ç¨Žç †å - 千葉 中小企業法律相談

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税理士が知っておきたい
労務問題・法律問題
平成22年12月7日
弁護士法人よつば総合法律事務所
● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
参考 残業代請求の専門サイト
2
● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
参考 YAHOO検索結果
3
● 税理士の先生と労務問題
1 顧問先からの相談例
(1)社長が気に入らない社員を解雇したいと相談してきた。「とりあえず1ヶ月分の給与
(解雇予告手当)を支払って解雇しましょう」と社長と相談の上決定したところ・・・。
(2)社長から電話があり「従業員が労働組合に入ったので労働組合と交渉しろ」というF
AXが労働組合からきてどうすればよいのか全くわからない・・・。
(3)「従業員が辞めたいと話しているので手続をお願いします。」という話があったので退
職関係の手続きをしたところ,その1ヶ月後に150万円を支払えという内容証明郵便
が・・・。
2 士業事務所での労務問題発生事例
4
● 労務問題の現状について ~訴訟・労働審判の現場から~
1 弁護士の実感として労務問題が増加しているという印象
2 従業員の知識の向上に比べて会社の対策が不十分という偏った
現状(インターネットの普及により従業員の知識レベル向上)
3 労働審判が平成18年4月1日から開始されたことにより事件が増加
4 労働審判は訴訟と比べて裁判所での短期間の解決が可能
5 裁判所が解雇を有効と認めるラインと会社が考える解雇の認識に
明らかな差
6 労働組合等の団体運動は減少傾向,個別労働事件が増加傾向
7 弁護士増員の影響?
5
● 解雇についての知識
1 従業員から退職届を提出する場合
→解雇ではないので問題なし
2 従業員と会社双方が合意して従業員が退職する場合(合意解約)
→解雇ではないので問題なし
3 会社が一方的に従業員を辞めさせる場合
→解雇なので法律の要件を満たさないといけない。
*従業員に退職届を書いてもらうことが重要,退職届がないと,後で従業員が「解雇され
た」と嘘を付く可能性もあり
*解雇が裁判所で法律の要件を満たさないと判断された場合どうなるのか
(1)解雇してから判決までの給与を支払うよう判決
及び
(2)判決後も従業員が会社の社員であることを確認する判決
6
● 事前予防が最大の解雇紛争防止対策
1 当事務所では顧問先には事前の相談なしに解雇はしないようアドバイス。
解雇をする場合には必ず事前に相談するようアドバイス
2 解雇紛争が生じた場合の被害の甚大さを社長・人事担当者に説明すること
3 合意での退職を目指すためのアドバイスを重視 解雇の理由を従業員に説明し
た上での退職届の提出を促す方法が望ましい
4 解雇のためには「客観的に合理的な理由」であり「社会通念上相当」であることが
必要(労働契約法第16条)
5 解雇の客観的に合理的な理由及び社会通念上相当であることを証明する責任は
事実上会社側に存在
6 解雇の種類ごとに分類して検討することも必要(普通解雇・懲戒解雇・整理解雇)
7 解雇の無効を従業員が主張できなかった事例(解雇から12年後の訴訟提起の
事例 全電通長崎県支部事件 長崎地裁S60.2.27判決)
7
● 個別の従業員が労働組合に加入する場合の対策
1 従業員が労働組合に依頼をするケースあり→いきなりFAX・郵送で通知が届く。
2 合同労組からの通知が届いて社長がびっくりして税理士の先生に相談することが
多い
3 労働組合に対して社長個人,人事担当者のみで望むのは危険。最低でも通知が
届いたら一度は弁護士に相談すること
4 団体交渉=労働者の集団又は労働組合が代表者を通じて使用者又は使用者
団体の代表者と労働者の待遇又は労使関係上のルールについて合意を達成す
ることを主たる目的として交渉を行うこと
5 不当労働行為=やってはいけないこと(団体交渉拒否,組合員であることを理由
とした不利益取扱,使用者が組合の運営などに介入・干渉すること)
6 労働組合との団体交渉では安易に書面にサインはしないこと
7 労働組合法は労働組合と誠実に団体交渉を行うことを要求しているが,合意する
ことまでは合意していない
8 労働組合の求める日時・場所で団体交渉を行う必要はない
9 専門家の継続的な関与が重要。
8
● 事前相談により解決できた事例
事案
東京の塗料工場での事案(当事務所顧問先)。従業員を整理解雇したところ,従
業員が合同労組に加入し団体交渉を求めるFAXが工場に届く。社長が既に日
時・場所を決めてしまっていたため,数日後,労働組合の事務所にて団体交渉を
行う。
解決
労働組合の関係者2名,従業員本人,社長,専務,弁護士が同席。労働組合側
は解雇撤回又は解決金の支払を要求。会社側としては法律上解雇が有効である
可能性が高いという判断だったため労働組合の要求を拒否。労働組合側は工場
前でのビラまきをすること,工場内で有志を募って労働組合の分会を作ること等
を暗にほのめかしてきたが,団体交渉決裂後は何も動きはなかった。労働組合
側は団体交渉の際に隠し撮りで録音をしていた様子がうかがわれた。
ポイント
(1)解雇前からの準備をきちんとすること,(2)労働組合対策をきちんと行うこと
9
● 解雇のまとめ
1 解雇はリスクが高いので原則としては解雇しないというスタンスでアドバイスをする。
2 解雇をする場合には法律の要件を満たしているかどうかの確認が必要不可欠。横領
等の犯罪や,無断欠勤が長期間つづくというような極端なケース以外は労務に詳しい専
門家の意見を聞くこと
3 粘り強く従業員と話し合い,従業員に退職届の作成をしてもらうことが大切
4 労働組合がきた場合には時間の面でも心理的な面でも慌てない。自分たちのペース
で交渉をする。
5 解雇をする場合には,解雇時点までできちんとした書面による証拠を作成しておくこと
で勝負が決まる。
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求の分析
残業をしているのはどんなパターンか?
