都市と地方の運動能力の違いについて

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Transcript 都市と地方の運動能力の違いについて

子供の運動能力と
生活環境
富山大学 岩田ゼミ
目次
1 テーマ
2 全国体力・運動能力、運動習慣等調査
3 要因の分析
4 まとめ
1 テーマ
子供たちの運動能力は 身の周りの生活環境や
毎日の生活習慣から影響を受けているだろう
そうだとすれば 生活環境や生活習慣の異なる都市と地方では
子供たちの運動能力にも違いがでてくるのではないか
子供たちの運動能力に影響を与える要因は何か
2 全国体力・運動能力、
運動習慣等調査
全国体力・運動能力、運動習慣等調査
・小中学生の体力の状況を把握・分析することを目的に
平成20年から文部科学省が実施している調査
・学校における体育・健康教育の改善に役立て
子供の体力低下に歯止めをかけるのがねらい
・小学校は20,848校(全体の98.4%) 児童1087,902人
中学校は10,500校(全体の95.0%) 生徒1039,921人 が参加
調査の導入の経緯
昭和39年(1964)~ 「体力・運動能力調査」
平成11年(1999)~ 「新体力テスト」
↓
子供の体力・運動能力は低下傾向が続いている
↓
平成20年(2008)から 従来の体力・運動能力調査と並行して
子供の体力・運動能力の課題の検証と改善のため導入された
調査の内容
・対象は全国の小学校5年生と中学校2年生
・8種目の実技調査
(握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、
20mシャトルラン、50m走、立ち幅とび、ソフトボール投げ)
・運動習慣・生活習慣・食習慣に関する質問紙調査
調査の結果・特徴(1)
体力合計点(小学校)の推移
55
54.9
54.9
54.9
54.8
54.7
54.6
54.6
54.4
54.4
54.2
54.2
54.2
54.1
54
53.9
53.8
53.6
53.4
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成24年度
男子
女子
平成25年度
体力合計点(中学校)の推移
50
48.6
48.3
48
48.3
48
47.9
46
44
42.1
42
41.4
41.3
41.5
平成20年度
平成21年度
平成22年度
41.7
40
38
36
平成24年度
男子
女子
平成25年度
調査の結果・特徴(2)
実技調査と質問紙調査の結果から
文部科学省は 児童・生徒の体力と
運動・生活・食習慣との関連をまとめている
また これまでの調査の結果から
児童・生徒の体力や運動・生活・食習慣の
変化についてもまとめている
男女とも 朝食を「毎日食べる」集団は それ以外の集団に比べて
体力合計点が高く 1週間の総運動時間が長かった
51
50
49.925
49
47.775
48
47
46.275
46
45
44
毎日食べる
食べない日がある
まいにちたべない
男女とも 1日の睡眠時間が「6時間以上」の集団は
それ以外の集団に比べて 体力合計点が高かった
50
49.725
49.5
49.375
49
48.5
48.4
48
47.5
6時間未満
6~8時間未満
8時間以上
男女とも 1日のテレビ(テレビゲームを含む)の
視聴時間が「3時間以上」の集団は それ以外の集団に比べて
体力合計点が低かった
51
50.575
50.5
50.25
50
49.6
49.5
49
48.325
48.5
48
47.5
47
1時間未満
1~2時間未満
2~3時間未満
3時間以上
男女とも 運動部やスポーツクラブに「入っている」集団は
「入っていない」集団に比べて 体力合計点が高かった
54
52.1
52
50
48
46
44.375
44
42
40
入っている
入っていない
男女とも 運動やスポーツの実施頻度が高いほど
体力合計点が高かった
60
52.85
50
46.475
43.025
41.25
40
30
20
10
0
ほとんど毎日
時々
ときたま
しない
児童・生徒の体力合計点を比べてみると
地域の規模による傾向はみられなかった
→都市や地方のような地域の規模ではなく
それぞれの生活環境や生活習慣が
子供たちの運動能力に影響を与えていると考えられる
文部科学省は 児童・生徒の体力と
生活習慣との関連をまとめていた
→ここでは 児童・生徒の体力に
生活環境が与える影響に注目して分析する
3 要因の分析
子供たちの運動能力に影響を与えるものとして
次のような要因を考えた
・スポーツ施設数
・公園
・児童・生徒数
・自動車保有台数
・独自の取り組み
①スポーツ施設数と運動能力
体育館や各種競技場などのスポーツ施設が
身の周りにどのくらい整備されているか
スポーツ施設が整備されていれば
より良い環境で運動することができるので
運動能力が向上するのではないか
スポーツ施設数と体力合計点の関係
70
60
体力合計点
50
40
30
20
10
0
0
1
2
3
4
1人当たりスポーツ施設数
5
6
7
8
考察
1人当たりのスポーツ施設数と体力合計点の関係をみてみると
スポーツ施設数が増加すると 体力合計点は減少し
マイナスの影響がみられた
→スポーツ施設を利用して運動する子供が少なかったため
スポーツ施設数が運動能力に与える影響も
小さかったのではないかと考えられる
②公園と運動能力
子供にとって身近で 運動ができる公園が
身の周りにどのくらい整備されているか
身近に公園があることで
遊びを通して体を動かす機会が増加し
運動能力が向上するのではないか
公園(数)と体力合計点の関係
70
60
体力合計点
50
40
30
20
10
0
0
0.5
1
1.5
2
2.5
1人当たり公園数
3
3.5
4
4.5
5
考察
1人当たりの公園数と体力合計点の関係をみてみると
