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大気海洋物質科学 I
授業内容:
大気中の物質はその物理化学的特性に応じて、地球の放射収支、大気質、物質循環の
担い手として地球システムに多大な影響を与えている。本講義では、まずこれらの大気中
の物質の役割を概観し、また大気化学反応の基礎を学ぶ。そして成層圏・対流圏の大気
化学の中心であるオゾンについて、そのグローバル分布と、その分布を支配する放射、
輸送、光化学反応、除去過程について論ずる。またオゾンに関連する各種のラジカル成
分についても概説する。大気中の気体物質の観測手法についても触れ、大気環境変動
研究に関する最新の知見を概説する。
シラバスには上のようにあるが、
都合により、順序として
1.大気の基本構造と対流圏における輸送
2.大気の放射過程(放射収支、温室効果)
3.成層圏における輸送
4.化学反応の基礎
5.成層圏オゾン(化学反応、極域オゾン、経年変化など)
6.対流圏オゾン(化学反応、グローバル収支、都市大気化学)
7.対流圏ラジカル(窒素酸化物、水素酸化物、VOC、ハロゲン)
8.対流圏硫黄化合物
9.エアロゾル
10.大気環境問題と今後の大気化学、レポート課題説明
0章:始めに(大気の基本的な構造と物質)
図は、圧力,密度、および温度で、地球の標準大気と呼
ばれる全球平均の鉛直構造を示している.
圧力p,密度ρについて高さとともに exp( -z/H) 的に減
少、 静力学平衡と理想気体から
p
p
p
 g  
g  
z
RT
H
地表は約290Kになっていて,それから温度勾配約6.

5K/km程度でほぼー様に減少
T(z)=T(0)−Γz
約11kmまで(全球平均で)
<ー 対流圏
この領域では水とからんだ対流が起こる
11〜20km はほぼ等温的な層(安定な大気)になって
いる.11kmあたりからを成層圏ー>より高い層は高度と
ともに温度上昇(オゾンによる大気加熱)
対流圏と成層圏の境界は対流圏界面と呼ばれる、2℃
/km以下の温度減率がおこる最低のlevelが対流圏界
面:極域では約9km,赤道域では約16km
約50km〜約85kmは中間圏、高さとともにゆるやかに
温度降下
高度
物質的に大気をみると:
主成分の窒素、酸素については、気象学ではよく混ざっ
ているとして1つの流体として取り扱う
ー>運動の様子(風)を議論
水蒸気の凝結;気象学のメインテーマであろう
化学物質は幾つもあって、また観測結果もいっぱいあっ
て、、、ですが;ここの話は
大気の成分
スケールの大きな運動の様子を概観して、
流体粒子や放射性物質が輸送の確認として使われてい
る
温暖化物質として重要である、寿命の長いCH4
比較的寿命の長い物質であるCO
最後に大気汚染の代表としてのオゾンを例示する
1章、3章では全球的物質輸送の問題をあつかう
CH4
10-6(ppmv)
大気微量成分の平均的な高度分布
成層圏オゾン(に関わる輸送については3章で)
第1章:輸送方程式と化学物質
1−1:輸送方程式
運動にからむ基礎方程式を述べることにします。詳しくは
Holton の An Introduction to Dynamic Meteorology 等
を参照。式だけ書いておきます.連続体近似として、流体
力学の方程式によって流体の運動を議論する。
夏季の海面気圧場(hPa)を示す、高気圧や低
気圧が場として表現
基本の式が数個である
ー>大気を連続媒体と見なして場の変化の方程式を作る。
そこでは,大気の運動を表す流体の速度が必要である。こ
れは v = v ( x, y, z, t ) と表され、場の関数である。さらに
2つの熱力学量が必要である。例えば圧力 p = p ( x, y, z,
t ) と密度 ρ = ρ( x, y, z, t ) が必要である。この5つの量で
流体の状態は完全に決定されると書いてある。それで例え
ば温度 T = T ( x, y, z, t )は状態方程式から決まる。
高度100km程度までは空気はよくまざっていて、1つの密度、
圧力であらわす。
ー>オゾンなどはあとで別にあらわす
2002年9月
25日の全
オゾン分
布
大気化学成分の1つであるオゾンなども場の関数
として現すとわかりやすいかも?
2002年は変動パターンが普段と異なる
具体的な方程式
輸送(運動)にからむ基礎方程式を書いておきます.
オゾンなどの化学成分の輸送としては、成分の連続の式が増えていく
(右図は全オゾンの場の1例)
連続の方程式(大気全体)
(1)

