KEK-ERL用電子銃テストビームラインの現状

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KEK-ERL用電子銃テストビームラインの
現状
2010/11/11 ビーム物理研究会
広島大学大学院理学研究科
KEK-ERL入射器グループ
松葉俊哉
発表内容
1. 研究の背景 ビームラインの現状
2. ビーム試験
– ソレノイドスキャン
– スリットスキャン
– 空洞試験
3. まとめ
研究の背景
• KEKでは放射光の将来計画としてERLをベースとした放射光源を検討中で
ある。そのテスト機としてcompact ERLの建設が進行している。ERLでは短
バンチ、低エミッタンス、大電流のビームを目指している。
– compact ERL の目指す主なパラメータ
エネルギー
電流
35~125MeV 10 ~100mA
バンチ長
バンチ電荷
規格化エミッタンス
0.1~3psec
7.7~77 pC
0.1-1mm-mrad
電子銃及び入射部ビームライン
超電導空洞
コンパクトERL
ERL 入射器
2012年度のビーム運転を目指して電子銃の開発が行われてい
る。
電子銃開発の現状
• ERLの電子銃にはNEA(Negative Electron Affinity)表面を持つ半
導体フォトカソードDC電子銃が採用されており、ERLの目標と
するビームを実現するため、
レーザールーム
PF-AR南棟実験エリア
KEK、JAEA、名古屋大学、
東京大学、広島大学等
が共同で開発が進めら
れている。
•KEKではPF-AR南棟で500 kV
電子銃を製作中である。
•電子銃テストビームラインは
電子銃に先行して作られ、名
古屋大学で開発された同タイ
プの電子銃(NPES3)に接続さ
れてビーム運転が開始されて
いる。
NPES3電子銃とテストビームライン
電子銃開発エリア
テストビームラインの目的
• テストビームラインの評価
– エミッタンス及びバンチ長の測定、解析手法の確立。
– 低エネルギーセクションである、入射部ビームラインでの
ビームパラメータの確認や制御、調整法の確立。(実機で
使用するため)
• カソード特性の評価
– フォトカソードのバンド構造などに起因するエミッタンス特
性の測定。
– カソードの励起光に対する応答性の測定。(空間電荷効
果によるエミッタンス成長やビームハロー低減のため)
 これらを目標に10月26日からビームコミッショニング
を開始している。
テストビームラインのレイアウト
•
•
•
•
•
ビーム調整用のソレノイド(SL) ステアリング(ZH,V)
ビームプロファイルを見るためのスクリーン(MS)、ファラデーカップ(FC)
エミッタンス測定のためのスリット(slit)
バンチ長測定のための偏向空洞(deflector)
レーザー調整のためのテーブル
ビームライン全景とレーザーテーブル
• ビームラインは5m程度。
• レーザーテーブルには移送光学系及び、仮想カソード、レー
ザー位置駆動装置等が設置してある。
ビームラインコンポーネント
スリット
スクリーン
偏向空洞
ソレノイド
ビームダンプ
発表内容
1. 研究の背景 ビームラインの現状
2. ビーム試験
– ソレノイドスキャン
– スリットスキャン
– 空洞試験
3. まとめ
ビームコミッショニング
• 加速電圧100 kV ビーム電流 10nA程度
励起レーザー He-Neレーザー CW 544nm
• 8月末にアクティベーションし、QE は0.5%であった。
• ソレノイドの電流を変化させてもビーム重心
がぶれない位置に調整することでソレノイド
の中心を通るビーム軌道を確立し、95%
以上の輸送効率が得られた。
• 続けてエミッタンス測定を開始した。
各スクリーンでのビームプロファイル
MS1
MS2
MS3
電流測定結果
MS4
MS5
初期エミッタンス測定
•
•
•
低電流極限でのエミッタンスをレーザーのサイズ、波長を変えて測定する。
レーザーはピンホールにより整形してトップハット形状にしている。
ピンホールでのレーザーの分布がカソード上で2倍にイメージするような光学系で
レーザーを輸送している。
ピンホール φ0.2
カソード上 φ0.4
ピンホール φ0.4
カソード上 φ0.8
ピンホール φ1
カソード上 φ2
• ビームプロファイルをみてレーザーを調整
する。カソードがスクリーンに投影されるよう
なオプティクスでビームに縞模様が見えない
ようにレーザー光路を調整している。
MS3における
プロファイル
Before
After
ソレノイドスキャン
• SL2の電流(K値)を変化させ、MS3(距離1.491m)および、
MS4(距離2.981m SL3はオフ)の位置でビームサイズを測定
する。
• 下式よりエミッタンス 4.000