①会社の命令による場合
→ 支払わないわけにはいかない
②自発的労働による場合
(ex 職人気質でエクセルの表のセルの幅を1時間残業して直している)
→ 放置した場合には黙示の業務命令を認定されるリスク大
どこまでを業務としてやってもらうかを判断し,それに従ってもらう
③特にやることもないのにだらだらしている場合
→ 断固阻止する必要がある
・原則は1日8時間を超える分については1.25倍の賃金支払必要。休日は1.35倍の
賃金支払必要。夜間は1.25倍の賃金支払必要。
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求の分析
(1)請求されるタイミングは?
様々な不利益をおそれ,在職中に請求をしてくるパターンはほとんどない。(在職中に
請求する従業員はその後,労働関係法規に基づいた様々な請求をしてくる可能性があ
るので要注意!労働組合に加入したり,労働組合の支部を結成する可能性もあり。)
実際は,退職後に請求してくるパターンが圧倒的に多い。特に多いパターンとしては最
後の給与や退職金が支給されてから,時効中断のために内容証明が届くパターン。2年
で時効。
(2)請求するのはどんな人か?
①在職中から請求を検討している請求者
今のところ請求する人は,このパターンが多い。
何らかのきっかけで会社に対して恨みをもったりすることで請求を起こす決意をされる
パターンが多い。
だらだら残業や水増し請求に注意が必要。
中には時効期間である1年半から2年程度の間に退職・請求を繰り返す人もいる。
②退職後唆される請求者
ハローワークで隣にいた人(事件屋?)から長時間労働をなくすために請求しなければ
いけない!と言われて請求してきた実例
近い将来「退職金少なかったし,年金も少ないし,老後は心配だよね?在職期間中の
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残業代は支払ってもらえることがあります。」などというテレビCMが現れるかもしれない。
● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求のパターン
◎ 請求されてしまう場合のパターン
退職
※1
※2
※3
※4
給与・
退職金
支給
内容証
明到達
※1
解決(和解)
※4
交渉
※2
あっせ
ん等
訴訟・
労働
審判
※3
判
決
内容証明を受け取ったときのポイント
交渉におけるポイント
裁判所からの呼出状を受け取ったときのポイント
和解合意書作成のポイント
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求のパターン
※1 内容証明を受け取ったときのポイント
①支払期限についてはあまり気にする必要はない
②確認すべきポイントは,
・請求額(付加金・遅延損害金の請求の有無,消滅時効の対象部分の請求の有無)
・書面の作成名義(本人名義か代理人名義か)
・具体的な労働時間の資料等の送付の有無(資料がなければとりあえず請求してい
るだけかもしれない。)
※2 交渉におけるポイント
①支払金額の減額,被害拡大の防止という二つの利益のバランスをどう考えるか
会社としては,解決金として支払うことで,未払い残業代の存在を認めないで済むこと,
守秘義務を負わせることが和解での最低ラインとなってくる
②実際に訴訟になってしまった場合の,請求額の立証の見込み(労働時間と賃金)と
会社からの反論が認められる見込みをふまえて解決のポイントを探る
③根拠のない発言は後でトラブルの元なので慎む
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求のパターン
※3 裁判所からの呼出状を受け取ったときのポイント
・焦る必要はないができるだけ早く弁護士にアポイントをとって依頼する
・特に労働審判の場合には期日までに十分な準備が必要であるし,弁護士が期日に出
席できるかも重要(会社に届いて直後(1週間前後)であれば期日変更もあり得るが,時
間が経ってからでは変更は認めてもらえない)なので急ぐことが必要。
・通常の訴訟の場合には,指定された第1回の期日は出頭する必要なし
※4 和解書作成のポイント
① 解決の範囲を全面的なものにするのか,個別的なものにするのか,を意識する。
② 解決金とすることで未払い残業代の存在は認めていない形にする
③ 守秘義務を負わせること(見返りとして会社としても今後不利益な情報は出さない
ことを確約することがバランス上有用)
④ 労働基準監督署への申告等も行わないことも明示しておくことが望ましい
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求のパターン
◎整理しておきたい法律知識
①遅延損害金 6%か14.6パーセントか?
