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グローバル化と統計教育
成蹊大学理工学部情報科学科
教授 岩崎 学
[email protected]
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本日のお題
自分で考えたことしか
身に付かない
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The Sexy Job
• Hal Varian on how the Web challenges managers (2009)
• Google’s chief economist
• I keep saying the sexy job in the next ten years will be
statisticians.
• The ability to take data—to be able to understand it, to
process it, to extract value from it, to visualize it, to
communicate it—that’s going to be a hugely important skill
in the next decades, not only at the professional level but
even at the educational level for elementary school kids, for
high school kids, for college kids.
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さまざまなマスコミで
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NHK クローズアップ現代 (2013.7.3)
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学生のトンデモ発言
• TEXT: According to Francis Bacon . . .
• 学生1:フランシス・バコンによると
• 私:・・・・・・・
• 私(自分の論文を見せながら):論文を書く際には,参考にした文献や
引用先を,このように参考文献として明示しなくてはいけませんね.
• 学生2:先生の論文,そこから全部パクったんですか?
• 私:・・・・・・・・・・・・・・・・・
• 同僚:参考文献って,パクリのリストだったんだ
• 学生3:考えても分からないことは,考えても分かんないから,すぐに
先生に聞く.
• 私:(「考えても分からないこと」じゃなくて「知らないこと」でしょ)
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Harvard の Statistics 100 を成蹊で実践
• 対象:大学の1年生(文科系)
• 開講:2011.8.31 – 2011.12.17
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(15週 + 最終試験,途中5日間休み (Thanks Giving))
講義:週3回(月,水,金)各60分 (10:00 – 11:00)
演習:週2回(2種類)(各60分)参加自由(強く推奨)
宿題:8回(1回目のReadings の分量は,本文50ページ,
演習問題25ページ)
試験:時間内試験(2回,各60分),
最終試験(1回,180分)Open book
プロジェクト:ポスター発表
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成蹊では
• 対象:統計学研究室配属の3年生4名
• 2年次に全員,確率・統計の授業1年間履修,うち2名は,3年次前期に
応用統計(回帰分析と各種多変量解析)の授業履修
• 開講:2013.9.18 – 2014.1.23
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(15週 + 最終試験,途中2週間休み(年末年始))
講義:週1回(木)150分 (09:30 – 12:10)
演習:週1回(水)(90分(以上),担当:助教)参加必須
宿題:8回(Reading無し.問題と解答を配布し,英文解答を参
考にしつつ各設問に日本語で解答,Rプログラミングを含む)
試験:時間内試験(2回,各60分,Open book with answers),
最終試験(1回,150分)Closed book
プロジェクト:2人ずつ組にしてのプロジェクタ使用の発表
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その結果
• 講義:事前の準備もほぼ不要で,何とか時間内に終えること
ができた.
• 演習:2種類中,助教担当の1種類のみ.岩崎は断念.
• 宿題:問題に加え解答も配布したため,学生は何とか解答が
できたが,きわめて多くの時間がかかった.
• 提出された宿題は,最後にまとめてコメントして返却.
• 学生はもとより,教員にとってもきわめて長時間を要する授業
であった.
• 試験:残念ながらよい出来とはいえなかった.
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自分で考えたことしか身に付かない1
• どうやってそこに学生を導けばよいのか.
• 日本だけでなく,世界各国に共通の問題.それぞれがさまざまな工夫.
まさにグローバルな課題.
• 「日本の統計教育」を語る場合,「日本の教育」の特長,「統計
教育」の特長を分けて議論する必要.
• 『知る,知らしめる』
• 問題解決,課題解決の名の下に,生徒・学生に,早い段階から考えさせ
ることが推奨
• 相応の知識がない段階では考えようにも材料が足りない.
• この段階ではe-learningが威力を発揮する場面も多い
• 生徒・学生に興味を持たせることも,教師の重要な役目.
