rejime_yoshida_jinhuzen_2012
Download
Report
Transcript rejime_yoshida_jinhuzen_2012
腎不全(renal failure)
急性腎不全(acute renal failure;ARF)
→急性腎障害(acute kidney injury; AKI)
慢性腎不全(chronic renal failure; CRF)
→慢性腎臓病(chronic kidney disease; CKD)
共用試験レベル問題1
24時間尿量1,440ml、尿中クレアチニン濃度70mg/dl、血
清クレアチニン濃度3.5mg/dlの時のクレアチニンクリアラ
ンス(体表面積による補正なし)はどれか。1つ選べ。
a 10ml/min
b 20ml/min
c 30ml/min
d 40ml/min
e 50ml/min
共用試験レベル問題2
急性腎不全の患者で、腎前性か腎実質性かを鑑別する
のに重要なものはどれか。1つ選べ。
A 尿pH
B 尿中K濃度
C 硝子円柱
D 尿蛋白量
E 尿中Na濃度
共用試験レベル問題3
慢性腎不全で合併する病態として正しいものはどれか。1
つ選べ。
A 貧血
B 高カルシウム血症
C 低リン血症
D 代謝性アルカローシス
E 低カリウム血症
共用試験レベル問題4
多発性嚢胞腎で合併するものはどれか。2つ選べ。
A 脳動脈瘤
B 大動脈狭窄
C 胃がん
D 大腸憩室
E 肝硬変
共用試験レベル問題5
難聴と腎障害を合併する家族性の疾患はどれか。1つ選
べ。
A Wegener肉芽腫症
B Goodpasture症候群
C Churg-Strauss 症候群
D Alport症候群
E Bartter症候群
共用試験レベル問題6
現在、透析導入となる疾患で最も多いものはどれか。1つ
選べ。
A IgA腎症
B ループス腎炎
C 糖尿病性腎症
D 多発性嚢胞腎
E 動脈硬化症
国家試験レベル問題1
長期透析患者の合併症でないのはどれか。
A 不均衡症候群
B 動脈硬化
C 続発性副甲状腺機能亢進症
D 腎性骨異栄養症
E 透析アミロイドーシス
国家試験レベル問題2
疾患と電解質異常の組み合わせで正しいのはどれか。2
つ選べ。
A Sheehan症候群
ー高ナトリウム血症
B ADH不適切分泌症候群 ー高ナトリウム血症
C 原発性アルドステロン症 ー高カリウム血症
D 慢性腎不全
ー高カリウム血症
E 悪性腫瘍
ー高カルシウム血症
国家試験レベル問題3
尿中ナトリウム排泄量が低下するのはどれか。2つ選べ。
A Addison病
B 肝硬変
C 腎前性腎不全
D 甲状腺機能低下症
E ADH不適切分泌症候群(SIADH)
国家試験レベル問題4
64歳の女性。労作時呼吸困難と下腿浮腫を主訴に来院した。
【現病歴】20年前から蛋白尿を指摘され、そのときの腎生検でIgA腎症と診断
された。近医で治療を受けていたが、最近階段昇降時や買い物に行った
時に息苦しさを感じるようになった。
【既往歴・家族歴】特記すべきことなし
【現症】意識は清明。身長162cm、体重48kg。脈拍92/分、整。血圧
180/96mmHg。眼瞼結膜は蒼白。両側下肺にcoarse cracklesを認める。
下腿に浮腫を認める。
【検査所見】尿所見:蛋白(3+)、糖(−)、沈渣に赤血球40-49/HPF、血液所
見:赤血球230万/μL, Hb 7.8g/dL, Ht 22%, 白血球7,500/μL, 血清生化学所
見:総蛋白6.0g/dL, アルブミン3.8g/dL, 尿素窒素80mg/dL, クレアチニン
8.2mg/dL, 尿酸7.6mg/dL, 総コレステロール190mg/dL, Na 138mEq/L, K
6.5mEq/L, Cl 100mEq/L, Ca 7.9 mg/dL, iP 6.0 mg/dL, 動脈血ガス分析
(room air):pH7.32, PaO2 66 Torr, PaCO2 30 Torr, HCO3- 15mEq/L
この患者で適切な入院食はどれ
か。2つ選べ。
A 低エネルギー食
B 低タンパク
C 低脂肪
D 低ナトリウム
E 高カリウム
この患者の薬物療法で適切なの
はどれか。2つ選べ。
A ループ利尿薬
B アルドステロン拮抗薬
