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公共経済学
三井 清
1
「公共経済学(第1学期)
;三井」の運営方法
【講義のねらい(第 1 学期)
】
1.
政府の支出政策の役割について
2.
市場メカニズムの機能や政治メカニズムの機能について
2
【講義内容】
(1) 厚生経済学の基本定理 1(第 3 章)4/11
(2) 厚生経済学の基本定理 2(第 3 章)4/18
(3) 公共財 1(第 6 章)4/25
(4) 公共財 2(第 6 章)5/2
(5) リンダー ル・ メカニズムと公共財の自発的供給(第 7 章)5/9
(6) 投票のパラドックスと一般(不)可能性定理(第 7 章)5/16
(7) 多数決投票と公共財供給(第 7 章)5/23
(8) 消費者余剰と等価変分・ 補償変分 5/30
(9) 補償原理とマスグレイブ主義政策論 6/6
(10) 費用・ 便益分析 1(第 11 章)6/13
(11) 費用・ 便益分析 2(第 11 章)6/20
(12) 費用・ 便益分析 3(第 11 章)6/27
(13) 補論・ 計算問題の解説 7/4
(14) まとめ 7/11
3
【参考書】
スティグリッツ
『公共経済学(上):公共部門・ 公共支出』
第 2 版、東洋経済新報社
4
【成績評価の方法】基本的に定期試験と宿題で成績を評価されるが、それ以外に「講義
への貢献」も考慮される。また、3 年生以上の学生に限り、レポー トが提出されてい
れば、定期試験・ 宿題・ 講義への貢献の合計点が 40 点以上 50 点未満のときに限り
10 点満点でレポー トが評価される。
○ 成績評価のための「総合得点」は、①定期試験、②宿題、③講義への貢献、
の3つの得点の合計である。なお、配点は以下の通りである。
① 定期試験
:80 点(=40 点×2)
② 宿題
:20 点(=10 点×2)
③ 講義への貢献
:1 点×貢献回数(上限 10 回)
○「講義への貢献」とは以下の 3 つである。また、その講義中の貢献は講義終了後にサ
インをした場合のみポイントが与えられる。
① 講義中に板書や言葉による説明の間違いを指摘する。
② 講義中に(講義の内容に関する適確な)質問をしたり意見を述べたりする。
③ ホー ムペー ジ上にアップされたプリントなどの間違いを指摘する。
5
【ホー ムペー ジとメー ルのアドレス】
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~20040012/index.htm
[email protected]
6
【各章間の関連性】
第 1 章から第 24 章までの議論は次の流れ図のように関連している。なお、第 1 学期は
第 1 章から第 12 章まで、第 2 学期は第 13 章から第 24 章までを講義する。
社会保障
公共財の供給
外部性
7
5
17
16
13
6
4
3
15
14
補償原理
1
2
地方財政
租税
9
24
18
10
8
20
23
11
22
21
19
市場メカニズ
ム
12
費用便益分析
⇒:この矢印先の章の議論は矢印元の章の議論が前提になっている。
:この矢印先の章の補論の議論は矢印元の章の(補論の)議論が前提になっている。
→:この矢印先の章の議論は矢印元の章の議論との関連性が大きい。
7
【問題と補論について】
「*」も「**」も付いていない問題と補論は基本的・ 標準的な内容である。また、「*」
の付いている問題と補論は発展的・ 技術的な内容である。さらに、「**」の付いている
補論は、積分の基本的な性質に関する予備知識を必要とする議論、および集合の内部に
関する厳密な定義を用いた議論であり、講義では説明されない。そして、「*」の付いて
いる問題と「*」と「**」の付いている補論の内容は定期試験には出題されない。
【使用される数学について】
本講義で用いる数学は、中学と高校で学ぶ「集合と論理、関数とグラフ、不等式と領域、
微分」に関する基礎的な事項だけであり、多くの事項については脚注などで復習する。
また、特に微分については第 2 章の補論で復習する。
8
1.厚生経済学の基本定理 1
1.1 アダム・ スミスの『国富論』
1.2 エッジワー ス(Edgeworth)の箱と実現可能な資源配分
1.3 効用関数、選好集合、パレー ト効率性
1.4 補論**:
「集合の内部」と「(1-15)の導出」
9
1.1 アダム・ スミスの『国富論』
アダム・ スミス(Adam Smith)
『国富論(または諸国民の富)』(1776)
An Inquiry into the Nature and Causes
of the
Wealth of Nations
第4篇 第 2 章
国内でも生産できる財貨を外国から輸入することにた
いする制限について
1723-1790
BOOK IV Chapter Ⅱ
OF RESTRAINTS UPON THE IMPORTATION
FROM FOREIGN COUNGRIES OF SUCH GOODS
AS CAN BE PRODUCED AT HOME
10
He generally, indeed, neither intends to promote the public interest,
nor knows how much he is promoting it. By preferring the support
of domestic to that of foreign industry, he intends only his own
security; and by directing that industry in such a manner as its
produce may be of the greatest value, he intends only his own gain,
and he is in this, as in many other cases, led by an invisible hand to
promote an end which was no part of his intention. Nor is it always
the worse for the society that it was no part of it. By pursuing his
own interest he frequently promotes that of the society more
effectually than when he really intends to promote it. I have never
known much good done by those who affected to trade for the public
good. It is an affectation, indeed, not very common among
merchants, and very few words need be employed in dissuading
them from it.