公園数と公園面積が増加すると 体力合計点は減少し
マイナスの影響がみられた
→子供の生活習慣の変化や年齢の変化にともなって
公園で遊ぶ機会が減少し 運動能力に与える影響も
小さかったのではないかと考えられる
③児童・生徒数と運動能力
児童・生徒数が運動能力に与える影響には
いろいろなものが考えられる
児童・生徒数が多い場合
・自分以外のほかの生徒との競争が増え
切磋琢磨するなかで 運動能力が向上する
・運動に対する意識が低下すると
全体の運動に対する意識が低下してしまう
など
児童・生徒数が少ない場合
・ひとりひとりの児童・生徒に対して
より丁寧で細かい指導をすることができる
・団体で行う運動が困難になり
全体のレベルが低下する
など
児童・生徒数が多い場合も少ない場合も
運動能力にはプラス・マイナス両方の影響が考えられる
児童・生徒数と体力合計点の関係
70
60
体力合計点
50
40
30
20
10
0
0
5000
10000
15000
20000
25000
児童・生徒数
30000
35000
40000
45000
50000
考察
児童・生徒数と体力合計点の関係をみてみると
児童・生徒数が増加すると 体力合計点は増加し
プラスの影響がみられた
→児童・生徒数の増加による
プラスの影響がマイナスの影響よりも
大きかったのではないかと考えられる
④自動車保有台数と運動能力
都道府県ごとの世帯あたりの自動車の保有台数
両親が自動車を持っていると
子供の運動能力に影響を与えるのだろうか
自動車保有台数と体力合計点の関係
70
60
体力合計点
50
40
30
20
10
0
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
自動車保有台数
1.2
1.4
1.6
1.8
2
考察
世帯あたりの自動車保有台数と体力合計点の関係をみてみると
自動車保有台数が増加すると 体力合計点は増加し
プラスの影響がみられた
→都市に比べて地方では自動車保有台数が多く
地方では 普段の生活のなかで体を動かす機会が
都市に比べて多いので 運動能力が高かったのではないかと
考えられる
⑤独自の取り組み
各都道府県では 子供の体力・運動能力の向上のために
独自の取り組みを行っているところがある
ここでは 児童・生徒の体力合計点が高かった都道府県が
行っている取り組みを紹介する
事例1 福井県立越前町立朝日小学校
取組の内容
1 体育授業の改善
・個に応じた授業づくり
・めあてづくりのための自己評価
・新体力テストの結果の活用
2 運動の習慣化
・なかよし活動とチャレンジ活動
・運動に親しめる環境づくり
工夫したこと
・授業のはじめに 授業の流れを児童に説明
→児童が学習活動に見通しをもって授業に臨むことができる
・スモールステップの授業構成
→児童全員が学習の達成感が得られる
・個人のなわ跳びやマラソンの記録表や学習カード等をファイル
→自己の体力や記録の伸びを児童自身が実感できる
取組の成果
・児童がお互いに教え合う姿が見られ
運動が楽しいという喜びを実感することができた
・運動の習慣化の取組によって 運動の日常化の定着や
体力向上にもつながったと考えられる
体力合計点 男子 61.3 女子 64.9
(全国平均 男子 53.9 女子 54.7)
事例2 茨城県高萩市立秋山中学校
取組の内容
1 体力つくりの時間(通年)
1年間を通して 部活動の朝練習前と放課後に
15分間の「体力つくりの時間」を設定
2 体育的な行事の工夫
・「1年生歓迎!陸上クラスマッチ」(4月) ・「体育祭」(9月)
・「部活動対抗駅伝大会」(10月) ・体つくり集会(2月)
3 高萩市ユニット5事業(幼保小中連携事業)
高萩市では 幼保小中を中学校区ごとに5つに分け
校種間連携を進めている
・幼保中連携
「外遊び交流」 「幼稚園の運動会への参加」
・小中連携
「保護者向け食育学習会」 「中学生による陸上指導」
工夫したこと
・体力つくりの時間には 新体力テスト結果を踏まえ
様々な運動を選定し 体力の向上を目指した
・学級・部活動対抗等で競い合うだけでなく
幼保小との連携や保護者・地域の協力により行事を盛り上げ
楽しい雰囲気の中で進んで運動に取り組むことを通して
体力を向上させようと努力した
取組の成果
・体力総合評価の値が上昇し
県から「体力優秀賞」の表彰を受けた
・行事に向けての練習や体力つくりに
意欲的に取り組む生徒が増えた
体力合計点 男子 48.6 女子 59.0
(全国平均 男子 41.7 女子 48.3)
4 まとめ
要因の分析の結果
これまで分析してきた生活環境から考えた要因が
子供たちの運動能力に与える影響は
次のとおりであった
・スポーツ施設数・・・マイナスの影響
・公園・・・マイナスの影響
・児童・生徒数・・・プラスの影響
・自動車保有台数・・・プラスの影響
まとめ(1)
スポーツ施設や公園などの運動に適した環境が
身の周りに整っているだけでは
子供たちの運動能力は向上しない
↓
子供たちの生活習慣を考慮した
運動能力の向上のための取り組みが必要
まとめ(2)
児童・生徒数が多いことが
子供たちの運動能力にプラスの影響を与えていた
↓
子供たちの運動・スポーツに関する意識を変化させ
積極的に運動しようとする環境を整えることで
運動能力の向上につながるのではないか
まとめ(3)
独自の取り組みを行うことによって
児童・生徒の体力合計点を向上させることができる
↓
学校や地域による独自の取り組みは重要
すでに成功している学校や地域の取り組みを
積極的に取り入れるべきではないか
参考文献
• 文部科学省
http://www.mext.go.jp/a_menu/sports/kodomo/zencyo/1266482.htm
• 総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/nenkan/23.htm
• 自動車検査登録情報協会
http://www.airia.or.jp/number/mycar.html