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D: 色等級図
2006年10月30日
単位名
学部 :天体輻射論I
大学院:恒星物理学特論IV
教官名
中田 好一
授業の最後に出す問題に対し、レポートを提出。
成績は「レポート+出欠」でつけます。
授業の内容は下のHPに掲載されます。
http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/kisohp/STAFF/nakada/intro-j.html
C.7.カラー
フラックスの勾配⇒カラー
F
フラックス⇒等級
勾配を指定する方法は幾つも考えられる:
単純にはdF( λ )/dλ、dF( ν )/dν
近接した2波長λ1 、λ2でのフラックスの比、
F( λ1 )/ F( λ2 )を用いてもよい。
λ1
λ2
天文では等級の差、すなわちフラックス比の対数表示(カラー)を採用している。
m 1 m 2 2 . 5 log
約束
F 1
FO 1
2 . 5 log
F 2
FO 2
2 . 5 log
カラー m1-m2 では、λ1<λ2
B-Vは○だが、V-Bは×
F 1
F 2
2 . 5 log
FO 1
FO 2
カラーの表現
天文でよく使われるバンド:
B=m(0.44μm)
V=m(0.55、μm)
Fo(B)=4063Jy
Fo(V)=3636Jy
1Jy=10-26W/m2/Hz
フラックス
天体
F(B
)
(Jy)
バンド
F(V)
B
カラー
V
B-V
温度
色
(Jy)
シリウス
1.493 ×104 1.356 ×104
-1.44
0.01
9400 白
太陽
1.102×1014 1.804×1014 -26.10 -26.75
0.65
5780 黄
0.45 1.50
3370 赤
ベテルギウス
663
2380
一般に、天体の温度が高いと
(1) 短波長側のフラックスが大きい。
(2) 短波長の等級が小さい。
(3) カラーが小さい
-1.43
1.95
黒体輻射のカラーと温度
このBはBバンドのB
[ B V ] BB 2 . 5 log
B ( , T )
2h
c
なので、
[ B V ] BB
2
3
B ( B , T )
B ( V , T )
このBは黒体の輻射強度(プランク関数)
2 . 5 log
F0 (V )
1
Fo(B )=4063Jy,Fo(V)=3636Jy
h
exp
1
kT
B
2 . 5 log
V
2 . 5 log V
B
F0 ( B )
h V
1
F 0 B
kT
2 . 5 log
h
F 0 V
B
exp
1
kT
3
exp
3
exp
kT V
F 0 B
2 . 5 log
ch
F 0 V
exp
1
kT B
ch
1
[ B V ] BB
14388
exp
1
0 . 545 3
4063
0 . 545 T K
2 . 5 log
2 . 5 log
14388
3636
0 . 438 exp
1
0 . 438 T K
3
exp
0 . 438 4063
2 . 5 log
2 . 5 log
exp
0 . 545 3636
1
T K
0 . 591 2 . 5 log
32850
1
T K
exp
exp
32850
exp
T K
1 . 475 2 . 5 log
39310
exp
1
T K
39310
26400
T K
26400
T K
1
1
同様にUバンド(λU=0.366μm)、Fo(U )=1790Jy を使い、
[U B ] BB
14388
1
3 exp
0 . 438
1790
0 . 438 T K
2 . 5 log
2
.
5
log
14388
0
.
