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日本光学会光波センシング研究会
光メモリー・磁気メモリーはどこ
まで高密度・大容量化できるか
佐藤勝昭 (農工大工)
はじめに
• 情報技術(IT)を得て社会構造が急速に変化しつ
つあり、高密度・大容量記録へのニーズはとどま
ることを知らない。
• 記録対象は、文書→画像→動画へと発展し、
ユーザも、専門家→一般職→家庭へと広がり、
大容量だけでなく高速化へのニーズが付け加
わっている。
• ネットワークの進展 :大容量・高速ストレージの必
要性がむしろ高まりつつある
HDと光メモリ
• 1980年代高密度ストレージの本命とされた光ディスクは
記録密度が伸び悩み、1990年代半ばになると、GMR
ヘッドなど新技術を取り込んだハードディスク(HD)にあっ
さりと記録密度の首座を明け渡してしまった。
• HDの面記録密度は、その後の媒体技術の進展もあって、
2003年時点において実験室レベルで150 Gb/in2が実証
されており、商品化レベルでは2.5”ディスクで70 Gb/in2
を超えている[i]。
参考文献
[i] 三浦義正:「超高密度磁気記録の現状」日本応用磁気学会第128回研究会
「磁気ストレージ技術の趨勢はどこに」(2003.1.30)資料集p.1
HDと光ディスクの高密度化の進展
MAMMOS
CD
CD-ROM
DVD
MO
Bluray
最近の動向
• 我が国では情報ストレージ研究推進機構(SRC)
を中心に200 Gb/in2を当面の課題として研究開
発が進められている[1]。
• 一方、光ディスクに関しては、話題のBluRay®
Diskの記録密度が19.5 Gb/in2である[2]が、
NEDOの「ナノメータ制御光ディスクシステム」プ
ロジェクトでは、100 Gb/in2を目指した研究が行
われている[3]。
[1] http://www.srcjp.gr.jp/
[2] http://www.sonyshop-yoshida.co.jp/bluraydisc.html
[3] http://www.aist.go.jp/sangi/28.html
さらなる高密度化
• さらなる高密度化について、磁気記録には超常磁性限
界が、光ディスクには回折限界があり、これを克服する
ためにさまざまな試みが行われている。経産省/NEDO
の「大容量光ストレージ開発プロジェクト」では、これら2
つの記録方式の長所を結合したハイブリッド記録技術に
より、1 Tb/in2(=1000 Gb/in2)の高密度を目指す方向で
研究が進められている[i]。
[i] http://www.nedo.go.jp/informations/other/150218_2/strage.pdf
光ディスクの限界は?
• 光ディスクの面記録密度を決めている最も大きな要素は
再生時にレーザー光をどこまで小さく絞れるかである。よ
く知られているように波長の光を開口数NAのレンズで
絞ったときのスポットの直径dは回折限界で決まり、
d=0.6/NA で与えられている。NAは、現在のCD等に使
われるレンズでは0.6程度なので、dは波長程度の値で
ある。一方、記録の際には、同じを使って上記dより小さ
いピットを記録できる。それは、集光した光スポット内で
温度の分布があり、相変化、光磁気ともにレーザー光強
度がある閾値を超えた部分にのみ記録されるからである。
• 我が国で開発された青紫色レーザーは、最近になって複数の会
社から安定供給できるようになり、これを用いた光ディスクが登場
した。光ディスクの面密度は原理的に1/d2で決まるので、=405
nmの青紫色レーザーを光源としNA=0.85の高NAレンズを用いる
とd=0.28 mのスポットに絞り込みが可能で、記録密度は約8
Gb/in2になる。
• ROMの場合は、ピットの内外からの反射光の干渉でデータを読み
とるので、ピット径はdの半分以下にできる。従って、トラックピッチ
をd=0.28 m としビット長をd/2=0.14 mとすると16 Gb/in2以上の
面密度が得られる。
• RAMの場合は、マークの直径は光スポットと同程度なので、記録
密度は8 Gb/in2程度である。相変化記録の場合、4層程度にまで
多層化できるので、記録密度はこの層数倍となる。光磁気記録に
おいても多層化技術が開発されており、少なくとも波長多重2層化