C アンジオテンシン変換酵素阻害薬
D 副腎皮質ステロイド薬
E エリスロポエチン
血液透析で直ちに改善できるも
のはどれか。2つ選べ。
A 貧血
B 高カリウム血症
C アシデミア(酸血症)
D 低アルブミン血症
E 低カルシウム血症
認定内科医試験レベル1
腎不全をきたす遺伝性疾患はどれか。2つ選べ。
A Alport症候群
B Bartter症候群
C Fabry病
D Gitelman症候群
E Liddle症候群
認定内科医試験レベル2
クレアチニンクリアランス10ml/minの患者に常用量を投与
してよいのはどれか。1つ選べ。
A シスプラチン
B アミノ酸配糖体
C クロフィブラート
D 塩酸ミノサイクリン
E スルホニル尿素血糖降下薬
腎臓専門医試験レベル1
正しい組み合わせはどれか。3つ選べ
A 先天性ネフローゼ症候群ーネフリン
B Bartter症候群ーCaチャネル
C Alport症候群ーV型コラーゲン
D 常染色体優性多発性嚢胞腎ーポリシスチン
E Fabry病ーα-ガラクトシダーゼA
腎臓専門医試験レベル2
移植腎に再発する可能性の高い疾患はどれか。2つ選べ。
A 巣状糸球体硬化症
B 糖尿病性腎症
C ループス腎炎
D 常染色体優性嚢胞腎
E Dense deposit病
腎臓専門医試験レベル3
薬剤性腎障害の組み合わせで間違っているのはどれか。
1つ選べ。
A ビスフォスフォネート製剤ー巣状糸球体硬化症
B スタチン系高高脂血症薬ーミオグロビン腎症
C プロピオチオウラシル
ーANCA関連腎炎
D ペニシリン系抗菌薬
ー間質性腎炎
E リチウム
ー膜性腎症
腎臓の構造と働き
100万個
ボーマンのう
動脈
尿細管
腹部大動脈
下大静脈
腎静脈
腎動脈
腎臓
糸球体
尿管
静脈
腎盂へ
膀胱
尿道
心臓から送り出され
た
血液が尿になるまで
1日 約6,000L
(心拍出量)
1日 約150L
(原尿)
ド
ド
ォ
ー
拡大
ド
ド
ォ
ー
ド
ド
ォ
ー
1日 約1,500L
(腎血流量)
1日1.5L
(尿量)
心拍出量
腎血流量
原
尿
尿
量
約4~5L/分
約800~1,000ml/分
約100ml/分
約1ml/分
腎臓はおしっこを作っているだけ
ではありません
1. 身体でできた老廃物を排泄
2. 身体でできた酸を排泄
3. ミネラルの調節
4. 循環する血液の量を調節、血圧の調節
あまり知られていない働き
5. ビタミンDの活性化
6. 赤血球を作るホルモン(エリスロポイエチン)を産生
腎不全とは
糸球体濾過率(GFR)で代表される腎機能の低下に特徴
づけられる病態。原因疾患とは無関係に共通した症状が
あるため広く臨床診断として用いられる。
尿の濃縮、電解質・アミノ酸の再吸収、ホルモン産生など
腎臓は多くの機能があるが、GFRの低下を伴わないこれ
らの機能単独の障害は腎不全とは呼ばない。
腎不全を診るときのチェックポイント
腎機能悪化の速度と現在の程度
原因
可逆性因子の有無の判定
臨床症状の有無、程度
検査値の異常の種類と程度
透析(血液浄化)の必要性の有無
急性腎不全と慢性腎不全
病態の特徴
腎の大きさ
正常~腫大
急性腎不全
全てのネフロ
ンで濾過が減
少する
慢性腎不全
残存ネフロン 萎縮
で濾過は増加
する
予後
多くは回復可能
回復不可能
ARFの原因と診断の歴史
1940年前後・・・戦争外傷、不適合輸血、周産期出血など
で急性腎不全が注目を集めるようになった。「虚血や腎毒
性物質」、「急激な腎機能の低下」、「尿細管壊死」、「乏
尿」、「腎機能の自然回復」がキーワード。
1970年代・・・血清クレアチニンが測定可能となり、上記以
外の多くの原因で腎機能低下することが判明し、また非
乏尿性の急性腎不全も多く発見されるようになった。
→「血清クレアチニン値や尿素窒素値の上昇で示される腎
機能の急速な低下で診断される」もので、「腎機能の急激
な低下の結果、高窒素血症、溢水、高カリウム血症など
の水・電解質異常、代謝性アシドーシスなどが出現する症
候群」
急性腎不全の診断基準
次のいずれかに該当するもの
1)血清クレアチニン値が2.0~2.5mg/dL以上へ急速に上昇
2)基礎に腎機能低下がある場合には、血清クレアチニン値
が前値の50%以上上昇
