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治療構造と治療機序
日本精神分析学会と協会が二つあるという
話から:精神分析的精神療法
精神分析
頻度:週4回以上、場面:カウチ使用、方法:
自由連想法
 精神分析的精神療法
精神分析から、低頻度・対面設定の力動的
精神療法を含む広いスペクトラム
 あるいは500以上の心理療法がある。

2
精神分析的理解のプロセス
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
治療構造論を理解する
基本概念を知る
アセスメントを行い、力動的定式化を作成する
心理療法を開始する→留意する事柄
介入する→何をいうか、何をするか
治療機序を考える(目標を考える)
抵抗と転移を扱う
夢と空想を用いる
逆転移を同定し、効果的に利用する
心理療法を終える(終結期へ)
SVと訓練分析を活用すること
3
フロイトの分析状況についての仕事
第一期:精神分析の前身(催眠療法)から
抵抗の除去を目指した、短期的、集中的
な治療の時期
 第二期:基本原則の明確化による、転移
神経症の発見の時期
 第三期:タナトスと悲観主義:治療の長期
化と終わりなき分析についての着想

はじめに:治療構造論
日本で開発されたもっとも強力な力動学派
の初期の業績のひとつ
 甘え、阿闍世、見るなの禁止などの概念
装置は、内面の心理状態を記述するため
の道具
 治療構造論は技法的な道具であり、しかも
精神分析に固有の道具ではなく、その拡
張をもくろむもの(日本特有の文脈)

心理療法において重要な枠
Robert J Langs
精神分析から基
本原則などの枠
がもっとも重要だ
と考えた体系的な
心理療法=コミュ
ニカティブ心理療
法を創始した人。
枠のある精神療法1
(1)基本的信頼感
(2)明確な対人関係の境界線
(3)患者の現実との接触、現実検討を行う
キャパシティを無意識的に支持する
(4)健全な治療的共生を生むような関係の基
礎となる
(5)本当の洞察を通じて治癒が生じる様式 の
基盤となる
枠のある精神療法2
(6)治療者のものではない患者の狂気の
周辺にある力動や発生論の状況提示
(7)健全なアイデンティティと自己愛を持って
いる人として治療者のイメージを持ち、
それを取り入れる
(8)正気な治療者像
(9)充分に抱えられて、庇護されているという強い
感覚
(10)適切な欲求不満と健全な満足の状況
枠のある精神療法:不安
反対に制限でもあるので、
(1)閉所恐怖的な不安..適切な庇護がもたらす
窮屈さと不安
(2)迫害的で被害妄想的な不安..治療が狂気
にとっては驚異であるために
(3)分離不安.治療者が答えてくれないさびしさ
(4)病的な充足、関係性がないこと、精神療法
家において狂気が欠けているということが危
険なものと感じられる。
枠からの逸脱=狂気
(1)反恐怖症的な防衛によって、行動化
する
(2)躁的防衛を利用して、抑鬱的になら
ない
(3)病的な防衛や関係性を形成する
小此木啓吾
1954年 - 慶應義塾大学医学部卒
業。医学博士。
1972年 - 慶應義塾大学医学部助
教授
1988年 - 日本精神分析学会会長
1990年 - 慶應義塾大学環境情報
学部教授(医学部兼任担当教授)
199X年 - 東京国際大学人間社会
学部教授
歴史:小此木の自由連想法体験
医局の中での生き方とそれとは別の自由連想法
自宅臨床場面=研究日
 自由連想法の体験
古澤からの教育分析とスーパーヴィジョン

東京精神分析研究会(1953)
ルドルフ・エクシュタイン古澤訳
精神療法の構造的側面 → チェスのたとえ
↓
第一次操作反応の研究
九州と東京の二極化(別の道)
小此木(1955~)の操作構造論
第一次操作反応 POR(第一回目の自由連想法におい
て最初の説明以後の反応のすべて)
(1)連想不能型
(2)拒否攻撃型
(3)積極型
(4)従順 (a)積極型
従順 (b)細心型
従順 (c)依存型
(5)(a)連想欠乏型
(b)沈黙型
(6)不安 (a)沈黙型
不安 (b)依存型
小此木(1957)らから第二次操作反応
第二次操作反応 SOR の研究
木村(馬場)礼子とのロールシャッハ研究
「『逆転移』の操作構造論的研究 –治療者の役
割の葛藤性と自律性をめぐって-」(1962)
逆転移の葛藤から自律するため、つまり自我と
自律性とを守る枠組みとしての操作構造(役割)
という発想。
→操作構造論の確立
 児童治療における治療的退行(1971)
慶応グループの治療的操作構造論と退行によ
る治療の理論化