については20 Gb/in2程度の記録密度が実証されている[i]。
[i] 伊藤彰義:「最先端光磁気記録技術」日本応用磁気学会第128回研究会
「磁気ストレージ技術の趨勢はどこに」(2003.1.30)資料集p.31
MOにおける超解像技術
• 光磁気記録では、磁気誘起超解像(MSR)技術が実用化されてお
り、これを採用したGIGAMOでは、=650 nm(赤色レーザ)を用い
て回折限界を超える直径0.3mのマークを読みとっている[1]。直
径3.5”のGIGAMOの記録密度は2.5 Gb/in2程度である。
• 次世代規格であるASMOでは磁界変調記録法を採用することに
より0.235 mの小さなマークを記録することが可能で、面記録密
度としては約4.6 Gb/in2程度となる[2]。
• 相変化ディスクの場合には、磁気的な転写ができないので超解像
技術を適用するのが難しいが、産総研で開発されたSuper-RENS
方式により、回折限界を超えて0.1 m経の微小マークの再生が可
能になった[3]。
[1] M. Moribe, M. Maeda, H. Nakayama, M. Yoshida, and K. Shono: Digest ISOM’01,
Th-I-01, Taipei, 2001.
[2] S. Sumi, A. Takahashi and T. Watanabe: J. Magn. Soc. Jpn. 23, Suppl. S1 (1999) 173
[3] J. Tominaga, H. Fuji, A. Sato, T. Nakano and N. Atoda: Jpn. J. Appl. Phys. 39 (2000)
957.
MSR(磁気誘起超解像)
• 解像度は光の回折限界から決まる
– d=0.6λ/NA (ここにNA=n sinα)
– 波長以下のビットは分解しない
• 記録層と再生層を分離
α
d
• 読み出し時のレーザの強度分布を利用
– ある温度を超えた部分のみを再生層に転写する
MSR方式の図解
磁区拡大再生
• 光磁気記録においてさらに小さなマークを
十分なSN比を以て光学的に読みとる方法
として、磁区拡大再生(MAMMOS)および磁
壁移動再生(DWDD)という技術が開発され
た。これらは、光磁気記録特有の再生技術
である。
MAMMOS
• MAMMOSでは記録層から読み出し層に転写する際に
磁界によって磁区を拡大して、レーザー光の有効利用を
図り信号強度を稼いでいる[1]。原理的にはこの技術を
用いて100 Gb/in2の記録密度が達成できるはずで、実
験室レベルで64 Gb/in2程度までは実証されているよう
である[2]。無磁界MAMMOSも開発されている。
[1] H. Awano, S. Ohnuki, H. Shirai, and N. Ohta: Appl. Phys. Lett. 69 (1996)
4257.
[2] A. Itoh, N.Ohta, T. Uchiyama, A. Takahashi, M. Mieda, N. Iketani, Y.
Uchihara, M. Nakata, K. Tezuka, H. Awano, S. Imai, and K. Nakagawa:
Digest MORIS/APDSC2000, Oct. 30- Nov. 2, Nagoya, p. 90.
MAMMOS
(磁区拡大 MO システム)
MAMMOS
の効果
• 通常再生
– 信号はほとんど0
•MSR再生
–信号振幅小
•MAMMOS再生
–フル出力
DWDD
• DWDDも記録層から読み出し層に転写する点は
MAMMOSと同じであるが、転写された磁区を読み出し
層の温度勾配を利用して磁壁を移動させて拡大するの
で、磁界を必要としない[1]。DWDDについては新規格の
ハンディビデオ用MO(2”, 3GB)として商品化されつつあ
る[2]。
[1] T. Shiratori, E. Fujii, Y. Miyaoka, and Y. Hozumi: Proc. MORIS1997, J. Magn.
Soc. Jpn. 22, Suppl.S2 (1997) 47.
[2] M. Birukawa, Y. Hino, K. Nishikiori, K. Uchida, T. Shiratori, T.
Hiroki, Y. Miyaoka and Y. Hozumi: Proc. MORIS2002, Trans. Magn.