 t
 div (  v )  0
運動方程式(東西、南北、鉛直方向)は種々の近似をして以下のよう
(2)
(3)
du
dt
dv
dt


uv
a
u
2
a
tan   
1 p
tan   
dw
dt
 2  v sin   Fx
 x

1 p
1 p
 z
2003年9月11日のオゾンホー
ル(全オゾンの分布)
 2  u sin   Fy
 y
 g  Fz
現状の、全球をあつかう大気大循環モデル(GCM)では静力学平衡になっている
p
(4)
z
  g
理想気体(大気)の状態方程式、 R = 287 J / kg / K
熱力学の方程式:
cpは定圧比熱 ( = 1004 J / kg / K )
cp
断熱運動では温位が保存される。
変形して->
水蒸気の式(混合比の保存)
cp
d ln T
dt
dT
p   RT 

dp
  T(
p0
dt
 R
dq
dt

dt
d ln p
dt

d' Q
(6)
dt
)
R / cp
p
 cp
 source
d ln 
dt

 sink
d'Q
Tdt
RT

(5)
1−2:化学物質輸送

について
例えば、Muller and Brasseur(1995)から
個々の大気中物質(例えばオゾン)の体積混合比
D

 v   0
t
 0
Dt
混合比が保存するように運動している式となる(分子拡散は無視)
この式に、化学変化として右辺に生成/消滅の項を付け加えることで、物質循環を議論すればいいであろう。
生成/消滅は化学反応として、あとで議論される。
大気へのソースとしての、地表からのemissionや地表へのdeposition
輸送問題としての1つの方法:
直接表現できるスケールの運動とそれからのずれの運動が、分離されてよく議論される(例えば、通常のGCMでは、対流
は直接表現されていない)。
     '
のような形を仮定して、表現できるスケールの運動とずれを区別する。上式に代入して、表現できるスケールの
変動の式を導くと、

t
  v    

x
 ' u' 

y
 ' v' 

p
' '
のような式が導かれる。この右辺のずれの積の項をどのように評価するか? が問題ごとに変わる;
一番簡単な例は分子拡散をまねて、乱流による輸送を拡散の形に仮定するものがある。
結果的に、ある場所の物質の変化の式は
  
  
  

 
 
 



