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平成26年6月
民法改正の見直しを考える会 呼びかけ人一同
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現在、法制審議会(民法(債権関係)部会)において、民法の
債権と総則の抜本的な見直しのための審議が行われ
ています。
この改正作業を、一般に民法(債権関係)改正または
「債権法改正」と呼んでいます。
債権法改正は、債権編の大半(事務管理・不当利得・不法行為を除く部分)
と民法総則の重要部分(法律行為・期間計算・時効)を改定する極めて
大がかりな一般法の改正です。
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法制審議会・民法(債権関係)部会で審議されています。
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民法(債権関係)部会は、学者・官僚中心の体制になっています。
◦ メンバー全38名のうち、学者18名(法務省参与を入れて19名)、法務官僚6名との
構成になっています。
◦ 国民やユーザーを代表するメンバーは、全38名中9名です(企業関係者3名、労働者・
消費者関係者2名、弁護士4名)。
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しかも、学者19名のうち14名が特定の「私的団体」(民法(債権法)改正検討委員会)
のメンバーです。また、法務官僚6名のうち4名もこの「私的団体」に所属
していました。
◦ この私的団体 は、法務省民事局の参与と参事官らが発起人となって、学者と官僚
だけで組織された団体であり、参与と参事官がその要職のほとんどに就任し、立法
の「たたき台」(「債権法改正の基本方針」)を策定することにより、法制審議会の審議に
重大な影響を及ぼしています。
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なぜ民法のルールを抜本的に変えなければならないのか、
その必要性は明らかになっていません。
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法務省は、債権法改正を発議するにあたり、抜本的改正の
必要性(立法事実)について、検討結果を公表していません。
法務省が実施した2回のパブリック・コメント手続においても、
「抜本的改正の必要性」は、論点にも挙げられていません。
抜本的改正を貫く「理念」が何なのかも国民には知らされて
いません。
そして何より、民法を「新しい理念」で根本から変えてほしい
との国民的なニーズは見られません。
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いいえ。
担当の法務省参与は、規定の不備を修正するメンテナンス
ではなく、新しい理念で抜本的に民法のルールを書き直す
(再法典化する)ものであることを表明しています。
法務省参与は、この改正について、
◦ 「全面的に新しい理念で民法典を起草する試み」
◦ 「規定の不備を修正するといった通常の法改正の域を超える、一大文化事業」
◦ 「原理原則をいったん根本から問い直してみるという徹底した性格の作業」
◦ 「法務省が経験する最大級の改正」
◦ 「契約のルールが百年ぶりに変わる」
と表現し、全面的に根本からルールを変更することを強調しています。
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改正案が現行法とくらべてわかりやすくなるとは必ずしも
思えません。
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中間試案(下記)は、法律のプロでなくても読んだだけでわかるものとは
思われません。
http://www.moj.go.jp/content/000108853.pdf
http://www.moj.go.jp/content/000109606.pdf
http://www.moj.go.jp/content/000109950.pdf
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また、国民や企業が慣れ親しんできたルールや概念を変えてしまえば、
それだけで考えや取扱いが混乱し、わかりにくくなることが懸念されます。
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中間試案(平成25年3月発表)は、民法の体系、理念、
原則、制度、趣旨、概念、確立された判例の考え方
等を根本から変更する提案を数多く含んでいます。
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(詳しくは、次のページをご参照ください)
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以下のように、私法体系の枢要部を根本から変更する提案を多く含んでいます。
1.
債権総則に相当する部分に「契約による債権(債務)」と「契約以外による債権
(債務)」の二元的規律を採用する *債権総則の廃止、債権体系から契約中心体系への
変更、「債権」の概念の変容等の可能性があります。
2.
原始的不能の契約を有効とする
3.
「履行不能」の概念を廃止し、履行請求できない債権を広汎に認める(履行請求権
の限界) *この提案については、反対が強く、要綱案には採用されない方向で議論が進んでいます。
4.
債務不履行による損害賠償の制度を支える過失責任の原則を事実上排斥する
(過失責任の原則から契約の拘束力へ)
5.
6.
7.
8.
解除制度から帰責事由要件を撤廃する
危険負担制度を廃止する
「瑕疵担保責任」の概念を廃止する (契約責任説の採用、「契約の趣旨に適合」
するかどうかで判断する、「瑕疵」概念・「隠れた」要件の廃止)
「契約の趣旨」の概念を新たに導入し、これを多用する etc.
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中間試案の主な特徴は、以下のように整理することが可能であると
思われます。
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① 債権から契約へ
cf. 大村敦「民法改正を考える」(岩波新書、2011年)p160
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② 伝統的通説から批判学説へ
cf. 山田創一「民法(債権法)改正の中間試案に関する考察」(専修ロージャーナルNo.9 2013.12) p59
cf. 山本豊「債務不履行・約款」ジュリスト1392号p85
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③ 私的自治・契約の自由から社会的規範へ
cf. 「契約の趣旨」の概念
cf. 関係的契約理論
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債権
通説
実務
給付
請求権
損害賠償 原始的不能 原始的瑕疵 後発的不能
(原始的一部不能)
帰責原因
過失責任
・故意・過失
又は信義則上
それらと同視
すべき事由
(履行補助者の
故意・過失含む)
契約無効
↓
【債務者有責】
契約締結上の
過失(信義則)
・損害賠償
(信頼利益)
一部無効
債権関係に
おいて利益
の獲得を
期待できる
地位(潮見)
*債権関係・
利益中心の
体系
契約の
拘束力
↓
瑕疵担保
・損害賠償
(信頼利益)
・解除
【債務者無責】
債務不履行
危険負担
給付義務は
消滅
↓
債権は消滅
↓
反対給付は?
