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2012.3.6 第5回ヤマセ研究会@東北大学
CMIP3/CMIP5マルチ気候モデル
におけるオホーツク海高気圧の
再現性と(将来変化)
気象研究所気候研究部
遠藤洋和
目的
CMIP3およびCMIP5実験に参加した気候モデルの
オホーツク海高気圧の再現性を調べ、ヤマセの再
現性/将来変化を検討する際の基礎資料とする。将
来変化の初期解析を行う。
内容
•
•
•
•
CMIP5マルチ気候モデル
現在気候の再現性
将来変化
まとめ
CMIP5マルチ気候モデル
• CMIP5: 5th Phase of the Coupled Model Intercomparison Project
(第5期結合モデル相互比較実験)
• CMIP5の結果はIPCC第5次報告書に使われる
• CMIP5は近未来予測実験(2030年代まで)と長期予測実験(2100年
までとそれ以降)からなり、それぞれ多数の実験から構成される。
解析対象
• 20世紀気候再現実験(historical)のうち1980~2004年
• 将来気候シナリオ実験(RCP4.5)のうち2074~2098年
ID
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
K
L
M
モデル
bcc-csm1-1
CNRM-CM5
CSIRO-Mk3-6-0
CanCM4
CanESM2
FGOALS-g2
FGOALS-s2
GFDL-CM3
GFDL-ESM2G
GFDL-ESM2M
GISS-E2-H
GISS-E2-R
HadCM3
格子数(大気)
128x64
256x128
192x96
128x64
128x64
128x60
128x108
144x90
144x90
144x90
144x89
144x90
96x73
ID
N
O
P
Q
R
S
T
U
V
W
X
Y
Z
モデル
HadGEM2-CC
HadGEM2-ES
inmcm4
IPSL-CM5A-LR
IPSL-CM5A-MR
MIROC-ESM
MIROC-ESM-CHEM
MIROC4h
MIROC5
MPI-ESM-LR
MRI-CGCM3
NorESM1-M
MRI-AGCM3.2S
格子数(大気)
192x145
192x145
180x120
96x96
144x143
128x64
128x64
640x320
256x128
192x96
320x160
144x96
1920x960
多くの大気モデルの水平
解像度: 200~300km
← 最高解像度 ~60km
← 気象研 ~120km
← 気象研 20km-AGCM
CMIP3モデルの再現性
海面気圧(気候値)
ヤマセ頻度
ID
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
Model
CGCM3.1(T47)
CGCM3.1(T63)
CNRM-CM3
CSIRO-MK3.0
CSIRO-MK3.5
GFDL-CM2.0
GFDL-CM2.1
GISS-AOM
GISS-ER
FGOALS-g1.0
INM-CM3.0
MIROC3.2(hires)
MIROC3.2(medres)
ECHAM5/MPI-OM
MRI-CGCM2.3.2
INGV-ECHAM4
IPSL-CM4
ECHO-G
MME18
MME9hi
JRA-25
Yamase frequency (per 20years)
May
Jun
Jul
Aug
2
2
8
5
3
6
3
1
11
3
4
5
6
6
6
2
10
6
3
0
9
13
15
10
6
7
20
4
11
8
8
7
14
4
14
5
5
1
8
8
11
7
7
8
4
18
3
5
2
4
18
6
19
7
4
0
10
12
10
4
7
5
4
11
5
4
0
2
19
9
15
10
MJJA
14
3
35
38
39
27
23
21
39
36
23
22
16
19
57
21
58
28
4.9
5.9
7
8.8
12.0
16
7.8
10.0
12
7.3
9.6
8
28.8
37.4
43
黒色線: 24モデル平均
緑色線: 再解析
陰影: モデルバイアス
ハッチ: 80%以上のモデル
で一致した傾向
• モデルの海面気圧は、オホーツク海付
近で低く、太平洋高気圧付近で高い。
• モデルのヤマセ頻度は、再解析値と比