賃金の支払の確保等に関する法律
(退職労働者の賃金に係る遅延利息)
第6条 事業主は,その事業を退職した労働者に係る賃金 (退職手当を除く。以下この条において同じ。)
の全部又は一部をその退職の日(退職の日後に支払期日が到来する賃金にあつては,当該支払期日。以
下この条 において同じ。)までに支払わなかつた場合には,当該労働者に対し,当該退職の日の翌日から
その支払をする日までの期間について,その日数に応じ,当該退 職の日の経過後まだ支払われていない
賃金の額に年14.6パーセントを超えない範囲内で政令で定める率を乗じて得た金額を遅延利息として支払
わなければな らない。
2 前項の規定は,賃金の支払の遅滞が天災地変その他のやむを得ない事由で厚生労働省令で定めるも
のによるものである場合には,その事由の存する期間について適用しない。
賃金の支払の確保等に関する法律施行規則
(遅延利息に係るやむを得ない事由)
第六条 法第六条第二項 の厚生労働省令で定める事由は,次に掲げるとおりとする。 一 天災地変
二 事業主が破産手続開始の決定を受け,又は賃金の支払の確保等に関する施行令 (以下「令」とい
う。)第二条第一項 各号に掲げる事由のいずれかに該当することとなつたこと。
三 法令の制約により賃金の支払に充てるべき資金の確保が困難であること。
四 支払が遅滞している賃金の全部又は一部の存否に係る事項に関し,合理的な理由により,裁判所又
は労働委員会で争つていること。
五 その他前各号に掲げる事由に準ずる事由
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求のパターン
◎整理しておきたい法律知識
②付加金について
労働基準法
(付加金の支払)
第114条 裁判所は,第20条(解雇予告手当),第26条(休業手当)若しくは第37条(時間外・休日・深夜労
働の割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条第 7項の規定による賃金を支払わなかつた使用者に
対して,労働者の請求により,これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払
金のほ か,これと同一額の付加金の支払を命ずることができる。ただし,この請求は,違反のあつた時か
ら2年以内にしなければならない。
●付加金の発生
判決確定によって初めて発生する。
控訴審の口頭弁論終結時までに支払を完了してしまえば支払義務は免れる
〈判例〉 最高裁昭和35年3月11日判決(判例タイムズ103号26頁)
●付加金と遅延損害金
判決確定日の翌日から年5パーセントの遅延損害金が発生する。
〈判例〉江東ダイハツ自動車事件(最高裁昭和50年7月17日判決労働判例234
号17頁)
● 労働審判では付加金は発生しない運用が支配的
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● 敵を知れば残業代請求は怖くない!
・ 残業代請求のパターン
◎裁判の傾向
●判決では会社側の言い分はなかなか認められにくい,そのため,社長・労務担当者
が裁判の結果に不満を持つことも多い弁護士にとっては難しい種類の事件
・弁護士費用の標準は?
・どのような弁護士に依頼すればよいか?
●裁判所からの和解案は,事件の内容にもよるが,ある程度の証明がお互いにある事
案では,現状では概ね7割程度で提案されることが多い
・ただし,今後は和解水準も高額化していく可能性あり
・裁判所がタイムカードに基づいた形式的な運用をする可能性あり
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● 残業代請求対策の視点
◎ 対策を考える上での基本的ポイント
① 100%確実な対応策は,全額払うか勤務時間外に働かせるのを辞めるかしかない
→労働時間短縮等,そもそもの残業代削減に向けた取り組みも絶対に必要
その上で,次のような視点から対策を考える。
●和解での減額を目指せる事情(合理的な反論)をできる限り増やす
●そもそも請求されるリスクを減らす
② 対策によってかえって傷口を広げないように
少なくとも現状では退職後に請求してくる元従業員は,就業期間中の会社からの対応
について,何かしらか納得できない気持ち(恨みのような気持ち)を持って請求してきてい
るパターンが多い。
→対策をとったことによってかえって恨みをかってしまったら元も子もない
③ 労働条件の不利益変更にならないように
対策自体が新たな紛争の種になってしまう
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● 残業代請求対策の視点
◎ 残業代請求への防衛策
(1)防衛策についての考え方
基本的には法律上は支払義務がある以上,払わなければならない。
そのため,ここまで述べてきたように労働時間の短縮を目指し,かつ法律上認められて
いる対策は全て行うことが絶対に必要である。
ただ,そうはいっても,対応にも時間がかかるし,すべてを対策だけで解決するのも困
難なのが現実。
そこで,応急処置として(次善の策として)5つの防衛策を利用していくことを検討すると
いう視点が重要。
(2) 5つの具体的防衛策
①
②
③
④
⑤
天秤戦術
蛍の光戦術
手続戦術
軟着陸戦術
一挙解決戦術
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● 具体的防衛策
: 天秤戦術
現状の分析
総人件費(予算)=基本給+手当+残業代+賞与
総
人
件
費
残業代
基本給
賞与
手
当
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● 具体的防衛策
: 天秤戦術
残業代請求されてしまうと
総人件費(予算)<基本給+手当+残業代+賞与
総
人
件
費
残業代が大きくなっても
天秤を水平にする方法はな
いか?
残業代
基本給
賞与
手
当
22
● 具体的防衛策
: 天秤戦術
天秤を水平にする方法
① 総人件費を増やす →それができないからこそ困っている
② 基本給を下げる → 労働条件の不利益変更の問題
③ 手当を下げる → 労働条件の不利益変更の問題
④ 残業代を下げる
→ 労働時間の短縮によることは大事な対策だが,単に払わないと言うだけなら対策
になっていない
⑤ 賞与を下げる
→ 賃金規定や労使慣行から,具体的な金額の請求権となっていない限りは,支給額
が減ってなければ違法な労働条件の不利益変更とならない
※権利になっているかはまずは規則の定めによる
1)毎年6月と12月に,基本給額の2ヶ月分の賞与を支給する→権利
2)毎年6月と12月に賞与を支給する→権利とは言えない
3)毎年6月と12月に,業績及び本人の勤務状況等を勘案し,賞与を支給することがあ
る→権利とは言えない
慣行によって権利となるか?
