こころのケア - 公衆衛生ねっと

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Transcript こころのケア - 公衆衛生ねっと

「負げねーど!」女川町
災害保健活動で見えたもの
平成24年5月17日
宮城県牡鹿郡女川町役場
健康福祉課 保健師 佐藤由理
事例ビデオ(5:19)をご覧いただきます
<女川町保健師活動動画>
2
女川町の位置
女川町
石巻市
仙台市
仙台市→石巻市
約55km
車で約1時間30分
3
女川町の被害状況 H24/4/20現在
○3月11日現在人口
10,014名
○人的被害
死
者
511名
死亡認定者
301名
行方不明者
15名
831名(8.3%)
確認不能者
4名
生存確認数 9,183名
女川町企画課
4
女川町の被害状況 H24/4/20現在
○住家被害数
非住家被害数
総数
4,411棟
2,100棟
全壊
2,924棟(66.3%) 1,394棟
大規模半壊 146棟( 3.3%)
35棟
半壊
201棟( 4.6%)
50棟
一部半壊 663棟(15.0%)
146棟
被害なし
477棟(10.8%)
475棟
5
女川町役場・保健センター被災状況
女川町役場
職員は屋上に
避難
女川町生涯教育
センター
女川町保健センター
職員は4階に避難
10
避難所・避難者数
避難所数
市
街
地
半
島
地
区
3月31日
6月19日
7月4日
震災1週間後
震災3週間後
震災約3ヵ月後
震災約4ヵ月後
20
20
13
13
最
大
1,400
776
559
435
最
大
300
208
145
145
(箇所)
避
難
所
で
の
避
難
者
数
3月18日
※3月13日が最大の避難者数で5,720人 25箇所の避難所
※避難所完全閉鎖 11月9日
11
保健師・栄養士の任務(震災直後)
(1)救護所設置・運営
(2)救命救急体制整備
(3)医療が受けられない方への
医療の提供体制整備
(4)医療ニーズの把握
(5)感染症予防
12
総合体育館救護患者数推移と活動
210
190
総患者数
患者数
・避難した歯科Drと
薬剤師、保健師で24
時間体制で診療(町
立医師応援)
慢性疾患患者数
8:30から診療体制
鹿児島県こころのケア
チーム活動開始
170
150
130
人
数 110
90
70
50
NTT復旧
鳥取県救護班診療
開始(診療室整備)
第1回目の医療調整
会議
電気復旧
水が出た!
嘔吐処理班結成
3/24事務所で研修
班長会議で研修
土足厳禁大作戦
30
3月
1
3月 2日
13
3月 日
1
3月 4日
1
3月 5日
16
3月 日
1
3月 7日
18
3月 日
1
3月 9日
20
3月 日
2
3月 1日
22
3月 日
2
3月 3日
2
3月 4日
25
3月 日
2
3月 6日
27
3月 日
2
3月 8日
29
3月 日
3
3月 0日
31
4月 日
1日
4月
2
4月 日
3日
4月
4
4月 日
5日
4月
6
4月 日
7日
4月
8
4月 日
4月 9日
10
4月 日
1
4月 1日
12
日
10
13
3月12日の状況(体育館2,350人)
・犬と猫が人と一緒に土足の体育館で寝泊り
・救護所静養室?でさえ、土足状態
・柔道用畳に毛布一枚の簡易病床
・水が出ない。(給水車)
・慢性的にトイレのにおいがする。
・静養室患者が、夜間簡易トイレまで這う環境
・幼児の下痢が心配
・ミルクがない
14
情報がない!!
○町内市街地トランシーバーのみ
○宮城県との衛星電話は6日目3月17日から
○人が出向かなければわからない状況
半島部の避難状況、傷病者、必要薬剤、衛生
医療機関の状況
○住民に情報が伝えられない
○人間の記憶しか情報がない。調べられない
ex)ノロウイルス対応、疾病対応
⇒支援者が持ってくる情報が頼り
⇒AU docomo再開が4月6日
16
町立病院(院長:女川町医療リーダー)
女川町医療調整会議
・1日おきに19:00開催
・医療の目的の確認合意
・継続的な医療の提供(カルテの検討)
・各救護所活動報告・体制報告
・避難所の巡回診療体制検討・報告・改善
・疾病対策検討(嘔吐下痢→マッピング)
・AEDの設置
・薬剤の供給確認
・病院へのアクセス確保
体育館救護
所(鳥取県)
報告・指示
石巻日赤病院
こころのケア
(鹿児島県)
自衛隊救護所
・普通車で行けない避難所
・インフル疑い患者収容
・簡単なOpe可
・救急搬送
17
こころのケア活動
18
3月22日心のケアチーム到着時の状況
○体育館の避難者800人
総患者数
210
190
・避難した歯科Drと
薬剤師、保健師で24
時間体制で診療(町
立医師応援)
慢性疾患患者数
○救護室での対応 24時間
8:30から診療体制
鹿児島県こころのケア
チーム活動開始
170
150
130
人
数 110
90
70
50
30
水が出た!
