Transcript PowerPoint プレゼンテーション - Human Interface 2.0
Human Interface 2.0
安村通晃 慶應義塾大学 環境情報学部 インタラクションデザインラボ 2006. 9. 29 @島根大学
アウトライン
Interface1.0: これまでのヒューマンインタフェース Interface2.0: これからのヒューマンインタフェース 何が違うか 課題は何か 具体例
さまざまな2.0
SFC1.0
Web1.0
Porgramming1.0
Human Interface1.0
Lisp1.0 → Lisp1.5
SFC2.0
Web2.0
Programming2.0
Human Interface2.0
Lisp1.9 → (lisp2.0?)
はじめに:研究の背景
一巡したヒューマンインタフェース ポストGUIへの期待 ユビキタスコンピューティングの進展 エモーショナルデザインの提案 Web2.0の登場とコミュニティ インタフェースの評価 VS. 一発芸的研究
Interface1.0: これまでのインタ フェース
主な対象: デスクトップパソコン 研究課題: 使いにくさ、分かりにくさの評価・解明と改善 大きな成果: GUI、直接操作 評価: タスクを用いた評価実験、細分化された細かい厳 密な評価 学問的基礎: 認知科学: →認知的インタフェース
Interface2.0: これからのインタ フェース
主な対象: 実世界、実空間における人間の活動全般 研究課題: より快適に、より人間のニーズを捉えた環境の実現 期待される成果: ポストGUI、Emotionalなデザイン 評価: 長期にわたる人間の振舞い自身の観察、トータルの評価 学問的基礎: 生態学、民俗学、エスノグラフィー
ユーザインタフェースから インタラクションデザインへ
ヒューマンインタフェース 人工物の使いにくさ/分かりにくさを明らかにし、 新しい人工物をデザインする ヒューマンインタフェース 1.
2.
= ユーザビリティ:使い勝手の究明 + インタラクションデザイン:新しい人工物のデザイン
ヒューマンインタフェース~現状と今後 GUIからポストGUIへ GUI : 視覚的ユーザインタフェース ポストGUI マルチモーダル&ユニバーサルデザイン 身体的 → 視覚的 → 記号的 (人間の発達) 記号的 → 視覚的 → 身体的 (I/Fの発達) 実世界指向&モバイル& ユビキタス Virtual Reality → Augmented Reality エモーショナル&情報アプライアンス 行動 → 認知 → 感性 (情動)
インタラクションデザインの方法論
現場でユーザの活動を観察(Contextual Inquiry) 自由な発想 (Inspiration) ユーザの立場で考える (User Oriented) デモシステム・プロトタイプの作成 (Demo)
生活者の視点でのユビキタス
日本の社会の変化(マクロ) 家族・乗客の変容(ミクロ) ユビキタスインタフェース
ユビキタスコンピューティング (ユビコンプ)
コンピュータがどこにでもあるようになり、 浸透し背景に消え、人間が主役に Mark Weiser 技術指向のユビコンプ IPv6, RFID, 各種センサーなどシーズ先行 ユーザ指向のユビコンプ ユーザ行動とニーズ把握から新しい利用の洞察へ
ユビキタスの研究事例: 2つの方法 論
タイプA: 自動化・機械化のアプローチ センサーネットワークで環境の自動調節や遠隔制御 タイプB: アンビエント&コミュニカティブなアプロー チ 見守りポット ファミリーポートレート(おばあちゃんの写真たて) ファミリープランター
ユーザ指向ユビコンプ
オフィスから生活へ インフォーマル(非定型)な活動が対象 途切れのない不断の支援 賢い(=状況を理解した)支援 環境的、周辺的情報提示 滑らかなタスク間の移行 人の行動を妨げない
具体的な研究例
安村研での研究事例 アンビエントな気づき 環境的周辺的なめらか情報提示 グループコミュニケーション 場所と状況:モバイル入出力 日常生活としての<家の中> 「家展」~記憶のかたち 日常生活としての<電車> 「電車展」〜Suicaが拓く未来の列車