〈判例〉
松原交通事件(大阪地裁平成9年5月19日判決労働判例725号72頁)
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● 具体的防衛策
: 天秤戦術
残業代を払った分賞与を減らすと,
総人件費(予算)=基本給+手当+残業代+賞与
総
人
件
費
残業代
基本給
賞与
手
当
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● 具体的防衛策
: 天秤戦術
天秤戦術とは・・・
時間外手当を支払った分,賞与を減額することで,総人件費の増加を伴
わずに,未払い残業の問題を解決する防衛策
《具体例》
基本給20万×12ヶ月
賞与80万円(夏冬各2ヶ月)
未払い残業代年間0円
基本給 20万円×12ヶ月
賞与40万円(夏冬1ヶ月)
未払い残業代 40万円
〈ポイント〉
① 賞与が権利として認められていないことが実施の前提条件となる。
※ 賞与が権利となっている場合に就業規則を変更した上で導入できるかの問題
あり。
② 就業規則(賃金規定)等の変更が不要で運用だけで実現できるため,導入が容
易で,かつ労働条件の不利益変更の問題を回避できる
③ 賞与減額に伴いモチベーションの低下を懸念されることが多いが,短時間労働
が実現すれば賞与も支給されることを告げて,労使の協力関係を築くことにもつな
がりやすい
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● 具体的防衛策
:蛍の光戦術
蛍の光戦術とは・・・
従業員に対し,残業を明示的に禁止し,現実に残業が必要な対策も具体的に講じる
ことによって,残業代の請求を免れる防衛策
〈趣旨〉
現実に残業代請求されてしまった場合に,「残業など命じていないのに勝手に残って
いるだけだ!」という反論がされることはかなり多い。
ただ,この場合でも,黙示的に指示したと認定されてしまうケースがほとんどで,現実
に反論が認められるのは非常に厳しい。
しかし,実際に「特に仕事もないのに早く帰ってくれなくて困る」という状況にある場合
には,黙示の指示も出していないことを積極的に立証できないと,請求が認められてし
まう危険性があるので,それを防ぐことが主目的となる。
もっとも,実質的には業務命令で残業させているのに,それを隠蔽しようとしたような
場合には,不法行為となる危険性があるので注意が必要である。
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● 具体的防衛策
:手続き戦術
手続き戦術とは・・・
残業代について,定額を支払い,未払い分があったとしても少額とすることで,残業代
を請求されるリスクを軽減する防衛策
〈注意点〉 適法かつ適切な形で導入することは必須!
∵ 追加で支払った分が,残業代の支払いとして認められるか否かということだけでな
く,基礎賃金がいくらかという問題にも波及してしまうため。
〈ケース〉所定労働時間は1日8時間×20日で160時間
月30時間の時間外労働(深夜・休日なし)を行った。
① 月30万円を支給(基本給25万円,時間外手当相当分5万円のつもり)
⇒ 請求 7万0312円
∵基礎賃金1875円(30万円÷160時間)×30時間×1.25
② 25万円を支給(基本給のみ)
⇒ 請求 5万8593円
∵基礎賃金1562.5円(25万円÷160時間)×30時間×1.25
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● 具体的防衛策
:手続き戦術
定額残業代の支給として認められるためには。
基本給部分と時間外手当相当部分が明確に区別され,判別できることが必要
〈定額残業代に関する裁判所の考え方〉
(出発点)支払総額が本来の計算より少なくなってはいけない
⇒ 本来支払われるべき金額がいくらなのかが明確にわかることが必要
= 基本給部分と時間外手当の部分が明確に区別されて初めて定額残業代として認め,
不足分については別途支払わなければならない
時間外手当
= 基準賃金 × 労働時間 × 割増率
時間外
手当
基本給
(基本給+除外されない諸手当)
÷所定労働時間
総額
総額方式 区別方式
総額方式だとそもそも基本給が
いくらなのかはっきりしない!
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● 具体的防衛策
:手続き戦術
● 導入に当たってのポイント
(1)固定の残業代を支払えば,何時間働かせてもかまわない(支払義務がない)という
制度ではないことを理解してもらう
⇒ 労働時間短縮の取り組みは必須
(2)現在支給中の総額を変えない場合には,労働条件の不利益変更の問題を生じさせ
ないよう注意が必要
⇒基本的には個別的に同意書を取り付けることが必要
※請求された場合には同意は脅迫によるものである等の主張が行われる危険性が高
い。慰謝料請求などもあり得るので取り付け方には注意が必要
(3)給与明細書,賃金規程,雇用契約書,雇用条件通知書等の改訂作業が必要
(4)手当として時間外手当相当分を支給している場合には,名称や規定などから時間
外手当として支給していることを明確化し,運用上も矛盾のない制度にしておくこと
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● 具体的防衛策
: 軟着陸戦術
● 軟着陸戦術とは・・・
残業代請求については退職後に行われるリスクが高いことから,退職直前
の2年間について未払い残業代を減らしていくことで,請求リスクを軽減する
防衛策
● 対象 定年退職者など,退職時期が定まっている人
● 具体的方法論
・退職前の一定の時期に役職を外すとともに画一的に給与を下げる
就業規則等で取扱を明確化しておく
労働条件の不利益変更とならないよう注意が必要
・定年後も嘱託で再雇用しつつ,時間外労働を禁ずる
※消滅時効の主張を権利濫用とする反論が認められた裁判例は不見当
※ 民法の債権法改正の動向には注意が必要!