○嘔吐下痢患者⇒たくさん
NTT復旧
○体育館は水も出ない
電気復旧
○避難所20ヶ所巡回診療せねば
嘔吐処理班結成
3/24事務所で研修
班長会議で研修
土足厳禁大作戦
○壊れた在宅にも住民が戻って
いるようだ・・・
心のケア何を
どうすればいいのか
3月
1
3月 2日
13
3月 日
1
3月 4日
1
3月 5日
16
3月 日
1
3月 7日
18
3月 日
1
3月 9日
20
3月 日
2
3月 1日
22
3月 日
2
3月 3日
2
3月 4日
25
3月 日
2
3月 6日
27
3月 日
2
3月 8日
29
3月 日
3
3月 0日
31
4月 日
1日
4月
2
4月 日
3日
4月
4
4月 日
5日
4月
6
4月 日
7日
4月
8
4月 日
4月 9日
10
4月 日
1
4月 1日
12
日
10
鳥取県救護班診療
開始(診療室整備)
第1回目の医療調整
会議
○救護室外来患者130人
19
こころのケアチームの活動
●心のケア相談窓口のチラシ・ポスター作成貼付
●身体の診療室の隣に「こころの相談室」を設置
●はじめは、医療チームと別に20ヶ所避難所
巡回相談・巡回診療、5月からは医療チームと
一緒の活動
●1日おきの女川町医療調整会議に参加
町立病院・救護所・心のケアチーム・自衛隊
医療チーム・保健センター・石川県保健師
20
こころのケア相談窓口のいきづらさ
●「こころのケア」表示のビブスを折り曲げて活動
避難所を巡回し、「こころのケア」が寄っていくと
サーと住民がいなくなった現実
●こころのケアの相談の場は知ってたけど、相談
に行くのをためらった(夫がアルコール依存症か
なと思っている妻の話 (平成24年2月)
●心のケア=心が弱い人が受けるイメージ
特別な人が受けるイメージ
身体の治療は受けるけど心は別に
21
4月中旬感じた違和感
こころのケアが必要な人をスクリーニング?
こころのケアが
必要な人
女川町民
こころのケアが
不必要な人
※巡回相談・巡回診療で支援が必要な人を拾いきれているか
※「こころのケア」の相談窓口が役に立っているか
※震災後の時期、生活状況でハイリスク者がどんどん変わっていく現実
22
3.11の前と後で変わったこと
3.11前
積み上げてきた生活
家族、財産、仕事など
人間関係
友人、知人、親戚
近所付き合いなど
コミュニティ
学校、職場、町内会、
町サークル活動など
慣れ親しんだ環境での
生活
関係性の喪失
3.11後
○近親者の死、行方不明、
離別
○財産、仕事の喪失
○避難所、仮設、転居など
に伴う人間関係の変化
○コミュニティの崩壊
慣れ親しんだ環境の一瞬
による破壊によって、
広範囲な地域で、甚大な
喪失体験が起こっている。
ストレスが想像を絶する
レベルで増大している
23
こころのケアでわかったこと
●震災後「こころのケア」を突然始めても無理
町民が受け付けない
●震災直後はハイリスクアプローチで丁寧にフォローするこ
とは有効手段
●町民みんなに知っていてほしいことだけど・・・
グリーフケア⇒何のことやらわからない
アルコール⇒つらいんだ、飲んで何が悪い。
専門の医療機関は精神科⇒特別の人が行く病院
業務に追われ疲弊しきっている職員⇒
忙しくてメンタルケアの話なんて
⇒平常時から、「こころの健康」についてもっと町民
が、知る。意識する。行動する。活動が必要
24
図.こころのケアの対象者と対応の考え方
専門家・行政主体
精神科診療
重症例
ハイリスク者ケア
アウトリーチ(こころのケアチーム)
医療連携体制
(こころのケアスタッフ→総合医)
(G-Pネット:総合医→精神科医)
一般診療
軽症例
専門家と地域の協働
一般診療
地域の支え合い
軽度例
地域(家族・同僚等)の支え合い
大塚耕太郎先生(岩手医大)
資料宇田改編
サロン活動(お茶っこ会)
健康教室、各種研修(人材育成)
傾聴ボランティア等との連携等
アウトリーチ(こころのケアチーム)