アンビエントな気づき
SecureSense: ネット ワークセキュリティの アンビエントな表示 EnlightPen: 自律学習 のアンビエントな支援
環境的周辺的なめらか提示
Photorium: 写真を眺める MeltingSound:音をブラウズ する
グループコミュニケーション
WellSideStory:イン フォーマルな立ち話の支援 DataJockey:携帯端末で ローカルな情報交換
場所と状況:モバイル入出力
UbiFinger: ジェスチャー による家電の制御 ActiveBelt: バイブレー タによる方向などの提示
家展~記憶のかたち
2005. 2. 7~8 @東京 家族間のコミュニケ−ション AwareEntrance: 玄関コミュニケー ション 記憶する服:ハイパーミラー メモリランドリー:記憶の消し方 メモリー雑巾:会話メモを聞く でんわん:お茶碗型IP電話 ちらりドア:プライバシー制御 借景掛け軸:WebCamで借景 お天気窓:窓を開ければ すいすい写真立て:押すと引く メモリウム:周辺的情報提示 その他
家展研究の背景(問題意識)
情報は蓄積されるが活用されていない 整理しきれない写真(特にデジタル写真) 集中と専念を要求するコンピュータ 「ながら」では利用できない 家電から個電への流れ 家族まとまっての利用が困難、個別化・個室化の傾向
家展〜記憶のかたち
2005年2月7日〜8日 東京高井戸ミサワホームMIFパーク 安村研究室&美崎薫・セイコーエプソン 参加者数: 約220人 報告書: http://www.kri.sfc.keio.ac.jp/japanes e/publications/gakujutsu/2004/1-5/
AwareEntrance: 玄関コミュニケー ション
日常生活:靴にこびりついた泥や砂、 草などから、その日の行動を振り返っ たり思い出したりする 玄関:1日2回は誰しも通過する場所。 特に,日本では靴を履いたり脱いだり する場所。 AwareEntrance: 万歩計付きの携帯を 持ってもらい、写真を撮って帰ってく ると、1日の歩数、歩行時間、撮って きた写真が家族毎に、玄関にタイル上 に映し出される 。
記憶する服:ハイパーミラー
日常生活:デートの前にどの服 を着ていくか迷う。前回着て いった服と同じか違うか、その ときうまくいったかなど。 鏡:自分を確認し、振り返ると ころ。 対話する鏡: cf. 白雪姫の鏡 記憶する服: 服にRF-IDがついて おり、服を鏡にかざすと、その 服を着て撮ったときの写真が鏡 に映し出される。
メモリランドリー:記憶の消し方
日常生活:人には楽しく思い出し たいときもあれば、さっさと忘れ てしまいたいこともある。物理的 な汚れだけではなく、心の汚れも 洗い流したくなることもある。 洗濯機: ものを洗ってきれいにし てくれるもの。洗濯行為そのもの は気分転換にもなることがある。 メモリーランドリー: 洗濯機に記 憶の洗い方の選択ボタンがついて いる。楽しく、悲しみとともに、 一挙に。それぞれの選択肢毎に適 切なBGMと共に洗濯が行なわれる。
メモリー雑巾:会話メモを聞く
日常生活: 来客が帰った後、テーブ ルを拭きながら、そのときの会話を 思い出す。 別の風景: 嫁入り前の娘が、実家の 廊下を思い出を込めて拭く。 雑巾:汚れを拭き取り、きれいにす るもの。 メモリー雑巾:テーブルにおかれた 雑巾にはマイクが入っていて会話が 録音される。雑巾を動かすとセン サーが作動し、録音された会話が再 生される。
でんわん:お茶碗型IP電話
日常生活:単身赴任者のお父さんは 一人寂しく夕食。家族に電話しよう とするが、食事中に電話をするのは、 マナー違反と諦める。一方で、もし 一緒に食事していたら、楽しく会話 しながら食事したはず。 電話:コミュニケーションツール。 お茶碗:食事のときには必ずある。 でんわん:お茶碗型をしたIP電話。 違和感なく話ができる。
