レポート形式課題を対象としたピアレビューサポート ツールの

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レポート形式課題を対象としたピアレビューサポート
ツールの開発・評価
2007年修論公聴会
信州大学院工学系研究科 情報工学専攻
海尻・海谷研究室M2
06TA546A 夏目 豊
背景(1/2)
近年のソフトウェア教育では、本来の教室での講
義ではなく、Web を使った講義が多い。
このような講義形式は時間・資源等の節約といっ
たメリットが大きい。
しかし現在実際にWeb 上で動いているこれらの
システムは、提出物の内容について深く追求す
るようなシステムはあまり見受けられない。
大抵これらの問題形式は選択問題で、暗記で解
けてしまうものがほとんどであり、プログラムのよ
うなフリーハンドの問題であっても動作すれば良
し、駄目な場合は再提出を催すだけというもの。
背景(2/2)
こういったシステムが本来の学習で身に付ける
べき理解力を学生に身に付けさせることができて
いるかは疑問。
逆に誤解を植えつける原因にもなりかねない。
そこでこのようなデメリットを回避し、なおかつ
Web システムの利点を生かす事のできる、教育
システムに対する数多くの研究がなされている。
研究の目的
本研究では学生同士で互いに成果物を評
価(review)させあう「peer review」という
教育手法に焦点を置き、Web をベースに
したpeer review サポートツールを作成し、
その有効性を検証していく事を本研究の
目的とする。
なぜpeer reviewか(1/2)
一般的に他人に教えるという行為は教え
る側がきちんとその物事を理解できていな
ければ成立せず、そのため学生が理解し
ようと問題に携わる機会が増えることを
狙った。
また、他人の解答例や他人からのレビュー
を参照することによる問題理解の促進も挙
げられる。
なぜpeer reviewか(2/2)
つまりpeer review は最終的な学生の提
出物よりもそれに辿り着くまでのプロセス
(学生の試行錯誤)を重視する性質が強い
ので、「そのプロセスが何を行っているか・
目的としているか」を理解しやすく、学生の
理解力の養成に繋がると考えられたため
である。
システム関連技術
Apache
PHP
Smarty
MySQL
PHP(1/2)
動的にHTML データを生成することに
よって、動的なウェブページを実現すること
を主な目的とした、HTML 埋め込み型の
サーバサイド・スクリプト言語。
特徴の一つとして、Apache と同じプロセス
空間で動くため、CGI に比べ高速に動作
する。
PHP(2/2)
<html>
<head>
<title>sample</title>
</head>
<body>
<?php
print("Hello World.");
?>
</body>
</html>
Smarty
PHP では、HTML(デザイン部分)とプログラム
(ロジック部分)を同一ページに記述できる。しか
し、同じファイル内にデザイン部分とロジック部分
を記述するとメンテナンスが非常に困難になって
しまう。
そこでPHP では、Template Engine という技術
によってデザイン部分とロジック部分を分離させ、
この問題を解決した。
Smarty とはこの Template Engine の内の一
つである。
Smartyロジック部
<?php
// Smarty クラスの読み込み
require_once('Smarty/Smarty.class.php');
// Smarty オブジェクトの生成
$smarty = new Smarty;
// Smarty 変数への値の登録.
$smarty->assign('name', 'Tarou');
$smarty->assign('url', 'http://www.YamadaTarou.com/');
// 表示命令
$smarty->display('index.tpl');
?>
Smartyデザイン部
<html>
<head>
<meta http-equiv="Content-Type" content="text/html;
charset=EUC-JP">
<title>User Info</title>
</head>
<body>
<p>HP 紹介:</p>
名前:{$name}<br>
URL: <a href="{$url}">{$url}</a><br>
日付:{$smarty.now|date_format:"%Y 年%m 月%d 日"}<br>
</body>
</html>
HTML表示
システム概要(1/6)
システムに働きかけるのは教師、学生、評価者
の三つ。それぞれが行う操作は以下の通り。
 教師 :学生の提出課題と評価者の評価課題の採点と注
釈を行う
 学生 :課題の提出と、教師と評価者に評価された提出課
題の受け取りを行う
 評価者:学生の提出課題の評価と、教師に注釈された評
価課題の受け取りを行う
システム概要(2/6)
また、システムは大きく四つのコンポーネ
ントから構築される。
1.
2.
3.
4.
評価者割り当てコンポーネント
評価コンポーネント
通知コンポーネント
コントロールコンポーネント
システム概要(3/6)
1.評価者割り当てコンポーネント

学生から提出された課題について課題提出
データを元に配布先を決定し、実際に評価者
へ配布するコンポーネント。課題提出データと
は提出課題ごとに学生情報などを持っている
データ。なお、配布先は毎回ランダムに生成さ
れる。
システム概要(4/6)
2.評価コンポーネント