Soc. Jpn. 2 (2002) 273
DWDD(磁壁移動検出)
• 室温状態では、「記録層」の記録マークは、中間の「スイッチング
層」を介し、「移動層」に交換結合力で転写されている。
• 再生光スポットをディスクの記録トラックに照射することにより昇温
し、中間の「スイッチング層」のキュリー温度以上の領域では磁化
が消滅し、各層間に働いていた交換結合力が解消。
• 移動層に転写されていたマークを保持しておく力の一つである交
換結合力が解消されることで、記録マークを形成する磁区の周り
の磁壁が、磁壁のエネルギーが小さくなる高い温度領域に移動し、
小さな記録マークが拡大される
• まるでゴムで引っぱられるように、移動層に転写されている磁区の
端(磁壁)が移動。磁壁移動検出方式という名称は、ここから発想
されました。読み出しの時だけ、記録メディアの方が、記録層に記
録された微小な記録マークを虫眼鏡で拡大するかのようにふるま
うので、レーザービームスポット径より高密度に記録されていても
読み取ることが可能になるわけです。
キャノンのHPより
DWDD概念図
原理的には再生上の分解能の限界がない。
移動層
スイッチング層
記録層
DWDDディスク
近接場記録
• 回折限界を超えた高密度化に欠かせないのが、近接場光学技術
である。1991年、Betzigらは光ファイバーをテーパー状に細めたプ
ローブから出る近接場光を用いて回折限界を超えた光磁気記録
ができること、および、このプローブを用いて磁気光学効果による
読み出しができることを明らかにし、将来の高密度記録方式として
近接場光がにわかに注目を浴びることになった[1]。
• 日立中研のグループはこの方法が光磁気記録だけでなく光相変
化記録にも利用できることを明らかにした[2]。しかし、このように
光ファイバ・プローブを走査するやり方では、高速の転送レートを
得ることができない。
[1] E. Betzig, J.K. Trautman, R. Wolfe, E.M. Gyorgy, P.L. Finn, M.H. Kryder
and C.-H. Chang: Appl. Phys. Lett. 61 (1992) 1432
[2] S. Hosaka, T. Shintani, M. Miyamoto, A. Hirotsume, M. Terao, M. Yoshida,
K. Fujita and S. Kammer: Jpn. J. Appl. Phys. 35 (1996) 443.
SIL (solid immersion lens)
• 高速の転送レートを得ることができない問題を解決する方法として
提案されたのが、SIL[1]というレンズを用いた光磁気記録である。
• Terrisらは波長780 nmのレーザー光を光源としSIL光学系を使っ
てTbFeCo膜に光磁気記録し、直径0.2 mの磁区が形成されるこ
とをMFMにより確認した[2]。
• SILを磁気ディスク装置のヘッド・アセンブリ(いわゆるジンバル)に
搭載して光磁気記録を行うアイデアが1994年Terrisらにより出さ
れた[3]。この方法により、面記録密度2.45 Gb/in2、データ転送速
度3.3 Mbpsを達成している。
• 鈴木らはMFM(磁気力顕微鏡)を用いて、SIL記録されたマークを
観測し2 Gmarks/in2を達成していると発表した[4]。
[1] S.M. Mansfield and G. Kino: Appl. Phys. Lett. 57 (1990) 2615.
[2] B. D. Terris, H.J. Maminn and D. Ruger: Appl. Phys. Lett. 68 (1996) 141.
[3] B.D.Terris, H.J. Mamin, D. Ruger, W.R. Studenmund and G.S.Kino: Appl. Phys, Lett.
65 (1994) 388.
[4] P. Glijer, T. Suzuki, and B. Terris: J. Magn. Soc. Jpn. 20 Suppl.S1 (1996) 297.
