum Wells”
変調ドープしたGaAs/AlGaAs量子井戸内の電子濃度を増やしながらPLEとERスペクトル法によって、バ
ンド間光学励起スペクトルの変化を測定した。最も低濃度のとき、PLEスペクトルはノンドープの量子井
戸のそれと一致し、1sの中性励起子の分離したピークと、高エネルギー側の2s/continuumによる発光バ
ンドが見られた。ごく微量だけ電子濃度を増加させると、励起子はさらにもうひとつの電子を束縛して
trion(荷電励起子)となり、励起子ピークよりも数meVだけ低エネルギー側にPLEピークが現れる。
電子濃度の増加とともにtrionピークは高エ
ネルギー側にシフトして、高電子濃度での単
一の吸収ピークとなるが、これはPLの発光バ
ンドの高エネルギー側に見られるkベクトルを
保存するフェルミエッジでの遷移エネルギー
と一致する。低電子濃度で見られた励起子
ピークは電子濃度の増加とともに急激に高
エネルギー側にシフトし減衰するが、10cm^2程度の濃度まで分離可能である。一方、
2s/continuumしきい値は微量の電子濃度の
増加によって消えた。
Ref.6 Calleja
Calleja, Solid State Communication 79, 911 (1991)
“Large optical singularities of the one-dimensional electron gas in
semiconductor quantum wires”
電子ガスが第一サブバンドのみに存在
する理想一次元電子系を形成する変
調ドープ多重量子細線の発光と吸収ス
ペクトルを測定。発光・吸収ともに非常
に鋭いFESが観測された。強い温度依
存性をもち、2DのFESよりも非常に鋭く
なった。Finite Hubbard chains理論とよ
い一致を示す。
Ref.8 Oberli
Oberli, Physica E 11, 224 (2001)
“Optical studies of modulation-doped V-groove quantum wires:
Fermi-edge singularity”
変調ドープしたマルチV型半導体量子
細線の光学的性質の実験的検証を報
告する。発光スペクトルでFESが強く観
測され、吸収スペクトルでは弱く観測さ
れた。電子濃度を変えて第1、2、3のサ
ブバンドを占有させることで、FESの観
測に必要な条件を見つけた。強いFES
の観測は、正孔の局在の効果と、部分
的に空である1Dサブバンドとの共鳴の
効果が関与していることを示す。
Ref.9 Melin
Melin, Physical Review B 65, 195302 (2002)
“Optical properties of remotely doped AlAs/GaAs coupled quantum wire arrays. I.
Periodic quantum confinement and localization of minority carriers”
変調ドープlateral superlattices(LSLs)のPL・PLE測定を行った。電子濃度は
8×10^11cm^-2程度(Ef=25meV)。一次元ポテンシャルがPLとPLEに強く影響する。
発光と吸収の温度依存性の測定を通して、一次元系の特徴・正孔局在の効果を分
離して観測した。
Ref.10 Hawrylak
P. Hawrylak, Phys. Rev. B 44, 3821 (1991).
“Optical properties of a two-dimensional
electron gas: Evolution of spectra from excitons
to Fermi-edge singularities”
2次元電子ガスにおける発光・吸収スペクトルが電子
濃度とともに励起子からFESへ変化する様子を計算。
BGR、遮蔽効果、フェルミ面のshake up process、有限
の正孔質量の効果を含む。
価電子帯における正孔の生成・消滅に対するフェルミ
面の応答を非摂動的に計算。
有限な正孔の質量によって、吸収におけるFESは無く
なる。
Ref.11 Takagiwa
Takagiwa, Journal of Physics and Chemistry of
Solids 63, 1587 (2002).
“Crossover of optical spectra from an excitonic
feature to the Fermi-edge singularity”
自由キャリアからなる多体電子系におけるバンド間の光
学吸収スペクトルを理論的に研究した。光学スペクトルが
キャリア密度とともにどのように変化するかを調べ、低濃度
極限における通常の励起子ピーク構造から高濃度のFES
への移り変わりを詳しく理解した。しきい値の振る舞いが
電子スピンの自由度に依存することと、束縛状態が存在
する場合には、吸収スペクトルに常に4つのしきい値が存
在し、それらの2つは縮退している、ということを示した。
FESのべきの値を4つのしきい値に対してそれぞれ位相シ
フトの関数としての厳密な表式で現し、それらはHopfield
の経験則とよい一致を示した。吸収スペクトルを計算する
のには時間依存のカップルドクラスター拡張を用い、フェ
ルミ電子の動的応答をあらわに含むことができた。
Ref.12 Ogawa
Ogawa, Physical Review Letters 68, 3638 (1992)
“Fermi-edge singularity in one-dimensional systems”
一次元の朝永Luttingerモデルで光学スペクトルにおける
FESを理論的に計算した。電子相関を考慮に入れ、べき
値の正孔質量依存性を得たが、それによるとべき値が1D
では正孔のdynamicsに依存しないことが分かり、2D・3Dと
は大きく異なっていた。電子間の反発作用が小さいほど
FESピークは鋭くなることが分かった。
Ref.14 Hawrylak
Hawrylak, Solid State Communication 81, 525 (1992)
“Excitonic effects in optical spectra of a quasi-onedimensional electron gas”
価電子帯正孔がポテンシャル揺らぎ、もしくはアクセプタ準位によって局在している擬1
次元電子系の光学過程を計算した。ポテンシャル揺らぎによる正孔局在の場合は発光
スペクトルは低エネルギー側(状態密度発散を反映)のピークが顕著で、FESは弱く現れ
る。アクセプタ準位の局在の場合はFESピークの方が顕著に現れる。
Ref.17 Akiyama
Akiyama, Solid State Communication 122, 169 (2002)
“Observation of large many-body Coulomb
interaction effects in a doped quantum wire”
電子プラズマ濃度をゲート電圧で変えられる、
高品質なGaAs単一量子細線のPLスペクトルに
おいて、一次元系の強い多体効果を観測した。
励起子に対して2.3eVという束縛エネルギーを
もつ荷電励起子のPLを観測し、それが高濃度
におけるFESに移り変わる様子が見られた。さら
に、電子プラズマ濃度の増加とともにPLピーク
がレッドシフトするというBGRが強く観測された。
このような大きなBGRは電気的に中性な電子・
正孔プラズマを同一細線に生成しても観測され
ず、これは中性のプラズマではクーロン相互作
用がキャンセルされることによると考えられる。
Ref.18 Yoshita
Yoshita, Japanese Journal of Applied Physics 40, L252 (2001)
“Formation of Flat Monolayer-Step-Free (110) GaAs Surfaces by Growth
Interruption Annealing during Cleaved-Edge Epitaxial Overgrowth”
へき開後110方向成長のアニ-ル後の
表面状態をAFMで調べて、成長中断と
アニ-ルが表面を劇的に平坦にするこ
とを発見した。490℃の成長を中断して、
10分間600℃のアニ-ルを行うと、数十
μmのオーダーでMLステップがない平
坦な表面が得られる。この結果から、
110面はアニ-ルに対して強いことが分
かる。