  t advection
  t eddy
  t chemistry
t
オイラー的時間変化 =
輸送の詳細
+化学過程
輸送を分けてみると:
前ページの方法を全球的な物質輸送の問題に適用すると、以下のようになるであろうか。
(小規模現象の輸送を扱う時は対流まで陽に表現で、乱流による輸送をパラメータで表現)
オイラー的、その場所の物質変化=輸送+化学過程で
右辺の輸送としてはスケールで分けて ー> 大循環 + スケール小の対流など + 乱流輸送
大循環による輸送はたとえば、大循環モデル結果の風を用いたり、
ECMWFデータのように、モデルに観測データを同化して求めたものでもいいであろう。
例:我々のところで物質循環に用いている
大気大循環モデルは
T42(全球的な波の数) 2.8x2.8度程度の分解能の粗いモデルである。 ( 約250km )
低気圧などは、まあ分解可能であろう; 数千キロだから直接表現
惑星波動
これもいい 10000km
上記の運動は表現可能 大循環モデルで explicit にもとめるー>その風でモノが流れる
メソ現象は表現が出来ていない
T106では100kmの分解能になる メソα現象が表現される 化学気候モデルにはほとんど未使用、ECMWF
データのような風を用いた輸送モデルでは、最近T106くらいが使われるようになった
対流(別の項で) 対流時間 数時間でおこる
ー>あらいモデルでどのように表現するか?
乱流輸送
乱流理論を使いパラメータ表現、モデル結果のみ
水平輸送
鉛
直
輸
送
1ー3:大循環のようす
大循環のようすを説明するのが大気大
循環論(熱輸送のみでなく、角運動量、
水の循環も含めて)だろう
1月平均、
上
層
300hPa の
高度場、
ほぼ地衡
風バランス
それぞれがconsistentなように決まる
それぞれの保存則があって
(角運動量、エネルギー、水)
<ーすべてはお互いに、例えば速度
場などを通じて関係している。
ー> その中で:赤道域と中高緯度の
運動の振舞いが異なるよう。
赤道域は水平収束的なものが特色の
よう
中高緯度は水平的な渦が特色のよう
<ー
(気象学で詳しく語られている)
月平均された地表面気圧と風の概要
東西に平均した子午面循環と擾乱
熱帯域で上昇流(場所は季節で移動)、30
度あたりは下降流なるHadley循環
中緯度高低気圧の様子
Hadley 循環やRossby循環(傾圧波動が卓越)
Walker循環のように熱帯の東西移流や
中緯度の惑星波動による水平移流など
対流の集合
北半球
東西に平均した子午面循環
対流、等温位面、流体粒子の流れの模型図
結果としての、緯度高度温度図
緯度/高度を決めて,東西方向に地球を—周した平均の
図:93年の1月の平均を示す。
圏界面
実線が温位θを、点線が温度である。
緯度で異なる対流圏の高さ
d
dz
図から想像できるように、
は成層圏で大き

2と呼ばれる
2
い(より安定)、
N は浮力振動数
g
ln 
z
対流圏/成層圏の区分の概念図
ー>成層圏での輸送は3章で

熱帯域と中高緯度とは力学過程が異なる様相
物理的には温位の方が力学的に断熱で保存則をみ
たす点で重要か
ー> 力学を考えると
d  / dt  0
断熱運動のとき、
とすれば流体は等
温位面を動きやすい?
図 ー>中緯度で対流圏と成層圏がcrossしている。

Holton et al. (1995, Rev. Geophys.)から
一方、熱帯対流圏では
d
dt
が重要
Q
水の循環
水的には赤道域の水蒸気が極方向へ移流される?
対流が決定的 ー>あらいモデルでの表現
降雨、蒸発、水蒸気輸送の緯度変化
全球の降雨のようす、北半球冬
東西に平均した水蒸気の南北高度分布(g/kg)
1−4:手法(オイラーとラグランジュ)
大きなスケールの運動による輸送はたとえば、大循環モ
デルを用いた風や、ECMWFデータ(モデルに観測
データを同化して求めたもの)の風で表現されるであろ
う。
オイラー的な方法では
Emanuel and Pierrehumbert,1996, NASA ASI : 315Kと
330Kの等温位面上の水平的流体粒子の動き、初期条
件:3月1日から10日たったあと。
315
 