SIL (solid immersion lens)
R. Gambino and T.Suzuki: Magneto-Optical Recording
Materilas (IEEE Press, 1999)
Super-RENS
super-resolution near-field system
• Sb膜:光吸収飽和
– 波長より小さな窓を開ける
• AgOx膜:分解・Ag析出
– 散乱体→近接場
– Agプラズモン→光増強
– 可逆性あり。
• 相変化媒体だけでなく光
磁気にも適用可能
高温スポット
近接場散乱
ハードディスク
ディスク媒体
• 2.5”および3.5 ”
ハードディスク
ロータリー・
アクチュエーター
磁気ヘッド
HDの記録密度の状況
• HDの記録密度は、1992年にMRヘッドの導入に
よりそれまでの年率25%の増加率(10年で10倍)
から年率60%(10年で100倍)の増加率に転じ、
1997年からは、GMRヘッドの登場によって年率
100%(10年で1000倍)の増加率となっている。
• 超常磁性限界は、40Gb/in2とされていたが、
AFC(反強磁性結合)媒体の登場で、これをクリア
し、実験室レベルの面記録密度は2003年時点で
すでに150 Gb/in2に達し、2004年には200
Gb/in2に達すると見込まれる。
ハードディスクのトラック密度、面記録密度、線記録密度の変遷
超常磁性限界
GMRヘッド
MR ヘッド
ハードディスクの高密度化はなぜ可
能になったか?
• 磁性媒体のグレーンの微細化
• →磁区の微細化
• →高い線密度(>300kbpi)と高いト
ラック密度(>30ktpi)
• 磁束の局所化
– ヘッド浮上量の低減を要求
– ヘッドの磁界感度向上を要求
• →MR(磁気抵抗)ヘッド:
AMR→GMR(SV)→TMR
• 弱い信号→PRMLなど信号処理
Cr
CoCr
超常磁性限界
• 現在使われているハードディスク媒体は Cr CoCr
CoCrPtBなどCoCr系の多結晶媒体である。強磁
性のCoCr合金の結晶粒が偏析したCr粒に囲ま
れ、互いに分離した膜構造になっている。
• 磁気ヘッドによって記録された直後は、磁化が記
録磁界の方向に向いているが、微粒子のサイズ
が小さくその異方性磁気エネルギーKuV (Kuは単
位体積あたりの磁気異方性エネルギー、Vは粒
子の体積)が小さくなると、磁化が熱揺らぎkTに
よってランダムに配向しようとして減磁するという
現象が起きる。これを超常磁性限界と呼んでいる。
減磁現象
• 実際、20 Gb/in2の記録媒体では、その平均の粒
径は10 nm程度となり、各結晶粒は磁気的に独
立に挙動し、記録された情報が保てない。
• 一例として16 Gb/in2の記録媒体において信号強
度がt=104 sで96%に低下することが報告されて
いる[1] 。
[1] 鈴木孝雄:「Data Storage高密度化への模索」日本応
用磁気学会第113回研究会「リムーバブル記録の現
状と将来展望」 (2000.12.1) 資料集p.11.
減磁現象の例
G.J. Tarnopolsky et al. TMRC, SanDiego, Aug. 1999
熱的安定条件
• ハードディスクの寿命の範囲でデータが安定であるため
の最低条件は、=KuV/kT>60とされている。面記録密
度Dとすると、粒径dはD-1/2に比例するが、記録される粒
子の体積Vはほぼd3に比例するのでVはDの増大ととも
にD-3/2に比例して減少する。この減少を補うだけ、磁気
異方性Kuを増大できれば、超常磁性限界を伸ばすこと
ができる。単磁区の微粒子を仮定し、磁化反転が磁化回
転によるとすると、保磁力HcはHc=2Ku/Msと書かれる
からD3/2以上の伸びで保磁力を増大すれば救済できる
はずである[1]。
[1] T.W. McDaniel and W.A. Challener: Proc. MORIS2002, Trans
Magn. Soc. Jpn. 2 (2002) 316.