治療における構造と退行
構造を提供すると、治療的な退行が起きる
(児童治療における体験)
⇒治療的な退行は、心理療法の基本原理
である
 心理テスト、特にロールシャッハの反応は、
図版やテスト状況(構造)に対する退行で
あり、反応である。

治療構造的機能
 定点観察
参与しながらの観察にとっての準拠
枠
 病理の彫塑
枠組み=基準=社会的合意事項
⇘治療構造を決めると、いろいろと専門
的な概念が生かせる。
治療構造論の展望
1.治療者が意図的に設定するもの(治療設
定)
2.治療者の意図を超えて与えられたもの
治療構造=準拠枠
3.治療経過中に自然に形成されるもの
構造転移ほか
→自我の分裂や変容的解釈論、そして等
距離性
治療構造論の転移・逆転移における機能
①.治療状況におけるコミュニケーション媒体機能
②.転移現象と投影の発生を規定する現実要因
③.投影ないし転移の分析を支持する機能
④.転移に対する受容器ないし抱える環境としての
機能
⑤.転移現象に対する境界機能
⑥.転移を認識する先験的な準拠枠としての機能
→逆転移を浮き彫りにする
構造的な認識
 自分は、どうしてこういう文脈で、仕事を
するようになったのか
 自分がどのような臨床場面にいるのか、
そしてそれはどんな構造をしているのか
 自分でその構造は、どの程度、設定とし
て変化させられるのか、それとも変化さ
せられないのか
治療態度による構造
フェレンチィ問題
フロイトに反する意見を述べながら、その
サークルに居続けた。
 積極的技法の提唱(1913-1923)
「精神分析における積極的技法の発展」

(1921)

緩和的技法の提唱(1924-1933)
「積極的分析技法における禁忌」(1926)
「精神分析技法における柔軟性」(1928)
フェレンチィ(1873-1933)
積極技法の提唱
 禁欲
 リラクセーション技法

フロム、バリントらブタペストのハンガリー学派
を形成した(晩年、フロイトとの関係が問題になり、
長く隠蔽された)
→フェレンツィ的態度VSフロイト的態度
フロイト的治療態度
治療態度中立性neutrality
受身性passivity
言語的理解と知的洞察禁欲原則abstinence
rule
incogitio
匿名性と医師としての分別arztliche Diskretion
エディプス-父性的柔軟性能動性activity
隠れ身analytic
フェレンチィ的治療態度
人間的な温かみ
能動性
情緒交流
非言語的コミュニケーションと
相互調節治療者のパーソナリティ・逆転移
前エディプス-母性的
治療者が動くと効果が変る
フェレンチィが語ったことは、心理療法家
が積極的に働きかけることが、精神分析
の効果に異なる結果を生み出すということ
であった。
 心理療法家の態度は、精神分析的であれ
ばある程、構造的な側面が前面に出る。
⇒積極的に働きかけるかどうか

精神分析的態度論
病態による構造
変数と適応
→定数と変数(パラメーター)
精神病
境界例
児童分析
①児童・思春期治療、並行父母面接
②境界例・分裂病の家族面接
③入院治療、ATスプリット
④バリント療法
⑤組織分析
Widening scope
1954年
Leo Rangell「精神分析と力動的精神療法
の類似点と相違点」
Leo Stone「精神分析の適応範囲を広げる」
Edith Jacobson「重症うつ病の精神分析」
Anna Freudのコメント
→精神療法の適応範囲を広げるための試
み
自由連想法の変化

P.Federnの精神病の精神分析
(1943.47)
自我の防衛抵抗の再建のために寝椅子、転移、
抵抗分析を放棄する。(=H.S.Sullivan)
 高橋(1955)の整理
(1)寝椅子法(主として自由連想法)
(2)腰掛法( 同上)
(3)対面法
(4)90度法(主として精神病)
フェダーン(Federn,P)
自我感情、自我境界、自我備給、自我状態
1. 精神病との間に陽性転移を確立する
2. 自我備給の回復と抑圧の再確立
3. 一対一対の治療関係ではなくて、
治療環境の協力
4.上記の条件で健康な部分をよりどころ
とした洞察や現実検討
→シュヴィング
精神病患者にはどう対応するか
態度を支持的にするかどうか(前掲)
 チームで働くかどうか
 分担治療をするかどうか
そうした構造のなかで、病態によって構
造を変化させる必要があるかどうかという
ことを考える。
⇒治療の構造化について

