世界の食料事情

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Transcript 世界の食料事情

世界の食料事情: 新世紀の発展目標(MDG)
2000年9月、ニューヨークの国連本部での国連ミレニアム・サミット
に参加した加盟国代表が、21世紀の国際社会の目標として、より安全
で豊かな世界づくりへの協力を約束する宣言を採択し、2005年に「新
世紀の発展目標(Millennium Development Goals: MDGs)」が出
された。MDGsは国際社会の支援を必要とする課題に対して2015年
までに達成するという期限付きの8つの目標を掲げている。その第1目
標が「極度の貧困と飢餓の撲滅」である。2015年までに飢餓に苦しむ
人口の割合、1日1ドル未満で生活する人口の割合を1990年の水準
MDGs Report 2013
の半数に減少させる というものである。
「「食の権利(The right to food)」は最も基本的な人権の一つであ
り、それを国際社会と各国が保証できるかどうかが問われている。
その他の発展目標: 「普遍的な初等教育の達成」、「性的平等の推進と女性の
地位向上」、「乳幼児死亡率の削減」、「妊産婦の健康状態の改善」、「HIV/エイズ、
マラリア、その他の疾病の蔓延防止」、「環境の持続可能性の確保」、「発展のため
の国際協力の推進」
1日1.25ドル未満で生活する
人口割合(%)
サハラ砂漠以南
開発途上国全体としてMDG目標は達
成されたが、依然として12億人が極貧生
南アジア
活を送っている。
インドを除く南アジア
発展途上国における栄養不良の人口
と割合(%)
東南アジア
最近のペースダウンを改善
100万人
できれば、目標達成可能である。 %
中国
ラテンアメリカ・カリブ海沿岸諸国
西アジア
北アフリカ
中国を除く開発途上国
開発途上国全体
サハラ砂漠以南
南アジア
オセアニア
東アジア
東南アジア
栄養不良の人口割合(%)
新しい推定によれば、約8億7千万
人、8人に1人が、 2010~12年時点
でも最小限の食事カロリーを摂取し
ていない。慢性的栄養不良の大多数
( 8億5200万人)は開発途上国で生
活している。
開発途上国の栄養不良人口の割
合は、1990年の23.2%から14.9%へ
ラテンアメリカ・
カリブ海沿岸諸国
と減少し、当初考えていたよりも進展
コーカサス・中央アジア が速かった。しかし、 2007~9年の
食料価格の高騰が貧困家庭を直撃
北アフリカ
したことは間違いない。こうした状況
先進国 都市部の貧民
を改善するため、各国政府と国際社
開発途上国 会は協力しなければならない。
西アジア
戦乱
南アジア
サハラ砂漠以南
東南アジア
オセアニア
北アフリカ
戦乱
西アジア
コーカサス・中央アジア
東アジア
ラテンアメリカ・
カリブ海沿岸諸国
全世界
体重が中等度から重度に少ない
5歳未満の人口割合(%)
体重が足りない子供は1990年の1億
5900万人から2011年までに36%減少し
た。 しかし、5歳未満の1億の子供達が、
依然として栄養不良で体重が足りない。
これは 5歳未満の全ての子供の16%、6
人に1人に相当する。 この進捗速度では
MDG目標に達しない。
南アジアが31%と最も高く、次のサハ
ラ砂漠以南は(21%)であり、両者の人数
(5700万人と3000万人)を合わせると、
世界の大半を占める。
戦乱地域の西アジアで目標が達成さ
れているのは意外だが・・・
持続可能な食料の未来の創造
国連は「世界は今世紀中頃までに70%以上多くの食料を持続的に生産しなけれ
ばならない」を2013年12月3日に発表した。世界資源研究所(WRI)の 150ページ以
上の報告書「持続可能な食料の未来の創造( Creating a Sustainable Food
Future: Interim Findings2)」に基づくものである。
050年における96億の世界人口を養うために、世界はカロリーベー
スで70%以上多くの食料を必要とする。
今後数十年以上に亘って、世界は、食料安全保障、開発および環
境の接点において大きな課題と機会に直面する。
人々の要求に応えるため、現在入手できる食料と将来必要となる
食料の間の70%の乖離を我々は埋めなければならない。
しかしながら、これまでの収穫量を以前より多く増やす方向だけで
はこの将来的食料の乖離を埋めることはできないことに留意しなけれ
ばならない。このことから、食料浪費と食料廃棄の削減、動物性食品
の過剰な需要の抑制、ならびにその他の「気候変動に強い(climatesmart)」指針を勧告している。
FAO情報
欧州とオセアニアは現状維持だが、発展途
上国の人口増は止まらない。インドの増加が
激しく、インドが2028年頃に中国を抜いて、人
口第1位となると国連は予測している。日本の
2005~10年の人口増加率は、0.06であった。
6 億人
5
増加
4
3
2012年
2
1
0
少子化政策を採っている中国も
0.62であったが、アフリカは平均
で2.47、コンゴは2.81、ナイジェ
リアは2.69、さらに3以上の国も
多い。このような人口増はどのよ
うな影響をもたらしていくか?