AFC(反強磁性結合)媒体
• AFC媒体(antiferromagnetically coupled media)という
のは、Ruの超薄膜を介して反強磁性的に結合させた媒
体のことで、交換結合によって見掛けのVを増大させて、
安定化を図るものである。
• 富士通ではSF(synthetic ferromagnet)媒体と称する強
磁性結合媒体を用いて超常磁性限界の延伸を図ってい
る。
AFC媒体の模式図
AFC媒体、SF媒体では、交換結合で見かけのVを増大
(旧IBMのホームページより)
超常磁性限界はどこまで伸びるか
• このような方法によって超常磁性限界の到来を多
少遅らせることはできても、せいぜい
500Gbits/in2迄であろうと考えられている。
• 保磁力を大きくすれば安定性が向上することは確
実であるが、磁気ヘッドで書き込めなくなってしま
う。ヘッドの飽和磁束密度には限界があるし、ヘッ
ドの寸法の縮小にも限界がある。現行の磁気ヘッ
ドは理論限界の1/2程度のところにまで到達して
おり、改善の余地はほとんど残されていない。
超常磁性の克服
• 保磁力の大きな媒体にどのようにして記録するの
かという課題への1つの回答がパターンドメディア
技術であるが、もう1つの回答が熱磁気記録であ
る。
• パターンド・メディア
– 物理的に孤立した粒子が規則的に配列
• 熱アシスト記録(光・磁気ハイブリッド記録)
– 記録時に温度を上昇させてHcを下げ記録。室温では
Hcが増大して熱的に安定になる。
微粒子集合体からパターンドメディアへ
中村:日本応用磁気学会128回研究会テキストp.9
早稲田大学朝日研究室のHPより
熱アシスト記録材料
• 熱磁気記録に用いられる媒体としては、従来から
HDDに用いられてきたCoCr系のグラニュラー媒
体を利用する方法と、MO媒体として使われてき
たアモルファス希土類遷移金属合金媒体を用い
る方法が考えられる。また、短波長MO材料として
検討されたPt/Co多層膜媒体を用いることも検討
されている。いずれにせよ、室温付近で大きなHc
を示し、温度上昇とともに通常の磁気ヘッドで記
録できる程度にHcが減少する媒体が望ましい。
2つの熱磁気記録媒体候補
HDD 媒体 - CoCr
MO 媒体 - TbFeCo
膜構造
微結晶集合体
磁気的不連続媒体
アモルファス
連続結合
異方性
~ 2 x 106 erg/cm3
長手 または 垂直
> 5 x 106 erg/cm3
垂直
磁区形成
粒界
TC 等温線
熱安定性
結晶粒体積に依存
適当
磁気記録
熱磁気記録
T>TC
記録媒体模
式図
常磁性
T~TC T<TC
強磁性
magnetic grains
磁壁エネルギー小
.
光磁気ハイブリッド・メモリー
• この目的に、MOディスク、ミニディスク(MD)技術として確
立した熱磁気記録技術が利用可能である。実際に市販
されているMDでは、アモルファスTbFeCo材料を用い、
キュリー点記録時の温度は250℃くらい、記録用磁界は
たったの200 Oeであるが、室温でのHcはなんと8-20
kOe以上と巨大である[i]。
[i] 太田憲雄:「光と磁気の融合の可能性」日本応用磁気学会
第128回研究会「磁気ストレージ技術の趨勢はどこに」
(2003.1.30)資料集p.39
MTb
Hc
保磁力Hc
磁化の絶対値
a-TbFeCo MO媒体の磁気特性
MFeCo
Total magnetization
Ms
0
Tcomp
温度
Tc
TbFeCo系の場合、補償温度が室温付近に来る
よう膜組成が制御されているため、図に示すよう
に、室温付近でのMsが小さく、従って、Hcが大
きいので、超常磁性効果に対して有効である。
MOディスクにおける熱磁気記録
• レーザ光をレンズで集め磁性体を加熱
• キュリー温度以上になると磁化を消失
• 冷却時にコイルからの磁界を受けて記録
M
Tc
温度
Tc
コイル
外部磁界
光磁気記録媒体
光スポット
2種類の熱磁気記録方式
• 光強度変調(LIM):現行 • 磁界変調(MFM):MD,
MO
ASMO
– 電気信号で光を変調
– 磁界は一定
– ビット形状は長円形
– 電気信号で磁界を変調
– 光強度は一定
– ビット形状は矢羽形
Constant
laser beam
Modulated
laser beam
一定磁界
変調磁界
(a) LIM
(b) MFM
Magnetic head
熱磁気記録による微小磁区の記録
• 熱制御層の導入とLS-MFM法により光スポットサ
イズより小さな磁区の記録を達成
1000 nm
500 nm
2000 nm
600 nm
光同期磁界変調(LS-MFM), 遠視野
(λ = 635 nm, NA = 0.60)光制御層あり
600 nm
光変調(LIM), 遠視野(熱制御層なし)
MO膜を用いたハイブリッド記録(1)
• MO媒体TbFeCo系の場合、補償温度が室温付近に来
るよう膜組成が制御されているため、室温付近での、
従って、Hcが大きいので、超常磁性効果に対して有効で
ある。
• しかし、 Msが小さいことは、GMRヘッドを用いた磁気読
み出しにおいては不利である。一つの解決法が、記録層
と再生層の分離である。再生層の補償温度を記録層よ
り高温側にシフトさせることにより、磁気ヘッドで再生する
のに十分な磁化を得ることができる[i]。
[i] H.Nemoto, H. Saga, H. Sukeda and M. Takahashi: Proc.