児童治療における論争
フロイト-クライン論争(2)
E.Sharpらのロンドン
クラインとアンナの亀裂
1938年のフロイト家亡命という問題
論争の激化と収束
クライン学派の形成
1940年代の淑女協定までの間の感情
的論争(母と娘の闘争)
→独立学派の登場
論点
Ⅰ.当初の主な論点
1)児童分析における導入期の必要性
A.フロイト(以下A)=児童は自発的な決心で治療に訪れな
いし、病気に対して洞察を持たず、治療への意志を持た
ない。患者の気分に適応して、分析者を興味ある人物と
思わせて、患者にその有用性を伝え、現実的な利益を確
認させる「導入期」の必要性
M.クライン(以下M)=その必要性はない。子どもの治療は
原理的に大人と一緒である。
2)児童分析における家族の参加
A=情報の収集や状態を把握するために、そして教育的な
面でも有用
M=家族の葛藤を巻き込むためにマイナス
3)児童の感情転移
A=児童分析では治療者は鏡というよりも、積極的に働き
かけていることが多い。しかも子どもは起源的な対象関
係の神経症的な関係を発展させている途上にあるので
あって、まだそれは実際の両親との間で現在進行中で、
古い版になっていない。そのため感情転移は起こりにく
い。
M=3才までに対象関係の原型は作られているので、それ
以後においてはすべて起源の神経症を大人の神経症と
同様に形成している。感情転移、特に陰性の感情転移こ
そ治療において重要である。
4)エディプス・コンプレックス
A=3-6才の間に形成される。超自我はエディプス葛藤の
解決によって形成される(攻撃者との同一化)
M=早期エディプスコンプレックスの形成。3才までに完成
している。これ以後の子どもは処罰不安を持っている理
由はそのためである
5)児童分析での教育
A=教育的要素の必要性。児童は現在も自分のモデルを
取り入れ中で、治療者が教育的な視点から「自我理想」
であることが重要。
M=分析と教育は違う。早期から形成されている罪悪感や
対象関係を深く扱うのが精神分析である。
6)死の本能
A=死の本能よりも自我と精神装置を重視
M=死の本能を理論の根幹に据える
7)解釈
A=自我から本能へ。防衛の解釈からイド解釈へ
M=超自我を緩めるための深層解釈。象徴解釈を多用す
る。
動かせない構造と動かせる設定
治療のなかで動かせないもの(構造)は、動かせ
るもの(設定)とがある。
 動かせないものなかには、さまざまな人間関係
があるが、それはたぶんに治療者の人間関係に
左右される(自然と出来てしまうものを含む)。
面接者が活用できる要素
1. 設定
2. 姿勢
3. 言葉の力

治療設定
外在的な基準という発想
寝椅子を使う
 多頻回のセッションを組む
 セッションを維持してお金を取る
 資格を持つ分析家が行う
⇒こうした定義はさまざまな臨床場面に対応
しているわけではないので、包括的な定義
が必要である。

例えば、設定のモダリティ
寝椅子と対面法一つをとっても、精神分析
的状況は異なる機能をもたらす。問題は
何を治療構造の前提とするかにかかって
いる。
 フランスは、対面法と寝椅子法との違いを
選択するというコンテクストがある。だから
対面法でできることと、寝椅子でできること
を分けていく必要がある。

自由連想法と対面法
セッションあたりのポーズの割合(%)
50
40
30
沈黙
20
10
0
自由連想
対面法
n-=25, *<.o5
Interview Settings and
Communications(1)
対面法
Face to face
寝椅子法
Couch
声 *但し、治療者側
媒体 複数のチャンネル
は視覚情報も含む
対話
特徴
うなずきなど
呼応的
沈黙が多く、互いに内
省的
音声
特徴
内容によって
さまざま
トーンが低く、同調性
が高くなる
Interview Settings and Communications(2)
自由連想法
対面法
談話特徴
内容
線状的
呼応
沈黙
暫時的
断片的
日常意識 対象関係 身体衝動
的な側面 的側面
的側面
寝椅子を用いた
精神分析の特殊性(Waelder,R. 1956)
1.
2.
3.
4.
5.
患者は苦しんでいて、助けを期待して治療に
来る。大人に対する子どもの立場に近い。
人生の親密な部分を包み隠さずに暴露する。
大人の前で丸裸な子ども
自由連想法の分析規則が目的的な行動や衝
動への防衛を放棄させる。自我とエスのバラン
スを変え、退行をもたらす。
無意識的不安に対する分析家による安心がも
たらされる。守られた子どもの立場になる。
分析家の受動性によって、患者の空想が守ら
れる。外界の行動で空想が疎外されない。
内在的な基準とは?
内側でやっている作業は、どのようなもの
か?
 無意識を取り扱うために、基準となるのは
何か
 精神分析的な設定のうち、さまざまなスペ
クトラムに共通する要素は何か?
などの疑問に答えられることが必要である