  v   
t
の式を直接積分することになる。
例:GCMで再現された6月での水蒸気fluxと降雨(水蒸
気は大循環で流されている。オイラーの式を解いた結果。
ただし、降雨の方は対流のパラメータが導入されている)、
Kawatani and Takahashi, 2003, J. M. S. J.
320
南北には拡散的か
350
別の方法:流れにのって、空気粒子を追いかけてみ
る、Lagrange的方法がある。
等温位面:成層
圏-->対流圏に
320
傾圧波動にともなう流体粒子の3次元的動きをみてみよう:
木田, 1977, J. M. S. J. (水過程は入っていない)
30日後
10日後
200mb
10日後
200mb高度の、様々な緯度にモノをおいた例:
全体的には下降している(重心の運動)
20日後
オイラー平均子午面循環
また45-60度あたりのは南北に大きく広がっている、
これは傾圧波動による移流のせいである。だいたい
等温位面をうごいている、水がないので、等温位面を
crossするように動く。
どこから来たかを求める:
下図は、ある期間のCOの濃度分布、右図はどこから
きたかの起源の場所を決めるため、粒子の動きを
Lagrange的にみたもの
Blake et al.
高度別
CO
9.2km
4.2km
Aircraftによる観測、96年、8月ー10月の観測、PEMTropics A
1.5km
10日前まで;高度ごとにはいろいろな所から来てい
る、中層はアフリカから
1−5:大気大循環モデルの中の対流による輸送に
ついて
対流は細かいスケールでおこっている。その対流
は水のみでなく、微量成分の鉛直輸送で非常に重
要である。
図は2次元の対流が表現可能なモデルによる、DMS
(硫化ジメチル、(CH3)2S)の鉛直分布を示す。中層の多
いところは対流により輸送されていることを示す。Wang
and Prinn, 1998, JGR
平均的な流れによるものに加えて、
 
t
 

p
の右辺を評価することになる。
' '
1つのパラメータ例:
M 

Mass flux を
と定義する。
質量flux だから M≡ -ω/g〜ρw
Yanai et al. (1973)
これを2つにわける(雲によるものと周りの平均)
˜
M  Mc  M
は積雲によるMass flux である。
境)のMass fluxである。
Mc
ー> 一方、GCMでは対流の効果をパラメータと
して扱っている。
すなわち、
水平面での雲のFractionを
でこれは小さい値とする)
M c   
と表される。
c
はまわり(環
M˜

とすると(対流雲の部分
˜  (1   )
˜
M
結果として、
物質の大きな領域の平均は
 
˜
   c  (1   ) 
 は小さいから、
で、
であろう。
t
˜
  
(環境の値)とおいてよい
˜)
  '  '    c (  c  
˜ )  '  
'  (  c  
c
となる。だから

p
˜  ˜ (    )   M

c
 

˜)

M c (  c  
t
p
p
˜
M c  c  

p
Mc  Mc
  Le  M c

p
˜

 はエントレインメント率、
q
t
蒸発は
ある。
雲についての質量保存から

Mc  0
p
はデトレインメント率と呼ば

れる。
また、雲にともなう物質の保存から
˜ 
(    ) 

Mc  c  0
p

p

p
s˜
˜s
のような形になる。右辺の1項は蒸発の項である。
c はcondensation
e
は蒸発
次に雲のバランスを考える:(実際は個々の雲である
が区別しない、1つを代表として)
 雲の式を使って形をかえる
  
˜ 
今の場合、平均的な物質変動が普通のGCMでは表現で
きない雲対流によるMass fluxによる移流できまる。
 L( c  e)  Lc  (    ) s˜  ˜s (    )  M c

