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かなた望遠鏡を用いたブレーザーの
可視偏光モニターによる変動機構の研究
笹田 真人 (広島大学)
目次
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•
•
ブレーザーのイントロダクション
ブレーザー44天体の種類と変動
ブレーザーの光度と色変化
偏光ベクトルの回転
フレアと偏光の変化
まとめ
ブレーザーの観測的特徴
• 光度の変動
– 早く激しい光度変動を示す→変動タイムスケール:数分~年
• 広帯域放射
– 電波からガンマ線に至る放射
– 放射機構:シンクロトロン放射、逆コンプトン散乱放射
• 高い偏光と変動
– 電波から可視にかけて高い偏光とその変動
PD (%)
R (mJy)
Villforth+ 2010
16
12
8
4
0
30
OJ 287
20
10
0
Dec 2005
Dec 2006
Dec 2007
Dec 2008
ブレーザーの分類
• シンクロトロン放射
Fossati+ 1998
– 低エネルギー;電波〜可視、X線
• 逆コンプトン散乱放射
– 高エネルギー;X線〜ガンマ線
• 輝線の有無
– シンクロトロン放射によって母銀
河からの輝線が埋もれる
– 輝線が検出 → FSRQ
– 輝線弱い
→ BL Lac天体
• ピーク周波数によって分類
– HBL → X線
– IBL → 可視光
– LBL → 赤外
電波 可視光
X線
ガンマ線
シンクロトロン放射の偏光と磁場
• 偏光:光の偏り
– 天体の偏光から対象の対称性
などの情報を取得
シンクロトロン放射
• 相対論的粒子が磁場と相互作用
• 磁場からローレンツ力を受け放射
→ 磁場に垂直な方向に直線偏光
ブレーザーの放射から検出される直線偏光
放射領域の磁場情報が取得
これまでの可視偏光観測
• 変動の研究には連続的な観測が必要
→ モニター可能な観測施設の必要性
• 偏光観測装置は世界的に少ない
現状の問題点
 短期間のモニター、又は観測頻度の粗い偏光モニターしか
ほとんど行われていない
 多天体の系統的な偏光変動の研究はほとんど無い
求められる研究
 長期で連続的なブレーザーの偏光モニターが必要
 系統的な観測から変動の一般性を研究する必要
目的
• ブレーザーの変動機構と磁場構造の関係は
未解明
• ブレーザーを偏光観測することによりジェット
の磁場構造の情報を直接得ることができる
• 偏光観測装置の希少さにより、ブレーザーの
連続的な偏光観測例は少ない
ブレーザーを長期で連続的に偏光観測し、
変動機構と磁場構造の関係を明らかにする
観測機器
• かなた望遠鏡
– 大学付設により占有可能
→ 連続的なモニター観測
が可能
• TRISPEC
– 可視光、近赤外観測
– 直線偏光撮像観測モード
TRISPEC
かなた望遠鏡/TRISPECを用いて、過去に例のないほど多数の
ブレーザーの長期で連続的な偏光モニターを計画し実施した
観測天体と期間
• ブレーザー44天体のモニター観測
– 過去に例のない多天体モニターを計画、実施
• 観測期間:2008年5月~2010年12月
1ES 0323+022
4C 14.23
ON 325
PKS 1749+096
1ES 0647+250
4C 49.22
OQ 530
PKS 2155-304
1ES 0806+524
AO 0235+164
PG 1424+240
QSO 0324+341
1ES 1959+650
BL Lacertae
PG 1553+113
QSO 0454-234
1ES 2344+514
H 1722+119
PKS 0048-097
QSO 0954+550
1H 0323+342
Mis V1436
PKS 0215+015
QSO 1239+044
3C 273
Mrk 421
PKS 0422+004
RX J1542.8+6129
3C 279
Mrk 501
PKS 0754+100
S2 0109+224
3C 371
OJ 287
PKS 1222+216
S4 0954+65
3C 454.3
OJ 49
PKS 1502+106
S5 0716+714
3C 66A
ON 231
PKS 1510-089
S5 1803+784
9
44天体の種類と変動
光度、色、偏光の変動
• 光度、色、偏光共に観測期
間中において変動
• 3C 66Aにおいて1.6等光度が
変化
• V-Jの色が0.4等変化
• Vバンドの偏光度が25%変
化
• 偏光方位角は180度付近に
集中
 天体によって各変動の大
きさにばらつきがある
 各天体でのピーク周波数
と変動の振幅を調べる