366
4063
exp
1
0 . 366 T K
3
exp
0 . 366 1790
2 . 5 log
2 . 5 log
exp
0 . 438 4063
32850
1
T K
32850
T K
1
1
高温度のカラー
T→∞では、 B(T,ν)2kT(ν/c)2=2kT/λ2 なので、(レーリージーンズ近似)
[ B V ] BB 2 . 5 log
B ( V , T )
B ( B , T )
B
2 . 5 log
V
2 . 5 log
F0 ( B )
F 0 (V )
2
F0 ( B )
2 . 5 log
F 0 (V )
0 . 438 2 4063
2 . 5 log
0 . 354
0 . 545 3636
[U B ] BB
0 . 366 2 1790
2 . 5 log
1 . 280
0 . 438 4063
このように、高温極限ではカラーはー∞ではなく、有限の値でとまる。
T→0では、 Bν (2hν3/c2)exp(-hν/kT)
低温度でのカラー
B ( T , )
2h
c
B V BB
2
3
なので、(ウイーン近似)
h
exp
kT
2 . 5 log
B ( V , T )
10
B ( B , T )
B
2 . 5 log 10
V
2 . 5 log
F0 ( B )
10
3
2 . 5 log
10
F 0 (V )
ch 1
1
2 . 5 log
exp
kT
V
B
0 . 438 3 4063
2 . 5 log 10
2 . 5 log
0 . 545 3636
0 . 591
10
F0 ( B )
10
F 0 (V )
14388 1
1
e
0 . 438
T ( K ) 0 . 545
14388 1
1
e
0 . 366
T ( K ) 0 . 438
7002
T (K )
U
B BB
0 . 366 3 3636
2 . 5 log 10
2 . 5 log
0 . 438 1790
1 . 475
7016
T (K )
10
[B-V]BBも[U-B]BBも∞に発散する。
C.8. 輻射補正
F= ∫F(λ)dλ=共通
Vバンド
logλF(λ)
1
B型
A型
暗い
A型 やや明るい
F型
M型
明るい
暗い
B型
0
F型
M型
-1
-0.5
V
0
logλ(μ)
同じ総フラックス同士でV等級をくらべると、F3V型星が最も明るい。
そこで、V=0のF3V星の輻射等級mBOL=0と定めた。
すると、V=0の星のmBOLは全て0より小となる。mBOL(V=0)=BCと呼ぶ。
輻射補正BC (Bolometric Correction)は、下式で定義される。
mBOL = mV+BC
ここに、
mBOL=見かけ輻射等級 Apparent Bolometric Magnitude
=-2.5log[∫F(λ)dλ/FoBOL]=-2.5log(F/FoBOL)
mV=見かけV等級 Apparent V Magnitude
FoBOL : mV=0のF3Vの星の全フラックス=2.5 10-8 W/m2
BCは、mV とカラー[B-V](か温度T程度)の情報しかない天体の全フラックス
を推定するために使用される。
黒体輻射に対する輻射補正BC
mBOL=mv+BC
mBOL=-2.5log[∫F(ν) dν/FoBOL]、 mv= -2.5log[Fv(ν) /FoV]
ただし、 F(ν) =BB(ν、T) ∫F(ν) dν =(σ/π)T4
Fv(ν) =3636Jy、 FoBOL =2.5 10-8 W/m2
BC=mBOL-mv
= -2.5log [∫F(ν) dν/FoBOL] + 2.5 log [Fv(ν) /FoV]
B V , T Fo , BOL
2 . 5 log
B , T d Fo , v
2 . 5 log
B V , T
Fo , BOL
B , T d
Fo , v
3 . 973 10
B V , T
m 3
B , T d T
19
4
1
1 . 4388
exp
T
m 4
1
8
4
1 . 805 10 T 4
Jy
W /m
2 . 388 10
2 . 616
exp
T4
20
1
Jy
2
Fv(ν) =3636Jy、 FoBOL =2.5 10-8 W/m2 を代入して、
BC 2 . 5 log
2 . 388 10
10
2 . 616
exp
T4
20
2 . 5 10
8
8
1 . 805 10 T 4 3636
1
4
2 . 5 log
9 . 096
10
T 4 exp
4
2 . 616
T4
1
矮星のTeを上式に代入して求めたBC(BB)を加えた表は以下のようになる。
Sp
Te
O5
B0
A0
F0
G0
K0
42,000 30,000 9,790 7,300 5,940 5,150
M0
M5
3,840 3,170
BC (star)
-4.4
-3.16
-0.30 -0.09
-0.18
-0.31
-1.38
-2.73
BC(BB)
