淀川キリスト教病院での使用経験(杉田智子)

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Transcript 淀川キリスト教病院での使用経験(杉田智子)

LCP日本語版
ホスピスにおける導入の実際
淀川キリスト教病院 ホスピス
緩和ケア認定看護師
杉田 智子
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
はじめに
 淀川キリスト教病院ホスピスは,従来から看取りの
LCPの導入後は…
ケアをホスピスケアにおける重要なケアと位置づけ
・看取りの時期に必要なケアを見直し,
て実践してきた.
必要なケアを見落としなく提供できる
 そのため,LCPという看取りのパスが必要なのだろ
・より適切な看取りのケアの提供につな
うか,今まで行ってきたケアとどのように違うのだろ
うか、パスによってケアの個別性が損なわれないだ
がる
ろうか疑問を感じた.
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
LCP日本語版の導入の準備
1.LCPの導入に関するコアメンバーを決定する
 LCPの導入を円滑に進めるための調整役
当院の例:ホスピス長・看護課長・係長
2.コアメンバーが数例にLCPを試用する
 通常の病棟業務の中に組み込むため,導入に
あたっての問題点などないか検討する
LCP日本語版の導入の準備
3.学習会を開催する
 昼のカンファレンスや日勤終了後等、学習会を数回
行い、スタッフ全員が参加できるようにする
4.LCPの使用手順書を作成する
 学習会でのスタッフの意見を参考に、コアメンバーで
病棟での使用手順書を作成する
5.LCP日本語版を開始する
最初は1事例からでも!
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
LCP日本語版プレテスト
 対象施設:淀川キリスト教病院ホスピス,
聖隷三方原病院ホスピス
 対象患者:各施設に入院中の患者20名、
計40名にLCP日本語版を使用した
 使用日数:平均3.3日 最短1日~最長19日
 プレテストの結果を基に,現在のLCP日本語
版Ver.1が確定された
LCP日本語版の導入の実際
1.LCP開始と終了の基準
 医師からでも看護師からでも開始はできる
 例:予後1週から数日の状況で使用基準を満た
しているか医師,リーダーナース,受け持ち看
護師の3者で合意のもと開始する.
 終了後は死亡時,またLCP開始後に患者の状
態が改善した場合は中止を決定する.
2.スタッフへのLCP使用患者の申し送り
LCP日本語版の導入の実際
3.記入方法
 記入の分担:看護師のみ or 看護師と医師で分担
 記入の時間
例:継続アセスメントの時間は、看護師のラウンド時間に
合わせた.
4時間毎(6時-10時-14時-18時-22時-2時)
12時間(10時-22時)
LCP日本語版の導入の実際
4.使用上の疑問や問題点への対応
例:スタッフが疑問に思ったこと,困ったこと等を自由
に書き出せる用紙などを作成して記入してもらう.コ
アメンバーで解決策を検討し手順書に追加する.
日付
問題点
3/6
意識が低下している患者の病状認識をどのように確認したらよいか
3/10
決められたアセスメントの時間以外に起こった症状は記録しなくて
よいのか.
3/12
宗教/スピリチュアルな支援の評価が難しい.何を基準に達成と評
価したよいのか判断に迷う.
3/14
家族の昼間の様子から,患者の死に対して心の準備ができていると
いは評価できなかった.夜間に家族は不在だが,その時の評価はど
うすればよいか.
LCP使用手順書
1.予後1週間〜数日と医師との合意の上で判断し、リーダーがLCPの導入を決定して下さい。導入
したらリーダーデスクのリストに記入して下さい。
2.初期アセスメントはその時の状態を、メンバーが記入して下さい。
3.経時の記入は4間毎の記入では、ラウンドの時間と合わせて
6時-10時-14時-18時-22時-2時として下さい。
12時間毎の記入は10時-22時として下さい。時間が前後してもかまいません。
4.4時間毎、12時間後との用紙は1日1枚必要です。旧紙チャートの棚に場所を作っています。看取
り後もその棚に入れてください。
5.記入に迷ったこと、疑問点はその場所に理由を書いた付箋を貼っておいて下さい。
6.疑問点・不都合があれば“LCP使用にあたっての疑問・困った点” の用紙をリーダーデスクに置
いていますので記入ください。
【追加事項】
*かかりつけ医への連絡は“いいえ”です。バリアンスですが全例連絡は特にしないので、分析の記
入いりません。
*遺族へのリーフレットは、当院では後日すずらんの会の案内なので、“いいえ”です。バリアンス分
析は“後日発送”で結構です。
*しんどさの増強、痛み、喘鳴など事前にPRN等の使用で避けれたバリアンスはVに○をする。避け
られなかったバリアンスはVのみ。
*意識低下している患者、看取り前に認知障害がある患者などは、元々、理解していても、今が昏睡
であれば昏睡にチェックして下さい。
*決められた時間以外でも、その前後で起こった症状や問題となったことは、バリアンスとし
て時間を書いて記入をする
どうぞよろしくお願い致します、何かあれば市原まで!