MORIS1999, J. Magn. Soc. Jpn. 23, Suppl. S1 (1999) 229.
熱アシスト媒体用の記録層と再生層の
磁化の温度変化
再生層
記録層
MO媒体は、室温でのHcが大きい
ので熱安定性が良好であるが、
GMRヘッドを用いた磁気読み出し
においては不利である。
一つの解決法が、記録層と再生層
の分離である。図のように、再生
層の補償温度を記録層より高温側
にシフトさせることにより、磁気
ヘッドで再生するのに十分な磁化
を得ることができる。
H.Nemoto, H. Saga, H. Sukeda
and M. Takahashi:
Proc. MORIS1999, J. Magn. Soc.
Jpn. 23, Suppl. S1 (1999) 229.
熱磁気記録の磁気光学再生の問題点
• 記録波長の減少->光子数の減少->磁気光学信号減少:
解決法:MAMMOS, DWDD:現システムとの両立性に難
• 光スポットサイズの縮小->高いエネルギー密度
– 半導体レーザの最大出力 > 記録パワー > 再生パワー
– 記録感度と再生信号振幅のトレードオフ
• 光再生チャンネルの信号性能は再生光スポットの収差に
強く影響されるが、記録磁区の性能は光スポットの収差に
余り影響されない
• 従って、熱磁気記録した磁区の磁束をヘッドで検出する方
が高い分解能とSNを得られる
MOテスターを用いた遠隔場
ハイブリッド記録の検証実験
H.Saga et al.:Jpn. J.
Appl. Phys. 38
(1999) 1839
磁界変調熱磁気記録された磁区像
Disk A
(緩冷)
Disk B
(急冷)
800 nm
400 nm
200 nm
100 nm
DISK A
DISK B
潤滑剤(fombline)
3nm
3nm
保護層(Si3N4)
10nm
10nm
ヒートシンク層(Al)
40nm
保護層(Si3N4)
5nm
再生層(TbDyFeCo)
75nm
35nm
記録層(TbFeCo)
40nm
15nm
保護層(Si3N4)
60nm
60nm
ディスク基板(ポリカーボネーチ)
GMRヘッドによる磁束検出信号
1280 nm
磁区幅
= 100 nm
シールドギャップ= 190 nm
磁束検出による分解能向上
(遠隔場光磁気記録)
Response (dB)
0
MFM / Flux Det.
LIM / Flux Det.
-5
-10
LIM / Optical Det.
C/N = 47 dB
LIM: Light intensity modulation
MFM: Magnetic field modulation
-15
-20
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
Mark period (m)
2.5
3.0
MOディスクの磁気再生による分解能向上
田中(富士通)による
MO膜を用いたハイブリッド記録(2)
• もう一つの解決法が、再生の際にも熱アシストを行って、
加熱された部分を補償温度からずらしMsを強めて読み
出す方法である[i]。再生トラックが複数のトラックにまた
がっていても、加熱された部分のみヘッドに磁束を届け
ることができるので、微小領域の選択にも好都合である。
[i] H. Katayama, S. Sawamura, Y. Ogimoto, J. Nakajima, K.
