Transcript file

「安全・安心」 対 「人権・自由」
9.11以降のアメリカ
国際比較法制論A
第13回
2006年07月13日
阿川 尚之
9.11同時多発テロ事件
歴史の転換点
• 60年ぶりのアメリカ本土攻
撃
• ブッシュ大統領緊急事態宣
言
• (9月14日大統領宣言)
• 大統領への全権委任
• (2001年9月18日連邦議
会両院合同決議案可決)
• 国防政策の根本的見直し
• (ブッシュ大統領2002年
陸軍士官学校卒業式演説)
• 国内治安政策の根本的見直
し
テロとの戦いの開始(海外)
• アフガニスタン攻撃
• イラク戦争
• 海上自衛隊艦艇のインド洋派遣
• 陸上自衛隊のイラク派遣
テロとの戦いの開始(国内)
• 愛国法の制定
• The Uniting and Strengthening America by
Providing Appropriate Tools Required to
Intercept and Obstruct Terrorism Act of 2001
(“USA PATRIOT Act”)
• テロ容疑者の捜査・拘束
• 国土安全省の創設
成果
• タリバン政権殲滅・アルカイダの弱体化とアフガニス
タン民主化
• サダム・フセインの失脚とイラク民主化
• 中東の民主化
• テロの防止
残された課題
• 不安定なイラクと戦費・
犠牲の増大
• ハリケーン・カトリーナ
と資源配分の問題
• 安全のコストとベネ
フィット
• テロの継続(マドリッド・
ロンドンのテロ)
• 反米主義の拡大
• 安全確保と人権確保の
ジレンマ
安全・安心の確保と人権・自由の確保
~歴史的背景~
• フェデラリストペーパー
• 安全確保のための連邦創設:第3篇
• 安全確保のための強力なる行政部の必要性:
第23篇、70篇
• 常備軍をめぐる論争:第24篇、25篇
• 憲法における戦争権限の分散と集中:第51篇
戦争に関する合衆国憲法の規定(1)
• 議会の権限
• 宣戦布告の権限
• 陸海軍創設の権利
• 軍隊編成維持の権限
• 民兵召集の権限
戦争に関する合衆国憲法の規定(2)
• 大統領の権限
• 執行権の集中
• 軍の最高司令官としての権限
• 大統領固有の権限
戦争に関する合衆国憲法の規定(3)
• 連邦と州の権限
• 連邦は州を侵略から守る義務を有する
• 州に対する軍備の禁止
• 急迫不正の攻撃対処を除く
英仏戦争とアダムズ大統領の対応
• 外国人・煽動取締法の制定
• 親仏的言論の抑圧と不穏分子の逮捕
• 1800年の選挙とジェファーソン政権の誕生
南北戦争とリンカーン大統領の対応
• 超憲法的措置の発動
• メリーマン事件と人身保護令の停止
• ヴァランディガム事件・ミリガン事件と軍事法廷での
民間人裁判
• プライズ事件と戦争の定義
第1次世界大戦とウィルソン大統領の対応
•
•
•
•
大統領への戦争権限集中
スパイ取締法・煽動取締法と言論の自由
「明白かつ現在の危険」基準の誕生
シェンク対合衆国事件・アブラムズ対合衆国事件の
最高裁判決
第2次世界大戦とローズヴェルト大統領の対応
• 大不況から大戦争へ:危機の継続と大統領への権
限集中
• コレマツ事件と日系米人強制収用の合憲性
• ドイツスパイ(クイリン)事件と不法(敵)戦闘員の軍
事裁判による処罰の合憲性
• ヤマシタ事件と戦争犯罪の軍事裁判による処罰の
合憲性
冷戦と大統領権限の拡大
• ヤングスタウン鉄工事件と最高裁による大統領の
戦争権限解釈
• マッカーシー旋風と思想の自由に関するドウズ事
件・デニス事件判決
• トンキン湾決議とベトナム戦争の泥沼化
• ウォーターゲート事件とニクソン大統領の辞任
第一次湾岸戦争と大統領の戦争権限
• デラムス対ブッシュ事件
• 議会における決議案採択
• 開戦と国民の支持
9.11への対応と人権問題(1)
•
•
•
•
•
愛国法と憲法上の権利侵害のおそれ
捜索・押収権限の拡大
(1)捜索通知の遅延
(2)盗聴範囲の拡大
(3)個人情報(図書館の貸出記録など)の
押収
9.11への対応と人権問題(2)
• テロリスト容疑者の
権利
• 無期拘留の正当性
• 人身保護令の請求
権
• 弁護士の助言を受け
る権利
• 裁判を受ける権利
• 拘禁中の取り扱い・
虐待の正当性
• アブグレイブとグアン
タナモ
9.11への対応と人権問題(3)
• 4つの最高裁判決と司法
の判断
• ハムディ対ラムズフェル
ド事件
• ラムズフェルド対パディラ
事件
• ラスル対ブッシュ事件
• (最近の最高裁判決)
まとめ
•
•
•
•
危機における大統領権限の拡大
時間の経過と議会・司法の判断
世論の変化
対決を通じた安全・安心の確保と人権・自由
の保護のバランス
• アメリカ市民と外国人の扱いの差