べて少ない
ヤマセ頻度:
現在気候(1981~2000年)の累年10日平均地
上風において、40-45N, 142.5-155E領域で
北風~東風となった頻度。
Endo (2012, 気象集誌)
オホーツク海高気圧
気候値(7月)
Okhotsk High index (Ogi et al., 2004)
50-60N, 140-160E 平均海面気圧
6月
81
83
89
93
インデックスの
上位5事例
98
気候平均場のオ
ホーツク海高気圧
は不明瞭
現在気候(1980~2004年)
2003年7月
03
7月
88
86
(気象庁HPより)
93
98
CMIP5モデルの再現性
海面気圧(SLP)
気候値
オホーツク
高発達時
(各月の上位
5事例を合成)
• 弱いオホーツク海高気圧
• 強い太平洋高気圧
• 不明瞭な梅雨前線帯の低圧域
黒色線: 25モデル平均
緑色線: 再解析
陰影: モデルバイアス
ハッチ: 80%以上のモデル
で一致した傾向
オホーツク高発達時のSLP(7月)
(上位5事例を合成)
再解析
25モデ
ル平均
20km
AGCM
黒色線: 合成値
陰影: 平年偏差
Taylor Diagramによる評価(7月)
オホーツク高
が強い5事例
のSLP合成値
CMIP3
CMIP5
×からの距離は
unbiased RMSE
に比例
空間標準偏差(再解析値で正規化)
再現スコア比較 CMIP5 vs. CMIP3
R: 空間相関係数
σf : 空間標準偏差
(再解析値に対する比)
R0 = 1
横軸: モデル(スコアの高い順)
縦軸: スコア(6月と7月の平均値)
CMIP5モデルはCMIP3に比べ、上位グループのスコアが大きい一方、
下位グループのスコアが小さい。
→ モデル間のスキル差が大きくなった
オホーツク高発達時のアノマリー(6月)
SLP
再解析
T925+UV925
SST
上図と中図の
陰影とベクトルは
平年偏差
25モデル
平均
モデル
バイアス
ハッチは80%以上
のモデルで一致し
た傾向
• オホーツク海高気圧が北に偏って発達する。
• オホーツク海高気圧発達に伴う寒気の南下、日本東海上の海面水温低下は、
観測に比べて弱い。
オホーツク高発達時のアノマリー(7月)
SLP
再解析
T925+UV925
SST
上図と中図の
陰影とベクトルは
平年偏差
25モデル
平均
モデル
バイアス
ハッチは80%以上
のモデルで一致し
た傾向
• オホーツク海高気圧は、北に偏って発達する。
• オホーツク海高気圧発達に伴う寒気の南下、日本東海上の海面水温低下は、
観測に比べて弱い。
← いずれも6月と同様の傾向
オホーツク高発達時のアノマリー(T925, 7月)
再解析
25モデ
ル平均
20km
AGCM
黒色線: 合成値
陰影: 平年偏差
のバイアス
CMIP3モデルの将来変化
7月
8月
10
5
18
⑰
16
⑮
14
13
12
11
10
⑨
⑧
⑦
⑥
⑤
④
③
0
2
6月
ヤマセ頻度
MAY
JUN
JUL
AUG
MJJA
15
1
5月
Change of Yamase frequency (/20 years)
SLP
-5
-10
-15
横軸: モデルID
Endo (2012, 気象集誌)
• SLPは、5月にオホーツク海で低下、8月に中緯度
太平洋で低下(太平洋高が弱化)する傾向。
• 6月と7月の日本付近のSLPは、モデル間で一致し
た変化はない。
• ヤマセ頻度は、5月に減少、8月に増加するモデル
が多い。
等値線: 24モデル平均
陰影: 正の将来変化を示すモデル数
SLP
CMIP5モデルの将来変化
5月
6月
7月
• SLPは、5月にオホーツク海で低下、8月に中緯度
太平洋で低下(太平洋高が弱化)する傾向。
← CMIP3と同様
• SLPは、6月と7月に日本付近やオホーツク海で低
下する傾向。
← CMIP3と異なる
8月
等値線: 20モデル平均
陰影: 正の将来変化を示すモデル数
まとめ
1. CMIP5モデルの日本周辺の気候平均海面気圧は、
CMIP3モデルと同様のバイアス(オホーツク海で低く、太
平洋で高い)をもつ。
2. CMIP5モデルのオホーツク海高気圧は、観測に比べて
弱く、北に偏って発達する。これに伴い、オホーツク海
高気圧発達に伴う寒気の南下や日本東海上の海面水
温低下は、観測に比べて弱い。
3. 将来気候における、5月のオホーツク海の気圧低下、8
月の太平洋高気圧弱化は、CMIP5モデルとCMIP3モデ
ルで共通した特徴。