東京農工大学大学院 楠野 晋一

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川辺川ダム問題にお
ける住民運動と学習
~住民討論集会を中心に~
東京農工大学大学院
楠野 晋一
1 住民運動における学習
(1)沼津・三島コンビナート問題
1964年 静岡県 沼津市、三島市、清水町
視察学習、風向調査、海流調査
→主体的・集団的な学習
→予想される被害を明らかにした
→コンビナート計画を阻止
(2)巻町の原発建設問題
1996年 日本初の住民投票がおこなわれる
・主婦や看護婦が、自分の問題として考え、
他の住民に話す。
・地域に暮らす専門家が学習援助
→住民同士の学習
→環境問題と自分が住む地域を知る学習
→他者に働きかける動きへ
→原発建設計画を阻止
住民運動における学習とは
①住民が環境問題を自分のものとして捉える。
②自分の考えや意見を持つ。
③問題を解決するための行動へ。
住民の学習は住民運動を支える
力となる。
2 川辺川における学習の展開過程
第1期 住民学習が個別に展開されていた時期
・1960年代後半 五木村の川辺川ダム建設計画に対する反対運動。
・1980年代
人吉市で行われた住民運動。
第2期 住民学習の連携期
・1993年 「手渡す会」を中心として多くの住民団体が発足。
・住民運動において住民同士、農家、弁護団体との連携がとられた。
第3期 住民学習のネットワーク形成期
・1996年 八代市を中心とした「美しい球磨川を守る市民の会」結成
熊本市を中心とした「子守歌の里五木村を育む清流川辺川を
守る県民の会」
・住民団体の広がりと、諫早干拓問題、長良川河口堰との連携
第4期 新たな住民学習の段階
・2001年~2003年 住民討論集会
3 住民討論集会における学習
住民討論集会の展開過程
(1) 論点混乱期 1~3回
・議論が感情的
・双方の主張がかみ合わない並行状態
・回を重ねるごとに議論が進展
(2) 論点共有期
4回~8回 テーマ 「治水」、「環境」
・データを要求
・データを基に、住民の主張の理論化
・さらなるデータ開示請求
→住民側と国交省側の論点の共有
(3) 総括・共同検証期
9回目 「治水」「環境」の議論の総括
・「森林の保水力」 住民側と国交省側の共同
検証実施
→住民参加・参画に基づく公共事業の意思決
定へ
4 住民討論集会における学習
(1) 住民討論集会という場での学習
(2) 住民同士での学習
(1) 討論集会という場での学習
フォーマルな場での学び(住民と国交省側)
・住民が国交省のデータを批判的にとらえ、理
論化し、 議論を展開させる。
・討論集会に関わった多くの人が問題を考え
る。
・国交省側も考える。
(2)住民同士の学び
「治水班」
・専門家との協力。
・国交省のデータを批判的にとらえ、分析。
・わかりやすい資料づくり。
→生活と科学を一致させていく。
「環境班」
観察会
水生生物、クマタカ、アユ、ツヅラセ洞窟など
の調査。
住民独自の報告書作成へ。
→観察会をつうじて地域を知る。
→地域調査の蓄積が、討論集会での住民の
理論的よりどころとなる。
5 住民学習の発展過程からわかること
学習の深化が運動を発展
運動は学習を発展させる
相互に関連
1 住民運動には学習が必要不可決。
住民が問題を意識し、自分自身の考えや意見を持ち、行動へ。
2 学習により意識化し、地域を考える主体
へ。
住民自身が総合治水対策を提起する。
→ブックレットパート1、2