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木曽川・長良川の再生ヨシ原における
水環境の評価と評価法の開発
16117081
八木 洋至
目
次
1. 背景・目的
2. 実験方法
3. 実験結果
4. 結論
1. 背景・目的
地盤沈下や伊勢湾台風後の高潮対策による堤防強化
ヨシ原面積 (ha)
150
90%減少
100
83%減少
50
0
S49
H13
木曽川のヨシ原
S49
H13
長良川のヨシ原
影響
ヨシ原特有の生物の生息環境の減少,仔稚魚の隠れ場の減少など
( ヒヌマイトトンボなどの昆虫類,ヨシゴイ・ヒシクイなどのサギ類の
減少 )
1. 背景・目的
平成15年 自然再生計画
失われた川の姿を復元するために,地域住民が主体となり
行政と連携しながらヨシ原の再生事業が進められている.
オオヨシキリやトンボ類などの
個体数やタコノアシが増加
生物環境への効果
ヨシ原回復が水質浄化に効果があるのかは疑問視され
ている.ヨシ原が回復した直後に水質浄化の効果が出る
ことはほとんどなく,これまで調査が行われておらず,評
価が求められている.
1. 背景・目的
しかし,河川の環境評価をするにあたっては・・・
一部の河川では,降雨の影響が汚濁物質や水中物
質の撹乱に影響があるといわれている.
そこで、本研究では水中の河川環境を評価するにあ
たり,木曽川、長良川といった河床幅の大きな河川に
対して、降雨の影響を考慮するべきなのか.
2. 実験方法
D:長良川 ヨシ無
B:木曽川 ヨシ無
これらの点に,週1回行き,ペットボトルで採
取した.
採取したペットボトルは,インキュベータを用
A:木曽川 ヨシ再生
地
立田地区
H20年造成
いて,温度を一定にし(4℃)保存した.
C:長良川 ヨシ再生
地
築戸地区
H20年造成
千倉地区 H21年造成
2. 実験方法
イネ科ヨシ属ヨシ
学名:Phragmites australis
池沼,河口,海岸などに生える高さ0.5~3m
の多年草
浄化作用
・ 水の流れをせき止めて水中の汚濁物質を
より早く沈澱させる
・ ヨシ自身の成長による窒素やリンの除去
・ ヨシの水中茎の付着微生物による有機物
の分解
2. 実験方法
(1) COD
サンプルをよく攪拌した後,パックテストを用いて測定を行った.
(2) pH
サンプルを2時間以上静置させ,上澄み水をpHメータを用いて測
定を行った.
(3) 栄養塩
サンプルをよく攪拌した後,ポータブル簡易全窒素全リン計を用
いて測定を行った.硝酸態窒素 (NO3-N) ,亜硝酸態窒素 (NO2N) ,アンモニア態窒素(NH4-N) ,リン酸態リン (PO4-P) につい
て分析を行った.
3. 結果(NO3)
降雨の影響は見られなかっ
た.
3. 結果(NH3)
降雨の影響は見られなかっ
た.
3. 結果(PO4)
降雨の影響は見られなかっ
た.
3. 結果(PH)
降雨の影響は見られなかっ
た.
降雨の影響は見られなかっ
た.
晴天時と降雨時の検定結果
COD
PH
NO3
NH3
PO4
A
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
B
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
C 一部の例外を除けば、降雨の影響は木曽川や長良川の
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
D
下流のような河床幅の大きな河川では影響がないことが
*
N.S.
N.S.
N.S.
N.S.
いえる。
*:P<0.05
N.S.:Non Significant
4.結論
• 栄養塩,PH,CODにおいて,降雨による影響は
見られなかった.この理由は,河床幅が大きいた
め,少量の雨では流れに影響を及ぼさず,結果
として大きな違いにはならなかったと考えられる
.