Donnet(2005)の「分析する状況」
問題:方法の談話であると同時に、方法に
抗う談話であるというジレンマがある。精
神分析を設定とプロセス、構造と機能に分
けることそのものに無理がある。
 Donnetは設定とプロセスを「分析場Site
と分析状況analyzing situation」との分
ける。前者は意識的な構造化、構築であり、
後者は無意識を取り扱う状況である。

寝椅子を用いて、他頻回に、そして時間を
開かれたものにしていくことで生み出され
る心的な変化
⇒寝椅子:見えないこと、そして寝ていて(運
動していて)目覚めていること、だからこそ幻
覚と夢の方向に進む。
多頻回:多くの時間で事後的に、そして償う
ことができるため、時間が無限に開かれてい
る。設定を維持する。
分析する人が「親密な分離」のなかで、考
える、解釈する可能性を導く方向性

精神分析の内的基準
設定⇒退行:Grunberger(1971)の自己
愛の臨床的な意義に近い場
 抵抗の克服:沈黙する分析家と連想阻害
 転移:談話のなかに含まれている無意識
的な要素を意識する。
 Viderman(1971)が転移を生み出すと
同時に逆転移を生み出すような「精神分析
的空間」の構築

設定か構造か

小此木-北山の論争
ウィニコット(深津)を通じて、慶応におけ
る治療構造の抱える環境論の追加
→設定状況論(ウィニコット)との差異
北山:可変的要素は設定と呼ぶべきであ
るという議論
小児医学から精神分析へ
1941年「設定状況における幼児の観察」
舌圧子
医師
母親と子ども
第一段階
驚きから「ためらい」の段階
第二段階
欲望を受け入れて、口で噛む、空想する
遊べる段階
第三段階
捨てられる。放っておいても大丈夫な段階
生後5ヵ月から13ヵ月(13ヵ月過ぎると幅が
広がってしまう)に典型的なやりとり。
移行対象
1951年「移行対象と移行現象」
生後4、6、8、12ヶ月に発見される
最初の所有物
1952年「精神病と子どものケア」
中間領域と移行対象の理論、そして精神病
↓
1. 枠組みと治療空間、間の体験
2. スクウィッグルと相互作用
3. 内と外、パラドックスの発見と理解
治療相談therapeutic
consultation
精神療法面接とは異なる技法
二三回あえば治る症例に対するもので
転移と抵抗を扱うよりも
間の体験のなかでクライアントのニードに合わ
せた体験を提供する。
 スクィグル技法
 オンディマンド法
 在宅などの環境の活用
構造化という発想
細部に宿る構造

面接の場面で考えると、
病院や場所
人間関係や性格
動かせない
心理テスト構造
テスト依頼状況とテストの習熟度
 テストバッテリー
(テストの種類によって構造的なものと解釈
の自由度が高いものがある)
 依頼の文脈/自我や対象関係などの解読
の可能性が設定によって変化していくし、
治療導入の方法が変化する

治療構造化
親子治療などの治療的退行論から発展し
て、さまざまな状況で構造を組み立てると
いう発想が育ってきた。
 治療を与えられた状況でどのように可視
的なもの、構造的なものにしていくかという
発想から組み立てられた議論→主に、岩
崎、狩野といった小此木の弟子たちがそ
の発想を病院や治療場面に拡張したもの

Split treatment(分担治療)
親子並行治療?
 投薬医―療法家
 管理医―療法家
他
【二つのコミュニケーション】
1. 治療者に知らせる
2. 他の治療者の役割を尊重する

Main 「特別な患者」

「特別な患者」:看護者たちが職務をまっとうできない
ようになって治療が必要にまでなる。その背景にある
のは、特殊な患者たちとの関係であることが発見され
たのである。この患者たちは同情心をかきたて、治療
スタッフは万能感を呼びおこされる。スタッフとそれら
の患者は密で排他的な治療関係を築き、この
ingroup関係に対して、outgroupのスタッフは批判
的になり、スタッフのなかで分裂を生む。つまり彼らは
「強烈な同情心と万能感を治療者に起こさせて、治療
の客観性を失わせ、際限なく治療上の特別待遇をか
ちとっている患者」であり、スタッフのなかに、メインが
「病いailment」と呼んだ状態を生み出す。
親子並行治療は是か非か
家族システムはIPを作る
クライエントが治る→システムが変わる
→別のクライエントが生まれるか、もとに
戻るか(均衡)
 治療者は誰を変えるのかという疑問が親
ガイダンスや並行治療を求めてきた歴史
→個人治療と家族治療