1950
25,26
世界
5,44
中国
3,76
インド
1,58
米国
1,03
ロシア
82
日本
73
インドネシア
70
ドイツ
54
ブラジル
51
英国
38
パキスタン
38
ナイジェリア
38
バングラデシュ
18
エチオピア
12
コンゴ
2010 2050
69,16 95,51
13,59 13,84
12,06 16,20
3,12
4,01
1,44
1,21
1,27
1,08
2,40
3,21
83
71
1,74
2,31
62
73
1,95
2,71
1,60
4,40
1,51
2,02
87
1,86
62
1,55
世界人口は2012年の70億から2050年に96億
へと増加すると推定され、その増加の多くはサ
ハラ砂漠以南(SSA)とアジアで起こる。
世界人口
地域別栄養不足人口(2010年)
%
る以れ世
と上て界
80 で い で
57 る 8
。人
以
上をア
ジに
と占ア 1
なめ・人
る、太が
。ア平栄
フ洋
リ地養
カ域不
足
と
が
合
に
5
置
わ
せ億か
%
世界の栄養不足人口
2007年から2008年にかけて、世界の食料価格は劇的に上昇し、国際的な食料
危機の状態をもたらし、とくに貧しい国や開発途上国において、政情不安、経済不安
と治安悪化を引き起こした。
その原因として、1.中国、インド等開発途上国の経済発展による食料需要の増大、
2.世界的なバイオ燃料の生産拡大に伴う食料以外の需要増大、3.地球規模の気候
変動の影響、4.投機マネーの穀物市場への流れ込みが挙げられている。
2006 豪州旱魃
2007 豪州・中国旱
魃
2010 欧州異常高
温・旱魃
2011 中国・仏水不
足、米国大洪水
2012 米国高温・少
雨、ブラジル・中国・
ロシア大洪水
2013 中国高温少
雨、欧州・南アジア
洪水、フィリピン巨
大台風
3000kcal/day/person
(推奨摂取カロリー + 実際の損耗)
23000kcal/day/person
(推奨摂取カロリー)
穀類
根菜・塊茎
果物・野菜
油糧種子・豆類
肉類
乳類
魚介類
2009年に生産された全ての食
料を2050年に全ての人々に均
等に分配しても、世界は一人当
たり1日にさらに974kcalを必要
とする。
食料の浪
費と廃棄は、
カロリー
ベースでは
穀類が半
分を占める
が、重量で
は果物・野
菜が最も
多い。
家畜はヒトが食べない牧草だけでなく、食用の穀類も飼料にされる。飼料要
求率(FCR:Feed Conversion Ratio)は1kgの体重増加に必要な飼料重量を示すが、
この際、体重は湿重量、飼料は乾草重量を用いている。牧野の肉牛に限っても、
湿重量を用いるとFCRは15程度となり、我々の計算よりそれは高すぎる。
動物間で比較し、食料問題を論じるには、「食べたエネルギー」と「生産された
エネルギー」、 「食べた蛋白質」と「生産された蛋白質」の割合を比較する必要が
ある。それには、牧草、乾草、穀物を含めて接種した飼料中の量を計測する。牛
肉と羊肉は、乳やその他の肉と比べて、 生産物中の量と飼料中の量の比が良く
25 ない。
飼料効果(FE: eed Efficiency)はFCRの逆数で、乾物飼料 1kg から得ら
れる生産物量。一般的にFEは、肉専用牛0.1、豚0.2~0.3、ブロイラー0.4
20
~0.55程度である。
15
米国人が1kgのステーキを食えば、10kgの穀物が消える
:カロリー
:蛋白質
10
5
0
牛肉
羊肉
エビ
牛乳
水牛乳
豚肉
家禽肉
魚
卵
2010年における農業生産からの温室効果ガス排出の
半分近くを反芻獣が占める
糞尿管理
水稲
農業生産
農業以外
のエネル
ギー使用
反芻獣の
消化管発酵
農場でのエネ
ルギー使用とと
もに、トラクター
などの農業機
械の生産、灌
漑ポンプのエネ
ルギー
農業生産
土壌発酵
牧場での
反芻獣の浪費
反芻獣はルーメンでメタンを発生する(消化管発酵)とともに、牧野で排出した糞尿
