資料No2 - 思考と言語研究室

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Transcript 資料No2 - 思考と言語研究室

人工知能特論2007
No.2
東京工科大学大学院
担当教員:亀田弘之
ここまでの復習
知能・知性の中枢は「思考と言語」
 論理学は「思考の形式」を探求する学問

さまざまな論理体系

論理
古典論理
 非古典論理

さまざまな論理体系

論理

古典論理
命題論理
 述語論理(高階論理) など


非古典論理
さまざまな論理体系

論理

古典論理
命題論理
 述語論理(高階論理) など


非古典論理
様相論理 (modal logic)
 時相論理 (temporal logic)
 多値論理 (multi-value logic)
 Fuzzy 論理 (fuzzy logic) など

現在はさまざまな論
理体系が提案され
ており、分類は相単
純ではない。
本日の内容

命題論理
本日の内容

命題論理(もっとも基礎的な論理体系)

論理式の定義
1.1基本概念
1.
2.
3.
4.
5.
あの山の上に雲がかかるとやがて雨が降
り出す。
整数1234567は素数である。
円周率πを小数展開すると、その中に1か
ら9までの数字がこの順に並んで現れる。
風が吹くと桶屋が儲かる。
真?
クレタ人はみな嘘つきである。
偽?
問題:真か偽か述べよ。理由は?
1.
2.
3.
4.
5.
あの山の上に雲がかかるとやがて雨が降
り出す。
整数1234567は素数である。
円周率πを小数展開すると、その中に1か
ら9までの数字がこの順に並んで現れる。
風が吹くと桶屋が儲かる。
真?
クレタ人はみな嘘つきである。
偽?
問題:真か偽か述べよ。理由は?
1.
2.
3.
4.
5.
5×3=15
平成の前は昭和である。
円の面積は半径の二乗に円周率πを掛け
合わせたものである。
真?
フランスの首都はパリである。
木星はガスでできており、月よりも軽い。
偽?
真偽を決めがたい文もある。
窓を開けてもいいですか?
 そんなこと言わないでください。
 これはすごい!

命題
真偽を決定することのできる文を、“命題”と
いい、命題論理学ではこれを研究の対象と
する。
 また、命題とともに、
“かつ” “または” “ならば” “でない”
なども併せて考察の対象とする。

命題の例
A = パリはフランスの首都である。
 B = ボンはドイツの首都である。
 C = ロンドンはイギリスの首都である。

A,B,Cは命題である。
“A かつ B” 命題論理の考察対象である。
命題論理に出てくる記号は、…
論理定数
 命題記号
 結合子
 括弧

定義(命題論理の字母)

命題論理の字母は以下の記号から構成
される。
1.
2.
3.
アトムの集合(非空集合):
P, Q, …。P1, P2 などとも書くことがある。
結合子(5種類): ~,∧, ∨, →, ↔
括弧(2種類):
(, )
命題論理の論理式はこれらの記号のみで書かれる。
疑問:次のものは論理式?
PQRS
 P∧~∧∧Q
 ((~(P∧P2)) → P3)
 )P1∨Q3(

記号を適当に並べれば言い訳
ではない! 並べ方の規則(統
語構造規則)がある。
シンタックスの定義が必要!
定義(論理式のシンタックス)

論理式とは以下で定義されるものである。
1.
2.
3.
アトムは論理式である。
任意のFに対して、~F も論理式である。
FとGが任意の論理式のとき、次のものはい
づれも論理式である。
(F∧G), (F∨G) , (F → G), (F↔G)
この規則に則った論理式は、
well-formed であるという。
このような定義方法を、
帰納的定義という。
~F はFの“否定”と呼ぶ。
 (F∧G)はFとGの“論理積”と呼ぶ。
 (F∨G)はFとGの“論理和”と呼ぶ。
 FがGの部分であるとき、FはGの“部分式”
と呼ぶ。