力動フォーミュレーション
精神分析があっているか
分析家が設定ができるという前提なら、
Lemma(2003)が指摘しているように

•
•
•
•
•
患者が関心があって、初歩的な、自己内省の能力があるかどうか
患者が自己探求を行うための治療関係のなかにある固有のフラ
ストレーションに耐えられるだけの自我の力を十分に持っている
かどうか。
行動化なしで心的な痛みに耐えられるかどうか(自他に害を及ぼ
さない)。
行動化の危険性があるなら、治療が行われる設定の中でマネー
ジできるかどうか
患者は個人的そしてあるいは職業的に治療の困難な時期の間に
自分を維持するように支えられるかどうか
主訴や問題を記述する
①問題を記述する:主訴であることが多いが、主訴
は誰が作ったかわからないことも多い。
 患者から見た問題:何に、あるいは誰に患
者が反応しているのか
 患者の「核となる痛み」は何か:彼が最も恐
れている、そしてあるいは避けようとしてい
るものは何か?
の二点から、主訴を見直してみる。そうすると経過
のなかに、誰が誰にということが見えてくることが多
い。
治療同盟、あるいは作業同盟
観察自我【1934から】 Zetel(1956)
 Greenson(1967)
精神分析の関係:転移、作業同盟
現実的関係の三つがある。
:自分の悩みを克服するために分析家と
協同したいという合理的な患者の願望と分
析家の指示と洞察とに従う彼の能力によ
って促進される。→同一化

分析可能性-治療同盟-作業同盟
主訴の特定から文脈の特定
経過として誰が誰
に何を問題として
いるか?
主治医から言われている。
「ここに来たの、何が問
題なの?」
治療者
自分で来たの?NO
主治医から何と言われているか
ラポールと治療同盟⇒作業同盟
経過
うつという診断で
カウンセリングが
必要だと主治医
が考えているので
治療者
照合
reflection
「ここに来て相談する
必要がある経緯かど
うか」を確認する
ラポールと治療同盟⇒作業同盟
カウンセリングに
来る必要性、理由
は何か?
治療者
精神分析が必要なのだろうか?
うつと呼ばれる恐怖症
問題に名前を付けていく作業
②問題の心理的なコストを記述する
患者の機能の中でのどのような限界、あるいは
他者や自己の知覚の中の歪みがその問題から生
じているのだろうか?つまり主訴は誰をどのように
困らせているのか、だからその問題はどんな名前
がふさわしいのかと、言い換えてみる。診断名はあ
くまで精神医学的名前でDSMのおかげで共通語
になった部分もあるが、それでも患者の主観から
は遠いことが多い。
作業同盟から分析可能性への道
今ここに来る私との間でする
作業の背景や理由を考えて、
自分としてはどうしてだと思う
か?誰のために誰が、何をし
に来ているのか?
治療者
うつと呼ばれる
不安ヒステリー
力動的フォーミュレーション1
③問題を文脈化する:関連している前提にな
っている要素は、心理療法に乗るかどうかと
いう問題をはらんでいるので、それらの要素
を文脈化してみる。
環境要因:トラウマの歴史、トラウマに影響を及ぼし
ている発達要因、家族の布置、他の関連したライフ・
イベント
生物学的な所与:身体、気質、身体的な問題:それら
のなかで現在の問題に関連したものを考えるなかで、
文脈を考える
問題を文脈化する
対象関係
経緯
現病歴
生育歴
症状
治療選択
心理療法の選択
④患者のもっとも主たる、繰り返されている対象関係を記述
する
患者は他者との関係で自分自身をどう体験しているだろう
か。その問いが治療のなかで、転移を考える上でもっとも重
要な問いなので、対象関係がだいたいわかると、なぜ今こ
こに彼が訪れたのかがだいたいおおまかにわかる。そのた
めに次のようなことを考える
1.
2.
3.
4.
5.
患者の内的な世界を支配している対象関係は何か
誰が誰にどんなふうに、そして関連した情動を発見する
これらの内在化した対象関係は現在の患者の人生でどんな不
運現れているだろうか?
自己や他者の表象は、どんなふうに影響を及ぼしているのか、
現在の関係によって影響を受けているのだろうか
これらの対象関係がどんなふうにあなたとの間で現れているだ
ろうか?
分析可能性:距離として
風景としての精神分析
治療者
異化された主観的問題
パースペクティブ
分析可能性から精神分析への道
治療者
不安ヒステリー
Unknown elements of
Unconsciousness
今ここに来る私との間です
る作業の背景や理由を考
えて、自分としてはどうして
だと思うか?誰のために誰
が、何をしに来ているの
か?
⑤防衛を発見する
患者がもっているさまざまな症状を生み出し
た防衛は、変化の可能な結果は何かとの関
連で、心理療法の対象になるだろう。その場
合、
1.
2.
患者が心的な痛みを対処している習慣的な
方法
神経症的なあるいは原初的な防衛を用いて
いるなら、それを記述する
⑥治療の目標を発見する
(治療者のニードに対して)患者は何を求
めている、何をニードしているのか
治療者:構成の仕事としての精神分析
精神分析が構成の仕事であるという
Freudの理解
 パースペクティブというGillの理解
 歴史的真実と物語的真実というSpence
の理解
 社会構成主義的な空間として、過去、現在、
未来、を構成する精神分析という
Hoffmanの理解