• NO3において,木曽川と長良川で長良川の値が
大きくでているのは, 長良川では長良川河口堰
によって締め切りが行われ,栄養塩の流出をさ
えぎっているため大きな値を示すことになったと
考えられる.
ごせいちょうありがとうね
!!!!!
本研究の降雨とは
• 本研究では,降雨の定義を,木曽川では,「○○」,長
良川では「△△」で,前日に少し(1mmでも)でも降っ
た場合を降雨と定義して行った.
実験方法
(4) 多様性指数
Shanon-Weiner指数
「サンプルから2個体抜き取ったときにその2個体が違う種である確率」
𝐻 = − (𝑝𝑖 )(𝑙𝑛 𝑝𝑖 )
Dが大きいほど多様性が増加することを表わしている
𝑝𝑖 :種iによって成り立つサンプル数
Simpsonの指数
「サンプルからランダムに選んだ個体の種名を言い当てるときの不確実さ」
Hの値が低いほどその個体の種名を予測する確率が高くなるので種多様
𝑝𝑖 :種iによって成り立つサンプル数
性が低いと判断される
Margalefの指数
𝐼 = (𝑆 − 1) 𝑙𝑛 𝑁
S :種数,N :個体数
実験方法
種多様性の型
いくつかの異なる環境に存在する群集について種多様性を議論
する場合、種多様性は3つの形に区別される
α多様性 : ある1つの環境内で測定される場合の多様性
β多様性 : 環境の連続的な変化に伴って生じる多様性の違いの程度
γ多様性 : 増大する面積での多様性が変化する割合
今回はヨシ有とヨシ無といった異なる環境間において比較を行うの
でβ多様性の高さについて確認を行った。
実験結果 COD
• 春から秋にかけて徐々に
値が下がっていく
ヨシ有とヨシ無でほとんど
差が見られなかった
5,6月ごろはスプリングブルー
ムの時期と重なり,プランクトン
の増殖が観察される時期であ
るため,上昇したと考えられる.
COD (木曽川)
• 木曽川のヨシ有で数値の
ばらつきが見られた
高い値を示した地点は特にシ
ジミなどのベントスの生育が多く
,捕獲する人の影響があると考
ヨシ群落が生育している地域が潮
えられる.
汐の影響を受け,流動的に水界が
移動するためと考えられる.
COD (長良川)
実験結果 pH
ヨシ有とヨシ無でほとんど
• 春と秋に値が下がり、弱
差が見られなかった
酸性を示した
プランクトンの増殖によって,有
機物が増加し,分解することに
pH (木曽川)
よって,酸性に偏る傾向が見ら
十分な広さが無ければ緩衝作用が
れたと考えられる.
発揮されづらく,まだまだヨシ群落の
再生面積が少ないと考えられる.
pH (長良川)
実験結果 栄養塩
• 夏に低い値を示し,秋に
かけて値が上昇した
夏季においては水温躍層が形
ヨシ有とヨシ無であまり
差
成され,表層では植物プランク
トンの取り込みによる栄養塩濃
が見られなかった
(木曽川)
度の減少が見られた.そして秋
以降,沈降し蓄積された窒素栄
養塩が上層に運ばれ,濃度が
上昇したと考えられる.
今回調査したヨシ原再生地は造成後
間もない地区であったので,継続し
て調査する必要性がある.また,潮
• 長良川の方が高い値を
長良川では長良川河口堰によ
示した
汐による影響によって,異なった値
って締め切りが行われ,栄養塩
を示している可能性も考えられる.
の流出をさえぎっているため大
きな値を示すことになったと考
えられる.
(長良川)
実験結果 プランクトン
ヨシ有の方が高い値を示
• 春・秋に高い値,夏に低
す傾向が見られた い値を示した
プランクトン (木曽川,左がヨシ有,右がヨシ無)
プランクトン (長良川,左がヨシ有,右がヨシ無)
栄養塩濃度の影響と考えられ
る.