消滅時効期間を統一する方向で議論が進められており,労働債権の時効期
間が延びる可能性があります。
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● 具体的防衛策
: 一挙解決戦術
●一挙解決戦術とは
退職に当たって,従業員に対して割増退職金の支給や有給休暇の買い上げ等,特別
の給付を行った場合に,清算条項入りの退職合意書を作成することによって,退職後に
残業代請求された場合に,和解により清算済みであるとの反論を行えるようにする防衛
策
●想定される特別の給付
特別退職金の支給,有給休暇の買い上げ,離職票の退職理由を会社都合とする,再
就職先のあっせんなど
● 注意点
従業員にとってメリットもないのに清算条項入りの和解書を作成させた場合,無効を主
張されるだけでなく,慰謝料請求の対象ともなりかねないので注意が必要
⇒ 和解合意書の記載内容には細心の注意を払うこと
〈判例〉
最高裁昭和48年1月19日判決 判例時報695号107頁
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● 具体的防衛策
: 一挙解決戦術
●和解書作成上のポイント
①従業員の「自由な意思」に基づいて作成されたものであることを書面上から明らかにわ
かるようにする。
→従業員側の得た特別の利益が何かを書面を一読してわかるようにしておく
②清算条項は全面的なものにしておく必要がある。
③仮に横領など,予期せぬ問題が後に発覚した場合,会社の請求権が保持されるよう注
意する
● 和解が無効であると主張して請求された場合
仮に無効ならば,和解全体が無効であるとして,既に行った給付の返還を請求すること
になる。
● 残業代対策のために最近多く取られている方法が退職時の合意書作成。ただし,効
果について明確に判断した判例はないので,今後の判例に注意する必要あり。
● 合意書を作成しているという事実があるので,事実上従業員が残業代を請求してこな
い可能性が高いという意味で効果極めて大。従業員側弁護士も合意書があると請求を躊
躇するのが一般的。
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● 残業代請求のまとめ
① 今後,(程度の問題はあるにせよ)残業代請求が増えることは確実なので,事前に対
策を講じることは必須。
② 対岸の火事ではないことを会社に対して常に情報発信していくこと
特に,うちはしっかりしている!と,誤解してしまっている会社が一番危ない。
③ 労働時間の短縮に向けて最大限の取り組みを行っていくこと
特に,景気が悪い今は労働時間短縮の絶好のチャンス
④ 法律上の規定や裁判例について正確に理解し,適切な施策・運用を行うこと。
中途半端な知識に基づいて行うとかえって火の粉が大きくなってしまう危険があるので
注意すること。
⑤ 対策を講じることによって従業員の反発を招く結果になってしまうと本末転倒。
労使間で十分な協議を行い,労使一体となって(Win-Winの関係を構築できるように)問
題に取り組んでいくことが最も重要。
33
● 労働審判の事例~事案の概要
1 当事者
会社は,FAX,電話,パソコンなどの設置,保守を業務とする株式会社。社員は10
名程度。
申立人は,主として通信機器のメンテナンスを担当。仕事は外回りが中心。
2 請求額
①未払い残業代 344万5057円
②解雇予告手当 26万5460円
③付加金
371万517円(①と②の合計)
合計742万1034円
● 会社側の主張
1 タイムカードは申立人の勤務実態を正確に反映していない
タイムカードによると,申立人は毎日2時間~8時間の残業をしていた
ことになるが,申立人の業務量は夕方までに帰社し,定時に退社できる
程度しかなかったはずであり,タイムカードは申立人の勤務実態から
かい離している。
(証拠)作業日報,上司の陳述書
2 始業時間前の時間は割増賃金算定の基礎とすべきではない。
3 取付手当,コピーメンテナンス費は残業手当と同様の趣旨で支給されており,既
払金として考えるべきである。
4 遅延利息,付加金
● 審判
・第1回審判
申立人の勤務実態が最大の争点
その他の点については問題とされず
↓
他の社員の労働時間,勤務実態との比較が重要
↓
会社側は申立人以外の社員についてタイムカードを出すこと
・第2回審判
申立人以外の社員のタイムカードを見ると,申立人以外も1日2~3時間は残業し
ている。
↓
申立人の勤務実態についての話は信用できない部分もあるが,毎日2~3時間
程度の残業代は認めざるを得ないのではないか
● 和解
・ 会社は申立人に対し,解決金として200万円を支払う。
毎日20時まで残業した場合の未払残業代約174万円と解雇予告手当約26万円
の合計=200万円
◎ 教訓
①勤務時間を本人の業務内容そのものから推認することは困難
→同じような業務を行っている他の社員との比較が重要
②労働審判ではメインの争点以外はほとんど審理の対象とならない
→ポイントを絞った反論が重要
③従業員の勤務時間の適正な管理の必要性
→残業の申告制,事業場外労働時間に関するみなし労働時間制の導入
● 倒産・廃業に関する方法
1 頻度が高い方法
• 破産法に基づく破産申立(破産法は平成17年全面改正法施行)
•
•
•
•
民事再生法に基づく民事再生申立(民事再生法は平成12年施行,改正回数が
その後多いため最新の法改正を踏まえる必要あり)
任意整理を行う方法
法的な整理を何もしない方法
清算を行う方法(会社法第475条以下,債務超過の疑いがない場合),清算とは
会社の法人格の消滅前に会社の現務を結了し,債権を取り立て,債権者に対し
て債務を弁済し,株主に対して残余財産を分配する等の手続き。
2 頻度が低い方法
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会社更生法に基づく会社更生申立(民事再生法施行に伴い,案件数は減少・比
較的大規模な会社を対象にした手続き)
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特別清算を行う方法(会社法第510条以下,債務超過の疑いがある場合),特別
清算とは,債務超過の疑いがある場合の清算手続き。
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● 破産についての特徴
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破産法に基づいて裁判所に破産申立をする方法