例: F = ~((A5∧A6)∨~A3)
Fは論理式。
 Fの部分式はすべて列挙すると以下の通り。

F, ((A5∧A6)∨~A3), (A5∧A6), A5, A6,
~A3, A3
アトム(例:P, Q,…)を、“原始式”あるいは
“原始文”と呼ぶことがある。
 それ以外のより複雑な論理式を“複合文”と
呼ぶことがある。(例:~P, (P∨Q) )
 Aを1つのアトムとすると、Aと~Aのことを
“リテラル(literal)”といい、特に、Aのことを
“正のリテラル(positive literal)”、~Aのこと
を“負のリテラル(negative literal)”と呼ぶ。

コメント
Well-formed な論理式だけからなる命題論
理式の集合は、1つの命題論理の言語を定
める。(という言い方をすることもある)
 ここまでで形式(見かけ)に関する準備が出
来上がった。

疑問:次のものは何を意味している?
P
 P∧Q
 ((P→Q)∧P)→Q

これらはどれもwell-formed な
論理式だけれど、…
P = パリはフランスの首都である。
 Q = いま雨が降っている。

P = パリはフランスの首都である。
P∧Q = パリはフランス首都であり、かつ、
いま雨が降っている。
真偽の判定ができる!
コメント
PやQの真偽がわかれば十分だよね!
 例えば、PとQの真偽がわかれば
P∧Q
の真偽は分かるの?
 ∧ ってどういう意味?
(∧や∨の意味も明確に定義しなければ
だめなんだ!)

定義(解釈 Intp)

Lを命題論理の1つの言語、Aを言語Lのア
トムの集合とする。
このとき、Lの解釈IntpとはAから{T, F }へ
の写像のことをいい、
Intp = { x | Intp(x) = T, x ∊ A }
と表現する。
(注)T:真 F:偽
解釈の例

アトムの集合A={P,Q,R}に対して、例えば、
Intp(P) = T
Intp(Q) = F
Intp(R) = T
これを簡単に表現するために、真のものだ
けを集めて Intp = { P, R }と書くことにする。
問題:真なる論理式(アトム)はどれ?

論理的設定


アトムの集合A: A = {P1,P2,Q}
解釈Intp: Inpt = {P1,P2}
定義(論理子への意味の付与)
表.結合子の定義表
P Q ~P (P∧Q)
(P∨Q) (P→Q) (P↔Q
)
T
T
T
T T
F
T
T F
F
F
T
F
F
F T
T
F
T
T
F
F F
T
F
F
T
T
これは真理値表
である。
コメント

これで任意の well-formed な論理式に対し
て、真偽を判定することが可能となった。
めでたしめでたし。
よし、やったぁ
これからが
本題です。
もう少し話を進めていきましょう。
練習問題(確認)

1.
2.
3.
次の論理式の真理値表を示せ。
(Q∨P1)∧P1
P1→P2
(P2→(P1→Q))∧P1)→Q
(Q∨P1)∧P1 の答え
P1 Q ( Q ∨ P1 ) ∧ P1
T
T
T
T
T
F
F
T
T
T
T
F
F
F
F
F
練習問題(確認)

1.
2.
3.
次の論理式の値を求めよ。
(Q∨P1)∧P2
P1→P2
(P1→(P1→Q))∧P1)→Q
ただし、論理設定(logical settings)は、
解釈 Intp = { P1, Q }
とする。
ここまでのまとめ

言語を定義するには、
アルファベット
 構文構造
 意味の割り当て

が必要。
そこで、命題論理は論理式を対象とするの
で、論理式を文とみなすと…

命題論理の字母の定義


アトム記号群、結合子記号群、括弧記号群
論理式のシンタックスの定義
アトムは論理式
 Φが論理式ならば~φも論理式
 Φとψが論理式ならば、(φ∧ψ), (φ∨ψ), (φ→ψ),
(φ↔ψ) も論理式


意味の割り当て

“解釈”とう概念の導入
もう少しがんばろう!

目指せ、“モデル”の導入!