が求まる。
3.000
1

2
 x  a  b   c
f

ac
 x   2
L
x [mm]


2.000
1.000
0.000
0
0.5
1
1.5
1/f
2
2.5
3
MS4でのソレノイドの焦点距離に対するビームサイズの変化
スリットスキャン
スリット写真、上から
25mm,50mm,100mm
下は25mmのスリット
を顕微鏡で測定した
時のもの。
x' 
 xMS 4
L
 x    xSlit  x'
•スリットの位置を変えながら、下流のスク
リーンでビームサイズを測ることでスリット
位置でのビームサイズと角度広がりが測
定でき、エミッタンスが分かる。
MS3
MS4
スクリーンでのプロファイル
エミッタンス測定結果
normalized emittance [mm-mrad]
•スリットスキャンとソレノイドスキャンによる測定結果を示す。
ソレノイドスキャンは数回の測定結果の平均をとりエラーを標準偏差で見積もっている。
0.6500
green sol
red sol
green slit
red slit
0.4875
0.3250
0.1625
0.000
0
0.5
1
1.5
2
Laser diameter [mm]
2.5
3
3.5
•この結果から余剰エネルギーを求めると、green (544nm)の時が164 meV
red(633nm)の時が136 meVとなり、計算値とおおむね一致している。
•この結果から、ソレノイドスキャンとスリットスキャンの測定解析手法について
の整合性が確認される。
バンチ長の測定
• 空洞のダイポールモードを使用して、縦方向位置に比例した
蹴りをビームに与え、下流でのビームサイズを測ることで、バ
ンチ長を測定する。
•
•
•
•
空洞の性能
Q値
:14000
周波数 : 2.6 GHz
投入電力:20 W
• 1psec から100psec
overのバンチ長を
測定する。
バンチ長測定の原理
N.Kudo et al. proc of 1st annual
meeting of particle accelator
society (August 4 - 6, 2004,
Funabashi Japan)
空洞完成図
偏向空洞試験
• バンチ長測定用の偏向空洞の運転試験を行った。
• 磁場の計算値と、空洞のQ値の測定値から10Wの時に最大
±5.3mradの蹴りを与える予定である。
• 10Wの時ビームが10.4mmの大きさであり、空洞とスクリーン
間の距離が1042mmなので、±5mradの蹴りが発生してお
り、おおよそ設計通りである。
0W
2.5W
10W
40W
偏向空洞試験
• パルス化されたビーム(10 psec)程度を測定してみた。
• 1.3GHz filber laser と偏向空洞のタイミングをロックしている。
• RMSビームサイズが0.49mm(4pixel)から1.04mm(8pixel)に変
化した。
beam shift [mm]
12.00
6.000
0.000
-6.000
-12.00
0
50
100 150 200 250
phase shift [degree]
300
350
Deflector off
Deflector on
まとめ
•
ERL用電子銃のテストビームラインが完成しビーム試験が開始された。
•
ビームコミッショニングにより、ビーム調整法の経験を積み、速やかな測定に移れ
るようになった。
•
エミッタンスを測定し、ソレノイドスキャンとスリットスキャンで求めた値がおおむね
一致しており測定、解析手法の妥当性を確認した。
レーザー波長及びレーザースポット径によるエミッタンスの変化を確認した。
偏向空洞の性能を確認した。
•
•
• 今後
•
•
•
•
•
誤差の見積もりを行う。
スクリーンの分解能を上げるために、オプティクスを工夫して測定を行う。
偏向空洞のキャリブレーションを行い、未知のバンチ長を測定可能にする。
制御、解析ソフトの充実を目指す。
複数のカソード材質に対して特性の評価を行っていく。
ご清聴ありがとうございました