光度振幅とピーク周波数
• 縦軸:観測期間中の
光度の振幅 ΔV
(VMAX - VMIN)
• 横軸:シンクロトロン
放射のピーク周波数
 ピーク周波数が低い
天体ほど光度変動が
激しい
 同じピーク周波数で
のFSRQとBL Lacに変
動振幅の違いはない
• BL Lac天体
• FSRQ
• 観測点の少ない天体
偏光度振幅とピーク周波数
• 縦軸:観測期間中の偏光
度の振幅 ΔP
(PMAX - PMIN)
• 横軸:シンクロトロン放射
のピーク周波数
 ピーク周波数が低い天体
ほど偏光が変化
 紫外に熱的成分がある
3C273とQSO 0454-234は
偏光の変化が小さい
 同じピーク周波数での
FSRQの方がBL Lacより変
動振幅が大きい可能性
• BL Lac天体
• FSRQ
• 観測点の少ない天体
ブレーザーの種類と変動
• ピーク周波数が低い天体ほど可視光での変動が
大きい
• ピーク周波数が違う天体を同じ可視光帯域で観測
する
→ 異なるエネルギーの電子からのシンクロ
トロン放射を観測
高エネルギー電子からのシンクロトロン
放射が激しく変化する
光度と色変化
S5 0716+714の光度と色
100日
光度だけでなくV-Jの色も変化する
bluer-when-brighter
 天体が明るくなると
色が青くなる
→bluer-when-brighter
 増光時に高周波数
側の方が上昇
 過去数天体で報告さ
れている
V
• S5 0716+714の色等
級図
redder-when-brighterと紫外放射
• PKS 1510-089の色等
級図
V
 暗い時期において天
体が明るくなると色が
赤くなる
→redder-when-brighter
 紫外領域に熱的な成
分が存在
→ シンクロトロン放射
の増光により赤くな
る
bluer-when-brighterの一般性
• 数天体でredder-when-brighterを示す
• 明るい時期はシンクロトロン放射優勢
→ 天体の明るい時期において相関を調べる
 観測点の多い32天体のうち28天体でbluer-whenbrighterが見られる
→ 全体の88%
bluer-when-brighterはブレーザーの
一般的性質と言える
偏光ベクトルの回転
偏光の変動
偏光度
(%)
方位角
(deg)
• 光度と同様に偏光も変
化
• AO 0235+164の場合
• 偏光度が0〜35%
変化
• 偏光方位角は0〜
180度に存在
光度
20日
21
• アウトバースト中に偏光ベク
トルが約360度回転
• 活動的な時期には逆方向に
回転を検出(約270度)
8
6
4
2
25
偏光度 (%)
• アウトバーストのピーク時に
偏光度が2%とアウトバース
ト中でもっとも低い
→ その後上昇し22%へ到
達
偏光方位角
(deg)
• アウトバーストが存在
光度 ×10^-11
(erg/s/cm^2)
2009年の3C 454.3
20
15
10
5
-100
-300
-500
-700
-900
5000
5100
JD - 2450000
2009年以外にも偏光ベクトルの回転を検出
5200
複数の回転の検出;3C 454.3
 2005〜2009年において5回の
回転を検出
2005 outburst
2007 outburst
 回転達において時計、反時計
回りの両方が存在
 偏光ベクトルの回転率はそれ
ぞれ 8.7, 22, -5, -26 , 9.2
(deg/day)
(2005, 2007, 2008, 2009)
2008 outburst
Jorstad + 2010
First rotation
Sasada+ 2010
Second rotation
偏光の回転の解釈
• 偏光ベクトルの回転から螺旋磁場が示唆される
(Marscher+ 08)
• 両方向の回転を説明するためにBent jet modelが提唱
(Abdo+ 10)
問題点
螺旋磁場:両方の回転方向で回転が観測
Bent jet:400度以上一定の回転率
フレアと偏光
PKS 1510-089
+0.79+0.05
−0.07
偏光度
(%)
方位角
(deg)
• 2009年から観測を開
始
• 光度が10倍増光する
20日以内の大フレア
を検出
• フレアに相関して偏光
度が上昇
• 光度と偏光度の相関
係数;
Sasada+ 2011
光度
20日
26
フレア中の光度と偏光度
 20日以内に変動するフレアに伴って偏光度が上昇
仮説
短期間のフレアにおいて光度と
偏光は普遍的に相関して変化する
検証
多数の天体に対しての偏光モニター観測から、
フレアの光度と偏光度の変動を系統的に調べる
27
フレアの定義
Flux
PD
Time
Time
2.
