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治療構造論2015
日本精神分析学会と協会が二つあるという
話から:精神分析的精神療法
精神分析
頻度:週4回以上、場面:カウチ使用、方法:
自由連想法
 精神分析的精神療法
精神分析から、低頻度・対面設定の力動的
精神療法を含む広いスペクトラム
 あるいは500以上の心理療法がある。

2
精神分析が始まったのは
最初フロイトのもとに、自分も病気ではな
いかと思った人が治療を受けに来て、次第
に分析家になっていった。
 自分も分析を受ける必要性を、ユングが指
摘したことでフロイトが考えたことが25年
に実現した。
 訓練としての分析がまず審査の始まりで
あるというシステムが出来上がった。
⇒いつもフロイトの体験に戻る。

世界内体験⇒治療者の革新=狂気
フロイトの毎日分析は、彼の日常的な研究
態度の延長だし、寝椅子は彼が催眠療法
で用いていた方法を継続で、事後的に意
味が付け加えられたものである。
 ウィニコットの精神療法的コンサルテーショ
ンは一見革新的だが、彼の小児科臨床で
は日常的な行為を事後的に意味を与えた
ものに過ぎない。
⇒治療者は体験したものの外にはでない。

精神分析的理解のプロセス
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
治療構造論を理解する
基本概念を知る
アセスメントを行い、力動的定式化を作成する
心理療法を開始する→留意する事柄
介入する→何をいうか、何をするか
治療機序を考える(目標を考える)
抵抗と転移を扱う
夢と空想を用いる
逆転移を同定し、効果的に利用する
心理療法を終える(終結期へ)
SVと訓練分析を活用すること
5
フロイトの分析状況についての仕事
第一期:精神分析の前身(催眠療法)から
抵抗の除去を目指した、短期的、集中的
な治療の時期
 第二期:基本原則の明確化による、転移
神経症の発見の時期
 第三期:タナトスと悲観主義:治療の長期
化と終わりなき分析についての着想

はじめに:治療構造論
日本で開発されたもっとも強力な力動学派
の初期の業績のひとつ
 甘え、阿闍世、見るなの禁止などの概念
装置は、内面の心理状態を記述するため
の道具
 治療構造論は技法的な道具であり、しかも
精神分析に固有の道具ではなく、その拡
張をもくろむもの(日本特有の文脈)

古澤平作(1897-1968)

1932年にフロイトのもとを訪ね、彼から治療の提
案を受けるが、お金と言葉の問題もあって、彼は
それを断り、フェダーンからSVを、個人分析をス
テルバから受けて帰国して、古澤精神分析診療
所を田園調布に開業した。慶応大学に在籍して
いた小此木は、古澤のもとに治療のために訪れ
て、その結果、慶応大学精神科tの交流が頻繁に
なった。古澤のところには土居をはじめ、多くの精
神科医が訪れるようになった。
小此木啓吾
1954年 - 慶應義塾大学医学
部卒業。医学博士。
1972年 - 慶應義塾大学医学
部助教授
1988年 - 日本精神分析学会
会長
1990年 - 慶應義塾大学環境
情報学部教授(医学部兼任
担当教授)
199X年 - 東京国際大学人間
社会学部教授
歴史:小此木の自由連想法体験
医局の中での生き方とそれとは別の自由連想法
自宅臨床場面=研究日
 自由連想法の体験
古澤からの教育分析とスーパーヴィジョン

東京精神分析研究会(1953)
ルドルフ・エクシュタイン古澤訳
精神療法の構造的側面 → チェスのたとえ
↓
第一次操作反応の研究
九州と東京の二極化(別の道)
誰も毎日分析ができなかった
古澤の実践は、毎日分析というよりも、通
信分析など変法だったし、現存する記録に
は、分析は比較的頻度は低い(小此木の
報告)
 小此木は、精神科医局に属していたので、
週一回を維持するのがやっとだったし、精
神分析の頻度を知っていたが、それは実
践できていなかった。事情は西園でも同じ
だった。そのため、

小此木(1955~)の操作構造論
第一次操作反応 POR(第一回目の自由連想法におい
て最初の説明以後の反応のすべて)
(1)連想不能型
(2)拒否攻撃型
(3)積極型
(4)従順 (a)積極型
従順 (b)細心型
従順 (c)依存型
(5)(a)連想欠乏型
(b)沈黙型
(6)不安 (a)沈黙型
不安 (b)依存型
小此木(1957)らから第二次操作反応
第二次操作反応 SOR の研究
木村(馬場)礼子とのロールシャッハ研究
「『逆転移』の操作構造論的研究 –治療者の役
割の葛藤性と自律性をめぐって-」(1962)
逆転移の葛藤から自律するため、つまり自我と
自律性とを守る枠組みとしての操作構造(役割)
という発想。
→操作構造論の確立
 児童治療における治療的退行(1971)
慶応グループの治療的操作構造論と退行によ
る治療の理論化



