Transcript 講義資料
日本と東アジアの成長と貿易 日本経済入門(二) アジア研究所 小山直則 1 2.3. 先進国の少子化 (1) 二極化した少子化の 動向 ⇒第二の人口転換(Dirk van de Kaa) 第二次世界大戦後の先 進国の出生率の低下と 70年代以降のさらなる 低下現象。 ●二極化現象 ⇒出生率の比較的高い国 (アメリカ、イギリス、フ ランス、スウェーデン)と 比較的低い国(日本、ド イツ、イタリア、スペイ ン)に二極化。 *アメリカは主要国の中 で高い出生率。フラン スとスウェーデンは少 子化対策に成功した。 2 2.3. 先進国の少子化 (2) 先進国の少子化対策 ⇒フランスの家族政策 日本の児童手当に相当 する家族手当の対象は 第二子以降である。 ⇒20歳になるまで第二子 に月々117ユーロ(約 1.8万円)、第三子以降 に267ユーロ(4.2万円) が支給される。 ⇒所得制限があるが、04 年から乳幼児迎入手当 として第一子以降165 ユーロ(2.6万円)が3歳 まで支給されている。 ⇒家族が増えるほど控除 が増える所得税制を採 用している。 3 2.3. 先進国の少子化 (2) 先進国の少子化対策 ⇒スウェーデンの少子化 対策:就業と出産に対 する手厚い支援。 ①育児休業制度 ⇒子供が1歳6ヶ月になる まで、もしくは8歳にな るまで480労働日も休 暇が取得可能である。 ⇒このうち各60労働日は ママ・クオーター、パ パ・クオーターとして母 親と父親がとらなけれ ばならない日数として 割り当てられている。 *クオーター(quota)=割 当。 4 2.3. 先進国の少子化 (3) 東アジアの少子化 ⇒05年の合計特殊出生 率 日本(1.26)、シンガポー ル(1.24)、台湾(1.12)、 韓国(1.08)、香港 (0.97)、中国(1.7) ⇒少子化の背景 ①未婚化、晩婚化の進展 ②女性の高学歴化 ③産業構造の変化(サー ビス化) ④子供の教育費の増加 ⑤就業と育児の両立支援 策の手薄さ 5 2.4. 日本の人口動向と経済社会 (1) 縄文時代から戦前ま での日本の人口 ●縄文時代早期(8100年 前) ⇒約2万人 ●縄文時代中期(4300年 前) ⇒26万人 ⇒この後人口停滞 ●弥生時代(1900年前) ⇒59万人 ●奈良時代(8世紀) ⇒人口が急増して680万 人。 ●江戸時代初期(1600 年) ⇒1,230万人 ●江戸時代中期(1721 年) ⇒3,128万人 6 2.4. 日本の人口動向と経済社会 (1) 縄文時代から戦前ま での日本の人口 ●江戸時代後期 ⇒約3,000万人程度で停 滞。 ⇒理由 飢饉、疫病、天災、結婚 延期、堕胎、間引きな ど。江戸幕府の鎖国 政策と食糧供給の制 約。 ●明治時代(1868-1912) ⇒1872年には3,481万人。 ⇒日清戦争(1894年)時に は4,114万人。 ⇒日露戦争(1904年)時に は4,614万人。 ●大正時代(1912-1926) ⇒1920年の第一回国勢 調査時点の総人口は 5,596万人。 7 2.4. 日本の人口動向と経済社会 (1) 縄文時代から戦前ま での日本の人口 ●大正時代(1912-1926) ⇒1920年の第一回国勢 調査時点の総人口は 5,596万人。 ⇒関東大震災(1923)年時 点では5,812万人。 ●昭和時代(1926-1989) ⇒満州事変(1931)時点で は6,546万人。 ⇒1940年には7,193万人。 8 2.4. 日本の人口動向と経済社会 (2) 戦後から現在まで ⇒1956年9,017万人。 ⇒1967年1億20万人。 ⇒終戦時から22年間の人 口成長率は1.5%。 ⇒第一次石油危機後の 1974年には1億1,057 万人。 ⇒1984年には1億2,031 万人。 ⇒人口成長率は1967年 以降、1.1%に低下。 ⇒1984年から2005年ま での人口増加率は年 平均で0.3%。 ⇒2000年代半ばから日 本の総人口は減少に 転じた。 9 2.4. 日本の人口動向と経済社会 (2) 戦後から現在まで ●高齢化の要因 ⇒高齢化の指標としては ①少子化要因 65歳以上の人口の総 ②平均寿命の伸長 人口に対する比率が 用いられる。 ⇒1947年4.8%、1960年 5.7%、1970年7.1%。 ⇒一般的に高齢者が人口 の7%を超えると高齢 化の国と呼ばれてる。 10 2.4. 日本の人口動向と経済社会 (3) 戦後の出生動向 (5) 日本の将来人口 (4) 経済環境とともに変化 する人口動向 ⇒図表Ⅱ-4 経済と人口の 構造変化 ⇒問題. 経済構造の変化 と人口の変化にはど のような関係があると 思われますか? 11 12 Ⅲ.1. 人口経済学の始まり (1) マルサスの人口理論 ⇒マルサス(1798)『人口 原理』 ①人口の増加によって食 糧供給の制約が制約 条件となる。 ②食糧増加が確保されれ ば、人口もまた増加す る(増殖原理)。 ③人口増加は食料に制 約されるが、それは具 体的には道徳的な抑制 や飢饉、窮乏などに よってもたらされる(規 制原理)。 13 Ⅲ.1. 人口経済学の始まり (1) マルサスの人口理論 ⇒さらに、人口増加を制 限する要因は、貧困に ⇒有名なたとえ話 伴う結婚の延期などに 「人口は1、2、4、8、16倍 よる道徳的妨げ(抑制) と幾何級数的に増加す や るが、食料は1、2、3、4、 ⇒飢饉、窮乏、戦争など 5倍と算術級数的にし による積極的妨げ(抑 か増加できない」ので 制)などがある。 食糧供給は人口増加 に追いつかない。 14 Ⅲ.1. 人口経済学の始まり (1) マルサスの人口理論 (3) ケインズの考え方 ●経済学的なメカニズム ⇒アメリカの人口急増が 食料需要を増加させる ⇒人口増加に伴う一人当 ことで、ヨーロッパにお たりの食糧の減少は、 ける食糧供給を圧迫し、 労働者の実質賃金率を 農産物価格を上昇させ 低下させる。 る。 ⇒これにより、結婚や家 ⇒人口減少は消費者の 族形成の延期(道徳的 数を減少させ、これが 抑制)、人口増加が抑 消費需要の減退をもた 制される。 らす。 15 Ⅲ.3. 出生と結婚・家族形成の理論 (3) 出生力モデルの展開 ⇒一方、子供の数は逆に 子供の質の価格となっ ⇒所得水準の上昇に伴っ ているので、子供の数 て、親が子供の質を子 の減少は子供の質の 供の数よりも選好したと 需要を増やす。 仮定しよう。 ⇒以上のことから、 ⇒すると、子供の質の上 BeckerとLouisは一人 昇は子供の数の価格 当たりの所得の上昇と が上昇することを意味 出生力の低下を説明し するので、子供の数は た。 減少する。 16 Ⅲ.3. 出生と結婚・家族形成の理論 (4) 結婚の経済学 ⇒男女が独身で家事と仕 事を両方こなすよりも、 ⇒結婚を男女の比較優位 男女のいずれかが仕 で考える。 事または家事に専念し ⇒男性が仕事に比較優位 た方が効率的となるこ を持ち、 とから結婚の合理性が ⇒女性が家事に比較優位 説明される。 を持つとき、 ⇒結婚は両者の生産量を 最大にする。 17 Ⅲ.3. 出生と結婚・家族形成の理論 (4) 結婚の経済学 *公共財: ①ある人が 消費したとしても他の ⇒家庭内にある公共財 人の消費を妨げるもの (住宅)に対する負担が ではなく(消費の非競合 結婚によって一人当た 性)、また②ある人の消 りの負担が半分になる。 費を他の人が排除する ⇒この家庭内公共財の存 ことも難しい(消費の非 在が結婚のインセン 排除性) ティブとなる。 ような財を公共財という。 例. 公園、国防、消防、国 道など。 18