p
s



 L (c  e) 
M c sc  s˜
Mc  Mc
s˜
t
p
p
p
˜)
  '  '  Mc (  c  


温度(乾燥静的エネルギー s= cpT+gz)と水蒸気につ
いては、
また、
だろうから
 (    ) ˜   M c
 M
c
 ~
~*  l  q
~)
q   (q
p
e   lと仮定すれている。ここで
l
は雲水量で
大問題は雲対流のMass fluxを如何にきめるかであるが
(対流のパラメータ化)、
−>例えば、Arakawa and Schubert(1974)
−>オゾン輸送の例を最後に
1−6:輸送の確認
東西輸送:
東西輸送の時間スケール
3x107m/20m/s =1.5x106s=17days程
度
東西平均の東西風の様子
<ー南北の温度差と温度風の関係で
上層の西風により物質が東に流されてい
る様子、7月平均、38Nにおける 222Rn
(e-folding timeは5.5日)分布、ソースは
土壌
JJA(夏)平均の、東西風の緯度高度図
Jacob and Prather, 1990, Tellus、気象場は
GISS-GCMが使われている
夏のアメリカ西大陸上dry convection が大
事と書いてある
JJA、200hPaでの東西風分布
ー>観測されたある場所の鉛直分布などで
確認される
南北両半球の交換について
850hPa
地表面気圧と対応した流れ
1月に東西一様な仮想的物質をまぶし、赤道域に南北勾配を与え、 その後、6月 と12 月でどんなふうに広がるかをみた
もの、勾配の大きいところが移動するが、長い間存
その後、流れによってどのように物質分布が変動するかをみたも
在している、半球交換時間は1年と評価されている。
の、1月の変化、Taguchi, 1993, JMSJ
南北輸送と鉛直輸送
Muller and Brasseur, 1995, JGR
大規模場による輸送(ECMWFデータから)および水
平拡散 ー> 南北輸送の確認
鉛直輸送の確認:鉛直拡散と対流輸送(パラメータ
化は別方法)の効果が入っている。
ITCZ, 半球間の交換時
間は1.1年と書いてある
Kr85(寿命15年)の 表面での緯度分布(dashが大西洋
観測、実線がモデル結果(30W)):北半球が多く、南半
球はすくない
夏の大陸上のRadon222(半減期3.2日)の鉛直
分布
1−7:化学物質の全球分布
対流圏の中で運動的には
対流を伴うHadley循環や傾圧波動なるものが働いており、
それに化学過程などが絡む問題 -> 物がどのように存在
観測が行われている <ー> モデルによる説明研究
物質はいっぱいあって、、、
<ー
ここでは比較的多い物質を主に議論する
1:メタンについて
CH4は0.5 W/m2の放射強制力
CO2は1.5
Hydrocarbon=0.5 indirect= -1.5対流圏
オゾンも0.5W/m2
ー>ここでは物質分布について
対流圏微量成分
IPCC 2001
メタンの反応例(NOxが多い):Crutzen and Zimmermann, Tellus, 1991
CH4 + OH
-> CH3 + H2O
CH3 + O2 + M -> CH3O2 + M
CH3O2 メチルぺルオキシド
CH3O2 + NO -> CH3O + NO2 CH3O メトキシ
CH3O + O2
-> HCHO + HO2 CH2O ホルムアルデヒド
NO + HO2
-> NO2 + OH
NO2 + hv
-> O + NO
x2
O + O2 + M
-> O3 + M
x2
---------CH4 + 4O2 + hv -> 2O3 + HCHO + H2O
CH4寿命は10年程度
他のも含めて全体emissionとして
ソースとしてのメタンemission:
状況変化でsourceが変わりー>分布という問題
CH4
485 Tg/y
-397
emission
photo destruction
(計算結果)
deposition
-8.5
-------------------------------------------------------79 Tg/y -> 1.7% /y 程度の増加
emission 内訳(かなり幅があり)
Tg/y : 大気化学入門、Jacob から
東西に平均したemission
幅 ー> 評価の問題
Muller and Brasseur, 1995, JGR
メタン分布(モデルの結果):
地表のCH4: 6月
Muller and Brasseur(1995)
2ppmv : 北アジア?
むしろインドにピーク
最大 rice paddies, cattle
ヨーロッパ、東アメリカ
waste disposal
coal mining, gas
leak,
別のモデルである、NCAR気候モデルをベー
スにしたMOZARTのメタン分布
(South Poleからのずれ)
T=180days,
sigma=0.98
MOZARTのメタン放出
Hauglustaine et al., 1998, JGR
Brasseur et al., 1998, JGR
2: OHについて