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自分で考えたことしか身に付かない2
• 『手を動かす,頭を働かせる』
• 諸外国,特に米国で定評あるテキストは,カラフルで丁寧な記述
• 何よりも例題,演習問題が数多く収載
• 大部で重い.
• 初等中等教育では,演習に費やす時間が長い.
• 生徒に考えさせる上できわめて重要な役割
• 大学でも同じ,というよりさらに必要性が高い.
• 現在の大学ではここの部分が非常に弱い.
• 学生に勉強させ,それをきちんと評価することが必要である(たいそうな
時間がかかり,教員の負担が重いのであるが).
• e-learningの役割は限定的であろう.
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自分で考えたことしか身に付かない3
• 『評価する』
• 客観的な学習内容と評価の質保証の枠組み
• 統計の世界では,「統計検定」の役割がここに.
• よい評価とは何かについては,もっと議論があってよい.
• 勘違いしている教員は,どうも多いようだ.
• 学校での評価は生徒・学生のためであり,教員の自己満足で
は決してない.
• 米国の Harvard をはじめとする超上位校では,卒業率の高さ
がセールスポイント
• かたや日本では,卒業率の高さが,ある意味,非難の的
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A Recent Article
I hear, I forgot. I do, I understand:
A modified Moore-method mathematical statistics course
Horton, N. J.
The American Statistician (2013) 67, 219-228.
Three guiding principles:
1. Students understand better and remember longer what
they discover themselves than what is told to them.
2. People master an idea thoroughly when they teach it to
someone else.
3. Effective writing and clear thinking are inextricably linked.
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おわりに
• HarvardのStatistics 100を,2014年度の2年生の統計の授業に
• 2013年度の授業でもStatistics 100の内容を取り入れた.
• 定期試験の問題を巻末に掲載(試験時間80分,電卓のみ持ち込み可).
• 学生の対応が二極分化.
• 文部科学省の規程では,授業時間の2倍の時間の家庭学修が必要.
• 1週間で授業(90分)を10科目履修した場合,1回の授業当たり3時間として単純
計算で30時間の家庭での学修が必要.
• 月~土まで授業時間以外に5時間ずつ勉強すれば達成できる.
• シラバスに家庭での学修時間が各回の授業で120分必要と書いた.
• 今回実践したHarvardの授業の家庭での学修は120分ではすまない.
• 山田・林 (2011) も,是非学生に読んで欲しい(教員にも).
• 大学教員は,小中高の教員を見習って,教育に対してさらに真剣に向
き合わなくてはいけないですね,暇なんだから.
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こういう本も
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参考文献
• 山田剛史・林 創 (2011). 大学生のためのリサーチリテラシー
入門-研究のための8つの力-.ミネルヴァ書房.
• Agresti, A. and Franklin, C. (2013). The Art and Science of
Learning from Data. Pearson Education Inc. Boston.
• Moore, D. S., McCabe, G. P. and Craig, B, A. (2009).
Introduction to the Practice of Statistics, 7th ed., W. H.
Freeman and Company, New York.
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おわりに
• HarvardのStatistics 100を,2014年度の2年生の統計の授業に
• 2013年度の授業でもStatistics 100の内容を取り入れた.
• 定期試験の問題を巻末に掲載(試験時間80分,電卓のみ持ち込み可).
• 学生の対応が二極分化.
• 文部科学省の規程では,授業時間の2倍の時間の家庭学修が必要.
• 1週間で授業(90分)を10科目履修した場合,1回の授業当たり3時間として単純
計算で30時間の家庭での学修が必要.
• 月~土まで授業時間以外に5時間ずつ勉強すれば達成できる.
• シラバスに家庭での学修時間が各回の授業で120分必要と書いた.
• 今回実践したHarvardの授業の家庭での学修は120分ではすまない.
• 山田・林 (2011) も,是非学生に読んで欲しい(教員にも).
• 大学教員は,小中高の教員を見習って,教育に対してさらに真剣に向
き合わなくてはいけないですね,暇なんだから.