天文学概論 講義9回と10回: 銀河の「進化」、銀河の観測 秋山 正幸 (理学研究科天文学専攻) 2009/01/05 天文学 : 概論 天文学で明らかにしたいこと: われわれはどこからやってきたのか。 Origin of the universe Origin of galaxies Origin of the solar system 今日の感想 1.われわれはどこからやってきたかを知る上で 銀河のことを知ることは重要なの?

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Transcript 天文学概論 講義9回と10回: 銀河の「進化」、銀河の観測 秋山 正幸 (理学研究科天文学専攻) 2009/01/05 天文学 : 概論 天文学で明らかにしたいこと: われわれはどこからやってきたのか。 Origin of the universe Origin of galaxies Origin of the solar system 今日の感想 1.われわれはどこからやってきたかを知る上で 銀河のことを知ることは重要なの?

天文学概論
講義9回と10回:
銀河の「進化」、銀河の観測
秋山 正幸
(理学研究科天文学専攻)
2009/01/05
天文学 : 概論
天文学で明らかにしたいこと:
われわれはどこからやってきたのか。
Origin of the universe
Origin of galaxies
Origin of the solar system
今日の感想 1.われわれはどこからやってきたかを知る上で
銀河のことを知ることは重要なの?
今回と次回の話
“Origin of galaxies”
われわれの住む銀河系はどのようにして出来てき
たのだろうか。
– 今回:銀河の形とその進化
– 次回:銀河と巨大ブラックホール、その進化
今日の感想 2.「進化 (evolution)」という表現は
いいのか?
太陽系のある銀河系(天の川銀河)の推定図
銀河系の中のガスの観測などからわれわれはこの
ような形の銀河の中にいると推定されています。
太陽系近傍の星、星形成領域、などなどまとめ
緑:分子雲
水色:個々の星
オレンジ:星団
赤:超新星残骸
http://galaxymap.org
太陽系近傍の星、星形成領域、などなどまとめ
http://galaxymap.org
となりのアンドロメダ銀河
銀河系から230万光年はなれたところにあるアンドロメダ
銀河。横から見ているが銀河系と似た円盤の形を持つ銀河。
銀河の形にはいろいろある
銀河系の周りにある銀河をさらに調べてみると、銀
河の形には星がみかんやレモンのような形に寄り集
まった「楕円銀河」と星が渦巻きの形に円盤の上に
集まった「円盤銀河」という2つの特徴的な形があ
ることがわかります。宇宙の歴史の中で銀河の形は
どのようにして出来てきたのでしょうか?
さまざまな波長で見た銀河
– 銀河の中にある星の分布 ~目で見えている銀河の「形」
– 銀河の中で星を盛んに作っている領域の分布
– 銀河の中のガスの分布 ~星を生み出す材料
– 銀河の中の星の運動の様子
– 銀河の中のガスの運動の様子
– 銀河の中の星の年齢の分布
楕円銀河
主な特徴:
–
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–
–
–
from StSci
構成する星は年老いていて(黄色い、赤い)、
現在の星形成活動は盛んではないです。
星を生み出すような冷たいガス成分はほとんど
持たないが、高温(>100万度)のガス成分を持
ちます。
星はばらばらに飛び回っていて、その圧力と全
体の重力が釣り合っています。銀河全体として
回転運動の影響は小さいです。
星の分布は中心集中してかつだらだらと裾野を
持つドボークルール則(1/4則とも言う)で良く
記述されます。
群れて存在することが多く、銀河の集中してい
る領域では楕円銀河の割合が高いです。
円盤銀河
主な特徴:
–
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–
–
–
–
バルジと呼ばれる中心部分とディスクと呼ばれ
る円盤部分の2つの特徴的な構造から出来てい
ます。バルジ部分の性質は楕円銀河の性質に似
ていて、ディスク部分の存在が円盤銀河を特徴
づけています。
円盤を構成する星は比較的若く(青い!)、現
在でも星形成活動が続いています。
星を生み出す冷たいガス成分を持ち、円盤部分
には分子雲と呼ばれる星がこれから生まれよう
としているガスの密度の高い領域や、散光星雲
と呼ばれる若い星の集団が点在します。
円盤部分の星は回転運動をしていてその遠心力
と全体の重力が釣り合っています。
星の分布は中心集中が低いが裾野を持たない指
数関数則で良く記述されます。
銀河の集中していない領域では円盤銀河の割合
が高くなります。
銀河の形は銀河の「生まれた」環境や「住んで
いる」環境によって影響を受けるようだ。
この画像は楕円銀河がたくさん集まっている様子を示しています。楕
円銀河は銀河が多数集まっている場所(銀河の集団ということで
「銀河団」と呼ばれている)にたくさん(割合が高い)あることが
わかっています。
より遠くの銀河を見ればより昔の銀河を見
ることができる!