2.0
shannon
10
0.0
0
有
有
無
木曽川
1.0
ヨシ有の方が高い値を示
す傾向が見られた
5
sp
15
20
実験結果 多様性指数
無
長良川
無
木曽川
種数
有
無
長良川
• 長良川の方がどの値も
高くなった
Shanon-Weiner指数
2.0
1.0
0.0
0.4
marglef
3.0
0.8
長良川河口堰の閉鎖空間
ヨシの生育が種多様性に対して,正
による流れの停滞によって
,栄養塩濃度が上昇し,そ
の効果をもたらす傾向が示されたと
れに伴って植物プランクト
考えられた.
ンの増殖に影響があった
可能性が考えられる.
0.0
simpson
有
有
無
木曽川
有
無
長良川
Simpsonの指数
有
無
木曽川
有
無
長良川
Margalefの指数
結論
・ ヨシ原の再生によってプランクトンの種多様性が増加
する傾向があるというメリットが確認された.
今回の結果で,プランクトンの種数をβ多様性で測定す
ることにより,これらの効果について検討する方法につ
いて示唆することができたと考えられる.今回,目で見
ることができる種についてのみ検証を行ったが,目に見
えない種ではより高い種多様性が確認できる可能性も
考えられる.ピコプランクトンも含めた遺伝子レベルで
の多様性を見ることができれば,さらに指標として精度
の高いものとなると考えられる.また,今後の課題とし
てシジミやサワガニといったベントスにも目を向けること
で,さらに生態系ピラミッドの上位への影響を考える必
要がある.
結論
・ 長良川において,長良川河口堰による環境への悪
影響が懸念されている.今回の結果で,河口堰の
閉鎖空間による栄養塩の滞留,それによるプランク
トンの増殖が確認され,長良川河口堰が環境に負
荷を与えていることが示唆された.栄養塩濃度の上
昇は,富栄養化を引き起こし,生態系に影響を与え
てしまう.場合によっては赤潮や青潮といった現象
を引き起こしてしまう可能性がある.常に状況を把
握するためにも,長期的に水質や生態の調査を継
続する必要があるといえる.
0.6
R2 =0.5986
0.2
0.4
NO3-N
0.4
R2 =0.8233
0.2
NO3-N
0.6
実験結果 多様性指数
5
10
0.0
15
種数
1.0
1.5
2.0
2.5
0.6
• 木曽川は種数,多様性指
数と硝酸態窒素との間に
やや相関が見られたが,長
良川では相関が見られな
かった
R2 =0.7031
0.2
0.4
NO3-N
0.6
0.4
R2 =0.5346
0.2
NO3-N
0.5
Sannon-Weiner指数
0.0
0.2
0.4
0.6
0
0.8
1
Simpsonの指数
2
3
Margalefの指数
0.4
R2 =0.5495
0.2
NO3-N
0.4
R2 =0.5745
0.2
NO3-N
0.6
0.6
木曽川 ヨシ有の相関図
2
4
6
8
0.0
10
種数
1.0
1.5
2.0
0.6
R2 =0.5508
0.2
0.4
NO3-N
0.6
0.4
R2 =0.5203
0.2
NO3-N
0.5
Sannon-Weiner指数
0.0
0.2
0.4
0.6
Simpsonの指数
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
Margalefの指数
木曽川 ヨシ無の相関図
2.5
長良川河口堰の閉鎖空間によ
る流れの停滞による影響があっ
た可能性が考えられる.
・ ヨシ群落における水質の影響を判断するため,表層 (0~0.5m
で採水
・ それぞれの場所からランダムで4点選び,週1のペースで計24
回,およそ7か月間
実験方法
(4) プランクトン
サンプルをよく攪拌し,光学顕微鏡,プランクトン計数板(検鏡部
10mm×10mm×1.0mm ,容量 0.1ml )を用いて,種類(形),大
きさ,色で分類を行った.プランクトンは月に1回計測を行った.
※写真
プランクトン計数板
ご清聴いただきありがとうございました。