弁護士事務所からの通知の発送(取立原則ストップ)→申立準備(書類作成)
→裁判所への申立→破産管財人の選任→債権者集会の開催→配当がある
場合には配当手続き,という流れ
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会社・個人とも,原則として財産がなくなる(ただし,個人の破産の場合,自由
財産として一部保持可能)
債務・借金が0円になる
事業は廃止することが原則
平成17年より全面改正法施行
会社を清算する最後の手段
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オーナー社長の場合には,今後の生活をどのようにするかの問題あり(住
居・毎月の生活費・連帯保証人との関係等)
免責不許可事由(破産法第252条)に注意
非免責債権(破産法第253条)に注意
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● 破産の事例
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(取引先を維持した解決)
A社は,建設関係の仕事を営む株式会社。負債は約1億円(金融機関からの借
入金及び買掛金数社分)。会社に大きな資産はないが,社長の営業能力が高く,
仕事を発注する会社は多い。会社自身は実際の建設工事等を直接行わないこと
が多く,下請会社の利用,下請の職人の手配などにより業務を行っている。一部
は会社が従業員を雇用して実際の工事の業務を行っている。不景気の影響によ
り,毎月の支払が困難になった。
解決策
会社自身の財産(什器備品・在庫等)があまりない会社だったため,社長の営業
能力をいかした方法での解決を検討した。取引先に著しい迷惑をかけないよう,きり
の良いところまで業務を行った。裁判所に会社・社長の破産申立を行い,会社・社長
の借金は0円となった。社長の親戚に新会社を設立してもらい,社長自身は営業部
長ということで新会社での業務を開始した。破産の際に,仕事を発注してくれていた
取引先には一切迷惑をかけなかったため,引き続き旧来の取引先は新会社と取引
をしてくれることとなった。
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● 破産の事例
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(社長自宅を守った解決)
A社は,負債3億円の運送業を営む株式会社。売上が激減し,どんなに事業規模
を縮小しても今後の売上の見通しがたたない状況。社長個人の自宅(時価1500
万円)があるが,会社の債務を社長が連帯保証した連帯保証債務についての抵
当権5000万円が設定されている状態。社長は高齢のため,事業を辞めたいが
家だけはなんとか守りたいとの希望あり。
解決策
会社は破産するしかないとの結論。社長も破産するしかないとの結論。自宅につ
いては,時価が1500万円なので,金融機関と交渉した結果,親族が1500万円を
準備して不動産を買い取り,売買代金全額を金融機関に返済して抵当権を外す方法
で合意。(しかも,親族は購入に当たって住宅ローンを組むことができた。)親族から
社長が自宅を借りることにして,社長は自宅から退去する必要がなくなった。
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● 民事再生についての特徴
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民事再生法に基づいて裁判所に申立をする方法
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一部の借金を支払って残部を免除する方法
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会社の場合,今後事業自体が黒字になることや,資金を援助してくれるスポン
サーの存在が必要になることが多い。事業は継続できる可能性あり
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該当する事業についてスポンサーの買取希望がある場合には優先して検討すべ
き
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個人(社長)の場合,住宅・住宅ローンがある場合に大きなメリットあり(住宅ロー
ンをそのまま支払い,他の借金を大幅にカットすることが可能)
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会社の場合,裁判所に納める予納金が比較的会社の規模と比べて高額になる
可能性あり
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申立後資金繰りにつまずく場合も多いので,会社の資金繰りにある程度余裕が
ある状況での申立が必要
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● 任意整理の特徴
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裁判所を利用せず,弁護士事務所と債権者が直接交渉する方法
弁護士事務所からの通知(取立原則ストップ)→業者との間での残高の確認→分割払いの
交渉→分割払いの合意に基づく支払開始,という流れ
金融機関・消費者金融等には効果的
ヤミ金融・無届けの貸金業者等にも効果的
買掛金については効果が低い
原則として,再度分割払いの約束を組み直して返済していく方法
•
強制力がないので,相手が応じるかどうかによって成功する可能性が大幅に変わることと
なる
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個人の破産・民事再生・任意整理・過払い金返還請求については,当事務所運営サイト
「柏・松戸債務整理自己破産相談」あり(http://www.yotsubasougou.com/)
各業者ごとの対応方法
• 銀行・政府系金融機関の場合
• いわゆる商工ローンの場合
• いわゆる消費者金融の場合
• いわゆる「ヤミ金融」等の場合
• 借入金ではなく買掛金の場合
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● 過払い金について
