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流星の明るさと痕
2010
青森県立青森南高等学校 自然科学部
1
長内愛満 對馬史甫子 大谷理嘉 (2年)
畑山佳奈子 村上千敏 加藤成美 (1年)
目的
c 明るさの変化のグラフにおける”階段”
1 流星の明るさの変化の仕方で分類する。
2 流星の痕を調べ、流星の経路のどこで痕が発生するか・痕の発生状況と強
さで分類し、明るさの変化との関係を考える。
3 流星のスペクトルを撮影し、元素を調べ、流星の明るさの変化との関係を考
える。
階段状に増光している流星(図3)があったので,
階段(増光)の前後の差が1等以上のものを選び出した。
(3) 流星の痕
2 研究の方法
(1) 観測と流星の検出,流星の所領の計算
2台のビデオカメラ〔Watec社製WAT-100N 〕(うち回折格子を装着したもの1台)を,
同じ方向に向くように設置し,8月のペルセウス流星群の撮影を行った。
昨年までの流星も含め10フレーム以上のもの131個を解析し,絶対等級,測光質
量を求めた。(痕が確認できたものは40個,スペクトルを確認できたものは10個。)
(2) 明るさの変化分類
a 最盛期の割合と中央位置をもとにした分類
昨年は,流星の明るさの変化のグラフを作り,絶対等級で一番明るいところから
0.5等以内を最盛期とし、P(最盛期前が長い),M(最盛期が長い),L(最盛期後が長
い),O(標準)の4種類に分類していたが,OをP,M,Lに分類するため基準を考え直
した。
最盛期の 割合(x)とその中央位置(y)を求め(図1)
下の3種類に分類した。
・最盛期の割合(x)が50%以上→M型
・残りは最盛期の中央(y)が60%より後ろ→P型
・yが60%より前→L型
図1 最盛期と中央位置の定義(左)とその割合の分布(右)
b 質量の減少曲線をもとにした分類
質量の減少曲線には,後半に直線的になるものと,カーブ
し緩やかになるものの2つがあった。カーブしているものは
質量が元の20%以下になった部分の割合(z)が多い。
(z)が20%以上あったものをc(カーブ) 、そうでないものを
s(ストレート)とした(図2)。
M,P,L型とs,cを組み合わせてMs,Mc,Ps,Pc,Ls,Lcとした。
図3
痕が残った流星の動画を『ステライメージ』で
静止画に分解した。(右図の左)
『マカリ』で流星の経路とスカイのカウント値を測
定し(右図の右),流星の経路上で痕が出た場所と強さを求
めた。それらの特徴からいくつかの型に分類した。
(4) 流星のスペクトル
スペクトルが映った流星の動画のうち条件のいい6個
を静止画に分解し(右図の左),痕と同様な方法でデータ
処理を行った。(右図の右)
また,水素,ヘリウム(右図の下)のスペクトル管の輝線
の位置の測定から得られた1ピクセルあたりの波長を用い,
流星の輝線の元素を考えた。
0.8
S
0.6
C
0.4
a 型別の数
階段(Ps型)
Ms型
()内は個数
Ms…38個(うち階段1個)
Mc…20個(うち階段1個)
Ps…39個(うち階段6個)
Pc…4個(階段なし)
Lc…22個(うち階段2個)
※Ls型の流星は1つしかなかったので図には載せていない。
図2
0.30
0.40
0.50
0.60
個
16
14
Lc
Ls
Mc
Ms
Pc
Ps
10
20%以上
0.20
Ps型
12
0.2
0.10
Mc型
Lc型
20%以下
0
0.00
ヘリウムのスペクトル
3 結果と考察
(1) 明るさの変化分類と質量の関係
Pc型
1
階段(増光)がある流星
0.70
質量減少曲線
0.80
0.90
1.00
b 質量と型の関係
・Lc,Mcなどのc型のものは質量が小さい流星が多い。
・Ms,Psなどのs型のものは質量が大きい流星が多い。(図4)
8
6
4
2
0
1
3
10
30
100
質量区分
図4
分類と質量の関係
[mg]
(2) 流星の痕
a 分類