× 債務者主義
〇 債権者主義
・損害賠償
(填補賠償請求権
への転化)
・解除
契約有効
全部有効
契約不履行
(契約不適合)
・損害賠償
・解除
契約不履行
A 契約による
リスクの引き
受け
B 契約の趣旨
【債務者有責】
(現状引渡義務)
Cf. 私的自治
契約自由
批判
学説
後発的不能
免責
・損害賠償
(履行利益)
・解除
A 契約で引き受けていないリスク
B 契約の趣旨に照らして債務者に分配されないリスク
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中間試案
債務不履行による損害賠償
(契約の拘束力、リスク分配)
一切の事情
合意の内容
契約書の記載
性質
目的
経緯等
契約の趣旨
付随義務・保護義務
合意
・
・
・
取引通念
現行法
契約書の記載
性質
目的・趣旨
経緯等
取引通念
合理的意思解釈
(合意の認定)
売主の義務 cf. 担保責任
信義則
合意
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議論が変遷しており、中間試案の内容のさらなる変更も多く検討されています。
ところが、国民への情報提供は適時に行われておらず、パブリック・コメント手続も
予定されていません。
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中間試案は80ページ超、その補足説明は550ページ超に及ぶものであり、その範囲・分量は膨大です。
また、中間試案に対しては反対や批判も強く、多くの論点で議論が変遷しています。
このため、最終の要綱案は、中間試案とはかなり異なるものになる可能性もあります。
ところが、法制審議会は、平成25年7月からわずか1年間の審議で要綱仮案を策定しようとしています。
しかも、その議事録は、平成25年11月19日分以降、半年以上の長期間にわたり公表されていません
(平成26年6月初旬現在)。
その上、変遷後の改正案(要綱仮案)に対して国民が意見を述べるパブリック・コメントの手続も
予定されていません。
ひとたび改正が行われれば、国民は半永久的ともいうべきスパンでこれに拘束されます。
ところが、現在、国民がその議論を十分に検証し、議論に参加できる状況にはありません。
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中間試案(平成25年3月)では、債権譲渡の対抗要件(民法第467条の規律)について、
【甲案】 第三者対抗要件を登記・確定日付ある譲渡書面とする案
【乙案】 債務者の承諾を第三者対抗要件等とはしない案
のいずれかに改めるとの提案(いずれも債務者の承諾を対抗要件から外す提案)がなさ
れました。
この点、その後の議論(部会資料74B 平成26年2月)では、
【A案】債権を譲渡した事実を譲渡人又はその指定する者が、公証人又は郵便認証司に
対して申述した日時を証明するための行為をすること(公証人に譲渡の事実を申述して
その日時を公証してもらうこと又は譲渡の事実を記載した書面を内容証明郵便で送付する
こと)を第三者対抗要件とし、その証明された日時の先後で対抗関係の優劣を決する
との案が提示され、この案を軸とした審議が行われている模様です。
しかし、上記A案は非常にわかりにくい上、そもそもなぜそうまでして債務者の承諾を対抗要
件から排除する必要があるのかとの疑問も生じるものと思われます。
これらについても、議事録が公表されていないため、国民がその議論を参照して検証を行う
ことができる状況にはありません。
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①
②
③
④
⑤
⑥
法体系と取引社会が混乱するおそれがあります。
民法は、国家の法体系の土台をなす基本法・一般法です。土台を変えようと
すると、法的・社会的安定性が大きく損なわれるおそれがあります。
基本ルールの大変更により、国民や企業の予見可能性が害されるおそれが
あります。
旧民法と新民法の併存状態が長期間生じます。国民は、内容の異なる膨大
な分量の二重ルールをいずれも理解し、使いこなさなければなりません。
民法の土台の上に乗る多数の特別法の改正が必要になると予想されます。
一般法の改正に伴う様々なリスクとコスト(システム変更、混乱、煩雑さ、過誤、
トラブル、紛争、予見性喪失等)が長期間生じ続けるおそれがあります。
検証が不十分な現状のまま大改正が実行されることにより、運用が開始され
てからはじめて思わぬ深刻な不具合・不整合が発見されるおそれがあります。
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予定どおり進行すれば、平成27年には改正案が決定され、
国会の審議にかけられることになります。
法務省の発表では、以下のスケジュールで手続が進行することになって
います。
①
平成26年7月に要綱仮案をとりまとめる
②
平成27年2月ころに要綱案を最終決定する
ところが、これらに対するパブリック・コメント手続は予定されていません。
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手続を一時ストップさせ、国民が慎重に熟議できる
環境を整えることが必要ではないでしょうか。
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【考えられる具体的な措置】
A)
B)
平成26年7月に要綱仮案がとりまとめられた時点で、国民の声
を聞くパブリック・コメントをもう一度実施するよう求める
要綱案が決定された段階で手続を一時凍結し、時間をかけて、中
立 公正な第三者機関に以下の点を検証させる
①
②
③
④
全面的・抜本的改正を行う必要性(立法事実)があるか
民意を反映しているか(過去のパブ・コメの検証、新たなパブ・コメの実施等)
社会に混乱や悪影響を及ぼすものとなっていないか
特定の学説や特殊な考え方に偏ったものになっていないか
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