Kojima and K. Ohta: Proc. MORIS1999, J. Magn. Soc. Jpn.
23, Suppl. S1 (1999) 233.
MO媒体による熱アシスト再生
再生の際にも熱アシストを行って、加
熱された部分を補償温度からずらしMs
を強めて読み出す方法である。
再生トラックが複数のトラックにまた
がっていても、加熱された部分のみ
ヘッドに磁束を届けることができるので、
微小領域の選択にも好都合である。
H. Katayama, S. Sawamura, Y. Ogimoto,
J. Nakajima, K. Kojima and K. Ohta:
Proc. MORIS1999, J. Magn. Soc. Jpn.
23, Suppl. S1 (1999) 233.
粒子状媒体によるハイブリッド記録(1)
• 一方、粒子状媒体であるCoCr系媒体においては、
室温からの温度上昇とともにHcは急激に低下す
るので、ns程度の短時間加熱することによって、
弱い磁界でも磁化反転できるくらいまで一時的に
Hcを低下させることができる。これにより、高保磁
力媒体に記録することが可能になる。
熱アシスト媒体用多粒子媒体の
磁化と磁気異方性の温度変化
媒体の設計に当たっては、結晶粒の配
向制御によるKuの制御、キュリー温度
の制御とともに、熱的な設計が重要性
をもっている。 1Tbits/in2の面記録密度
は、アスペクト比1:1のとき、25nm
25nmに相当するが、線速25m/sならば
ビット時間は1nsとなる。従って、非常に
短時間に加熱・冷却できる必要がある。
J.J.M. Ruigrok: Proc. MORIS2000,
J. Magn. Soc. Jpn. 25 (2001) 313
粒子状媒体によるハイブリッド記録(2)
• これにより、高保磁力媒体に記録することが可能になる。
この媒体の磁化が超常磁性により失われる様子は、先
に述べたと時間の指数関数となるので、加熱はできる
だけ短時間に、かつ局所的になされなければならない[i]。
従って、媒体の設計に当たっては、結晶粒の配向制御に
よるKuの制御、キュリー温度の制御とともに、熱的な設
計が重要性をもっている。
• 1 Tb/in2の面記録密度は、アスペクト比1:1のとき、
25nm25nmに相当するが、線速25 m/sならばビット時
間は1 nsとなる。従って、非常に短時間に加熱・冷却でき
る必要がある。
[i] J.J.M. Ruigrok: Proc. MORIS2000, J. Magn. Soc. Jpn.
25 (2001) 313
1Tbits/in2におよぶ高密度記録
• 1Tbits/in2におよぶ高密度記録においては bitサイズは
25nm平方となり、記録時のスポットサイズを50nm以下
に縮小する必要がある。通常のfar-field recordingの場
合、100nmを切るような磁気記録は非常に困難であるか
ら、この解決のために、ハイブリッドヘッドにSILを用いて
回折限界を伸ばす方法[i]、および、金属マスクに微小な
開口を設けて開口からの近接場を利用する方法[ii]が提
案され実験されている。
[i] H. Sukeda, H. Saga, H. Nemoto, Y. Itou, C. Haginoya, T.
Matsumoto: IEEE Trans. Magn. 37 (2001) 1234.
[ii] T.E. Schlesinger, T. Rausch, A. Itagi, J. Zhu, J.A. Bain,D.D.
Stancil: Jpn. J. Appl. Phys. 41 (2002) 1821.
