Transcript 腹部大動脈瘤
湘南鎌倉総合病院 公開医学講座 腹部大動脈瘤の最新低侵襲治療 ステントグラフト 湘南鎌倉総合病院外科(血管外科) 荻野秀光 腹部大動脈 正常直径:約2cm 主な分岐:腹腔動脈 上下腸管膜動脈 左右腎動脈 脊椎動脈 左右腸骨動脈 動脈瘤 •動脈壁が脆弱化し、正常な脈 管直径の50%以上の拡大をき たしたもの。 •動脈壁の脆弱化は動脈硬化 がその原因のほとんどで、他 に炎症性、機械的、先天性な どがある。 動脈硬化とは? 危険因子 肥満、糖尿病、高脂血 症、高血圧、喫煙、運 動不足、ストレス 加齢 「ヒトは血管とともに老いる」 動脈硬化性疾患 脳卒中、心筋梗塞、狭 心症、腎不全、動脈瘤 足の壊死(閉塞性動脈 硬化症)など 腹部大動脈瘤 Abdominal Aortic Aneurysms •60歳以上の約5%に発生 •男:女=3:1 •90%は動脈硬化性 •95%は腎動脈下に発生 •最大の問題は破裂 動脈瘤の破裂 •動脈瘤の径が大きいほど 破裂の危険性が上がる •破裂の約20%は出血多量 で即死、手術できても 50%以上の死亡率 Laplaseの法則 破裂の危険因子 Low Risk <5cm 瘤直径 <0.3cm 瘤拡大 喫煙/慢 なし/ 性肺疾患 軽症 家族歴 なし 高血圧 なし Average Risk 5-6cm 0.3-0.6cm/y 中程度 瘤形状 紡錘形 High Risk >6cm >0.6cm 高度/ ス テロイド 少数 複数 内服でコントロール 良好 未治療/コント ロール不良 嚢状 奇形 診断 症状:75%は無症状、まれに腹痛 無痛性拍動性腫瘤 突然の強烈な腹部、背部痛は破裂 検査:腹部エコー CT 三次元CT血管造影(3D-CTA) 治療 瘤が4cm以下 6ヶ月ごとに検査 1年間で0.5cm 以上増大 瘤が4cm以上 手術適応の評価 •破裂危険度 •心機能、肺機能など •年齢、併存疾患、既往歴など 不変 手術 人工血管置換術 手術(人工血管置換術) 手術(人工血管置換術) •AAA治療の第一選択であり、Gold Standard. •合併のないAAAの手術死亡率は2%未満。 •破裂症例は50%以上の手術死亡率。 •心血管疾患、高血圧、腎機能低下、慢性肺疾患 などを伴うと手術の危険性は増大。 •合併症なく経過した場合、平均14日の入院。 術中写真 手術適応 手術の危険度 破裂の危険度 例) •動脈瘤が大きい •拡大が早い •形が悪い 例) •比較的若く元気 •狭心症、腎不全等の 合併症がない 手術適応? 破裂の危険度 例) •動脈瘤が大きい •拡大が早い •形が悪い 手術の危険度 例) •高齢で元気がない •狭心症、腎不全等の 合併症がある ステントグラフト内挿術 低侵襲血管内治療 • 1980年後半、バルーン血管拡張後の再 狭窄防止目的でステントが登場。 • 1991年、Parodiらステントと人工血管を 組み合わせて作製したステントグラフ トによるAAAの治療成績を報告。 • 1995年頃より欧米にて企業ベースでス テントグラフトの開発。 血管内バルーン拡張 血管内ステント留置 血管内ステント動画 動脈瘤画 手術動画 ステントグラフト治療の現状 •平成18年7月に保険治療として許可された •当院は、平成19年5月から治療開始現在15例成 功 •欧米では、大動脈瘤治療の約60%がステント •動脈瘤の形状がステントに合わない事も少なくない •治療成績は手術と同等で、合併症率は低い •長期成績が不明な点もある 開腹手術とステントグラフト治療の比較 開腹 ステント 手術侵襲(負担) 大きい 小さい 入院期間 約2週間 約3日間 合併症 場合により重症 少ない 長期成績 良好 ? 術後通院 6~12か月間隔 3か月間隔 まとめ 腹部大動脈瘤は、 • 動脈硬化が原因「予防可能です!」 • 症状が乏しく発見がおくれるが、簡単な検査 で診断が容易 「すすんで検診を!」 • 破裂する前に治療 • 人工血管置換術やステントグラフトを適切に 行えば解決できる疾患