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過払い金=利息制限法の定める利率を超える高利の借入れをした借主が,本
来,借入金の返済は終わったのに返済を続けたため,払いすぎた金銭
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弁護士事務所からの通知の発送→業者から開示された取引履歴を再計算→業
者との間における過払い金返還請求の話し合い又は訴訟の提起→過払い金の
返金,という流れ
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利息制限法(10万円未満は上限20%,10万円以上100万円未満は上限1
8%,100万円以上の貸付は上限15%)
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利率が年15%以下の場合には過払い金は発生しない。
物を購入したときの債権の場合,過払い金が発生しない。
SFCG(旧商工ファンド),ロプロ(旧日栄)対策
物を購入したときの債権の場合,過払い金が発生しない。
相手会社が倒産してしまった場合には過払金の請求はほぼ不可能(武富士)
当事務所運営サイト 千葉・過払い金返還.COM(http://www.yotsubasougoukabarai.com/)
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● 過払い金についての事例
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A社は,年間売上1500万円位の小規模の小売店。社長は,会社の資金が足り
ず,50万円,100万円と言った小規模の借入を自ら消費者金融,商工ローン等
の利率20%台の高利率の業者にて10年間も行っていた。ついに個人での借入
にも限界が来たため,会社(負債1000万)をたたんで個人(負債500万)も破産
しようと考え弁護士事務所に来所
解決策
20%台の利率の業者については,過去に払いすぎた分の利息があるため,弁護
士事務所が各業者と交渉(一部過払い金返還請求訴訟の提起)。結局,社長個人の
借入については,債務額500万円が160万円に減額。しかも,複数の業者から過払
い金330万円の返金を受けることができた。個人名義の借金がなくなったため,会
社も継続して行うことができることとなった。
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● 事業承継について
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株式の後継者への集中(親族内承継・親族外承継)
•
「会社の存続・発展」と「オーナー家の発展」との両面から考える必要あり
•
個人財産と会社財産の整理
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遺言書の作成
•
会社の各種規定の見直し,トラブル防止対策
•
紛争が生じる可能性が高いので,弁護士による継続的な関与が必要な分野
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● 倒産・廃業の場合の長期的な視野に立った対策
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早めの弁護士への相談により,多数の選択肢の中から一番納得のいく選択肢を
選ぶことが可能
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抵当権付の債務についての早めの対策を建てることが必要
•
連帯保証人付の債務についての早めの対策を建てるものが必要
•
会社財産・社長個人の財産をきちんと分けた上で,それぞれの財産が廃業の場
合にどのようになるのかを事前に検討することが必要
•
詐害行為取消訴訟(民事訴訟),否認請求・否認訴訟(破産)に注意!
•
倒産・廃業(又はその前提としての事業再編)の場合,早めに詳しい弁護士へ継
続的に相談することにより,選択肢が広がります
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● 従業員に対する倒産・廃業前後の対策
従業員に対する対策
• 従業員には倒産・廃業直前まで倒産・廃業の事実を知らせないこと
• 資料・打合せメモの管理を徹底すること
•
•
•
弁護士事務所,会計事務所との打合せをしている事実が発覚しないようにするこ
と
会社の業務終了の時期について検討すること
理想は全員に退職届を作成してもらうこと
従業員のトラブル例
1 個別の従業員がしつこくて困る。
2 労働基準監督署からの問い合わせがあって困る。
3 労働組合からの連絡がいきなりあって何のことだかさっぱりわからない。
4 何らかの未払いを理由とした裁判を起こされてしまった。
5 多数の従業員を巻き込んだ大トラブルに発展してしまった・・・。
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● 売掛金を回収する方法
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◎
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請求書の送付・手渡し
督促の電話・手紙
内容証明郵便での督促(会社・弁護士事務所)
支払督促(裁判所を利用)
公正証書の作成(会社・弁護士事務所)
商品引き上げ
債務との相殺(会社・弁護士事務所)
民事訴訟(弁護士事務所)
民事執行(弁護士事務所)
債権回収のポイント
「とにかくしつこく,早く」が重要
相手の財産を把握できているかどうかが重要
連帯保証人,担保が付いているかどうかが重要
弁護士への依頼は早ければ早いほどよい
裁判手続きも早ければ早いほどよい
費用対効果を考えると,弁護士事務所との顧問契約が有益なこともあり
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● 売掛金の回収についての具体例
•
A社は,清掃関係の業務を請け負う株式会社。少額・多数の売掛金・取引先を有
するため,売掛金の未回収が多くて困っている状況。ただし,額が少額のため,
弁護士にその都度依頼することまでは面倒だし,費用もかかると考えていた。
解決策