OHは少ない量ではあるが、化学反応で非常に重要な物質であるので、見ておこう。
東西平均したOH分布、7月
O3 + hν(310nm以下)-> O(1D) + O2
H2O + O(1D) -> 2OH
モデル結果:地表のOH、7月3日、6GMT
H2Oがメインのソースであり、光解離で作られるので、日のあたり具合でおおよそ決まっているよう。
3:COについて
COの破壊反応について:Crutzen and Zimmermann,
Tellus, 1991
CO + OH
-> CO2 + H
H + O2 + M -> HO2 + M
HO2 ヒドロぺルオキシド
NO + HO2
-> NO2 + OH
NO2 + hv
-> O + NO
O + O2 + M -> O3 + M
----------------------------------CO + hv + 2O2 -> O3 + CO2
CO emission分布、7月:
Brasseur et al., 1998
COの化学的寿命は
CO+OH (k=10-13 ) x106 =10-7 100日程度
MAZARTの見積もりでは
emission: 1219
Tg-CO/yr
光化学生成:881 -> total source :2100
光化学破壊:1730, dry=190 net sink=1920
chemical 生成:
(例:メタン酸化ー>ホルムアルデヒドー>CO)
CH2O + hν ----> H + CHO (≦350nm)
H + O2+M ----> HO2 + M
CHO + O2 -----> CO + HO2
---------CH2O + 2O2 ----> CO + 2HO2
Sudo et al., 2002, JGRでは
emission: 1227
Tg-CO/yr
光化学生成:1574 -> total source :2801
破壊:2610, dry=133, net sink=2743
STE= 191
結果としてのCO分布:
時間変化:冬は
破壊されないか
ら多い、春に最
大
1月の表
面のCO
分布
○は観測、
□がモデル
南半球は9、1
0月ころ最大
7月のCO
熱帯域のCO分布の1例:
1994年の10月の観測でのCO
分布(MAPS)、この年はENSO
があり、バイオマスバーニング
が多かったよう
一方のモデル結果は、この場
合少ないCOを再現している。
ー>emissionの評価、および
この年の気象場ではない(モ
デル気候値)
3-10km(500mbがpeak)のCO
現状のモデルのCO結果:
世界のいくつものモデルを集めて、モデルの
performanceをみるー>さらに予測
Grey=no data
Shindell et al.
Global量(ppbv)
衛星観測
モデル平均
上図はMOPITTと呼ばれる衛星観測の結果で2000年の4月と10月の500hPaでの分布、下図は多くのモデル
の平均で見積もられたCO分布。モデルの北半球でのunderestimateが目立つ
-> COのemissionがロシアで増えているのでは、と言われている。
補足: CHASERのNOXについて
昼間のNOの観測との比較
1−8:オゾンについて
Hauglustaine et al., 1998, JGR
成層圏か
らの流入
対流圏オゾン化学の略図
7月の地表オゾンの結果例:主に化学
反応により決まる
オゾン生成の1例(前出):
CH4 + OH
-> CH3 + H2O
CH3 + O2 + M -> CH3O2 + M
CH3O2 + NO
-> CH3O + NO2
CH3O + O2
-> HCHO + HO2
NO + HO2
-> NO2 + OH
NO2 + hv
-> O + NO
x2
O + O2 + M
-> O3 + M
x2
---------CH4 + 4O2 + hv -> 2O3 + HCHO + H2O
1月の地表オゾン
成層圏からのオゾン流入
左図は1つのイベント例であるが、このよう
なものの集積の結果として、
中緯度高低気圧の様子
MOZARTの結果、7月で東西平均したもの、成層
圏から流入しているいるようにみえる
成層圏から対流圏への流入量の見積もり例:
MOZART:成層圏から391Tg/y、化学生成ー消滅=
507Tg/y
対流圏オゾン量(DU単位)の分布図,
Fishman and Balok, 1999, JGR
CHASER:成層圏から593Tg/y、化学生成ー消滅=
397Tg/y
ENSOにともなうオゾン偏差の分布:
Sudo and Takahashi, 2002, GRL
対流圏オゾンの気候値
オゾン偏差の経度高度図と、下図の色がmass fluxの
anomaly(差)、一方、矢羽根は大規模場の流れ偏差、
NOX, COなどもインドネシア域で増加
1997年、ENSO時におけるオゾンの偏差(’96からの差)、
上は衛星データから、下は化学モデルの結果、ただし、
モデルでの微量成分の放出は96,97は同じものを使っ
ている。
輸送の効果により、インドネシア域のオゾン増加の
半分くらいは説明できる。残りはバイオマスバーニン
グの変化であろう
個々の問題はいっぱいあるが、、、、