3)血清クレアチニン値が0.5mg/dL/day以上、もしくは血液尿
素窒素(BUN)が10mg/dL/day以上、の速度で上昇
急性腎不全の原因分類
腎前性急性腎不全
病態:体液量の減少を防ぐための機能として、尿細管では
Na、水の再吸収が亢進する。
尿中Na濃度≦20 mEq/L, FENa<1%
尿浸透圧(尿比重)の上昇
BUN/Cr > 10
尿所見は軽微
クレアチニン・クリアランス
CCr (ml/min/1.73m2) = UCr x V / SCr x 1.73/A
UCr: 尿中クレアチニン濃度(mg/dl)
V: 1分間尿量
SCr: 血清クレアチニン濃度(mg/dl)
A: 体表面積(m2)
GFRに近い値となるが、腎機能低下すると近位尿細管からの分泌が
増えるのでGFRより高値をとる
FENa(%) = CNa/CCr x 100
急性腎不全の原因分類
腎実質性急性腎不全
病態:尿細管機能不全のため尿の濃縮、希釈ができず等
張尿となる。
尿中Na濃度>40 mEq/L
急性尿細管壊死
(ATN: acute tubular necrosis)
正常
ATN
壊死を起こしやすい部位:近位尿細管、ヘンレの上行脚
原因:1.虚血 腎前性と同様な病態が長期間持続すると、
腎虚血により尿細管に壊死(腎移植)
2.腎毒性物質 薬剤(アミノグリコシド系抗生物質、造影剤、抗癌剤)
ミオグロビン、重金属など
ARFにおけるGFR低下の機序
臨床症状1
尿量の異常 乏尿(<400 ml/day)や無尿(<100ml/day)
で気づかれることが多い
なぜ“乏尿”か?→尿浸透圧の上限、1日の浸透圧物質の
産生量→溶質を排泄できる限界
入院中は血清クレアチニン値の上昇
非乏尿性腎不全に注意(NSAIDs、アミノグリコシド系薬剤
に多い)
臨床症状2
尿毒症症状
排泄障害
1.
高窒素血症
2.
代謝性アシドーシス:不揮発酸の蓄積
3.
高カリウム血症:カリウム排泄障害
4.
高リン血症:リンの排泄障害
5.
低カルシウム血症:高リン血症、ビタミンD活性化障害
体液量の過剰:浮腫、胸水、肺水腫(uremic lung)、高血圧、低Na血症
尿毒症性物質(uremic toxin)の蓄積:消化器症状、神経症状(羽ばたき
振戦、痙攣、意識消失)、心膜炎(uremic pericarditis)
急性腎不全の原因分類
腎後性急性腎不全
病態:尿中Na濃度は尿細管のNa再吸収の低下により>
20 mEq/Lとなる。
腎盂、膀胱の拡張がエコーにより確認できる。
急性腎不全(広義)の原因
1.腎前性急性腎不全
1)体液量減少(脱水):下痢・嘔吐・出血・火傷・利尿薬
2)心拍出量減少:心筋梗塞、心タンポナーデ、うっ血性心不全
3)腎血行動態に影響する薬物
非ステロイド系抗炎症薬、ACEI、ARB、活性型ビタミンD3
2.腎性急性腎不全
1)糸球体病変:急性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎
2)急性間質性腎炎:薬物(ペニシリン、非ステロイド系抗炎症薬など)
3)急性尿細管壊死(狭義の急性腎不全)
(1)虚血:出血、ショック、外傷後、火傷
(2)腎毒性物質:アミノグリコシド系抗生物質、シスプラチン、重金属、造影剤
(3)ミオグロビン尿症(横紋筋融解症)
3.腎後性急性腎不全
1)両側尿管の閉塞:後腹膜線維症、子宮頸がんなどの骨盤腔内浸潤
2)膀胱・尿道の閉塞:前立腺肥大、前立腺がん
診断の進め方
病歴
現病歴、既往歴、家族歴
身体所見
眼底、体重も含め
入院カルテ
服薬、造影剤、侵襲的検査の記録
温度板
血圧、体重、尿量、BUN、Crなど検査データの経時的変化
血液検査
一般的な検査に加え、血液ガス、時に各種抗体
尿検査
尿定性(沈渣)、尿定量(蛋白、NAG、α、βMG,
電解質)、尿中好酸球(細胞診)
画像検査
単純XP、腹部超音波、排泄性腎盂造影(IVP)、腎動脈造
影、MRI(アンギオ)
腎生検
腎実質性の場合
顆粒球円柱
Muddy brown cast
経過・予後
年齢、合併症、基礎疾患、治療に影響される
心・血管系や胆道系の術後腎不全では予後不良
感染症の合併も予後不良
尿量(L/day)
7
6
5
乏尿性急性腎不全
尿量(L/day)
7
6
回復期(多尿期) 5
4
4
3
3
2