からメタンと亜酸化窒素が発生する。水田は、メタンと亜酸化窒素が発生する。
食料と環境の接点における問題の解決のため「いくつかの条件は、よ
り一層の強調に値する」としてトップに上げたのは次の事項である。
1.畜産物の効率的な併用への転換、およびより効率的な牛の飼育:
農業分野の既存の世界的な農地利用、最近の農地拡大および温室
効果ガスの排出の大半は、全て牛肉や乳製品の生産に起因している。
牛肉は、飼料のカロリーや蛋白質への変換において鶏肉の約1/14と
最も非能率的な畜産物であり、その生産に蛋白質1g当たり温室効果
ガスを鶏肉の数倍排出する。世界の多くの人々は不健全に必要以上
の牛肉を食べており、我々が提出したFAOの予測では、より多くの
人々がそうするため、2050年までに牛肉消費が92%増加することを示
している。次の3つの戦略は、この課題を解決する可能性がある。
その他の事項と数倍の紙面で説明しており、牛肉消費と温室効果
ガスの排出の関係をいかに重視しているかが判る。同時に、実現可
能性がその他の事項よりも高いと考えているのだろう。
「2.とくにサハラ砂漠以南における出生率低減の努力を成功させるため各国を
支援する」、「3.サハラ砂漠以南における穀物収量の増加」、「4.荒廃した低地に
おけるあらゆる農業の拡大を保証する」、「5.肥料の使い過ぎと不足の両方に取組
む」、「6.あらゆる農業の拡大を自然の生態系保護と統合する」
畜産物の効率的な併用への転換: 菜食主義者を除いて、牛肉消費の20%をその
他の畜産物に転換するだけで、別の家畜が飼料をより効率的にカロリーと蛋白質
に変えるので、数億ヘクタールの農地を減らすことができる。肉用牛が多くの放牧
地を使用し未利用の様々な廃棄物を消費するけれども、今後数十年牛肉消費が増
えると、森と湿潤なサバンナをさらなる牧草地に変えてしまう。肉消費の増加抑制は、
そうした変換を防ぐ。
草地と放牧地の生産性向上: 世界の湿潤放牧地の利用強化による放牧効率の改
善は、農地要求の抑制のため必要である。実証された技術が存在し、経済的利益
を生んでおり、広範に実施されているが、土地全体の望ましい複合的利用は十分
に調べられていない。
家畜の全体的給餌法の改善: 給餌法および家畜の健康管理の改善は、アフリカと
アジアの小規模農家に利用できる技法を用いても、牛1頭当たりの牛肉と牛乳の生
産を2~3倍にでき、牛乳1ℓまたは牛肉1kg当りの温室効果ガス排出量を2/3以上減
らすことができる。
右図は2007年の牛肉生産量
肉牛を大量に飼育し、大量に消費して
いる南北アメリカ大陸、オーストラリア、
欧州諸国に対する期待を込めて書いて
いるものと思う。南北アメリカ大陸とオー
ストラリアの合計で約半分を占める。
日本の食料事情: 自給率向上
40%を切っている自給率の中で、海外からの輸出圧力が強まってい
る。日本農業の国際競争力は低いとされながらも、畜産物のアジア向
け輸出が増えている。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたこと
もあり、原料としてではなく「和食」として輸出する道も拡大する。
供給熱量総合食料自給率の算出は次式による。ただし、畜産物については、
飼料自給率を考慮して算出している。
自給率=国産供給熱量/国内総供給熱量×100(熱量ベース)
厚労省の認可を受けた輸出仕向け国
米国 カナダ アラブ首長国連邦 香港
マカオ
牛肉輸出食肉取扱施設
●
●
I-1 岩手畜産流通センター
●
●
●
G-1 群馬県食肉卸売市場
●
●
タイ、シンガポー
●
●
K-1 南九州畜産興業株
●
ルに対しても多く
●
●
K-2 サンキョーミート株
●
●
の施設が認可を
●
●
K-3 阿久根食肉流通センター
●
●
受けている
●
●
K-4 JA食肉南薩工場
●
●
●
●
M-1 ミヤチク高崎工場
●
●
●
●
M-2 ミヤチク都農工場
●
●
●
GI-1 飛騨食肉センター
●
S-1~2 滋賀食肉センター2 豚肉と食鳥肉
