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「錯視(visual illusion)の実験心理学的研究」
文学部教授 北岡明佳 (心理学専攻)
錯視とは、対象の知覚が対象の物理的特性とは異なって見えることである。
具体的には、平行な線が平行でなく見えたり、止まっているものが動いて見
えたり、同じ色が異なる色に見えたりすることである。日常用語では目の錯
覚と言うが、錯視の多くは脳で起こっていると考えられている。
36個あるそれぞれの絵(下図)の中では、人物の左右の目は物理的には
同じ色で彩色されているが、異なる色に見える絵がある。たとえば、一番上
の列の右から3番目の絵では、右目は水色に見えるが、物理的には左目と
同じ灰色で描かれている。
照明に色がついていて、そのため対象が実際とは異なる色に色づいてい
ても、人間の目は対象の「本当の色」をある程度知覚することができるが、
この機能を「色の恒常性」(color constancy)という。本作品では、右目の
色が左の側頭部にあるビーズと同じ色に見えれば、色の恒常性が成立し
たとみなせる。ただし、この現象は「色の対比」に過ぎないという批判も可能
である。もっとも、これまで色の対比でこれだけの錯視量を示すデモンスト
レーションはなかったので、この現象が色の対比だとしても色覚のサイエン
スに貢献する新しい手がかりを含んでいる。
下図 『目の色の恒常性(Eye color constancy)サンプル』