1
発症期
乏尿期
2
1
非乏尿性急性腎不全
回復期(多尿期)
発症期
急性腎不全の予後
急性腎不全全体をみた場合
50%
死亡
腎機能回復せず、慢性透析 5%
腎機能不完全回復
腎機能が再び悪化
腎機能がそのまま安定
30%
5%
25%
腎機能完全回復
15%
急性腎不全の死亡率
腎以外の不全臓器数
急性腎不全単独
多臓器不全が1つ加わる
多臓器不全が2つ加わる
多臓器不全が3つ加わる
死亡率
0~15%
20~40%
50~70%
50~80%
当院ICUの成績(1991-2000年)
対象:
ICU及び透析室で1991年から過去10年間に急性腎
不全(ARF)と診断され治療を受けた、保存期及び
末期腎不全を除く成人患者(389例、男性254例、女
性135例、平均年齢58歳)。
検討項目:
ARFの治療として、血液浄化(CHFまたはCHDF)の
有無、cariperitideの使用の有無、原因疾患・病態
について死亡率を比較検討した。
ICUまたはHD室入室時の基礎疾患
大動脈瘤
心
大
弁膜症
血
管 虚血性心疾患
術
後 先天性心疾患
敗血症
23.8%
9.3%
8.3%
3.1%
18.1%
腎炎・腎障害
17.3%
その他
20.2%
0
20
40
60
80
人
100
ARF発症時の病態
敗血症
26.1%
23.5%
LOS
腎血流低下
10.3%
出血性ショック
6.7%
腎炎・腎障害
17.6%
その他
15.8%
0
25
50
75
100
125
150
人
全症例の予後
7日目死亡率
全症例
28日目死亡率
21.1%
男性
20.5%
女性
22.2%
0
10
20
30
45.2%
48.4%
39.3%
40
50
0
10
20
30
40
50
P<0.05
敗血症があると予後不良
100
28日目死亡率
7日目死亡率
敗血症の頻度
70
90
71.2%
80
70
P<0.05
60
70
50
50
60
40
40
50
40
30
30
28.8%
28.8%
18.2%
63.1%
60
P<0.01
38.0%
30
20
20
10
10
0
0
20
10
0
あり
なし
あり
なし
あり
なし
多臓器不全は予後不良
多臓器不全合併頻度
100
7日目死亡率
28日目死亡率
80
80
90
P<0.001
70
80
70
60
60
50
50
63.7%
P<0.001
70
60
50
49.6%
50.4%
40
40
40
30.5%
30
20
11.9%
20
10
0
あり
なし
26.9%
30
30
20
10
10
0
0
あり
なし
あり
なし
治療
原因に対する治療
腎前性:輸液などで循環血漿量および血圧を確保。脱水
での利尿薬投与は禁忌
腎実質性:原因となる腎毒性物質の除去・中止、原疾患
に対する治療(ステロイド、血漿交換など)
腎後性:尿路閉塞の解除、泌尿器科との連携
保存的治療
腎実質性腎不全では、酸塩基平衡、水および電解しバラ
ンスを保つことで腎機能の自然回復を待つ
急性腎不全の重症度分類
(RIFLE分類)
GFR Criteria
Risk
血清Cr 1.5倍上昇 or
GFRの25%以上の減少
Urine Output Criteria
尿量<0.5 ml/kg/h x 6hr
Injury 血清Cr 2倍上昇 or
尿量<0.5 ml/kg/h x 12hr
血清Cr 3倍上昇 or
Failure GFRの75%以上の減少 or
血清Cr > 4.0 mg/dlで急激にo.5
mg/dl以上上昇したもの
尿量<0.3 ml/kg/h x 24hr or 乏尿
無尿 x 12 hrs
高感度
GFRの50%以上の減少
Loss
4週間以上にわたる完全な腎機能の廃退
ESKD
End Stage Kidney Disease (>3ヶ月)
高特異度
AKIN (acute kidney injury
network)分類
Stage
Creatinine Criteria
Urine Output Criteria
1
0.3 mg/dl以上上昇 or
1.5~2倍に上昇
0.5 ml/kg/h以下が6時間
2
2倍〜3倍に上昇
0.5 ml/kg/h以下が12時間
3
3倍以上に上昇、または急激な0.5 mg/dl以