HO-1~5 十勝食肉センター
●
SA-1 和光ミートセンター
HG-1 加古川食肉センター
についても、香
AO-1 三戸食肉センター
KU-2 熊本畜産流通センター ●
港、マカオ、シ
Y-1 山形県食肉流通センター ンガポール、ベ
YN-1 山梨食肉流通センター ●
●
F-1 九州協同食肉株式会社 トナムに対して
名古屋市南部と畜場
● AC-1北海道畜産上川工場
●
OS-1 羽曳野阪南畜産株
多くの施設が
●
T-1~12 東京都立芝浦屠場 認可を受けて
HA-1北海道畜産函館工場
●
FC-1 福岡市中央卸売市場 いる。輸出の
TK-1 高松市食肉センター
●
KC-1 鹿児島食肉センター
OK-1 岡山県営と畜場
相手国は、ア
KKC-1 北九州食肉センター ジア諸国中心
KOBE-1 神戸市食肉センター ●
●
SE-1 仙台市ミートプラント
IB-1 茨城中央食肉公社
に変わってい
●
SC-1 佐世保市食肉卸売市場 る。
OI-1 大分県畜産公社
●
埼玉県本庄食肉センター
TOKU-1 徳島食肉センター ●
対カナダ輸出食肉を取り扱うと畜場等の認定要綱
3.認定の要件
対アラブ首長国連邦
(1) 食肉衛生関係
ハラールと畜証明書発行機関に
ア と畜場関係
よって承認され、対アラブ首長国連
イ 食肉検査関係
邦政府によって登録された施設。
(2) 家畜衛生関係
イスラム法において
4.認定の手続
合法なものの事をハ
(1) と畜場の設置者の申請手続
ラールといい、非合法な
(2) 都道府県市の申請手続
もののことをハラームと
(3) 審査
言う。
豚だけでなく、犬や虎
(4) と畜場の認定および指名検査員の指名
などの獲物を捕獲する
5. 認定後の事務
ための牙や爪がある動
(1) 検査申請
物、ロバ、ラバを食べる
(2) 輸出食肉に関する食肉衛生証明書の発給 ことが禁止されているが、
(3) 検査結果および輸出量の報告
それ以外の肉であって
も殺し方が正規の手順
(4) 厚労省の現地査察
に従ったものでなけれ
(5) 変更の届出
ば食べられない。
農水省の輸出促進対策
意義: (産地・地域にとってのメリット)
● 農林水産物・食品の新たな販路拡大、所得の向上
● 国内価格下落に対するリスクの軽減
● 海外輸出を通じた国内ブランド価値の向上、経営に対する意識改革
● 地域経済の活性化
(国民全体にとってのメリット)
● 生産量の増加による食料自給率の向上、食料安全保障への貢献
● 我が国の輸出入バランスの改善
● 日本食文化の海外への普及、世界各国の人々の対日理解の増進
農林水産物・食品の輸出額の推移
原発事故
5000
4000
3000
2000
1000
0
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2012年の品目別輸出額(億円) 輸出総額の0.7%を占めるに過ぎない
637,476
総輸出額
4,497
農林水産物
2,680
農産物
1,305
加工食品
295
畜産品
196
穀物等
133
野菜・果実等
751
その他農産物
118
林産物
1,698
水産物
水産物(調製品除く) 1,196
502
水産調製品
アジアが73%、北米が
17%を占める。
国・地域別順位は、1位
香港、2位米国、3位台湾、
4位中国、5位韓国。
が、都市部の工業製品ではなく、地方
振興に直接反映される額である。鹿児
島の黒牛・黒豚も好評を得ている。
農林水産物・食品の輸出額の国・地域別内訳
○ 日本の食文化の普及に取り組みつつ、日本の食産業の海外展開と日本の農林水産
物・食品の輸出促進を一体的に展開することにより、グローバルな「食市場」(今後10年間で
340兆円から680兆円に倍増)を獲得。
○ このため、世界の料理界で日本食材の活用推進(Made FROM Japan)、日本の「食文
化・食産業」の海外展開(Made BY Japan)、日本の農林水産物 ・食品の輸出(Made IN
Japan)、の取組を一体的に推進。