11
もちろん、かれは、普通、社会公共の利益を増進しようなどと意図しているわけでもない
し、また、自分が社会の利益をどれだけ増進しているのかも知っているわけではない。外
国の産業よりも国内の産業を維持するのは、ただ自分自身の安全を思ってのことである。
そして、生産物が最大の価値をもつように産業を運営するのは、自分自身の利益のためな
のである。だが、こうすることによって、かれは、他の多くの場合と同じく、この場合に
も、見えざる手に導かれて、自分では意図してもいなかった一目的を促進することになる。
かれがこの目的をまったく意図していなかったということは、その社会にとって、かれが
これを意図していた場合に比べて、かならずしも悪いことではない。社会の利益を増進し
ようと思い込んでいる場合よりも、自分自身の利益を追求するほうが、はるかに有効に社
会の利益を増進することがしばしばある。社会のためにやるのだと称して商売している徒
輩が、社会の福祉を真に増進したというような話は、いまだかつて聞いたことがない。も
っとも、こうしたもったいぶった態度は、商人のあいだでは通例あまり見られないから、
かれらを説得して、それをやめさせるのは、べつに骨の折れることではない。
(大河内一男監訳『国富論Ⅱ』中公文庫)
12
(問題 1-1)市場メカニズム(
「見えざる手」
)を「正常」に機能
させるためには、どのような取引ルー ルや規制体系を
整備するべきであろうか。また、そのルー ルや規制は
政府が整備すべきであろうか、民間が自主的に整備す
べきであろうか。
対策
問題
民間
政府
企業
業界団体
法律
政府系機関
(鶏肉)産地偽装
流通業者
日本食鳥協会
JAS 法、不正競争防止法
農林水産安全技術センター
インサイダー 取引
証券会社
東証の自主規制法人
証券取引法
証券取引法等監視委員会
欠陥住宅
不動産会社
住宅性能評価・ 表示
住宅の品質確保の促進に
協会
関する法律(品確法)
住宅紛争処理支援センター
13
(問題 1-2)
「小さな政府」と「大きな政府」との関連性について
(1)所得再分配の大きさ、
(2)価格と供給量決定に対する政府の関与の大きさ、
(3)取引ルー ルや規制体系などの整備への政府の関与の大きさ、
という 3 つの観点から比較検討しなさい。
14
(資料)平成17年度 『年次経済財政報告』第2章 「官から民へ-政府部門の再構築とその課題」
15
(資料)平成17年度 『年次経済財政報告』第2章 「官から民へ-政府部門の再構築とその課題」
16
(資料)平成17年度 『年次経済財政報告』第2章 「官から民へ-政府部門の再構築とその課題」
17
(1) 所得再分配の大きさ
⇒社会保障・公的年金(15章~17章) 、税(18章~23章)
(2) 純粋公共財以外への財供給への政府の関与の大きさ
⇒外部性(13章、14章)
(3) 私的財の市場の取引ルール作成に関連する政府の関与の大きさ
⇒社会保障(15章)
18
1.2 エッジワー ス(Edgeworth)の箱と実現可能な資源配分
交換モデル(2 財、2 人)を用いて交換の効率性について検討する。なお、より一般的な生
産技術のケー スに関しては「3.4 補論」において検討する。
一般的に、数の組
g  ( g1 , g 2 ) と h  (h1 , h2 )
に関して、