ちらりドア:プライバシー制御
日常生活:人に覗かれたくないとき はドアを閉め、見られても良いとき はドアを開けておく。一方でWebカ メラが普及しつつあるが、自分が撮 られているかどうか意識してないの で、恥ずかしい見られたくない状況 が転送されてしまうことがある。 ドア:人の視線と耳を遮ったり出入 りを可能にするもの。 ちらりドア: Webカメラによる映像 と音声の伝達の程度をドアの開け具 合で制御する。
借景掛け軸:WebCamで借景
日常生活: 季節毎に掛け軸や絵を取 り替えたりする。また、隣の家の庭 の花や木で季節感を感じる(借景) ことも少なくない。 掛け軸: 季節やそのときの気分を象 徴するもの 借景掛け軸: Webカメラで撮影した、 自分の好きな場所(遠隔地でも何で も良い)を掛け軸の地の部分に取り 込む。複数の異なる場所から、それ ぞれのデザインを取り込んでも良い。 時間とともにも変化する。
お天気窓:窓を開ければ
日常生活: 朝起きた後とか、出かけ る前などに窓を開けてお天気の具合 を確かめる。 枕草子:『少納言よ、香炉峰の雪いか ならむ』と仰せらるれば、御挌子上 げさせて、御簾を高く上げたれば、 笑はせ給ふ。 窓: 外界と外とを隔てるもの。外を 確認したり空気の入れ替えをすると きなどに開ける。 お天気窓: 窓を開けると天気予報 (ラジオ)が流れてくる。大きく開 ければ開けるほど、音も大きくなる。
すいすい写真立て:押すと引く
日常生活: モノをじっくり眺めた りするときには手前に引き寄せ、 用がなったら向こうに押しやる。 写真立て: 家族や思い出の写真を 飾るところ。 すいすい写真立て: 何もしない (押し込んだ状態)で、写真が ゆっくり流れている。写真立てを 手前に引くだけで、個々の写真が ゆっくり眺められる。ちょうど, メニューの部分で手前に引くと、 メニューの切り替えができる。
メモリウム:周辺的情報提示
日常生活: やるべきことや気になるこ とをメモしておき、寝ている間や仕事 中でも頭の片隅においている。 掛け時計、カレンダー: そこに常にあ り、時間や日にちを示している。そち らに目をやったときにだけ機能する。 メモリウム: 自分の気になること (キーワード)をメモしておくと、そ の中のいくつかが,カード形状でゆっ くり流れる。2つのカードが正面衝突 するとGoogleのand検索が起こり、そ の結果、新たなカードが生まれる。
おやつシート: 親子の会話の手がか り
日常生活: 働きに出かける母親は、 子どものおやつをおいた紙にちょっ とした書き置きを残しておく。 ランチョンマット: 食事の際の小さ なマット。ファーストフード店では ちょっとしたお知らせとか、情報を 載せたりもしている。 おやつシート: 忙しい母親が、簡単 におやつシートを作成するための ツール。親と子との会話のきっかけ を増やすことが狙い。
想起将棋: おじいちゃんと孫との触合 い
日常生活: 祖父や祖母と孫の触れ合 いが減っているが、昔はおじいちゃ んの得意な将棋などを孫に教えるこ とで、孫とのコミュニケーションが できたりした。 ヒカルの碁では、蔵にあった碁を見 つけた孫がおじいちゃんに碁を習う 所から物語が始まる。 囲碁・将棋: 日本の伝統的なゲーム 想起将棋: RF-IDを用いて、駒の動き などを教えてくれたり、ビジュアル な効果を狙ったりた、タンジブルな ゲーム。
家展でのデザイン方法論
基本的な考え 未来の家の理想像、完成像ではない 家におけるあるべきインタラクションの方法の提案 個々の具体的なものではなく、状況を踏まえた方法 論の提案 デザインの進め方 日常物に対し継続的/継承的に新しい機能を付与 日常的な行為の観察がベース ドアの開閉、窓の開け閉め、玄関で靴を脱ぐ、雑 巾で拭く、ものを眺める、など 記憶とコミュニケーションに着目
家展その後: Flog 浴室で思い出想起支援
日常生活: 風呂に入って体を洗 い、浴槽で温まりながら、一日 の出来事を思い出す 風呂: プライベートな空間。体 を洗う、ゆっくり考える時間が 取れるところ。 Flog(ふろぐ): 一日に撮った写 真を、ポンプ型容器をプッシュ して取り出し、洗面器を回転さ せて画像を送る(見る)ことが できる。