近接場光記録
近接場記録
遠隔場記録
SIL
(Solid immersion lens)
SIL
ディスク
ヘッド
スライダ
レンズ
微小開口
開口:a
スライダ
金属
磁気コイル
スポット径
ヘッド媒体間隔
* /NA
半球: /(n・NA)
超半球: /(n2・NA)
開口径: a
10-100nm
=> 1m
=< 100nm
=< a/2 (5-50nm)
*  : 半導体レーザ波長
NA: レンズの開口数
SILを用いた光記録
• 半球型SILを用いればスポットサイズをレンズ光学系の
屈折率分の1に、超半球では屈折率の二乗分の1に縮
小できる。SILの近傍にはエバネセント場が存在するが,
伝搬光も存在するので厳密な意味では近接場記録では
ない。解像度を上げるにはスライダーと媒体の距離を
100nm以下にする必要があり、リムーバブルにすること
はむずかしいと考えられる。光導波路にレンズを作り込
むことも考えられている。いずれにせよ、回折限界ぎりぎ
りで使うということで、スポット径を100nm以下にするの
はかなり難しいと考えられる。
SILを用いた近接場記録系
H. Sukeda, H. Saga, H. Nemoto, Y. Itou,
C. Haginoya, T. Matsumoto: IEEE Trans.
Magn. 37 (2001) 1234.
蝶ネクタイ・アンテナの利用
• 上述の方法により得られる光のスポットではエネルギー
密度を大きくできないという問題点がある。これを解決し強
いエネルギーの微小な光スポットを得る方法が、Groberら
によって提唱されたボウタイ(蝶ネクタイ)型アンテナによる
電磁場の集中である[i]。Groberらは、マイクロ波周波数に
対しこの形のアンテナの中心部に電界の集中が起きること
を検証し、光の周波数に対しても使用できると提案した。
Matsumotoらは、電磁界計算を行い、ボウタイアンテナの
ギャップ程度の領域に光強度が集中していることを明らか
にしている[ii] 。
[i] R.D. Grober, R.J. Schoelkopf, D.E. Prober: Appl. Phys. Lett. 70 (1997)
1354.
[ii] T. Matsumoto, T. Shimano and S. Hosaka, Technical Digest of 6th Int.
Conf. Near Field Optics and Related Techniques, the Netherlands, Aug.
27-31, 2000, p55
蝶ネクタイアンテナ
1 cm
=13.6 cm
R. D. Grober et al., Appl. Phys. Lett. 70, 1354 (1997)
プレーナ・プラズモン・プローブ
T. Matsumoto, T. Shimano and S. Hosaka, Technical Digest of 6th Int. Conf. Near
Field Optics & Related Techniques, the Netherlands, Aug. 27-31, 2000, p55.
高効率近接場光記録ヘッド
プレーナ・プラズモンヘッド
プラズマ振動でエネルギを局在化 → 効率>10%
金属パターン
- - -近接場光
入射光
+++ +
+
スポット径 [nm]
プラズマ振動
40
100
30
10
20
1
10
0
0.1
0
5
10
ヘッド-ディスク間隔 [nm]
対応記録密度[Tb/in 2]
パターン間8nmの時の計算値
高密度光記録のアプローチ
•
•
•
•
•
多層記録・再生
記録:2光子吸収(非線形光学効果)の利用
再生:1光子吸収(線形光学現象)
100層以上の多層化が可能
現行のままの光スポットを用いて2桁の高密度化
が可能
• 高ピークパワーをもつモードロック・フェムト秒レー
ザの小型化が前提
革新的技術をめざして(1)
• 体積ホログラフィ
–
–
–
–
干渉を利用して光の位相情報を記録
位置のシフトにより、異なる情報を体積的に記録
フォトリフラクティブ結晶、フォトポリマーの開発
空間光変調器(SLM)の進歩:
• ディジタルマイクロミラー(DMD)など
– 高感度光検出器アレーの出現:
• CMOS型アクティブピクセルデテクタ(APD)
革新的技術をめざして(2)
• ホールバーニングメモリ
– 波長多重記録
– 不均一吸収帯内の特定波長の吸収を消滅して記録
– 無機物:
• アルカリハライドの色中心の電子励起とトラッピング
• 絶縁物中の希土類イオンや遷移金属イオンの電子励起吸収帯
• Eu+3: Y2SiO5 を用いてホールバーニングによるホログラフィッ
ク動画記録に成功している[i]。
[i]光永正治,上杉
直,佐々木 浩子,唐木 幸一 :応用物理, 64 (1995) 250.
– 有機物:
• 光互変異性、水素結合の光最配位、光イオン化などの光吸収帯
– 低温が必要
• 常温で動作する材料開発が課題