① 「 g1  h1 かつ g 2  h2 」のとき g  h
② 「 g1  h1 かつ g 2  h2 」のとき g  h
③ 「 g1  h1 かつ g 2  h2 」のとき g  h
と表すことにする。また、
④ g  h  ( g1  h1 , g 2  h2 )
かつ
⑤ g  h  ( g1  h1 , g 2  h2 )
と定義する。
19
1.2 エッジワー ス(Edgeworth)の箱と実現可能な資源配分
xi =個人iの財 x の消費量( i  A, B )
yi =財 y の消費量( i  A, B )。
c i  ( xi , yi ) :個人iの消費量の組
そして、消費量 x i と yi はマイナスの値を取ることがないので、 xi  0 かつ y i  0 が必ず成
立する。すなわち、 c i  0 である。ここに、 0  (0, 0) である。
消費量の組 c i は次のように平面上の点としても表すこともできる。まず、横軸を x i 、縦軸
を yi とした平面の xi  0 かつ y i  0 の領域を「個人iの消費平面(あるいは消費集合
(consumption set))
」と呼び、 C i と表すことにする。そのとき、個人iの消費平面 C i は、
Ci  {c i | c i  0}
と表すことができる。
そして、消費平面の原点を O i と表すことにする。すなわち、 Oi  0 である。
20
yi
Ci  {c i | c i  0}
 {ci  ( xi , yi ) | xi  0, yi  0}
Oi
xi
21
xi :個人iの財 x の初期保有量(initial endowment)
yi :個人iの財 y の初期保有量
wi  ( xi , yi ) :個人iの初期保有量の組(=初期保有(点)))
Edgeworth
1845-1926
「エッジワー スの箱型図(box diagram)」とは、個人 A の消費平面の上に個人 B の消費平面
を次の条件を満たすように重ねたときにできる 4 つの軸で表現される図である。
i. 軸 x A と軸 x B が反対向きで平行になっている。
ii. 個人 A の初期保有点 w A と個人 B の初期保有点 w B が重なっている。
また、これらの 4 つの軸で囲まれる長方形は「エッジワー スの箱」と呼ばれる。
22
xi :個人iの財 x の初期保有量(initial endowment)
yi :個人iの財 y の初期保有量
w i  ( xi , yi ) :個人iの初期保有量の組(=初期保有(点)))
yi
yi
 wi
Oi
xi
xi
w  (w A , w B ) :資源の初期保有配分
(=各個人の初期保有のパター ン)
w  w A  w B :「合計初期保有点」
「 x  x A  x B かつ y  y A  y B 」 ⇒
w  (x, y)
23
(問題 1-3)エッジワー スの箱型図のなかに、 x A 、 x B 、 y A 、 y B を図示しなさい。
yA
wA
OA
xA
24
yB
 wB
OB
xB
25
xB
OB
 wB
yB
26
(問題 1-3)エッジワー スの箱型図のなかに、 x A 、 x B 、 y A 、 y B を図示しなさい。
yA
xB
?
xB
yA
?
 w A (w B )
OA
?
xA
OB
?
yB
yA ?
