Transcript 第二言語
日語誤用分析
(大学院)
2月21日(月・一)~
担当 神作晋一
第1章 第二言語習得論とは
1.「対照分析」の時代
2.「対照分析」から「誤用分析」へ
3.中間言語分析へ
第1章 第二言語習得論とは
「外国語を学ぶときのメカニズム(仕組み)
を明らかにする」 ※mechanism
例:どうして外国語が話せるようになるか。
例:頭の中で起きていること。
例:早く上達する人の特徴
例:話すこと(アウトプット)と聞くこと(インプッ
ト)の多寡
第1章 第二言語習得論とは
第二言語習得研究の特徴↓
「言語」:何が難しくて易しいかを見る
「学習者」:どのようにふるまう(振舞)か。
→外国語学習のメカニズムの解明にはど
ちらも研究対象として必要
第1章 第二言語習得論とは
[第二言語、外国語]→どちらも「第二言語」
「外国語としての日本語」
⇔第一言語(母語)
(JFL=Japanese as a foreign language)
海外など日本語使用のない環境(大多数)
「第二言語としての日本語」
(JSL=Japanese as a second language)
日本で、コミュニケーションとしての手段(学習
には有利)
1.「対照分析」の時代
1.「対照分析」の時代
「外国語を使えるようになるための効果的
な教育方法」の研究⇒1940~50年代
それ以前は文法対訳法
オーディオ・リンガル・メソッド
Audio Lingual Method 略称「AL」
新しい習慣の形成を目的とする
リピートrepeat、文型(入替)練習
1.「対照分析」の時代
「目標言語」と「母語」の対照
(Target Language 学習しようとしている言語)
「対照分析仮説」
(文法、音声、語彙など)共通する部分は易しく、
相違点は難しい。
相違点から誤用が起こり、予測できる。
1.「対照分析」の時代
学習者の誤り(誤用)
母語と目標言語の違いとは関係ないものが
意外と多い。
例:comed、goed ⇒母語話者の子供にも見ら
れる。
例:「面白いじゃない」(→「面白くない」的意思)、
⇒どの国の話者にも起こる。
目標言語と学習者の母語との分析だけでは
十分ではない。
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
対照分析だけでは不十分(予測できない)
「誤用分析」
学習者の実際の誤りから外国語学習を考えるも
の。
Coder(1967) 第二言語習得研究の誕生
第二言語習得のプロセスを解明するため
Process(過程)
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用の分類
言語間の誤り:
学習者の母語に原因
例:「(あなたの)この服セクシーですね」
這/那
言語内の誤り:
発達途上に起こる必然的な誤り
例:面白いじゃない(面白くない)【過剰般化】
⇒母語話者でも起こる
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用の分類
ミステイク(mistake)
一時的なもの
エラー(error)
繰り返し起こるもの(その時点で学習者が持つ
規則に基づく)
「グローバル・エラー」
「ローカル・エラー」
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用の分類
グローバル・エラー:Global error
意味の理解やコミュニケーションに支障のあるもの。
例:「母に時計をくれました」
⇒「母が時計をくれた」?「母に時計をあげた」?
「(誰かが)母にくれた」?
ローカル・エラー:Local error
意味の理解やコミュニケーションに支障のないもの。
例:「図書館に勉強します」
⇒「図書館で勉強します」の意味だと分かる。
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用の分類
分類の難しさ
例:「赤いの本」「昨日買ったの本」
「言語内の誤り」の側面
「言語間の誤り」の側面
幼児の習得過程やどの学習者にも見られる。
中国語母語話者の特徴「例:我的書、我看的書」
上級の話者になっても残る。
原因が一つに決められない。
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用の分類
誤用の多様性
「回避」:難しい表現を避ける(出てこない)
「誤りの訂正」:何をフィードバックfeedbackするか
誤用に対する考え方
AL方式の時代:誤りは許さず排除する。
誤用分析時代:誤りも習得の過程の内。
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用の分類
教師誘導の誤り 教え方に影響されたもの
例:×「田中さんは寿司が食べたいです」
○「田中さんは寿司を食べたがっています」
⇒認識「三人称では「~たがる」を使う」
例:×「先生も行きたがっています/いらっしゃいま
す」 不自然
⇒認識「主語が他の人の時は「~たがる」を使う」
○「先生も一緒に行きたいとおっしゃっています」
※老師説~ 「~たがる」はその欲求や感情が言動
などで外に現れている状態
2.「対照分析]から「誤用分析]へ
■誤用分析の限界
「回避」の問題
使いにくいものや自信のない形式を使わない
例:英作文の関係節の誤り:
ペルシャ語・アラビア語(英語と同じ)・日本語・中国語
The book which I bought yesterday.
昨日買った本(日本語)、昨天我買的書(中文)
⇒日本語・中国語母語話者が正しく使えた。
⇒日本語、中国語母語話者はあまり使っていない。ペ
ルシャ語、アラビア語母語話者はたくさん使って間違
えた → 習得しているかどうかわからない
3.中間言語分析へ
3.中間言語分析へ
誤用分析では学習者言語の全体像が不明
できないところしか見ていない
1970年代より、「中間言語分析」の時代
「中間言語」:「学習者が作っていく独自の言語体
系」→「新しい言語体系」(母語と目標言語の中
間)
自律的な言語体系の分析(「正しい」「正しくない」
の基準ではない。)
3.中間言語分析へ
第二言語習得研究
「中間言語の発達⇒第二言語の習得」というメ
カニズム
まとめ
1.母語と目標言語の違いだけでは不十分。
2.「言語間の誤り」「言語内の誤り」、「エラー」
と「ミステイク」、「グローバル・エラー」と「ロー
カル・エラー」、不分別なものもある。
3.「回避」の問題。
4.第二言語習得によって学習者言語の全体
像を知る。