上の上昇を伴うCr 4.0 mg/dl以上の患者
(透析導入者はstage 3)
0.3 ml/kg/h以下が24時間
or 無尿が12時間
尿量の減少のみで判断可能:適正体液量のもとに評価
急激な(48時間以内)腎機能の低下をAKIと診断
急性腎不全時の血液浄化療法開始の指針
急性腎不全単独の場合
1 脳症、出血傾向、肺水腫の出現
2 乏尿、無尿期間3日間
3 1日2kg以上の体重増加
4 血清カリウム値≧6mEq/L
5 HCO3-≦15mEq/L
6 血清クレアチニン≧7mg/dL
7 BUN≧80mg/dL
多臓器不全における場合
十分な利尿が得られない場合
血液透析
急性血液浄化
ARFとAKI
ARFは「腎機能の低下が必須」
AKIは「腎機能低下の発生が予想されるような強い障害が
腎臓に加わった病態」
AKIの診断手順
血清Cr上昇、GFR低下、尿量低下(RIFLE分類、AKIN分類)
超音波検査
水腎症
腎萎縮
腎後性
CKD合併
FENa, FEUN
腎性
血管病変
腎前性
糸球体腎炎
間質性腎炎
急性尿細管壊死
慢性腎不全(慢性腎臓病)
年月の単位で慢性に経過し、かつ不可逆的、進行性に腎
機能が低下していく症候群
いつから慢性腎不全と呼ぶのか?
→慢性腎臓病(CKD)のstage分類で評価
慢性腎臓病
人口の5~10%が慢性腎臓病を有する。
→日本に1,330万人、成人の8人に1人が慢性腎臓病
透析の予備群であるばかりではなく、心臓や血管病の重大な危
険因子
、診断、重症度
定義
0.15g/gCrまたは30mg/gCr以上
のアルブミン尿
① 尿異常、画像診断、血液、病理で腎障害の存在が明ら
か。特に蛋白尿の存在が重要。
② GFR<60 ml/min/1.73m2
①、②のいずれか、または両方が3ヶ月以上持続する。
重症度:原因(Cause:C)、腎機能(GFR:G)、蛋白尿(アル
ブミン尿:A)のCGA分類で評価
CGAを組み合わせたステージの重症度に応じ、適切な治
療を行う。
CKDの重症度分類
移植腎
正常または
軽度低下
CKD分類には糸球体濾過率
(GFR)の推定が必須
血清クレアチニン(Cr)値は骨格筋量に応じた一日産生量
で決定されるので、体格の異なるヒトでは単純比較できな
い。
GFRの正確な測定はイヌリンクリアランス
イヌリンクリアランスによる日本人簡易式
男性:eGFR = 194 x sCr-1.094 x Age-0.287
女性:eGFR = 194 x sCr-1.094 x Age-0.287 x 0.739
MDRD:186 x Cr-1.154 x Age-0.203 (女性:x 0.763, 黒人: x 1.180
日本人への補正
男性:GFR = 0.881 x MDRD
女性:GFR = 0.746 x MDRD
日米のGFRの分布の違い
(日本腎臓学会慢性腎臓病対策小委員会・疫学調査ワーキンググループによる)
(%)
25
米国
女性
男性
20
15
10
5
0
GFR(mL/分/1.73m2)
(%)
35
30
25
20
15
10
5
0
日本
女性
男性
GFR(mL/分/1.73m2)
病態:水・電解質異常
水:尿濃縮力低下のため、むしろ脱水傾向にあり体液貯留は
末期まで通常は認められない。(ただし、糖尿病性腎症はネフ
ローゼと血管透過性亢進のため体液貯留傾向)
Na, K:比較的末期まで保たれる。しかし、調節の幅が低下して
いるので、ナトリウムの過剰負荷は高血圧を、厳しすぎる制限
や利尿薬の乱用は容易に脱水や低Na血症を招く。カリウムも
同様であるが、末期には通常高K血症となる。
Ca, Pi:III期以上になるとリン排泄障害のため、高リン血症が生
じる。腎でのビタミンD3活性化障害を生じ、腸管からのCa吸収
が低下するため低Ca血症となる。このため、副甲状腺からの
PTH分泌が亢進し二次性副甲状腺機能亢進症の状態になりや
すい。
水・電解質異常
Mg, Al:マグネシウムは腎機能低下とともに体内に蓄積し
高Mg血症となる。Mg含有薬(マーロックスや酸化マグネ
シウム)は要注意。高リン血症治療薬として使われていた
アルミニウムはアルミニウム骨症や脳症となるので使用し
ない(胃腸薬に多く含有していることがあり注意)