 y B [ y ]
xA
yB
xA ?xB [ x ]
27
資源配分(resource allocation) a とは各個人の消費点のパター ン (c A , c B ) のことである。す
なわち、 a  (c A , c B )  (( x A , y A ), ( xB , y B )) である。
そして、資源の初期保有配分 w が与えられたもとで、資源配分 a が「実現可能」であるとき、
x A  x B  x かつ y A  y B  y が成立しなければならない。すなわち、
c A  cB  w
(1-1)
である。
また、この条件に加えて、消費点 c i が消費平面 C i 上にあるためには、 xi  0 かつ y i  0 で
なければならない。すなわち、 i  A, B に関して、
ci  0
(1-2)
の条件が成立する必要もある。
(1-1)を前提にすれば、(1-2)の c B  0 の条件より w  c A  0 が成立するので、(1-2)は
0  cA  w
(1-3)
という条件に置き換えることができる。すなわち、実現可能な資源配分 a  (c A , c B ) が満た
すべき「(1-1)かつ(1-2)」の条件は、「(1-1)かつ(1-3)」の条件に置き換えることができる。
28
さて、資源配分 a  (c A , c B ) が実現可能であるためには、(1-1)より c B  w  c A なので、所
与の w のもとでの実現可能な資源配分 a は、 a  (c A , c B )  (c A , w  c A ) と個人 A の消費点
c A  ( x A , y A ) だけで表すこともできる。
そして、資源の初期保有配分 w が与えられたもとでのエッジワー スの箱の領域(を個人 A
の消費平面上で表現したもの)を E w とおけば、 E w は
E w  {c A | 0  c A  w}
(1-4)
と表すことができる。
したがって、消費点 c A が E w に含まれる(すなわち c A  E w )であれば、(1-3)と(1-4)より、
資源配分 (c A , w  c A ) は実現可能な資源配分である
29
E w  {c A | 0  c A  w}
yA
xB
xB
yA
 wA (wB )
OA
xA
OB  w
yB
y A  y B [ y ]
xA
yB
xA  xB [ x ]
30
1.3 効用関数、選好集合、パレー ト効率性
消費点 c i にある実数値 u i を対応させる関数 u i  U i (c i ) (あるいは ui  U i ( xi , yi ) )が、次
の 2 つの関係を満たすとき個人 i の「効用関数(utility function)」と呼ぶことにする。
すなわち、消費点 c i0  ( xi0 , yi0 ) と c1i  ( xi1 , yi1 ) について、
① 「個人 i が消費点 c i0 を c1i より選好する(好む)」とき U i (c i0 )  U i (c1i ) である。
② 「個人 i にとって消費点 c i0 と c1i が無差別である」とき U i (c i0 )  U i (c1i ) である。
そして以下では、効用関数 u i  U i (c i ) で、個人 i の選好(あるいは好み)が表現できると
仮定する。また、選好は「単調性(monotonicity)」を満たすことを仮定する。
なお、選好が「単調性」を満たすとは、 c i0  c1i を満たす任意の消費点 c i0 と c1i について、
U i (c i0 )  U i (c1i )
(1-5)
が成立することである。
31
消費点 c i0 よりも個人 i にとって選好(preference)される消費点の集合(領域)を「選好集合」
と呼び、 Pi (c i0 ) と表すことにする。すなわち、
Pi (c i0 )  {c i  Ci | U i (c i )  U i (c i0 )}
(1-6)
である。
また、個人 i にとって消費点 c i0 と無差別な消費点の集合(領域)を「無差別集合(indifference
set)」と呼び、 I i (c i0 ) と表すことにする。すなわち、
I i (c i0 )  {c i  Ci | U i (c i )  U i (c i0 )}
(1-7)
である。
そして、選好が「単調性」を満たすので「無差別集合 I i (c i0 ) 」には「内部」が存在しない(「1.4
補論」参照)
。すなわち、 I i (c i0 ) は「曲線(の集まり)」なので「無差別曲線」と呼ぶことも
ある。
さらに、個人 i にとって消費点 c i0 よりも選好されるか、または c i0 と無差別な消費点の集合(領
域)を Pi (c i0 ) と表すことにする。すなわち、
Pi (c i0 )  {c i  Ci | U i (c i )  U i (c i0 )}
である。そして、 Pi (c i0 ) を「弱選好集合」と呼ぶことにする。
(1-8)
32
yi
Pi (c i0 )
 ci0
Oi
xi
33
{ci  Ci | ci  ci0 }
yi
Pi (c i0 )
 ci0
Oi