こころのケアナース→総合医
地域主体
サロン活動(お茶っこ会)
健康教室、
通常の保健活動・医療等
25
ハイリスクアプローチの限界
震災によっておきたストレスは
全町民が受けている。
町民のこころの健康を阻害する
「社会に蔓延するリスク」
ハイリスクアプローチを武器に
対応することは無理
26
WHO(1999年)
「健康」の定義改正案
元気、笑顔、生き甲斐
健康とは、身体的、精神的、スピリ
チュアル、ならびに社会的に完全に
良好な状態であり続けることであり、
単に疾病がないとか、虚弱ではない
ということではない。
毎日感じ続けること
ヘルスプロモーションセンター長 岩室紳也先生
27
スピリチュアル(spiritual)なものとは?
つながり
勇気
希望
居場所 大好き
安心
生き甲斐
思い出
褒められる
笑顔 認められる
気力
夢
元気
やる気
熱意
絆
楽しみ
励み
感動
自己肯定感
あいさつ
ありがとう
ヘルスプロモーションセンター長 岩室紳也先生
28
大切なのは
かかわり・つながり・ささえあう
環境
29
ヘルスプロモーションセンター長
岩室紳也先生
これからの健康づくり
I Information 情報
がどんなに正確でも
E Education 教育
Knowledge
知識
が増えるだけ
をどんなに充実させても
Life Skill
生きる力
健康は育めない
C Communication 対話・関係性
を通した課題の実感、感動の共有、
ピア(仲間からの)プレッシャーがなければ
30
そこで、考えたシステムは!!
○女川町を8つのエリアに分けて、そこに担当
看護師さんを配置し、町民が身近なところで
相談ができる体制をつくる。
○「こころのケア」として全体をカバーできる
しくみづくり。
○女川町全体のシステムとして継続可能な
体制にする。
31
女川町こころとからだとくらしの相談センター
〈ディレクターの役割〉
地域のつながりの再構築も目指した包括的な相談支援チーム
①各8ブロックの活動把握と
ディレクター
コーディネート
(チーム内コーディネート)
②関係部署との調整
③人材育成(研修企画運営)
マネージャー(事務職員)
契約事務
④全戸訪問等コーディネート
支援情報システム管理
⑤支援情報システムの構築
会議庶務
⑥各地区支援員等課題検討
会議運営
女川町地域医療センター
⑦出張診療相談企画
支援チーム
女川町復興支援センター
Dr、Ns、PT、OT
⑧心のケアスタッフ育成
地区担当制により、ここから専門員・
くらしの相談員を配置する
①
②
③
④
⑤
⑥
女川町地域
医療センター
石巻市医師会
石巻保健所
女川町社協
県精神保健センター
社会福祉施設
宮城県サポートセンター
宮城県心のケアセンター
各担当地区
区長・保健推進員
民生児童委員
食生活改善推進委員
聴き上手ボランティア
健康づくりリーダー
⑦
⑧ 〈ここから専門員・くらしの相談員の役割〉
①担当地区健康相談
(こころとからだとくらし)
②家庭訪問活動
③仮設集会所等でのお茶っこ会
レクリエーション等の集団活動
との連携
④介護予防事業とのタイアップ
⑤年2回全戸訪問
⑥くらしと健康の情報提供
女川町健康づくり推進協議会
(女川町こころとからだとくらしのネットワーク会議)
32
※1 町内を8エリアに分け、それぞれのエリアにここから専門員を置く
※2 「ここから専門員」活動については、人件費も含めて委託とする(ここから専門員は保健師、看護師、PSW)
ここから専門員・くらしの相談員の役割
①担当地区健康相談
(こころとからだとくらし)
②家庭訪問活動
③仮設集会所等でのお茶っこ会
レクリエーション等の集団活動
④介護予防事業とのタイアップ
⑤全戸訪問
⑥くらしと健康の情報提供
33
公衆衛生=公衆の生命を衛る
震災前
生活基盤が確保されたうえでの疾病予防
生活基盤が確保されたうえでの健康づくり
震災後
女川町での新たな健康づくり(こころ・からだ)のしくみづくり