患者の語り:風景-寝椅子に寝てもらう



自由連想法の寝椅子は、クライエントの心の風
景をゆっくりと眺める。
自由連想の基本原則は、確固とした構造でク
ライエントを抱える。
毎日分析の設定は、クライエントの心のなかを
ゆっくりと悠長に眺める。
精神分析の分析的スクリーンはクライエントの
心のなかを映し出し、そのため治療空間のな
かに転移と抵抗とを浮き彫りにする。
共視論、スクリーン・モデル、共同
的経験主義
Th
Cl(y)
(x)
治療開始から契約までの条件






最初の主訴の特定のときから、治療の動きは方向
付けられている。
分析可能性は観察できる関係づくりに左右される。
分析可能性‐治療同盟‐作業同盟は連続したプロセ
スと見なしていく。
分からなかったことに気づく驚き、そして「分からな
いこと」を共有できる同盟関係、その双方が一つの
プロセスとして発展できるようにする。
生育歴から経緯を構成していく作業のなかに、「分
からないこと」、つまり問題を位置付けていく作業が
可能にする。
同盟可能で分析可能なら、自由連想と寝椅子の効
果を使える方向付けを行う。
治療機序
まず暗示について
フロイトは催眠療法を否定することで精神
分析を作ったので、暗示を理論から排除
することに必死であった。
 今日、暗示的な要素が治療の中に全くな
いとは考えないが、それよりも治療同盟、
観察自我、そして無意識が意識的なもの
になっていくための抵抗の方を取り扱うよ
うになっている。

1.初期のフロイトの思索
できるだけ効果的に抑圧を解除すること=
抵抗の分析と克服
 抵抗の克服
 力動の整理
⇒短期力動療法:1925年からシフニオス
やアレキサンダーの仕事を基盤として、
1970年代にMalanとDavanlooとが出会っ
て、短期力動療法が爆発的に進歩した。

マーラー 1860-1911
G.マーラー:夫婦関係
の悩み、特にインポテ
ンツのためにフロイトを
訪れ、4時間ほど(4セ
ッション)散歩をするセ
ッションをもち、精神分
析への理解と動機の
高さのため治癒した、
という。
82
フロイトの事例:
カタリーナ
Aurelia Kronich
1893年に避暑地ホーエ
ン・タウエルンの山小
屋で で出会った田舎
の女性で、シングルセ
ッションで、ヒステリー
症状、息苦しいなどの
症状が改善した事例
83
連想抵抗→抵抗暴露モデル
連想1
連想2
沈黙
短期療法のエッセンス1
短期療法のエッセンス2
抵抗解除の中心力動シークエンス
治療の最初に患者の訴えを探索して、報告されている問題の
特定の例を調べる。
2. 現在の訴えのなかにある感情を体験することにプレッシャーを
かける。患者の特徴的な防衛を導く。
3. 防衛についての仕事
a.
防衛の同定(あなたの話は漠然としていることに気が付い
ていますか)
b. 防衛の機能を明確化する(漠然とさせることで、自分の感
情を避けているのがわかりますか)
c.
結果を吟味する(漠然としたままで感情を避けていると、あ
なたの問題の原因を発見できません)
1.
4.
5.
6.
7.
防衛についての仕事が(防衛が軽い患者たち
では)基盤となっている感情に到達する、あるい
は(中程度の防衛、あるいは防衛が強い場合)
複雑な転移感情が起きて、転移抵抗が結晶化
する。
転移の中での抵抗と正面衝突。
患者の過去の重要な人物たちへの感情と記憶
とが脱抑圧を受けて、複雑な転移感情のブレイ
クスルーが起きる。
歴史が得られるに従って、過去、現在、そして
転移現象をプロセスのなかで結びつける洞察
が得られるように、解釈と結合とが起きる。
2、転移神経症の発見
フロイトは、身体表現的な、解放を目指した
治療を続けていく中で、抵抗を中心として発
展していくなかで、もっとも大きな抵抗は、転
移抵抗であることが理解され、転移の中に、
これまでの幼児神経症と精神神経症とを反
復する形で転移神経症が作られると考える
ようになった。
 治療はStracheyの言う変容的な解釈、そし
てSterbaの言う自我の乖離が中心になった。