-3.68 -2.73
-0.34 -0.12
-0.14
-0.26
-0.89
-1.64
M型、O型で 黒体輻射より大きい補正が必要とされるのは、それぞれのスペクト
ルピーク付近(M型では近赤外、O型では紫外領域)でBBより大きいフラックスを
持つことを示唆している。
輻射補正
BC(star)
BC(BB)
0
-1
BC
-2
-3
-4
-5
3.5 3.6 3.7 3.8 3.9
4
4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7
log T
D.1.二色図 (Two Color Diagram)
二つのカラーを縦軸、横軸にしたグラフを二色図と呼ぶ。その大きな特徴は、減
光が無いとき、2色図は距離に依らないことである。
左図ではU-B
の上がマイナ
スになっている。
天文の習慣の
1つである。
B-Vは黒体輻
射と似て、温度
が下がると大
きくなる。
U-Bは1000K
から7000Kの
間は温度が下
がるとマイナス
方向に小さくな
る。
モデル t=107 yr Z=0.02 (Bertelli 1994)
AQ 2002 主系列星
K-M型主系列星
K-M型赤色巨星
D.2.色等級図 (color magnitude diagram)
縦軸に等級、横軸にカラーのグラフを色
等級図と呼ぶ。
等級
縦軸:log(L/Lo), logF
横軸:有効温度Te、log[F(ν1)/F(ν2)]
などをとる場合も多い。
カラー
HR図と呼ぶこともある。
HR図と呼ぶこともある。
縦軸が示量性、横軸が示強性なので、天体の大きさ(R,L,M、Vなど)と
強度(T,ρ、vなど)を論じるには都合がよい。
二色図が示強性のカラーだけの図でしたがって距離に依存しないのに対し、
色等級図は縦軸が示量性で距離に依存する点に注意。
色等級図の例
(a) 最初の色等級図
縦軸=絶対等級
横軸=スペクトル型
(B) ヒッパルコス衛星が
観測した太陽近傍星
右下から斜めに延びるのが
主系列。主系列の中ほどか
ら上に赤色巨星枝が立ち上
がっている。
この赤色巨星枝は老齢の
小質量星であることが分か
る。枝分かれ点がターンオ
フである。M=-1、V-I=1付近
の塊が
ターンオフの先に主系列が
伸びているのは星形成が継
続して続いた証拠である。
(C) バーデの窓(Baade’s Window)と太陽近傍星のレッドクランプ星
バーデの窓
縦軸は見かけ等級 I
太陽近傍
縦軸は絶対等級 MI
バーデの窓のレッドクランプは太陽近傍よりも赤い。これは平均メタル量が高い
ためと考えられる。両者の等級差が距離指標(Distance Modulus)である。
Paczynski/Stanek 1998 ApJ 494, L219-222
(D) 銀極(左)と銀河中心(右)の2方向での赤外色等級図
銀極J-K=0.4で垂直に立ち上がるのはTHICK DISKに属する色々な距離の
レッドクランプ星。
銀河中心方向の色等級図は解釈が難しい。
(0, 0) 10' 16965
4
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
5
6
7
8
9
K
K
b=90 60' 3664 stars
10
11
12
13
14
15
16
-1
-0.5
0
0.5 J-K
1
1.5
2
2.5
3
-2
-1
0
1
2
3 J-K 4
5
6
7
8
9
D.3. 星間減光
D
F=L / (4πD2)
m=M+5log(D/10pc)
D
F=L exp(-τ)/ (4πD2)
m=M+5log(D/10pc)+A
τ
A=2.5(loge)τ=1.086τ
A=星間減光(Interstellar Extinction)と呼ばれ、星間空間中の微小な
固体微粒子が原因と考えられている。
星間減光の波長による変化
λ
A(λ)/A(V)
λ
A(λ)/A(V)
λ
A(λ)/A(V)
250
0.00042
7
0.020
0.28 1.94
100
0.0012
5
0.027
0.26 2.15
60
0.002
3.4
0.051
0.24 2.54
35
0.0037
2.2
0.108
0.218 3.18
25
0.014
1.65 0.176
0.20 2.84
20
0.021
1.25 0.282
0.18 2.52
18
0.023
0.9
0.479
0.15 2.66
15
0.015
0.7
0.749
0.13 3.12
12
0.028
0.55 1.00
10
0.054
0.44 1.31
9.7
0.059
0.365 1.56
9.0
0.042
0.33 1.65
0.12 3.58
Log(Av/Aλ)
0
星間吸収曲線
星間減光曲線
-1
-2
-3
-1
0
1
log(λ)
2
D.4. 赤化 (Reddening)
カラーエクセス
E(B-V)=AB-Av=0.31Av
E(U-B)=AU-AB=0.25Av