役場も
地域で
自立
住民同士の力で展開していける
町民も
34
仮設住宅集会場での健康教室・相談
仮設住宅(石巻市内)の集会場を利用して,歯科医師や歯科衛生士のボランティアが
町保健師と一緒に健康教育や健康相談を実施していた。参加者は,仮設住宅に入居後
地域交流が少なくなったので交流を楽しんでいたし,町から離れているので情報も乏 35
しいからこのような機会があると安心すると話していた。
H23/3/11 住民情報が一切なくなった
住民基本台帳情報(しばらくして復帰)
母子手帳交付台帳
乳幼児台帳
予防接種台帳
高齢者肺炎球菌ワクチン台帳
各種がん検診受診台帳
特定健診受診台帳
特定保健指導台帳
etc
36
保健活動で紙ベースの情報が山積
3月
在宅ローラー作戦
のべ
631件
3~5月
救護所カルテ
のべ
3,300件
3~6月
巡回診療カルテ
のべ
たくさん
3~9月
こころのケア相談カルテ
のべ
3,258件
5~11月
仮設住宅訪問調査
1,300件
大切な住民の健康情報が次に生かせ
ない。つなげるにはどうしたらいいか。・・・
37
町民の健康情報管理の必要性
紙の分だけ、保健・医療チームの支援があった。
(無駄にできない)
女川町民は、避難所⇒仮設⇒住宅へ移動しな
ければならない。その間の健康支援のための
大切な情報をつないで支援したい。
紙の限界。でも我々は、ITが超苦手
地域の健康課題を知るには、情報が必要
38
「情報」=つながるためのツール
<救護所のカルテ~仮設調査データから>
○患者と医師がつながる
○医師と医師がつながる
○支援に来ていたスタッフとつながる
○町民と保健センターがつながる
○町民と「ここから専門員」がつながる
○過去と現在と未来がつながる
39
女川町保健センター
健康票データ化プロジェクト
2011年8月29日~31日
40
2011年8月29日~31日
女川町仮設住宅分布地図(全体図)
41
2011年8月29日~31日
仮設住宅別 65歳以上割合(世帯)
総人数1,115世帯のうち、65歳以上世帯は692世帯(62.1%)。
N=1,115(世帯)
42
2011年8月29日~31日
エリア別 悩みを相談できる友人/仮設住宅での親しい友人
悩みを相談できる友人
エリア別
N=1,119
仮設住宅での親しい友人
N=1,119
エリア別
43
2011年8月29日~31日
エリア別 交流の度合い
交流の度合い
エリア別
N=1,119
44
まだまだ課題が山積み・・・
45
女川町 保健事業における情報整備計画(案)
2012年4月23日
46
これからの地域づくりに大切なもの!!
褒められる
元気
夢
生き甲斐
笑顔
気力
あいさつ
認められる
感動
希望
思い出
やる気
励み
楽しみ
熱意
絆
つながり
安心
勇気
大好き
居場所
自己肯定感
ありがとう
47
自分にあった一つのことから
ストレス
自治会に
解消に
入ろう 自分らしく
友達づくり
生きよう
みんなで
一日
一万歩
運動を
しましょう
復興
まつりだ
趣味の会
家族で
仲間づくり
にようこそ
おいしく
頑張るぞ
楽しく食事
48
気がついたらみんなが健康!
コミュニケーションが
育む災害に強い女川づくり
49
平成24年3月聴き上手ボランティア活動
50
平成24年3月聴き上手ボランティア活動
「うつになったタヌキ」を町民が町民に
51
平成24年1月15日
~動かそう!!心も体もぽっかぽか~
52
54
最後に
女川町の地名は、町の背後奥にある山地から3本の
川が流れ下り、一つの川となる。地名はその合流に由
来したアイヌ語「onnne・nay(小さな川が大きくなる
川、人間なら成長して年をとる川)」からついたと
言われている。
太宰幸子(2011. 02)『宮城地名の旅』(河北新報出版センター)河北選書
今後、再び人が小さな川が合流して成長する
ように、人が集まり町の再興となるように
55