性格分析
Reichの『性格分析』(1933)にはじまる、
長期的な防衛のまとまりを分析するた
めの手法⇒
普通の分析つまり神経症的な傾向の分
析ではなく、Charcter 性格分析
「深層」(Heimann)、「超治療」(バリン
ト)
「性格分析」(ギテルソン)
→転移の分析から人格の問題に
基本原則 Freud
分析家の禁欲原則
 分析家の匿名性
 分析家の中立性
平等に漂う注意/自由連想法
1910年代にフロイトが書いた精神分析の
臨床技法に関する論文で明確にされた。
⇒精神分析における構造

Sylvia Pyneの指摘
沈黙その他の転
移抵抗現象
解釈
1920年
転移反応
転移表現
解釈
解釈
転移反応
相互作用現象
想起、反復、徹底操作
:思い出すこと、繰り返すこと、やり遂げること(1914)
強い抵抗=忘却
 抑圧抵抗の克服
 分離を隠蔽記憶他の連想素材に関連付けて行く
 反復強迫:思い出すのではなく行為にあらわす
 転移の操作:治療中のさまざまな障害,悪化のな
かで、起源を転移神経症にする
 解釈を投与して、抵抗を克服するために徹底的
にやり遂げる

転移の意味に反復が付け加わる
→転移神経症論
夢判断からドラへの転移
リビドーエネルギーの源泉から移動、そし
て対象と目標を発見するという意味での転
移
 反復強迫現象のなかでの転移
古い幼児期の人間関係が現在の人間関
係に反復されるという意味での転移
Loewald(1960)

対象選択

愛の対象として特定の人、特定の人格の
型を選択する行為
小児期と思春期の研究から
「ナルシシズム入門」へ
a)依託的対象選択
b)自己愛的対象選択
基本原則から転移神経症
精神分析の基本原則のなかで、転移神経
症が発見され、反復強迫と解釈の反復投
与によって実現する治癒モデルの完成
⇒対象関係論的な転移のモデルへの発展
 枠があって見えてきたもの
 設定とプロセスについての議論が、どのよ
うな変化をもたらすかの議論と一体になっ
て起きてきた。トポロジカルな、力動的な、
そして経済的な視点から変化を議論する。

精神分析的設定の議論
英国では精神分析は毎日分析を前提とするクライン
学派が中心だった。
 米国では50年代に設定についての議論があり、訓
練分析のなかで精神療法をどのように位置づける
かの議論があり、Langsがframeとして厳密化した
りした。
 フランスでは、Lacanの影響で設定に対する議論が
盛んで、週3回のフランスモデルができるような弁証
法的な議論のなかでスペクトラムという議論が生み
出された。

分析的状況を作るための前提
フロイトの初期の発想から転移神経症論、
そして対象関係論へと大きな状況変化が
起きてきた。
 被分析者によって求めている水準は異な
るので、これは分析家の要求ではないし、
欲望でもない。だから精神分析を前提にで
きない日本の文化のなかでは、精神分析
は、オプションである。

治療の長期化と治療機序
Characterは病気のもとになる(精神医学
で言うところの病前性格)習慣的なパター
ンで、その部分を分析が取り扱いながら、
転移の理解を含めていった。
 神経症的な性格以外にもさまざまな性格
が治療の中に持ち込まれる。衝動的性格
=境界例パーソナリティや自己愛パーソナ
リティ障害

長期化による治療機序1
Sterba(1934) 転移による自我の乖離
が生じる⇒自我が観察することで、それを
転移として理解する=ずれの認識
自我心理学の基本的なメカニズム
1.自我の治療者の健全な自我の取入れ
introject⇒内面化internalization⇒同一
化identification
2.自我の観察による発展

長期化による治療機序2

さまざまな転移⇒長い間に転移を収束してい
く⇒転移神経症の形成(あるいはさまざまな
転移が治療の中に持ち込まれてあるパターン
ができる)
Strachey(1934)のmutative interpretation
Kleinの取入れと投影の循環的な関係のなか
で、超自我が緩和していくように、変容惹起的
な解釈を行っていく。
長期化による治療機序3
抱えること、包含すること
holding,containing
一方は治療者の思考や理解の方向付けを
行うのに対して、もう一方は退行をもたらす。
一方は投影同一化による治療者の側の容
器の機能が重視されている、
もう一方は治療的な退行が重視されている。