記憶と家
記憶: 過去と現在(未来)をつなぐ 自己のアイデンティティ 家: 個人の戻ってくるホーム 社会とのつながり コンセプト つなぐこと(コネクト)と個の独立
家展の発展
生活者の場 First Place: 職場/学校 Second Place: 家 → 家展 Third Place: 移動体 → 電車展
電車展 :Suicaが拓く未来の列車 2006. 2. 10~11@横浜
質問タッチ 発車オーライト ロゴモーション まどろみ デモコン ゴールドシート チャックロック パーソナル運行案内 床面ディスプレイ 吊り革コンピュータ
ゴールドシート
ゴールドカードをもった障 害者、妊婦、お金持ちのみ がカードをかざすと着席で きる
まどろみ
窓ガラス全体が大画面 ディスプレイ。RSSから取 得したニュースなどが流 れて表示。 Suicaをかざすと個人認証 に基づき、その個人の興 味のあるニュースがより 多く表示される。
床面LED
ドア上部のディスプレイ は、混雑しているときや 座席の前に人が立ってい るときには見づらい。 床面LEDは、LEDディスプ レイを床面においてみた。
チャックロック
乗っている電車が目的地 にいつ到着するかが、時 計風のディスプレイに、 目的地と一緒に表示され る。
デモコン
電車内でのエアコン 温度を乗客の投票で 決める マナーの悪い人への 注意も携帯から
ロゴモーション
電車に乗っているとき、 通過している場所ののみ 特化したブロッグの読み 書き携帯を経由してでき る。
つりコン
吊り革上のコンピュータ で、液晶ディスプレイの 他、バイブレーター、2 個のボタン、加速度セン サーなどを内蔵。 乗っている間は、ゲーム をしたり、乗り換えルー トを確かめたりできるが、 下車駅が近づくと,振動 で教えてくれる。
パーソナル運行情報案内
電車に乗車中に、電車の 乗り換え情報や乗車率な どの情報を、携帯、また はSuicaとタッチディスプ レイで知ることができる。
しつもんタッチ
タイプ①: 質問毎の カードをかざすだけで、 答えがデ画像と音声で表 示される。 タイプ②: ガイド付き タッチパネルに触れると 質問項目が分かり、その 中に触れると,回答が音 声と画像で表示される。
電車展を読み解く手がかり
満員電車と痴漢 パーソナルスペース 化粧する女、携帯電話 Familiar Stranger 椅子の座り方 逃走距離と攻撃性・防御性 駅 Mother Station: 安らぎの空間、安心の空間 Third Place: 家庭と職場の間、くつろぎの場、価値ある場所 電車 ほどほどactiveほどほどpassiveなスキマ時間
駅・電車内でのインタラクションデ ザイン
モバイル&ユビキタスな環境下で 乗客の求めている情報とニーズ 乗客の置かれている状況 乗客の感じている意識 乗客相互の関係性 などを考慮したデザイン
まとめ:Interface2.0の方向性
単独の対象から、社会的背景を踏まえた、実世 界における人間の活動全体へ 使い勝手だけではなく、より快適で人間のニー ズに応える環境の漸進的実現 長期的でトータルな評価法の確立 重点: 実世界指向、コミュニティ、位置情報
参考文献
ノーマン著, 岡本・安村・伊賀共訳, パソコンを隠せ、ア ナログ発想でいこう!, 新耀社, 2000.
ノーマン著, 岡本・安村・伊賀・上野共著, エモーショナ ル・デザイン, 新曜社, 2004.
トム・ケリー&ジョナサン・リットマン著, 鈴木主税・秀岡 尚子共訳, 発想する会社!, 早川書房, 2002.
野島久雄・原田悦子編、<家の中>を認知科学する~変わる 家族・モノ・学び・技術、新曜社, 2004.特に、 柏木恵子、子どもという価値~少子化時代の女性の心理、中 公新書、2001.
黒川隆夫、ヒューマンインタフェースの歴史、田村博編 ヒューマンインタフェース第2章、オーム社。 安村通晃, Programming2.0, 夏のプログラミングシンポジウ ム2006.