=0.81E(B-V)
0
V
色等級図
0
Av=0
1
Av=0
(U-
V)
0.5
二色図
2.0
1
1.0
4.0
1.5
2
0
(B-V)
0.5
1
2
0
(B-V)
1
2
赤化 (reddening) = E(X-Y) = AX-AY
E(B-V)=AB - Av は最もよく使われる。
減光と赤化により、色等級図は平行移動を受ける。
0
(B-V,V)図での移動
の方向は、
AB/Av=1.31より、
Av/E(B-V)
V
5
=1/0.31=3.2
で決まる。
10
Av=2 の減光を受
けたHR図の変化
15
-0.5
0
0.5
1
B-V
1.5
2
2.5
例:銀河系中心方向の吸収I)
銀河中心(Sgr A*)の座標
銀経=l=-0.054°
銀緯=b=-0.046°
(l,b)=(0,0) :赤経=α=17時45分37.2秒 赤緯=δ=-28°56′10″.2
(分点2000)は、銀河中心ではない。
l=90°
Sagittarius arm
l=180°
l=0°
太陽
銀河中心
星間雲
アンタレス
GC方向
銀河中心3°四方Bバンド
銀河系中心方向の吸収(I
I)
銀河中心30′四方Bバンド
銀河中心30′四方
銀河中心30′四方 Hバンド
Jバンド
6
AK/(AH-AK)=0.108/(0.176-0.108)=1.64
Av=14
K
銀河中心方向領域17の
星間減光
8
10
12
吸収の少ないバーデウィンドウで
決めた赤色巨星枝
Reddening Free Parameter
Q1=(U-B)/ 0.25 -(B-V)/0.31
Q2=(U-V)/ 0.56 -(V-I)/0.521 1
Sp(V) U-B
B-V U-V V-I
Q1
Q2
O5
-1.19 -0.33 -1.52 -0.47 -3.70 -5.51
B0
-1.08 -0.30 -1.38 -0.42 -3.35 -1.66
A0
-0.02 -0.02 -0.04 0.00 -0.02 -0.07
A5
0.10 0.15
0.25
F0
0.03
0.33 0.47 -0.85 -0.31
G0
0.06 0.58
0.64 0.81
-1.63 -0.41
G5
0.20 0.68
0.88 0.89
-1.39 -0.14
K0
0.45 0.81
1.26 1.06
-0.65 0.22
M0
1.22
1.40
2.62
2.19 0.36 0.48
M5
1.24
1.64
2.88
3.47 -0.33 -1.52
0.30
0.22 -0.08 0.02
0
-2
-4
-6
-4
-2
0
Reddening Free Parameter
QJHK=(J-H)/ 0.108 -(H-K)/0.068
QHKL=(H-K)/0.068-(K-L)/0.057
4
M0
Sp(V) J-H H-K K-L QJHK QHKL
O9
-0.14
-0.04 -0.06 -0.71 0.46
B5
-0.06
-0.01
A0
0.00
0.00
0.00
0.0
F0
0.13
0.03
0.03
0.76 -0.09
G0
0.31
0.05
0.05
2.14 -0.14
G4
0.33
0.06
0.05
2.17 0.01
K0
0.45
0.08
0.06
2.99 0.29
3
-0.04 -0.41 0.55
0.0
K7
0.66
0.15
0.11
3.91 0.28
M0
0.67
0.17
0.14
3.70 0.04
M1
0.66
0.18
0.15 3.46 0.02
M3
0.64
0.23
0.20
2.54 -0.13
M6
0.66
0.38
0.36
0.52 -0.73
K0
QJHK
2
G0
1
M6
0
-1
-0.8
A0
O9
-0.4
0
QHKL
0.4
レポート問題D
出題10月30日
提出11月6日
レポートには、問題番号、学生証番号、学科、学年、氏名を書くこと。
D.1.下の表には、主系列星のカラーB-Vと絶対V等級が示されている。
スペクトル型の最後のVは主系列星、IIIは巨星の意味である。
星のスペクトルの形が黒体輻射であると仮定して、表面温度T,光度L,
半径Rをケルビン(K),太陽光度(Lo)、太陽半径(Ro)単位で求めよ。
ここに、太陽光度 Lo=3.85×1026 W, 太陽半径 Ro=6.96×108 m
λ(B)=0.438μm
λ(V)=0.545μm
F(B,0等)=4063 Jy
F(V,0等)=3636 Jy
B5V
A0V
F0V
G0V
K0V
M0V
G5III
K0III
M0III
M5III
B-V
-0.17
-0.02
0.30
0.58
0.81
1.40
0.86
1.00
1.56
1.63
MV
-1.2
0.65
2.7
4.4
5.9
8.8
0.9
0.7
-0.4
-0.3
D.2. 上で得た結果から、縦軸をlog(L/Lo), 横軸をlogT(K)とするHR図を作れ。