検出したピークの前後10日をピーク範囲として定義
1. 光度曲線のピークの検出
3.
もしピーク範囲において検出したピークがもっとも
–高い場合、フレアのピークとして定義
範囲内のデータが5点以下の場合棄却
28
検出したフレア
•
•
•
•
観測天体数 44天体
総フレア数 166個
フレア検出天体 29天体
光度が二倍以上変化した大フレア 28個
• 大フレアを検出した天体 12天体
• 大フレアの光度と偏光度の相関(相関係数で判断)
(正, 負, 有意な相関なし)= (13, 5, 10)
相関なしの中には誤差が大きいもの、データ点の少ないもの
も含む
29
フレアの振幅
Flux
PD
Time
光度と偏光度の最大と最小の比と差を振幅とする
 長期的に変動する成分を差し引く
Time
30
偏光度振幅 (Pmax – Pmin)
光度と偏光度振幅の相関
正の相関が存在
r=0.62±0.05
光度比 (Fmax / Fmin)
小さなフレアではあまり相関が良くない
31
フレアの特徴
• 小さな振幅のフレアの発生頻度は高く、大きな
振幅のフレアは低い
• フレアの光度と偏光度の振幅には正の相関
→ フレアによって偏光が変化
各フレアが固有の偏光ベクトルを持つ
• 小フレアでの相関は弱い
1. 大フレアが発生した場合、偏光が大きく変化
2. 小フレアの場合、頻度が高い小フレアの重なり
合せにより偏光の変化が小さくなる
32
放射領域の磁場構造①
得られた示唆
• フレアは固有の偏光ベクトルを持つ
→ フレアの発生領域での磁場は揃っている
考えられる状況
• フレアによって磁場が揃う
• 磁場が揃っている領域でフレアが発生
33
放射領域の磁場構造②
1. 発生した衝撃波によって圧縮された磁場が揃う
圧縮される前
圧縮による磁場
構造の変化
圧縮された後
Laing 1980
衝撃波により
空間が圧縮
圧縮により
磁場が揃う
放射領域の
磁場が揃う
(モデルの使用例)
• 観測される偏光度から圧縮度を計算 (Hagen-Thorn+ 2008)
34
放射領域の磁場構造③
2. 磁場の揃った局所からの放射
局所的に見ると磁場は揃っている
変動起源が
局所的に発生
局所においては
磁場は揃っている
放射領域の
磁場が揃う
(モデルの使用例)
• 分スケール変動の偏光度の上昇 (Sasada+ 2008)
• ビーミングにより局所のみが見えることによる偏光の変化
(Abdo+ 2010)
35
まとめ
 ブレーザー44天体の多色偏光モニター観測
を実施
 光度、色、偏光共に変動を起こす
 ピーク周波数によって光度と偏光の変動振
幅が異なる
 Bluer-when-brighterはブレーザーの一般的
な特徴
 偏光ベクトルの回転を検出
 フレアの光度と偏光度の振幅には正の相関
ブレーザーの変動起源
1. 内部衝撃波モデル
– ジェットから噴出したブロッブが衝突し衝撃波を形成
– 1次Fermi加速により高エネルギー粒子が増加し、磁場と相互作
用によりシンクロトロン放射
2. ビーミングの変化
– 放射領域の移動、ジェット軸の微細な変化等により視線方向と
ジェットのなす角が変化
– ビーミング因子が変化することにより観測される光度が変化
ジェットを形成している磁場の構造
と変動の関係はわかっていない
偏光の挙動
QU平面
Moore+ 1982
方位角
偏光度
光度
Smith+ 1986
• 光度と偏光度には正の相関
• 偏光を表すQU平面上でランダムな軌道
• 近年長期的な偏光観測から、偏光には速く変動する成分と
ゆっくり変動する成分の二つが存在 (Villforth+ 2010)
大振幅フレアの例
負の相関
相関なし
r=0.91±0.07
r=-0.85±0.10
r=-0.14±0.30
方位角 偏光度 光度
正の相関
U/I
QU平面
40
光度と偏光度の相関
1. 光度と偏光度の相関は正と負の両方が存在
2. QU平面上では類似した変化
–
どちらも起点と終点は一定場所
長期的な変動成分の寄与による原点の違いによって
正負に異なった相関
正
負
U
0
U
Q
0
Q
41