酸塩基平衡異常:末期腎不全では硫酸やリン酸などの不
揮発酸が体内に蓄積しH+の排泄低下、HCO3-の再吸収障
害を生じるため酸血症(アシデミア)を呈するが、通常は末
期に至るまで呼吸性代償が働くためアシドーシスを呈して
も酸血症とはならない(アニオンギャップ正常の代謝性ア
シドーシス)
病態:内分泌異常
ビタミンD
エリスロポエチン産生低下→腎性貧血→治療はエリスロポエチン製
剤の投与
エリスロポエチンの産生部位:peritubular capillary interstitial cells
作用部位:前期および後期赤芽球系前駆細胞に作用して赤芽球への
分化を促進
PTH分泌亢進
分泌刺激の低Ca血症の持続、抑制刺激の活性型VD3低下
副甲状腺における活性型VD3受容体数の減少、血清Ca濃度調節の
set pointの異常(Ca sensing receptorの異常)
治療→活性型VDおよびアナログ、Ca sensing receptor刺激薬
腎不全進行の機序
糸球体濾過亢進
進行性腎障害では、虚脱した糸球体と肥大した糸球体が認め
られるが、糸球体の肥大は残存ネフロンのsingle nephron GFR
が増加したことに起因する。この増加がさらに負担となって荒
廃をもたらす。
メサンギウム細胞増殖および基質増加
この結果、糸球体の物質透過の選択性や微小循環を障害
間質線維化
間質へ浸潤してきた炎症性白血球系細胞、およびサイトカイン
の増加が線維化を引き起こす。
わが国の慢性透析患者の推移
(2011年12月31日現在)
304,592人
導入患者の年齢・性別
70歳前後にピーク
平均年齢:男性66.3歳、女性68.9歳
5~6人に1人が日本人
透析大国
導入患者
(人口100万対)
平均
SD
最大
最小
266.7
42.7
366.8
192.1
低-高
;1-9 位
;10-19 位
;20-29 位
;30-39 位
;40-47 位
JSDT2001
メディケア(米国の65歳以上の高齢者対象公的医療保険)
における患者数と医療コスト
患者数: 2002
支出割合: 2002
5.8%
CKD
19%
CKD
コスト/患者サイズ比
糖尿病 =
1.7
心不全 =
2.3
慢性腎臓病 = 3.3
DM
25.1%
CHF
20.7%
ESRD
1.1%
患者数 (約3千万人)
メディケア全体
糖尿病(DM)
DM
CHF
41.3%
48.1%
ESRD
7.8%
末期腎不全 = 7.1
CKD+ESRD =
3.9
コスト (総額 約 $2600億ドル/年)
心不全(CHF)
慢性腎臓病(CKD)
末期腎不全(ESRD)
*USRDS special study for CMS & 2005 ADR
わが国の透析の医療費
患者1人当り年間500万円
全体で年間1兆3000億円
わが国の透析患者の生存率推移
(年代別)
%
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
1年
5年
10年
15年
20年
83
85
87
89
91
93
95
97
99
01
03
%
原疾患別生存率(1983年以降)
100
妊娠腎・妊娠中毒症
75
多発性嚢胞腎
50
慢性腎盂腎炎
RPGN
25
0
慢性糸球体腎炎
アミロイド腎
糖尿病
骨髄腫
腎硬化症
年
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
わが国の末期腎不全患者の死因
不明・その他
感染症
20.0%
悪性腫瘍
9.2
24.0%
4.8
K中毒・頓死
心筋梗塞
4.2
心不全
8.6
脳卒中
半数近くが心血管疾患で死亡している
透析患者の冠動脈病変有病率
湘南鎌倉病院の検討では・・・
虚血性心疾患の既往のない無症候の透析導入期末期腎不
全患者を対象にCAGを施行し、導入期冠動脈病変有病率
の検討
対象患者30名中16名(53.3%)に有意狭窄を認め、6名は90%
以上の高度狭窄のためPCIを施行した。
特に糖尿病患者12名では10名(83.3%)に有意狭窄を認めた。
Ohtake T et.al, J Am Soc Nephrol 16 : 1141-1148
糖尿病患者の心臓カテーテル治療の成績
心
筋
梗
塞
・
心
不
全
・
再
発
の
発