・H型:痕が途中から発生 S型:最初から発生
・T型:微弱に尾を引くような発生
・s:カウント値32以上 m:8~32 w:8未満
上記の基準でHs,Hm,Hw,Sm,Tm,Tw,dに分類した。(下図)
質量と痕の出た流星の割合を調べた結果,質量が大きいほど痕が出やすいこと
がわかった。
b 階段と痕
階段がある流星は階段付近で出る割合が高く,落差1.25以上のものは全て痕
があり,落差が大きければ痕が出やすいことがわかった。
痕は流星の表面にある物質が剥がれることにより発生すると考えているが,階
段になるのは,流星が二重構造で,内部が蒸発し始めた時に痕が発生したと考
えられる。
(4) 明るさの変化と質量の関係について
スペクトルを撮影できた番号92と87の流星について,
明るさの変化とスペクトルの関係を調べた。(図6)(図7)
《番号92》
・Ps型,質量47.6mgで消える直前でも5.0mgあった。
・明るさの変化が一定になった後半、スペクトルの波長
分布に変化が見られない。
《番号87 》
・Lc型,質量15.4mgで明るさが減少し始めた時点で
2.0mgだった。
・明るさが減少し始めたところから,610nm以上
(O,N,N2 )の波長の光の割合が減少している。
図6 92(上)と87(下)
明るさ・質量・半径の変化(左)と
スペクトル強度分布の変化(右)
このことから、番号92は消滅ちかくまで質量が大きく、最後まで
流星本体の物質と大気が光っている。
番号87は後半質量が小さくなってしまったことで大気を発光させ
られず,本体のみの光となった。
その分エネルギーの消費が少なく,流星が消滅するまでの寿命が
延び、質量の減少曲線がカーブしたのではないか。
図7 スペクトルの強度分布の時間変化
例:12-14 12,13,14フレームのカウント値の合計
4 まとめ
(上図) 横軸:時間,縦軸:流星の場所(上は発光点、下は消滅点)。左上から右下に伸びる色が濃い直線が流星の本体で,その右側に広がる色つ
きの部分がスペクトルを表す。矢印がついている部分は増光したときを表す。明るさのグラフ中の丸は明るさの変化が増光しているところで,増光時
に痕が発生していることがわかる。
流星の明るさの変化を分類することによって痕が増光時に出るという結果が
得られ,また,明るさの変化が質量の大小や光っている物質によって異なるの
ではないかと考えられた。
しかし,痕のデータ処理に時間がかかってしまうことや,スペクトルは波長感度
補正が行われていなく,データも少ないので確かなことがいえないのが課題だ。
5
(3) 流星のスペクトル
6個の流星の波長分布をグラフにした。(図5)※波長感度補正はしていない。
6番は長波長が画面からはみ出ていて切れてしまっている。解像度が悪いので
元素の特定は難しい。全体的に5個くらいのピークが見られる。
・450nm付近Ca、Mg+、Fe
・520nm付近Mg、Fe
・600nm付近Na
・680nm付近N2
・780nm付近O、N
1番・2番の流星は様々な元素の光が多く出ている。
3番の流星は他の流星に比べてMg、Feが出ていない。
6番の流星はMg、Feが多く出ている。
図5 スペクトルの強度分布
カウント値計
スペクトルの強度分布
1000
900
800
700
1
600
2
500
3
400
4
300
5
200
6
100
0
300
400
500
600
700
800
900 波長(nm)
参考文献・使用ソフト
(参考文献)
阿部新助,矢野創,海老塚昇,春日敏測,杉本雅俊,渡部潤一 2002
『流星に生命の起源を求めて』 天文月報 2002 vol.95 No.11 日本天文学会
国立天文台 2008 『理科年表2009』 丸善
天文観測年表編集委員会編 『天文観測年表2009』 地人書館
橋本司 2009 『確定流星群,64群の公式名称決定!』 月刊天文ガイド10月号誠
文堂新光社
渡部 潤一 1995『アマチュアのための太陽系天文学』シュプリンガー・フェアラー
ク東京