LCP日本語版の導入のポイント
 LCP開始のタイミングを見逃さない
 病棟スタッフの負担の軽減
看取りに向けてスタッフの足並みが揃う
・LCPの記入方法がわからず困っていないか,LCPの使
看取りのケアが継続的に見落としなくできる
用によって業務に支障がないか,コアメンバーからスタ
ッフに声掛けをする.
 LCP導入のメリットが実感できるような働き掛け
・患者・家族ケアの個別性はバリアンスとして評価できる
・LCPを使用した事例を振り返り,目標達成の状況から看
取りのケアの改善に向けた検討が行える.
・コアメンバー自身が実感したLCPのメリットを,病棟スタ
ッフにフィードバックする.
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
LCP日本語版の有用性
:看護師へのアンケート調査
 対象看護師:LCP日本語版プレテストに
関わった看護師40名.
 LCP日本語版が看取りのケアにどの程度
有用と思うか、アンケート調査を行った.
LCP日本語版の有用性
:看護師へのアンケート調査結果
 患者・家族ケアに関する有用性
質問項目
有用だと思う
(%)
LCPの開始により患者が看取り期であることを確認できる
85
初期アセスメントで患者のケアの見直しができる
74
初期アセスメントで家族へのケアの見直しができる
66
継続アセスメントにより患者へ適切な治療やケアが行える
74
継続アセスメントにより家族へ適切なケアが行える
69
症状コントロールが改善する
67
看取り後に家族に適切なケアを行える
56
LCP日本語版の有用性
:看護師へのアンケート調査結果
 看取りのケア全般に関する有用性
質問項目
有用だと思う
(%)
継続したケアが提供できる
69
一貫したケアを行うことができる
69
ホスピス・緩和ケア病棟で通常行うケアが見落としなく行える
59
 その他の有用性
質問項目
有用だと思う
(%)
教育的効果 看取り期のケアの経験が少ない看護師への教育につながる
看取り期のケアが適切に行えている確信になる
71
53
記録時間の
看取り期の記録がLCPのみであれば記録時間が短縮する
短縮
64
LCP日本語版の有用性
0%
【看取りのケアに関する質問項目】
LCPの開始により患者が看取り期であることを確認できる
継続アセスメントにより患者へ適切な治療やケアが行える
初期アセスメントで患者のケアの見直しができる
一貫したケアを行うことができる
継続アセスメントにより家族へ適切なケアが行える
継続したケアが提供できる
症状コントロールが改善する
初期アセスメントで家族へのケアの見直しができる
看取り期の記録がLCPのみであれば記録時間が短縮する
ホスピス・緩和ケア病棟で通常行うケアが見落としなく行える
看取り後に家族に適切なケアを行える
多職種で情報を共有することができる
多職種にケアについて相談する機会になる
.患者と家族の情報量が増加する
【看取りのケアの教育に関する質問項目】
看取り期のケアの経験が少ない看護師への教育につながる
看取り期のケアが適切に行えている確信になる
20%
40%
60%
80%
100%
LCP日本語版の有用性
患者の状態
予後が1週~数日
看取り
LCPの開始
医療チームでのケアの目標の達成状況を評価し、ケアの改善策の検討する
期医
で療
あチ
るー
こム
とで
を患
共者
通が
認看
識取
でり
きの
る時
初
継
に
続
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適
ア
ケア
切
セ
アセ
な
ス
ス
の
治
看取りのケアの向上のつながる
メ
見メ
療
・見落としがない、
ン
ン
直ト
やト
一貫したケアを継続して
し
ケ
で
提供できる
がで
ア
患
・症状コントロールが改
で患
が
者
者
きと
行と
善する
る家
え家
る族
族
看
取
り
後
に
行家
え族
るに
適
切
な
ケ
ア
が
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
LCP導入開始の決定
LCP日本語版のプレテストの実施で実
感したこと
・LCPによって看取りに必要なケアを
もれなくチェックできる
・看取りの時期に必要なケアを適切に
提供できる
LCPは看取りのケアに役立つ!
LCP導入開始の決定
 当ホスピスの現状
2009年度:入院患者数402名
死亡患者数306名
平均在院日数16.3日と非常に短い
ケアの質を保ちながら、看取りの時期に
必要なケアを提供できること、
記録時間の短縮を目的として、2010年8月
よりLCP日本語版Ver.1.0を導入を決定!