生
率
%
50
透析患者
40
30
20
非透析患者
10
腎臓病なし
0
3
6
9
12
月
Nikolsky E, et al. Am J Cardiol 2004
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
糖尿病と慢性腎臓病の合併は冠動脈のカテーテル治療
やバイパス術の成績を悪くする
総死亡
(%)
100
100
90
90
88%
80
イ
ベ
ン
ト
非
発
症
率
95%
85%
80
70
72%
60
61%
50
40
33%
30
DM (- ), CKD (- ) (n=2921)
DM (+), CKD (- ) (n=611)
DM (- ), CKD (+)(n=46)
DM (+), CKD (+) (n=30)
20
10
0
心血管死
(%)
0
1
2
3
4
5
追跡期間(年)
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
6
77%
70
イ
ベ 60
ン
ト
非 50
発
症 40
率
30
54%
20
10
7
0
0
1
2
3
4
5
6
7
追跡期間(年)
Szczech LA et al.: Circulation, 105, 2253–2258, 2002.
糖尿病は腎症進展率よりも死亡率が高い
(5097人の10年間追跡結果)
2.0%
腎症なし(第1期)
2.8%
微量アルブミン尿
(第2期)
1.4%
3.0%
蛋白尿(第3期)
4.6%
死亡
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
2.9%
腎不全、末期腎不全
(第4、5期)
19.2%
UKPDS64より改変引用
心腎連関
慢性腎臓病の発症と進行の概念
正常
死亡
合併症
脳卒中
心筋梗塞
心不全
末期腎不全
(透析)
リスク
高血圧
肥満
糖尿病
喫煙
腎障害
(蛋白尿)
腎機能低下
慢性腎臓病
蛋白尿の程度と腎不全発症率
蛋白尿 ≥3+
15
累
積 10
発
症
率
・
% 5
蛋白尿 2+
蛋白尿 1+
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
蛋白尿
蛋白尿-
9 10 11 12 13 14 15 16 17
検診後の期間、年
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
Iseki K et al. Kidney Int 63:1468-1474, 2003
尿蛋白が陽性であれば
腎機能(GFR)の低下速度は約2倍になる
14
14
男
12
GFR低下(ml/min/10年)
女
p<0.0001
12
p<0.0001
p<0.0001
10
10
p<0.01
8
8
6
6
4
4
2
2
0
0
3040- 50- 60- 7039歳 49歳 59歳 69歳 79歳
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
尿蛋白(-)
尿蛋白(+)
p<0.0001
p<0.0001
p<0.0001
p<0.0001
3040- 50- 60- 7039歳 49歳 59歳 69歳 79歳
日本腎臓学会慢性腎臓病対策委員会:疫学調査WGのデータ(平成18年)
MetSはCKDのリスク因子(久山町第3集団)
(%)
15
12
10.6**
9
6
4.8
3
0
(n) (1087)
MetS
(-)
(353)
MetS
(+)
CKD
CKD
累
積
発
症
率
(
5
年
間
)
(%)
15
累
積
発
症
率
(
5
年
間
)
14.8**
12
8.6*
9
6
4.6
5.3
3
0
(n) (740)
≦1
(347)
2
(327)
3
(126)
4≦
MetS構成因子数
** p<0.01, * p<0.05 vs MetS(-)もしくはMetS構成因子数1個以下
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
Ninomiya T et al.: Am. J. Kidney Dis., 48, 383-391, 2006.