xi
34
yi
Pi (c i0 )
 c1i
Pi (c i0 )
Oi
xi
I i (ci0 )  {ci  Ci | U i (ci )  U i (ci0 )}
35
状態 j の資源配分を a j  (c A , c B ) と表すことにする( j  0,1 )。そのとき、
j
j
「資源配分 a1 が資源配分 a 0 をパレー ト改善(Pareto improvement)する」とは、
「資源配分 a1 の方が資源配分 a 0 よりも、全ての個人にとって効用が低くはなく、
少なくとも1人の個人にとっては効用が高い」ことである。
言い換えれば、
「 a1 が a 0 をパレー ト改善する」とは、弱選好集合 Pi (ci0 ) と無差別曲線 I i (ci0 )
を用いて表せば、次の 2 つの条件を満たすことである。
① 「 c1A  PA (c 0A ) かつ c1B  PB (c 0B ) 」である。
② 「 c1A  I A (c 0A ) かつ c1B  I B (c 0B ) 」ではない。
(1-9)
(1-10)
「資源配分 a 0 はパレー ト効率的(efficient)またはパレー ト最適(optimal)である」とは
「資源配分 a 0 をパレー ト改善する資源配分は存在しない」ことである。
言い換えると、 a 0 がパレー ト効率的であるとは「ある個人の効用水準を高くするには、他
の個人の効用水準を低下させることなしにはできない」ことである。
36
(実現可能な)資源配分の効率性をエッジワー スの箱を用いて検討するために、個人 A と
個人 B の選好集合、弱選好集合、無差別曲線などを同じ消費平面上で表現したい。
そこで、個人 i の選好集合 Pi (c i0 ) を、エッジワー スの箱の領域 E w に制限して、個人 A の消
費平面上で捉えたものを Pi w (ci0 ) とおけば、 E w  C A なので、
Pi w (ci0 )  {c A  E w | ci  Pi (ci0 ), c A  c B  w}
(1-11)
である( i  A, B )。そして、 PAw (c 0A )  PA (c 0A ) が成り立つ。
また、同様にして、エッジワー スの箱の領域 E w に制限して、個人 A の消費平面上で捉えた
弱選好集合を Pi w (c i0 ) 、無差別曲線を I iw (c i0 ) と表すことにする。
37
yA
xB
PAw (c0A )
 c0A (c0B )
PBw (c0B )
I Aw (c0A )
I Bw (c0B )
xA
yB
38
(問題 1-4)資源の初期保有配分が w  (w A , w B )  (( x A , y A ), ( xB , y B ))  ((5, 2), (1,12)) で
あるとする。そのとき、 a 0  (c 0A , c 0B )  (( x A0 , y A0 ), ( xB0 , y B0 )) = ((3, 6), (3, 8)) が
実現可能な資源配分であることを確認しなさい。次に、個人 A の効用関数が
u A  min( 2x A , y A ) のときの PA (c 0A ) と I A (c 0A ) を求めなさい。また、個人 B の
効用関数が u B  2 x B  y B であるときの PB (c 0B ) と I B (c 0B ) を求めなさい。さらに、
個人 A の消費平面上に E w 、 PAw (c 0A ) 、 PBw (c 0B ) を図示しなさい。
PA (c0A )  {( xA , y A ) | min( 2xA , y A )  6}
I A (c0A )  {( xA , y A ) | min( 2xA , y A )  6}
PB (c0B )  {( xB , yB ) | 2xB  yB  14}
I B (c0B )  {( xB , yB ) | 2xB  yB  14}
39
以上の記号を用いれば、実現可能な資源配分 a j  (c Aj , c Bj ) のパレー ト効率性に関する議論
を個人 A の消費平面上で展開することができる( j  0,1 )
。
ま ず 、「 両 方 の 個 人 が a 0 よ り 好 む 、 ま た は 無 差 別 な 資 源 配 分 の 集 合 ( 領 域 ) 」 は
PAw (c 0A )  PBw (c 0B ) である。また、「両方の個人が a 0 と無差別な資源配分の集合(領域)」は
I Aw (c 0A )  I Bw (c 0B ) である。
ここで一般的に、集合 X と Y に関して X \ Y  {x | x  Xかつ x  Y } と定義する。そのとき、
「資源配分 a 0 をパレー ト改善する資源配分の集合(領域)」を「
(資源配分 a 0 の)パレー ト改
善集合」と呼び P w (a 0 ) と置けば、その集合は


P w (a 0 )  PAw (c 0A )  PBw (c 0B ) \ I Aw (c 0A )  I Bw (c 0B ) 
(1-12)
である。
したがって、
「資源配分 a1 が a 0 をパレー ト改善する」ことを c1A  P w (a 0 ) と表すことができ