治療における構造と退行
構造を提供すると、治療的な退行が起きる
(中立性の議論、児童治療における体験)
⇒治療的な退行は、心理療法の基本原理
である
 心理テスト、特にロールシャッハの反応は、
図版やテスト状況(構造)に対する退行で
あり、反応である。

治療的退行論から導入
当時自我心理学的な研究が世界のトレンド
だったので、それを中心に、精神分析を取り
入れた。ただし、それは週一回という「変法」
が多かった。子供がその対象であったこと
は、治癒の可塑性という点から正しかった
だろう。
 ただし、当時世界の精神分析が行っていた
毎日分析による神経症の治療は導入され
ていなかったとみて良い。

治療構造的機能(治療者から)
 定点観察
参与しながらの観察にとっての準拠
枠
 病理の彫塑
枠組み=基準=社会的合意事項
⇘治療構造を決めると、いろいろと専門
的な概念が生かせる。
治療構造論の展望
1.治療者が意図的に設定するもの(治療設
定)
2.治療者の意図を超えて与えられたもの
治療構造=準拠枠
3.治療経過中に自然に形成されるもの
構造転移ほか
→自我の分裂や変容的解釈論、そして等
距離性
治療構造論の転移・逆転移における機能
①.治療状況におけるコミュニケーション媒体機能
②.転移現象と投影の発生を規定する現実要因
③.投影ないし転移の分析を支持する機能
④.転移に対する受容器ないし抱える環境としての
機能
⑤.転移現象に対する境界機能
⑥.転移を認識する先験的な準拠枠としての機能
→逆転移を浮き彫りにする
アムステルダム・ショック
1994年のIPAの国際会議で問題になっ
た日本問題:小此木、西園両先生が対応
して、IPAのなかに日本を留まらせるよう
に対応した。
 ラカンのように、IPAから除名される危険
性があったが、この二人とJPSの努力によ
って査問から生き残り、日本は2000年よ
り正式に訓練が行われるようになった。
⇒日本精神分析協会

日本になかった「精神分析」
日本には毎日分析を基本とする精神分析
を実践している治療者は80年代後半まで
はいなかった。そのため、精神分析がリア
リティを持つのは、2000年ころになってか
らのことである。
 それまでの週一回の治療を維持するため
に、精神分析的視点を枠と内容に分けて
考えるために治療構造論は生まれた。

構造的な認識
 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事を
するようになったのか
 自分がどのような臨床場面にいるのか、
そしてそれはどんな構造をしているのか
 自分でその構造は、どの程度、設定とし
て変化させられるのか、それとも変化さ
せられないのか
治療態度による構造
フェレンチィ問題
フロイトに反する意見を述べながら、その
サークルに居続けた。
 積極的技法の提唱(1913-1923)
「精神分析における積極的技法の発展」

(1921)

緩和的技法の提唱(1924-1933)
「積極的分析技法における禁忌」(1926)
「精神分析技法における柔軟性」(1928)
フェレンチィ(1873-1933)
積極技法の提唱
 禁欲
 リラクセーション技法

フロム、バリントらブタペストのハンガリー学派
を形成した(晩年、フロイトとの関係が問題になり、
長く隠蔽された)
→フェレンツィ的態度VSフロイト的態度
フロイト的治療態度
治療態度中立性neutrality
受身性passivity
言語的理解と知的洞察禁欲原則abstinence
rule
incogitio
匿名性と医師としての分別arztliche Diskretion
エディプス-父性的柔軟性能動性activity
隠れ身analytic
フェレンチィ的治療態度
人間的な温かみ
能動性
情緒交流
非言語的コミュニケーションと
相互調節治療者のパーソナリティ・逆転移
前エディプス-母性的
治療者が動くと効果が変る
フェレンチィが語ったことは、心理療法家
が積極的に働きかけることが、精神分析
の効果に異なる結果を生み出すということ
であった。
 心理療法家の態度は、精神分析的であれ
ばある程、構造的な側面が前面に出る。
⇒積極的に働きかけるかどうか