総コレステロール値別によるCKD発症リスク
4,483人の14年間追跡結果
280以上で
2倍の危険率
J Am Soc Nephrol 14: 2084, 2003
2nd Dept. of Internal Medicine, Sapporo Medical
University School of Medicine
腎機能に及ぼすACE阻害薬の効果
%
25
P=0.0005
20
38%
/
腎
機
能
悪
化
透
析
導
入
死
亡
の
累
積
発
生
率
15
アムロジピン
/
10
ラミプリル
5
0
0
3
12
24
36 (月)
AASK study 2001
降圧効果とARB使用の相加的な効果
( IDNT )
腎
関
連
エ
ン
ド
ポ
イ
ン
ト
の
相
対
リ
ス
ク
1.800
1.200
>149
0.600
141-149
134-140
<134
Pohl MA et.al., J Am Soc Nephrol 16: 3027–3037, 2005
ACE-I, ARBは糸球体高血圧を
改善する
腎障害促進因子
ストレス(感染、手術、過労)
腎毒性薬剤
造影剤(CT、血管造影)
抗生物質(アミノグリコシド、アンホテリシンBなど)
消炎鎮痛剤(NSAID)→COX1, 2ともに腎に発現
脱水
過度の塩分制限、水制限
利尿剤
不適切な血圧コントロール
保存的治療(食事療法)
低タンパク食 0.6g/kg/day(かなり困難)←別表参照
水分摂取
乏尿期まで制限しない。等張尿(尿浸透圧300
mOsm/kg・H2O)は排泄可能
1日の溶質排泄は約600 mOsmであり、尿量としては
最低2L必要。→飲水は2,000~3,000mL
Na摂取量←別表参照、尿中排泄量を参考にする
保存的治療法〜電解質補正と貧血管理〜
高K血症
高カリウム食(果物、芋類など)、カリウム保持性利尿剤、感染などの異化亢進、
消化管出血で増悪。6 mEq/L以上や心電図変化は要注意
低Ca血症、高P血症
低Ca血症:活性型ビタミンD
高P血症:リン吸着薬、炭酸カルシウムなど
異所性石灰化予防のため、Ca x P<70に保つ
アシドーシス
HCO3-≦14 mEq/Lで症状出現、炭酸水素ナトリウム(重曹)投与するが、Na負荷 に注意
貧血
保存期からエリスロポエチンを使用、目標Hb 10~11g/dL
慢性腎不全の透析導入基準(1)
I. 臨床症状
体液貯留(全身性浮腫、高度の低タンパク血症、肺水腫)
体液異常(管理不能の電解質・酸塩基平衡異常)
消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、下痢など)
循環器症状(重篤な高血圧、心不全、心包炎)
神経症状(中枢・末梢神経障害・精神障害)
血液異常(高度の貧血症状、出血傾向)
視力障害(尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症)
これら1〜7小項目のうち3項目以上のものを高度(30点)、
2個を中等度(20点)、1個を軽度(10点)とする
慢性腎不全の透析導入基準(2)
II. 腎機能
血清Cr値(CCr)
8以上・・・・・・・30点
5〜8未満・・・・20点
3〜5未満・・・・10点
III. 日常生活障害度
尿毒症のために起床できないものを高度・・・・・・・・・・・30点
日常生活が著しく制限されるものを中等度・・・・・・・・・・20点
通勤、通学あるいは家事が困難となった場合を軽症・・10点
注: 年少者(10歳未満)、高齢者(65歳以上)、
全身性血管合併症のあるものについては10点を加算
60点以上で透析導入を考える