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
プレテスト後:運用手順の修正
 LCPの導入をグループ活動として開始
 LCPグループ内でプレテストの経験も踏ま
え、導入で問題になることがないか、更
に使いやすく工夫できることがないかを
検討
 プレテスト後のLCP運用手順を見直し修正
 病棟ミーティングでLCP導入を説明
 LCPの使用方法ついての勉強会を開催
運用手順の修正①
●LCPの開始の判断は、医師と看護師
複数名で行う
入院時
週1回
予後の評価
カンファレンス
毎日の評価
タイミングを
逃さず開始
● 記録はLCPとグラフィックチャート
(熱計表・温度板)のみとした
運用手順の修正②
●入院時からLCPを開始する場合
初期アセスメントに従来の入院時の聴取する
アナムネーゼから看取りに必要な情報のみを
追加記入する
主な記入内容:家族構成、キーパーソン、
主な介護者、経済的な問題等
その後も、家族から得られた情報は適宜追加
運用手順の内容③
●初期アセスメント
「目標9ケア計画を説明し
ている」「目標10ケア計画
の理解している」では
OPTIM「これからの過ごし
方について」の パンフ
レットを利用した。
●説明内容の可視化、読み
直すことで、看取りに向け
た患者の変化やそれに対す
るケアがイメージできる。
運用手順の修正④
●LCPは紙媒体であるため、使用後は
電子カルテにスキャナーで取り込む
運用手順を整えることで
・LCPが適切な時期に開始できる
・LCPを使用によって適切なケアを行う
・スタッフの負担感を軽減する
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
LCP使用状況
導入から3か月間
 LCP平均使用期間:4日間
 死亡退院数70名中、51名に使用
・導入当初は、LCPへの移行に慣れず開始に至ら
なかった事例
・入院当日の看取り・急変…など計19名
現在は、スムーズにLCPに移行しほぼ全例に
開始している
(入院当日の看取り・急変は除く)
LCP使用状況
導入から3か月間
 記入漏れがあった目標:
・目標6:看取りにあたっての宗教上の要望
や信条を確認する
・目標9:今後のケア計画を説明、相談して
いる
・バリアンス発生時間
その場で評価できなかった目標は記入が抜けやすい
見落としではなく評価ができなかった理由を
記録に残す必要がある
LCP使用状況
導入から3か月間
 バリアンスの記入状況:
・バリアンスに対処した結果が記入していない
・継続アセスメントのA・Vとバリアンス分析
シートの内容が一致していない
・バリアンス分析シートに情報共有のための内
容が記載されている
バリアンス記入のルールが必要である
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
看護師の感想
LCPを導入
して良かった
こと
工夫が必要
なこと
•看取りの時時に必要なアセスメント
とケアができる
•継続アセスメントによって患者・家
族の状況が経時的に把握できる
•看取りに向けてスタッフの意識が統
一される
•記録時間が短縮する
•
•
•
•
家族の情報の追加が必要
(例:家族の情報、看取りの場面)
記入方法の統一されていない
手書であることの負担感
発表内容
 導入の準備
1.LCP日本語版導入準備
 プレテスト実施
 看護師の感想
 導入開始の決定
 運用手順の修正
2.LCP日本語版導入後
評価
 使用状況の評価
 看護師の感想
 活用のための工夫
LCPを活用するための工夫
運用手順の追加
内容
家族の情報
伝達方法の追加
●LCPに家族の情報を記入する
・家族の患者に対する思い
・看取りの状況
●電子カルテの掲示版を活用
・次の勤務者に引き継ぐ内容
記入もれのチェック
記入方法の統一
●文章のみでなく記入例を作る
手書きの負担
●記録委員、電子カルテ委員会に交渉
LCPを活用するための工夫
例:継続アセスメントの記入例の作成
達成された場合はA、達成されない場合はVに○をつけ、達成されない場合は、それ
ぞれの欄に具体的な問題を記入して下さい
セクション 2 勤 務 帯
(時刻)
を右欄
に記入
不穏、興奮
目標:患者が強い
不隠、混乱、興奮
状態ではない。
2時
A
6時
V
A
一目見てどのようなバリ
アンスが生じているか分
かることが大切です。バ
リアンス発生の時間と内
容を記入してください。
10時
V
A
14時
18時
22時
Vに○した場合、必ず
バリアンス分析シートに
記入してください。
Ⓥ A
V A
V A
V
例)7:00
身の置き
所のなさ
LCPを活用するための工夫
例:看取りの状況を記載する
例)1:30呼吸停止
妻は「よく頑張ったね、ありがとう」、長女
は「今までありがとう、これからのことは心
配しないでも大丈夫だからね」と声をかけて
いる。
1:50医師死亡確認、妻と長女に見守られ永
眠される
看取り時の家族の反応などチームで共有する
・デスケースカンファレンス
・遺族ケアにつながる
導入のための取り組み
①LCP
グループ活動
の開始
②LCPによる
看取りのケア
を理解する
③運用手順
を整備する
④使用状況か
ら手順を追加
LCP導入の目的:
●ケアの質を保ちながら、看取りの時期に必要
なケアを提供する
●記録時間の短縮する
目的は達成し
つつある
LCPの活用によってより適切な看取りのケア提供と
質の向上をめざす
ご清聴ありがとうございました