精神分析的態度論
病態による構造
変数と適応
→定数と変数(パラメーター)
精神病
境界例
児童分析
①児童・思春期治療、並行父母面接
②境界例・分裂病の家族面接
③入院治療、ATスプリット
④バリント療法
⑤組織分析
Widening scope
1954年
Leo Rangell「精神分析と力動的精神療法
の類似点と相違点」
Leo Stone「精神分析の適応範囲を広げる」
Edith Jacobson「重症うつ病の精神分析」
Anna Freudのコメント
→精神療法の適応範囲を広げるための試
み
自由連想法の変化

P.Federnの精神病の精神分析
(1943.47)
自我の防衛抵抗の再建のために寝椅子、転移、
抵抗分析を放棄する。(=H.S.Sullivan)
 高橋(1955)の整理
(1)寝椅子法(主として自由連想法)
(2)腰掛法( 同上)
(3)対面法
(4)90度法(主として精神病)
フェダーン(Federn,P)
自我感情、自我境界、自我備給、自我状態
1. 精神病との間に陽性転移を確立する
2. 自我備給の回復と抑圧の再確立
3. 一対一対の治療関係ではなくて、
治療環境の協力
4.上記の条件で健康な部分をよりどころ
とした洞察や現実検討
→シュヴィング
精神病患者にはどう対応するか
態度を支持的にするかどうか(前掲)
 チームで働くかどうか
 分担治療をするかどうか
そうした構造のなかで、病態によって構
造を変化させる必要があるかどうかという
ことを考える。
⇒治療の構造化について

児童治療における論争
フロイト-クライン論争(2)
E.Sharpらのロンドン
クラインとアンナの亀裂
1938年のフロイト家亡命という問題
論争の激化と収束
クライン学派の形成
1940年代の淑女協定までの間の感情
的論争(母と娘の闘争)
→独立学派の登場
論点
Ⅰ.当初の主な論点
1)児童分析における導入期の必要性
A.フロイト(以下A)=児童は自発的な決心で治療に訪れな
いし、病気に対して洞察を持たず、治療への意志を持た
ない。患者の気分に適応して、分析者を興味ある人物と
思わせて、患者にその有用性を伝え、現実的な利益を確
認させる「導入期」の必要性
M.クライン(以下M)=その必要性はない。子どもの治療は
原理的に大人と一緒である。
2)児童分析における家族の参加
A=情報の収集や状態を把握するために、そして教育的な
面でも有用
M=家族の葛藤を巻き込むためにマイナス
3)児童の感情転移
A=児童分析では治療者は鏡というよりも、積極的に働き
かけていることが多い。しかも子どもは起源的な対象関
係の神経症的な関係を発展させている途上にあるので
あって、まだそれは実際の両親との間で現在進行中で、
古い版になっていない。そのため感情転移は起こりにく
い。
M=3才までに対象関係の原型は作られているので、それ
以後においてはすべて起源の神経症を大人の神経症と
同様に形成している。感情転移、特に陰性の感情転移こ
そ治療において重要である。
4)エディプス・コンプレックス
A=3-6才の間に形成される。超自我はエディプス葛藤の
解決によって形成される(攻撃者との同一化)
M=早期エディプスコンプレックスの形成。3才までに完成
している。これ以後の子どもは処罰不安を持っている理
由はそのためである
5)児童分析での教育
A=教育的要素の必要性。児童は現在も自分のモデルを
取り入れ中で、治療者が教育的な視点から「自我理想」
であることが重要。
M=分析と教育は違う。早期から形成されている罪悪感や
対象関係を深く扱うのが精神分析である。
6)死の本能
A=死の本能よりも自我と精神装置を重視
M=死の本能を理論の根幹に据える
7)解釈
A=自我から本能へ。防衛の解釈からイド解釈へ
M=超自我を緩めるための深層解釈。象徴解釈を多用す
る。
動かせない構造と動かせる設定
治療のなかで動かせないもの(構造)は、動かせ
るもの(設定)とがある。
 動かせないものなかには、さまざまな人間関係
があるが、それはたぶんに治療者の人間関係に
左右される(自然と出来てしまうものを含む)。
面接者が活用できる要素
1. 設定
2. 姿勢
3. 言葉の力

治療設定
外在的な基準という発想
寝椅子を使う
 多頻回のセッションを組む
 セッションを維持してお金を取る
 資格を持つ分析家が行う
⇒こうした定義はさまざまな臨床場面に対応
しているわけではないので、包括的な定義
が必要である。

例えば、設定のモダリティ
寝椅子と対面法一つをとっても、精神分析
的状況は異なる機能をもたらす。問題は
何を治療構造の前提とするかにかかって
いる。
 フランスは、対面法と寝椅子法との違いを
選択するというコンテクストがある。だから
対面法でできることと、寝椅子でできること
を分けていく必要がある。