一般に、論理式はどのような解釈をするか
で真理値は変わってしまう。例えば、論理式
φは解釈Intp1では偽になるが、解釈Intp2
なら真になるといった具合に。
定義(モデル)

論理式φがある解釈Intpで真となるとき、解
釈Intpをその論理式の“モデル”と呼ぶこと
とする。また、φはモデルIntpをもつとも言う
こととする。

例:解釈Intp={P,Q} はφ = (P∧Q) のモデル
であるが、ψ = (P→~Q) のモデルではな
い。Φは解釈Intpをモデルとしてもつ。
定義(モデル)の拡張

Σを論理式の集合とし、Intpを1つの解釈と
する。このとき、もしΣに含まれるすべての
論理式に対して解釈Intpのもとで真となると
き、解釈IntpはΣのモデルと呼ぶ。また、Σは
解釈Intpをモデルとして持つとも言う。
(今後はこの定義を採用する。)
例:
Σ= { P, ( Q∨R ), ( Q → R ) }
 Intp1 = { P, R }, Intp2={ P,Q, R },
Intp3 = { P, Q }
このとき、Intp1もIntp2もともに Σのモデル
であるが、Intp3はΣのもでるではない。

そろそろ次の話、推論にはいりましょう。
定義(論理的帰結)
Σ:論理式の集合
 Φ:1つの論理式

どの論理式ψ∈Σのモデルもまた論理式φの
モデルとなっているとき、“φはΣの論理的帰
結(logical consequence)”と呼び、
Σ|= φ と書く。“Σはφを論理的に含意する”
とも言う。
例:
P=私は家の外にいる。
 Q=雨が降っている。
 R=私は濡れる。

「家の外にいて、かつ、雨が降っている、な
らば、濡れる」  ( ( P∧Q ) → R )
例(続き)

「家の外にいて、かつ、雨が降っている、な
らば、濡れる」  ( ( P∧Q ) → R )
いま確かに「雨が降っている」。Q
 ということは、「いま外にいれば濡れる」こと
になる。
つまり、
( ( P∧Q ) → R ),Q |= ( P → R )

問題:次の推論が正しいことを示せ。
( ( P∧Q ) → R ),Q |= ( P → R )
つまり、 ( ( P∧Q ) → R ) と Q とから、
( P → R ) が論理的帰結として得られるこ
とを示しなさい。
ヒント: 真理値表を書いてみる。
コメント(注意事項)

→ と |= とは別物です!
演繹定理(重要)

Σ∪{ φ } |= ψ iff Σ |= ( φ→ ψ )
iff: if and only if
論理的等価

Φとψとが論理的に等価であるとは、
φ|=ψ かつ ψ|=φ が成り立つことを言う。
来週の予告

推論

三段論法からresolution法へ
推論の例
AならばBである。
 いま、Aである。
 したがって、Bである。

これは三段論法と呼ばれるものである。
これは別名、modus ponens という。
推論の図式化
A→B A
ーーーーーーーー
B
推論の例

例えば、
( ( P∧Q ) → R ),Q |= ( P → R )
が成り立つことを統一的かつ簡単な方法で
できないだろうか?
事実1:( ( P∧Q ) → R )
 事実2:Q
 示したい事実: ( P → R )

前提1:( ( P∧Q ) → R )
 前提2:Q
 論理的帰結: ( P → R )

問題の整理

前提から帰結を得るためには、
推論を行うことになり、
その結果得られるものを
 証明という。

「推論」や「証明」といった概念(用語)を整理す
ることが必要。
推論を機械的に行えないか?

Resolution という強力な方法が現在しられ
ている。次回これについて詳細します。
つぎのスライドがresolutionを適用した例で
す。
(一応目を通しておいてください。次回詳しく
説明します。理論的にはあと一息で楽にな
ります。がんばりましょう。)
問題例

論理式F=
(~B∧~C ∧ D) ∨(~B∧~D)
∨(C∧D)∨B
は常に真であることを示しなさい。
(注)常に真となる論理式を恒真式という。
回答例
~Fを仮定すると矛盾が生じることを確認す
る(背理法による証明)。
 ~F= (B∨C∨~D) ∧(B∨D)
∧(~C∨~D) ∧~B
 節(clause)と節集合(clausal set)の記法に
書き換える。
 ~F={ {B,C,~D}, {B,D}, {~C,~D}, {~B} }

{ B, C, ~D }
{ B, D }
{ ~C, ~D }
{ ~B }
{ B, ~D }
{B}
{ }
{ } が得られたということは、矛盾が検出されたということ。
参考文献