弁護士と話し合った上,顧問契約の方法をとることにより,継続的に納得できる費
用での弁護士名での通知書の送付,訴訟の提起等をスムーズに進められるように
なった。また,継続的に請求業務を行っているので,毎回詳しく弁護士事務所に案件
の内容について相談しなくても,スムーズに売掛金の回収業務が進むようになった。
電話・FAX・メールのみによる相談もできるようになり回収の迅速性も増した。
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● 会社での支配権争い
•
会社内で相続,兄弟げんか,親子げんか等が原因で,株主間の一致した見
解がとれない会社→社長は弁護士への継続的な相談が極めて重要
•
株主間の紛争が生じてしまった場合には,株式の買い取りが最大の目標
•
株式の買い取りが困難な場合には訴訟を提起されるリスクが高いために各
種規定・手続きを万全に行う必要あり(株主総会・取締役会が必要な各種の
会社の行為)
•
多数株主が少数株主である取締役の解任をすることは慎重さが必要
51
● 株主間紛争の具体例
•
A社は,80%以上の株式を現社長が保有し,10%程度の株式を対立する兄弟
が保有している株式会社である。会社経営を巡って争いとなり,株主総会決議に
より,少数株主である兄弟を取締役から解任したところ,兄弟から解任をめぐる
裁判を提起された段階で弁護士事務所への相談があった。
•
取締役の解任には正当事由が必要のため,正当事由がない解任として,数年分
の取締役報酬を会社が兄弟に判決により支払うこととなってしまった。また,兄弟
は取締役ではなくても株主であることには代わりはないので,各種訴訟等を提起
されることとなってしまった。(現社長の解任の訴え,会計帳簿の閲覧謄写請求,
取締役会議事録の閲覧謄写請求,株主総会議事録の閲覧謄写請求,特別背
任・横領での刑事告訴)
解決策
兄弟からの株式の買い取りが最初の段階でできていれば,このような争いにはなら
なかった。株主間の紛争は一度こじれると永遠に続くことが多いので,株主間紛争が
会社で発生しそうな場合には,まずは,今後のリスクを把握するためにも弁護士への
相談が不可欠である。
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● 交通事故(被害者)
•
社長又は社員が交通事故の被害にあった場合,最低限やっておくべきことは,
(1)相手の住所・氏名の把握,(2)警察をその場で呼んで事故に関する証明書を
後日作成してもらうこと
•
保険会社によっては,(1)個人が保険会社に請求する場合,(2)弁護士が保険
会社に請求する場合,(3)民事訴訟を提起した場合で異なる支払基準を作成し
ている場合あり
•
交通事故の保険には,弁護士費用特約(弁護士への依頼費用を保険会社が負
担する特約)が付いているケースも多いので,そのような場合は積極的に弁護士
への相談をした方がよい。
•
怪我をした場合,我慢して医者に通わないと思わぬ不利益を受けるケースあり
(医者に通った回数・期間で支払額が決まることが多い)
•
通称「赤い本」,「青い本」が損害賠償額算定の基礎資料(日弁連交通事故相談
センターHP http://www.n-tacc.or.jp/book/)
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● 顧問契約のメリット
(1)すぐに弁護士事務所に相談できる
(2)業務内容や内情の理解が得られる
(3)迅速な対応が期待できる
(4)よりよい契約交渉や紛争解決が期待できる
(5)信頼関係を構築しやすい
(6)法務コストの削減
特に,以下のような会社には顧問契約がお勧めです。
(1)売掛金の未回収が多い会社(少額・多数の売掛金の未回収が発生する可能性がある会社
等)
(2)従業員と紛争になる可能性が高い会社(労働組合が強い会社等)
(3)株主間での調整が必要な会社(少数株主から訴訟を起こされる可能性がある会社等)
(4)継続的に法律問題(訴訟等)が発生している会社
(5)建物明渡訴訟・交渉が多い会社(不動産管理会社等)
→事業を行っていない個人の方の場合には,顧問契約ではなく,個別に弁護士にご依頼され
た方がよいかとおもいます。他方,会社の場合や,事業を行っている個人の場合には,弁護
士への相談は,大きなトラブルになる前に早めに信頼できる気心の知れた弁護士に相談する
のが一番です。
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◎ 最近のセミナー実績 ◎
○2003年1月14日 あさひ・狛法律事務所所内研修会
「ジョイントベンチャーと金庫株の利用方法について」
○2004年1月16日 千葉県弁護士会松戸支部支部内研修会
「改正民事執行法について」
○2007年11月16日 千葉県弁護士会主催
「裁判員制度,刑事訴訟法改正について」
○2009年10月22日 千葉県税理士会松戸支部主催
「そんなとき,顧問先の問い合わせに即対応できる税理士が知っておきたい倒産・
廃業時の実務」
○2010年3月28日 船井総合研究所主催「独立開業セミナー」
「弁護士のための独立開業セミナー」において,パネルディスカッションを担当しまし
た。
○2010年4月21日 千葉県社会保険労務士会東葛支部の先生方との勉強会講師
「顧問先の満足度を高める解雇紛争実務」
○2010年9月15日 千葉県社会保険労務士会東葛支部の先生方との勉強会講師
「会社を不当な残業代請求から守る残業代対策~会社・従業員間の信頼関係構築
を目指して~」
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◎ 講師略歴 ◎
大澤一郎 弁護士法人よつば総合法律事務所 代表社員弁護士
千葉県柏市柏1丁目5番10号 水戸屋壱番館ビル4階
電話番号 04-7168-2300
FAX番号 04-7168-2301
メールアドレス
[email protected]
ホームページアドレス
柏・松戸中小企業法律相談http://www.yotsubasougou.jp/
平成8年 千葉県立東葛飾高校卒業
平成13年 東京大学法学部卒業
平成13年 司法研修所入所 司法研修所55期
平成14年 弁護士登録
千葉県弁護士会所属(登録番号29869)
平成20年度弁護士会松戸支部幹事,同支部法律相談運営センター委員,千葉県弁
護士会新人弁護士等支援委員会委員
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