訓練の姿=信念と愛
R.Ekstein(1953)
1.精神分析的トレーニングの歴史について
フロイト「自身も受けた人が集まる」
でも去っていく人も多い。
⇒サークルの形成「リングを持つ人たち」
→中央委員会
1920年代 「分析を受ける」「健康なら受けな
くてもよい」の間
例外:アメリカでの専門化⇒力動精神医学
(1)優れた訓練形式を維持する
(2)研究方法と臨床技法との両立を守るための困難を回避する
(3)他の社会科学や生物学と十分に密な関係を確立する
2.候補生の選択
分析可能性ほかの議論と確立されてきた
人格査定を含むメニンガーのようなシステム
⇒精神的なものへの興味:客観的に
は人間理解、主観的には自分の病気
⇒ ①訓練分析
②統制分析
③セミナー
3.訓練分析:分析を通しておきること:自
分の人生を振り返る⇒転移を体験する
⇒逆転移を理解する
逆転移の歴史的文脈から
a. S.Freud(1910)
→治療者の無意識の感情のクライエントへの悪影響
b. M.Balint,A.Reichら
→転移反応に対する逆転移を指摘
D.W.Winnicott(1958)
「逆転移のなかでの憎しみ」=客観的な逆転移
c. P.Heimann(1950)
→分析の道具としての逆転移の感情を指摘。
d. B.Joseph,W.Bion以降
→投影同一化の受け皿としての逆転移
盲点と長期的な視点
訓練分析によって得られる自己分析
↓
自分の盲点の理解
=一生のもの(終わりなき分析)
 訓練分析によって得られる情緒
↓
人に依存し、相談することで生じる転移
(退行)の姿

治療的退行の理論
治療構造論の研究と密接にかかわっている。
 中間学派、特にウィニコットやバリントがそ
の着想を導入した。例えば、バリントのnew
beginning

フロイトにおいて退行は、局所論的、形式的、
そして時間的な局面があった。
これは退行を、精神分析の長期化との関連で、
特に寝椅子との関連で理解しやすいものにする。
ウィニコット(1954)
「精神分析設定内における退行的および臨床的側面」
1963年「幼児のケア,子どものケア,分析的
設定における依存Jにつながる発想
抱える環境=分析設定:雰囲気であって、こ
こには触ることなどは含まれていない。この設
定が依存への退行を生み出す素地になり、信
頼感から転移を育む素地を生み出す。
⇒退行する元来備わっている内的組織
1.偽りの自己の発達をもたらす自我組織の失敗
2.元の失敗が修正できる可能性
依存への退行と解凍
分析設定のなかでの転移関係として生じる
のは依存への退行である(依存への退行と
退行した患者とは違う)。
 環境としての母親はかつて融合(子供が母
親を空気のように感じる)状態と呼んだもの
であり、対象としての母親とは出自が違う。
抱えることのなかに自我組織がある。
 考えない記憶には、外傷が凍結されていて、
そこには自我組織がある。

依存への退行
退行には二つある。一つは早期の失敗状況に
戻ることであり,もう一つは早期の成功した状況
に戻ること…環境の失敗状況が問題となるよう
な症例でわれわれが目にするのはその個人に
よって組織化された個人的な防衛の証しであり,
これは分析を必要とする。より正常な,早期の成
功した状況を有している症例でわれわれがより
はっきりと目にするのは依存の記憶であり,それ
ゆえわれわれは個人的な防衛の組織よりはむし
ろ環境の状況に出会う。
分析家の失敗の意義
この新しい環境にとって,分析家の失敗は重
要な要素である。それは転移,すなわち早期
の失敗状況の再演(re-enactment) のな
かで生じなくてはならない。よって分析家の
失敗は,上演(enactment)であり,適切な
タイミングで生じる必要がある。しかしながら,
患者にとっての癒しの効果を持たせるため
には,分析的枠組みがいったん確立した後
においてのみ生じる
失敗による成功
限定された文脈では誤解されていることに耐
えなくてはならない…。今や患者は分析家を
失敗,元は環境の要素から生じた失敗のゆ
えに憎むが,その失敗は幼児の万能的コン
トロール外のものだったものが,それは今は
転移のなかで演じられる。それゆえ,最後に
は私たちは失敗する一患者のやり方に失敗
する一ことによって成功するのである。これ
は修正体験による治癒という単純な理論と
はかなりかけ離れている。
それ以外の治療機序
ラカン学派の技法:スキャンション=句読点を
打つこと
治療の時間を短くすることで、その談話の区
切りを入れて、未終結の状態に主体を置くこと
で生み出される、事後的な意味作用を使う。
 終結のための技法:マンの時間制限療法:対
象との別離や終結の時間で対象喪失を再演
する。