各アクターそれぞれに対し、評価者による提
出課題に対する評価や、教師による提出課題
に対する評価と評価者による評価に対する評
価・採点のインターフェイスを提供し、またその
結果をDBに記憶させておくコンポーネント。
システム概要(5/6)
3.通知コンポーネント

進行度データから、全アクターに通知を行える
コンポーネント。進行度データとは各アクター
がどの操作まで終了しているかを表すデータ。
評価者ならば評価者割り当てが終わった通知
や、教師による評価者評価が終わった通知な
どを受け取る事ができる。各アクターはこの通
知を受け取り次の行動を把握していく。
システム概要(6/6)
4.コントロールコンポーネント

前三つのコンポーネントの命令・制御を行って
いくコンポーネント。
概念フロー(1/2)
コントロール
コンポーネント
提出課題
命令・制御
評価・採
点結果
評価者割り当て
コンポーネント
評価
コンポーネント
通知
コンポーネント
アクターデータ
提出課
題・採点
結果
評価
学生データ
進行度データ
DB
ピアレビューサポートツール
提出課題・
評価済提
出課題
採点・注釈
概念フロー(2/2)
学生による
課題提出
学生による
見直し・再
提出
教師による
評価者割り
振り
教師による
提出・評価
課題採点
評価者によ
る課題評価
学生・評価
者による見
直し
ツールインターフェイス
実験
ピアレビューサポートツールを数人の学生
に使用してもらい、実際にこのツールの有
効性の検証を行った。
検証方法として、素の提出課題と評価者
評価後の再提出課題とで比較を行った。
実験概要(1/3)
8 人の学生に協力してもらい、設定した課題を実
際にツールを使用して提出してもらった。
学生は基本的にツール以外でのコミュニケーショ
ンは禁止とし、ピアレビューの有効性を見るため
に評価者による評価後にツールの再提出機能に
よる再提出を極力してもらうように促した。
また、ツールインターフェイスの利便性を調査す
るためにツール使用後にアンケートを実施した。
実験概要(2/3)
設定した課題は同研究室M2 風間の研究
との兼ね合いも入れて次のユースケース
図作成問題を採用した。
実験概要(3/3)
ホテルのWeb サービス
あるホテルでは宿泊予約システムの更新を検討している。
既存のシステムでは、フロント係や予約係が電話やFAX で予約を受け付け、
予約情報(宿泊日、人数)をシステムに入力すると宿泊予約の可/不可がわかり、
さらに予約可の場合、予約を確定させると部屋が確保される。
また、フロント係は宿泊者名から予約情報(宿泊期間、部屋番号)を検索
することが可能で、予約係はキャンセルを行うことができる。
新システムでは既存システムの機能を引き継ぎ、さらに予約可否の確認と
予約の確定までの処理を宿泊者がインターネット経由で、旅行会社の社員が
専用端末で、行えるようにしたい。また、宿泊者はシステムにメールアドレスを
登録することで、一週間に一度ホテルの予約状況を、一ヶ月に一度周辺の
観光施設の情報を定期的にメールによって受け取ることが出来るようにしたい。
正答例
学生解答例(1/3)
学生解答例(2/3)
学生解答例(3/3)
学生解答例(4/6)
学生解答例(5/6)
学生解答例(6/6)
アンケート結果
5段階評価(悪い← 1~5 →良い)
実験総評
最終的な学生提出物は以前のものよりはほぼ全
員質の高いものとなっていた。
評価者の評価は全てを指摘するものではなく、
今の提出物より「一つ良くする」ような指摘が多く
感じられた。
この結果学生も手直ししやすく、確実に成果を挙
げられたのではないか。
また、アンケートによる調査でもそこそこの平均
値を獲得できた。
それなりにサポートツールとして動いてくれたよう
である。
まとめ
実験による結果から、学生の理解力の向
上が覗えた。
これはpeer reviewによる擬似的な議論に
よって学生の理解を促すことができた結果
と言え、Web教育システムの一つとしてこ
のピアレビューサポートツールの有効性を
示唆する事ができた。
反省・今後の展望(1/2)
今回行った実験については、実験を行う学生の
そもそもユースケース図自体についての認識が
不足していて、ピアによる学習効果の向上が非
常に見えにくい結果となってしまった。同じカテゴ
リの問題を長期的にやるのなら反応は違って来
るだろうが、今回のような短期的な実験において
は学生が元となる知識を持っている問題設定に
したほうが学習効果は読み取り易かったかもし
れない。
反省・今後の展望(2/2)
また、アンケートによる調査ではそれなり
に平均的な値を獲得できたものの、状態
遷移状況の把握については他より低い値
となってしまった。学生に次に何をすべき
かの指針をメールなどによる直接的な通
知方法で把握させるような機能を追加する
事を検討していきたい。