寝椅子を用いた
精神分析の特殊性(Waelder,R. 1956)
1.
2.
3.
4.
5.
患者は苦しんでいて、助けを期待して治療に
来る。大人に対する子どもの立場に近い。
人生の親密な部分を包み隠さずに暴露する。
大人の前で丸裸な子ども
自由連想法の分析規則が目的的な行動や衝
動への防衛を放棄させる。自我とエスのバラン
スを変え、退行をもたらす。
無意識的不安に対する分析家による安心がも
たらされる。守られた子どもの立場になる。
分析家の受動性によって、患者の空想が守ら
れる。外界の行動で空想が疎外されない。
内在的な基準とは?
内側でやっている作業は、どのようなもの
か?
 無意識を取り扱うために、基準となるのは
何か
 精神分析的な設定のうち、さまざまなスペ
クトラムに共通する要素は何か?
などの疑問に答えられることが必要である

Donnet(2005)の「分析する状況」
問題:方法の談話であると同時に、方法に
抗う談話であるというジレンマがある。精
神分析を設定とプロセス、構造と機能に分
けることそのものに無理がある。
 Donnetは設定とプロセスを「分析場Site
と分析状況analyzing situation」との分
ける。前者は意識的な構造化、構築であり、
後者は無意識を取り扱う状況である。

寝椅子を用いて、他頻回に、そして時間を
開かれたものにしていくことで生み出され
る心的な変化
⇒寝椅子:見えないこと、そして寝ていて(運
動していて)目覚めていること、だからこそ幻
覚と夢の方向に進む。
多頻回:多くの時間で事後的に、そして償う
ことができるため、時間が無限に開かれてい
る。設定を維持する。
分析する人が「親密な分離」のなかで、考
える、解釈する可能性を導く方向性

精神分析の内的基準
設定⇒退行:Grunberger(1971)の自己
愛の臨床的な意義に近い場
 抵抗の克服:沈黙する分析家と連想阻害
 転移:談話のなかに含まれている無意識
的な要素を意識する。
 Viderman(1971)が転移を生み出すと
同時に逆転移を生み出すような「精神分析
的空間」の構築

治療機序に含まれる治療者の心
個人、教育、訓練分析が標準的な精神分
析には優先される(自分がやってもらった
ことを相手にするのは当然の原理)
 治療しながらスーパーヴィジョンSuperVisionをすることで、観察=内省=保留=
思考(二次過程)を治療の中に持ち込む
 そして実践が行われるための準備性が治
療者の心の中に標準化される

設定と構造
設定か構造か

小此木-北山の論争
ウィニコット(深津)を通じて、慶応におけ
る治療構造の抱える環境論の追加
→設定状況論(ウィニコット)との差異
北山:可変的要素は設定と呼ぶべきであ
るという議論
小児医学から精神分析へ
1941年「設定状況における幼児の観察」
舌圧子
医師
母親と子ども
第一段階
驚きから「ためらい」の段階
第二段階
欲望を受け入れて、口で噛む、空想する
遊べる段階
第三段階
捨てられる。放っておいても大丈夫な段階
生後5ヵ月から13ヵ月(13ヵ月過ぎると幅が
広がってしまう)に典型的なやりとり。
移行対象
1951年「移行対象と移行現象」
生後4、6、8、12ヶ月に発見される
最初の所有物
1952年「精神病と子どものケア」
中間領域と移行対象の理論、そして精神病
↓
1. 枠組みと治療空間、間の体験
2. スクウィッグルと相互作用
3. 内と外、パラドックスの発見と理解
治療相談therapeutic
consultation
精神療法面接とは異なる技法
二三回あえば治る症例に対するもので
転移と抵抗を扱うよりも
間の体験のなかでクライアントのニードに合わ
せた体験を提供する。
 スクィグル技法
 オンディマンド法
 在宅などの環境の活用
構造化という発想
必要性が母体になっている
個性が構造化を治療に持ち込むことで、イ
ノベーションが行われる場合がある(天才
と狂気が紙一重=フェレンチィ)
 構造化が必要な治療場面がある=精神科
臨床で精神分析を導入する(力動的精神
医学には特別な方法が多い=病態、ある
いは対象、パーソナリティ障害)
 臨床的な保守性(パラメーターよりコンスタ
ント)

細部に宿る構造

面接の場面で考えると、
病院や場所
人間関係や性格
動かせない
心理テスト構造
テスト依頼状況とテストの習熟度
 テストバッテリー
(テストの種類によって構造的なものと解釈
の自由度が高いものがある)
 依頼の文脈/自我や対象関係などの解読
の可能性が設定によって変化していくし、
治療導入の方法が変化する