る。
以上より、空集合(要素を全く含まない集合)を  とおけば、「資源配分 a 0 がパレー ト効率的
である」ことを、次のように表すことができる。
P w (a 0 )  
(1-13)
40
(問題 1-5)下のエッジワー スの箱型図にある資源配分 a1 、 a 2 、 a 3 の中で資源配分 a 0 をパ
レ ー ト改 善す る資 源配 分 はど れか を、理 由 とと もに 答え なさ い 。こ こに 、
a j  (c Aj , c Bj ) である( j  0,1, 2, 3 )。また、 I iw (c i0 ) の端点は、エッジワー スの箱の
辺上に存在するとする。そのとき、パレー ト改善集合 P w (a 0 ) を図示しなさい。
yA
PAw (c 0A )
xB
c0A (c0B )
 c 3A
 c 2A
PBw (c 0B )
 c1A
I Aw (c 0A )
I Bw (c 0B )
xA
yB
41
(問題 1-6)問題 1-4 で与えられた効用関数と資源の初期保有配分のもとで、資源配分
a 0  (c 0A , c 0B )  (( x A0 , y A0 ), ( xB0 , y B0 )) = ((6,14), (0, 0)) とする。そのとき、P w (a 0 )
0
を図示することで a がパレー ト効率的でないことを確かめなさい。
消費点 c i を通る個人iの無差別曲線 I i (c i0 ) の点 c i0 における接線が存在している(点 c i0 の近
くで I i (c i0 ) が「滑らかな曲線」である)ならば、限界代替率は次のように定義される。
す な わ ち 、「 個 人 i の 消 費 点 c i0 に お け る 限 界 代 替 率 MRS i (c i0 ) ( marginal rate of
substitution)」とは「消費点 c i0 を通る個人iの無差別曲線 I i (c i0 ) の点 c i0 における接線の傾
き」である。
(問題 1-7) c i0  ( xi0 , yi0 ) における限界代替率 MRS i (c i0 ) を、 x i yi 平面に図示しなさい。
42
(問題 1-7) c i0  ( xi0 , yi0 ) における限界代替率 MRS i (c i0 ) を、 x i yi 平面に図示しなさい。
yi
y i0
ci0  ( xi0 , yi0 )
MRS i (ci0 )
x i0
・・
I i (ci0 )
xi
43
エッジワー スの箱の領域の内部を E w  と表すことにする(1.4 補論)。すなわち、
o
E w o
 {c A | 0  c A  w}
(1-14)
である。 c 0A  ( E w ) o となる資源配分 a 0  (c 0A , c 0B ) に以下の議論は限定する。
そして、 a 0  (c 0A , c 0B ) において、両方の個人の MRS i (c i0 ) が存在し、 Pi (c i0 ) が凸性を満た
しているとする。ここに、
「弱選好集合 Pi (c i0 ) が凸性を満たす」とは「 Pi (c i0 ) に含まれる任
意の 2 点 c1i と c i2 を結ぶ線分は Pi (c i0 ) に含まれる」ことである。
Pi (c i0 )
 ci1
c
0
i
 ci2
44
そのとき、
「 P w (a 0 )  
⇔
MRS A (c 0A )  MRS B (c 0B ) 」
(1-15)
が成立する(1.4 補論)。すなわち、パレー ト効率性の条件(1-13)を、限界代替率の一致条件
に置き換えることができる。なお、
「⇒の主張」には Pi (c i0 ) の凸性の条件は必要ではない。
(問題 1-8)P w (a 0 )   となるケー スを 1 つ図示して、そのとき MRS A (c 0A )  MRS B (c 0B )
が成立していることを確認しなさい。また、 Pi (c i0 ) が凸性を満たしていないとき
に、
「  の主張」が成り立たないケー スを図示しなさい。
45
< P w (a 0 )   となるケー ス>
yA
xB
MRS B (c0B )
 c0A
I A (c 0A )
MRS A (c0A )
xA
I B (c 0B )
yB
MRS A (c0A )  MRS B (c0B )
46
1.厚生経済学の基本定理 1
1.1 アダム・ スミスの『国富論』
1.2 エッジワー ス(Edgeworth)の箱と実現可能な資源配分
1.3 効用関数、選好集合、パレー ト効率性
1.4 補論**:
「集合の内部」と「(1-15)の導出」
47
<経済システムの分類>
価格・供給量
取引ルー ル
決定への
作成への
政府の関与
政府の関与
小
小
中
所得再分配
小
中
大
米国(ブッシュ)
米国(ブッシュ前) 米国(オバマ)
カナダ
英国
ドイツ フィンランド
フランス
スウェーデン
日本
中
デンマーク
ロシア
中国(鄧 小平 後)
大
大
ソ連
中国(鄧 小平 前)
ソ連 ロシア
中国(鄧
小平デンマーク
前)フィンランド
中国(鄧
スウェーデン
小平
後) フランス
ドイツ カナダ
米国(ブッシュ前)
米国(ブッシュ)
日本
48