それぞれの銀河から出てきた光は有限のスピードでし
か届かないので、より遠くにある銀河を調べればより
昔の銀河の姿が直接見えてくる。
銀河の形の進化を見るにはもっともっとさ
かのぼらなければならない。
太陽系が銀河系の中を一周するのにかかる時間は2億
年かかる。銀河の形の変化が起こる時間スケールはこ
れの数倍くらいはあるだろう。
銀河の形の進化を見るにはもっともっとさ
かのぼらなければならない。
宇宙の歴史は137億年あることがわかっている。銀
河の形の変化が起こるだけの時間は十分にある。
そもそも銀河の「進化」とは何ぞや?
進化=
(1) 生物は不変のものではなく、長大な年月の間に次第に変化して現
生の複雑で多様な生物が生じた、という考えに基づく歴史的変化
の過程。種類の多様化と、環境への適応による形態・機能・行動な
どの変化がみられる。この変化は、必ずしも進歩とは限らない。ま
た、生物だけを対象とする にとどまらず、社会進歩観を背景に社会
進化論が生まれ、さらに全宇宙・全物質を歴史的変化の中でとらえ
る概念にまで拡大される。
(2) 物事が次第に発達していくこと。
(とあるウェブ辞書より)
銀河の進化=宇宙の始まりから現在に至る時間スケール
で銀河の「統計的な」性質が変化すること。
個々の銀河について時間変化を見ることは出来ないので、
「統計的な」「平均的な」性質を調べる。
より遠くの銀河はどうすれば探せるだろうか?
宇宙が膨張していることによって、昔の銀河から出た
光は引き伸ばされて(波長が長くなって)地球に届く。
40億年前の銀河
近くにある銀河
光の波長 (オングストローム)
80億年前の銀河の様子
ハッブル宇宙望遠鏡
が捉えた多数の遠方
にある銀河
The deepest image of the sky
From
http://www.spacetelescope.org/images/html/opo0428b.html
80億年前の銀河の様子
前の画像から80億年前の銀河を取り出すと、、、楕円銀河、
円盤銀河の形がすでによく見られることがわかる。形はあ
まり変化しないのだろうか。
80億年前の宇宙の銀河の様子
• 例えば、この時代の銀河の色と形態も良くリンクしています。銀河のス
ペクトルのモデルと比較してみると、銀河全体で平均した色というのは
年老いたバルジと赤化を受けた星形成領域(ディスク)を足し合わせた
モデルでよく説明がつきます。現在の宇宙に見られるハッブル系列に対
応するものがこの時代の宇宙にはすでに確立していました。
より昔の宇宙の銀河へ:赤外線での観測の必要性
より遠くにあるより昔の銀河からの光は赤方偏移してわれわれに届く。可視
光の観測は銀河の紫外線の光を見ることになり、銀河の中で星を作っている
領域だけが目立つことになる。より遠くの銀河の中の星の分布をみるために
は銀河の出す可視光を近赤外線で観測することが必要になる。
ハッブル宇宙望遠鏡によ
る可視光での観測結果
「すばる」望遠鏡の赤外線
カメラを用いた近赤外線で
の観測結果
すばる望遠鏡を用いた赤外線での観測
ハワイ島マウナケア山(4205m)にある望遠鏡群
すばる望遠鏡を用いた赤外線での観測
すばる望遠鏡を用いた110億年前の銀河の観測
われわれのグループはすばる望遠鏡と補償光学システ
ムを用いて世界で始めて110億年前の銀河の詳細を
赤外線で調べた。
銀河の星の分布を解析すると、、
まとめ
銀河の形の進化を引き起こす要因は、、、
まとめ
銀河の衝突、合体が一つの原因と考えられている。
9回目と10回目のレポートの課題:
すばる望遠鏡を用いた観測成果の記者発表のリスト
http://www.naoj.org/Pressrelease/j_list.html
から「銀河に関連する発表で最も興味を持ったもの」を1件選び、その
観測成果で
1) 「記者発表のタイトルとなぜこの発表に興味を持ったのか」
2) 「どのような銀河をどのように観測した結果か」
3) 「この観測で新しくわかったことは何か」
4) 「自分がこの発表にタイトルをつけるとしたらどんなタイトルを
つけるか」
の4点をA4一枚で要約しなさい。
レポートは手書きで、他のレポートとあわせて2月9日の最終講義の際
に提出のこと。
さらに多数の銀河を観測するために、、、
レーザー光線を打ち上げて
大気の揺らぎを測ることも行
われています。これによって
大気の揺らぎの測定がより
安定して行われるようになり
ました。
より遠くの(=昔の)銀河を観測するために
2016年の完成を目指してアメリカのグループを中心として計画されている3
0m望遠鏡。これを用いればすばる望遠鏡で見えてきたよりもより遠くの銀河
の詳細が調べられると期待されている。
より遠くの(=昔の)銀河を観測するために
すばる望遠鏡と比べると鏡の口径が4倍になり、4倍細かい構造を見
ることが出来る。鏡の面積は16倍になり、より暗い天体を捉えること
が出来る。
さらに遠方の銀河を調べるために
紫外線
可視光
銀河の形を捉えるためには、銀河の放つ可視光での形を捉
えることが重要です。赤方偏移の効果によって、遠方にある
銀河の放つ可視光の光は地球に届くと赤外線として観測さ
れます。