治療構造化
親子治療などの治療的退行論から発展し
て、さまざまな状況で構造を組み立てると
いう発想が育ってきた。
 治療を与えられた状況でどのように可視
的なもの、構造的なものにしていくかという
発想から組み立てられた議論→主に、岩
崎、狩野といった小此木の弟子たちがそ
の発想を病院や治療場面に拡張したもの

Split treatment(分担治療)
親子並行治療?
 投薬医―療法家
 管理医―療法家
他
【二つのコミュニケーション】
1. 治療者に知らせる
2. 他の治療者の役割を尊重する

守秘義務と治療構造
投影同一化
自我漏溺
秘密
侵襲
Main 「特別な患者」

「特別な患者」:看護者たちが職務をまっとうできない
ようになって治療が必要にまでなる。その背景にある
のは、特殊な患者たちとの関係であることが発見され
たのである。この患者たちは同情心をかきたて、治療
スタッフは万能感を呼びおこされる。スタッフとそれら
の患者は密で排他的な治療関係を築き、この
ingroup関係に対して、outgroupのスタッフは批判
的になり、スタッフのなかで分裂を生む。つまり彼らは
「強烈な同情心と万能感を治療者に起こさせて、治療
の客観性を失わせ、際限なく治療上の特別待遇をか
ちとっている患者」であり、スタッフのなかに、メインが
「病いailment」と呼んだ状態を生み出す。
境界例の理論的な理解1
潜在精神病的理解(Bychowski)
→人格障害的理解(DSM)
ICD-10 (妄想性、分裂病質性、非社会性、情緒不安
定性、演技性、強迫性、不安定性(回避)性、依存性、混
合性、問題のある人格変化(感情障害と不安障害の二
次グループ)
↓
衝動型と境界型(borderline)
境界例の理論的な理解2
行動化と空虚さ
→衝動性格との対比(小此木)
→精神病との対比(海外の主流)
境界例は困ったクライアントである。
(ストロロー)
境界例の理論的な理解3
それぞれの境界例論者とその臨床
Kerberg,O.→表現的精神療法
解釈と陰性感情の取り扱い
Masterson→愛情供給と愛情撤去の繰り
返し
Adler,J →欠陥理論と抱える環境論
行動制限の治療者の原則
身体的抵抗や言語的な抵抗に反応
する前に、まず治療者自身を落ち着
かせる
治療者は患者に自分で行動する機
会を与える。そのために待つ。
→治療者の確固たる態度と逆転移
の防止
自発的な行動として代替行動
精神療法のなかでの行動制限の問題
行動制限を行う精神療法の問題
1. ある種の上下関係、転移関係が発生す
る。「すべき」-「できない」
2. 家族が関与するために、本人との間の信
頼関係が崩れる。現実生活の影響。
3. 全体に治療者の立場が危うくなる。好転
しないのは治療者の技量の問題である。
→逆転移
境界例のなかでの自傷
superficial self-mutilation
いくつかの臨床的な問題
事故への不安
表現行為の強さ
衝動の問題
→逆転移の問題
境界例現象
(Kernberg,O: Adler,J ら)
衝動行為の取り扱い
よく分からないけど、やりたくなってしまう
意識水準の問題
衝動の問題
*抑えれば良いというわけ
ではない
代替行為
*そんなに豊かな世
界を生きているわけ
ではない
?
Split treatment(1)
Knight(1983)以降の伝統
1. 精神療法家が受身的で、中立性を守ら
れる
2. 患者も精神療法場面で話すことが現実
生活での利害に影響を及ぼさないため
に内省や言語化がしやすい
→管理医と精神療法家のスプリット
Slit treatment(2)
治療の現実としての「良い対象」と「悪
い対象」の分離、そして価値下げ
*怒り、養育されたい願望からの防衛
羨望からの庇護、投影された怒りか
らの保護、低い自己評価の投影
→ 逆転移エンアクトメント
Split treatment(3)
原則
1. 精神療法家は治療の中での患者の言動につ
いての秘密を厳守する
2. 管理医はその役割上、精神療法家からは情報
を得ないで、自分と患者の関係やその周囲か
ら得た情報のみで判断する
→現実自我と葛藤自我の
therapeutic split
Split structureの臨床的意義





内面を聞く態度の徹底→内省
超自我的にならない退行促進的な態度
→支持的な態度とcontainment
父親と母親の役割の内在化
→家族調整と実際の内在化
守秘義務を守る→内面の重視
主治医と精神療法家の信頼→良いと悪いの統
合